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【第5章】波乱と不安
予想してる通り
しおりを挟む「穐本さん。先生と一緒に来てた子って、もしかして……?」
事務所に戻り、簡易キッチンでお茶を入れるタイミングで来た永森さんが、待ちかねたように尋ねてきた。
「たぶん、所長が予想してる通りです」
即答すると、永森さんは「あちゃあ」と額を押さえる。
「何考えてんだ、先生……そんな人だったっけ?」
「ですよね……」
私たちが知っていた野々原先生は、普段は温和だけど仕事には厳しく、公私のけじめもしっかりつける人だった。それがいつの間にか、不倫相手を出張に堂々と連れて来るようになっているなんて。
同病相憐れむ、といった心境で、私と永森さんは顔を見合わせた。
「山根沢氏がこのこと知ってる……わけはないよな」
「知ってたら監修を頼んだりしないんじゃないですか」
「そりゃそうだ」
はあああ、と永森さんが盛大にため息をつく。
「俺、この案件、進めるの不安になってきた」
「私もですよ……」
本当に、先がどうなるのか、見当もつかない。波乱の予感しかしない。
けれどこの予感は私たちだけで留めておこうと意見が一致し、平川さんと六旗さんには余計な情報を与えないことに決定した。永森さんが元事務所の先輩、かつ「不倫の目撃経験者」でよかったと、あらためて心から思った。
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