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【第2章】結婚と約束
理由のひとつ
しおりを挟む二人とも、仕事を通して知り合った、建築業界の人だった。だから仕事には理解を示してもらえると思っていたのだけど、それとこれとは別だったらしい。自分か仕事か、と問うた時に「あなたです」と言ってもらえなければ嫌な人たちだったのだ。
私が、キス以上に進むのをためらっていたのも、理由のひとつかもしれない。
どちらからも2回ほど迫られた覚えがあるけど、結局はそんな気分になれなかった。なんとなく怖かったのもあるし──その怖さを押しのけてまで、そういう行為をしたいとは思えなかったのだ。
もしかしたら私は、人より性欲が薄いタイプなのかもしれない。今ではそんなふうにまで思っている。
平川さんと六旗さんの視線を感じる中、自分の席に戻り、置いてあった他の仕事に手を付ける。30分ほど書類とにらめっこしていると、ピロリン、とスマートフォンが鳴った。この音は、メッセージアプリの通知音だ。
画面を見て、軽く目を見張った。
ロック画面の通知には、こう書かれていたのだ。
【樹山昂士】
【今日仕事終わったら時間ある? 飲みに行こう】
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