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【第2章】結婚と約束
8月の初旬
しおりを挟む「それは仕方ないよ。先生がそんな人だなんて、僕も思ってなかった。裏の面を隠すのが上手い人だったんだ。そのわりに、事務所の自分の部屋を使うとか、抜けてると言えば抜けてるよな」
永森さんが苦笑を見せたので、私も同じように、少しだけ笑った。
それからの日々は、充実していた。
前の事務所が請けていたような大きい案件はほとんど無くて、個人宅の戸建ての相談が多い。けれどこんなご時世でも、否、こんなご時世だからこそなのか、マイホームは普通の人にとって「人生における夢」らしい。どの人からも、少しでも良い家にしたいという気持ちが、こちらにビシバシ伝わってくる。
それだけに、良くも悪くもこだわりが強くて、時には意見が衝突したり無理難題を言われたりもするけれど。
そういう場合に折衝して、妥協案を探すのは、嫌いじゃない。
毎日忙しくしているうちに、あっという間に最初の1ヵ月、そして2か月目が過ぎていった。
そして、2ヵ月目も終わろうとしていた、8月の初旬。
出勤すると、永森さんに呼びつけられた。
「なんでしょうか、所長」
「今日の午後に、ちょっと大きな仕事の件で施主側の担当が来るんだ。穐本さんにも同席してほしいと思って」
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