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【第1章】再会と契約
半年ほど前
しおりを挟む事の起こりは半年ほど前にさかのぼる。
その頃、私は、7年勤めていた会社を辞めて、実家のある町に帰ってきたばかりだった。大学進学のために家を出て以来だから、11年ぶりだ。
もちろんその間に短い帰省はしていたけど、今回は違う。地元で再就職するために戻ってきたのだ。
「……はあ」
とはいえ、望んで戻ってきたわけではないから、気分は憂鬱だった。
東京の大学で建築を学んだ私は、中規模の事務所に就職した後、働きながら建築士の資格を取った。それから5年、事務所の先生や先輩のアシスタントを経てようやく、小さいながらもメインで案件を任されるかと思った矢先。
唐突に、事務所を辞めざるを得ない事態になってしまったのだ。
あまりにも理不尽で不本意で、抵抗しようと試みたけど、変な真似をしたらこの業界で仕事をできなくしてやると脅され、泣き寝入りをするしかなかった。
思い出すたびにふつふつと沸き上がる、憤りと悲しさに、新幹線のホームに降りたった時にも支配されていた。そのため、しばらくその場から動く気になれなかった。
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