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【第2章】結婚と約束
非常にこそばゆい
しおりを挟む名刺交換しながら、担当者──としてやってきた樹山と、初対面を装って挨拶する。非常にこそばゆい。
「うちはかまいませんよ。永森さんがおっしゃるのなら、本当に優秀な方なんでしょう。よろしくお願いします」
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
「どうしたの、穐本さん」
「……すみません、ちょっと緊張して」
苦しい言い訳だったが、永森さんは気づかなかったみたいで「ああ」と受ける。
「『保険メルカート』が樹山物産の子会社なのは知ってたよね。けどまさか、そこの御曹司が来るとは思わなかった?」
「ええ、まあ……」
「4月から『メルカート』の西日本統括を務めてるんです」
樹山はそう説明し、続けた。
「私の就任前に永森さんが改装を担当してくださった店が、非常にお客様からの評判が良いと伺いまして。ぜひ継続してお願いしたいと思った次第です」
「そう言っていただけて、建築家として大変有難いです。微力ながら、貴社のご発展に貢献させていただきたいと思います」
頭を下げ合っている姿からは、お互いに相手に敬意を払っている様が伝わってくる。永森さんの方が5歳上だけど、30歳前で子会社のエリア統括になった樹山に対しては一目置いているようだ。もちろん施主側の人間、仕事の依頼者だということもあるだろうけど。
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