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【第4章】困惑と変化
彼を見る勇気が
しおりを挟む「ゆうべはありがとう」
染み入るような声で、昂士くんがささやいた。
看病のことなのか、もしくはアレのことなのか……どっちを指しているのだろう。それとも、どっちもなのか。
「嬉しかったよ」
本当に嬉しそうに続けられて、照れくさいのと同時に、心の中にほんのりと灯がともる。
嬉しかったと言われたのが、私も嬉しい。その思いで胸がいっぱいになって、言葉に出すことはできなかったけど。
「体、大丈夫か。辛くない?」
「……大丈夫」
それを聞くのは私の方じゃないかな、と思いつつ答える。様子を見る限り、彼の方はすっかり熱も下がって、平気そうだ。
本当はちょっと足腰が痛むし、体の奥の違和感もいくらか残っている。
でもそれをわざわざ告げて、彼の声を曇らせたくはなかった。だから少し強がった。
そうか、とつぶやいた昂士くんが、私のうなじに短いキスを落とす。
その場所からまた、じわじわと熱が広がっていく感覚が止められない。
彼が棚から食器を出し、味噌汁とご飯をよそってくれる間も、彼の方を見る勇気が出なかった。
結局、顔をまともに見られないまま、向き合って朝食を終える。
昂士くんも食事中は何も言わなかった。ちらりと見ると、いつもと食べる様子に変わりはないから、調子は戻ってきているらしい。
……昨夜の出来事を、あらためて考える。
彼はどういうつもりで私を抱いたんだろう?
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