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【第2章】結婚と約束
羨ましくもある
しおりを挟む「もしかして、所長にも?」
「知ってるよ」
「うわあ、そうかあ。泰ちゃんにも言っとかないと」
独り言のように六旗さんは嘆くが、声を抑えていないのでまる聞こえだ。
泰ちゃん、というのは平川さんのことだろう。名前が泰輔だから。
事務所内に戻ると、六旗さんはさっそく平川さんの机に駆け寄り、何事か話していた。平川さんは目を見開いて、私と永森さんの方を交互に見ている。
なにせほぼ毎日、帰りも出勤も一緒なのだから、彼らの関係がわからないはずがない。なのに恋人だとバレていないと二人ともが思うなんて、なかなかの鈍さというか、恋は盲目というか。
傍目から見ると微笑ましい限りだが……ちょっと、羨ましくもある。
職場恋愛が、ではなく、そうやって想い合える相手がいること自体が。
中高生の頃は大学に入るため、大学では資格を取るために、とにかく勉強一筋の日々を送っていた。大学時代に何度か告白されたことはあるけど、どの人にも魅力を感じなかったこともあって、付き合うには至らなかった。
社会人になってからも、実情はあまり変わらなくて、付き合った人の二人ともと、キス以上はしていない。デートですら半年ほどの間に4・5回程度。月1回すら会えないのか、と文句を言う相手に「仕事の都合が」と答えたら、じゃあ付き合ってる意味ないなと向こうから振られる。そのパターンだった。
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