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【第2章】結婚と約束
いっそ結婚
しおりを挟むとはいえ、望んでも子供が出来ない場合はあるし、こればかりは意のままにはならない。
親が気にしているのは、どちらかと言えば、世間体かもしれない。同級生の何々ちゃんや誰々ちゃんは結婚したのに、うちは。そんなふうに、周囲から『お宅のお嬢さん、まだ独身なの?』という目を向けられることに年々、肩身が狭くなる思いを感じているのだろう。おそらくは、樹山のご両親も。
ふと、隣で日本酒の盃を傾けている、樹山を振り向く。
その整った横顔を見ているうちに、私の頭の中に、素面なら想像もしないであろう思い付きが浮かんできた。
「じゃあさ、いっそ結婚しちゃおうか、私たち」
どう思われるか考えるより先に、口がそう動いていた。
当然ながら樹山は、訳がわからないと言いたげな声音で「……え?」と受ける。
「何言いだすんだ、穐本」
次の瞬間には目を丸くして、なぜか耳まで赤く染めている。ある程度はお酒のせいだろうけど。
「変かな。でも、そしたらお互い、うるさいこと言われなくなるんじゃない?」
言っているうちに、わりといい考えだと思うようになってきたのも、いつもよりお酒が回っているせいだろうか。
「……そうだな、いい考えかも」
しばらくの沈黙の後、妙に真剣に、樹山はつぶやいた。私の顔は見ずに。
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