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【第1章】再会と契約
彼には不思議と
しおりを挟むその見た目と、素性も相まって、当然ながらすごくモテていた。
けれど告白する女子は案外少なかったと聞く。彼の背負う「家」のレベルが大きすぎるので、恐れをなしていた子たちも多いのだろう。
それでも、学生の間だけでも付き合ってみたいと、なけなしの勇気を出す女子もいくらかはいた。
しかし、聞く限りでは樹山は、中高の間は誰とも付き合わなかったようだ。
あまりにも公平に誰もが断られるので、一部の生徒の間では「もしかして女の子に興味が無いんじゃないか」なんて噂が広がっていたほどである。
「食べないの?」
いつの間にかお箸が止まっていた私に、樹山がそう尋ねてくる。
「え、あっ。ごめん、考え事してた」
「ならいいけど。口に合わないのかと思った」
「そんなことない、大丈夫」
今まで食べたことがないぐらいに上品な味付けと、離れの静謐な雰囲気に腰が据わらない心地はするけれど、ちゃんと料理の味は感じられる。それは一緒に食べる相手が樹山だからだろう。
彼には不思議と、男女につきものの隔たりというか、性差を意識する感覚が鈍くなる。昔からそうだ。格好いい、とは思うけどそれはどこか、アニメのキャラやドラマの登場人物に対して思う感じ。なんとなく、現実でない所に有るような、そんな認識なのだ。
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