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第3章
変化していく気持ち
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ゲイルから事情を聞いたゼルキオンは、メイリスと話をするために南の塔へ移動した。
部屋に入ると、彼女はキッチンでコーヒーを淹れていた。
ナッツを炒った時のような芳ばしい香りが室内に漂っている。
「ちょっと座って待っていて。あなたも飲むでしょ?」
そう話しかけてきた声はいつも通りに思えたが、少し空元気のような気もした。
数分後に二人分のカップを持ってきた彼女から一つを受け取って、口をつける。
その美味しさに思わず目を見張ったが、感想は言わなかった。
「ジェイデンを解任すると言って部屋から追い出したらしいな。勝手なことをするな。君にその権限はない」
「…私を警護するのは彼じゃなくてもいいでしょ?もう人の気配がどうのなんて我儘は言わないから、彼を他の人と交代させて」
「それは無理だ。以前にも伝えたが、彼以外に適任はいない。何故急にそんなことを言い出すんだ?」
「彼、息が臭くて」
ゼルキオンは口に含んだコーヒーを吹き出しそうになった。
真面目な顔をして言っているが彼には出任せだとわかっていた。
どんな理由だと突っ込みを入れたくなる。
「我慢していたけど耐えられなくて」
「何ヶ月も一緒にいて今更じゃないのか?」
「気になりだすと止まらなくなってしまったのよ。なんとかならない?」
「君の気持ちはわかったが、無理だ。諦めてくれ」
キッパリと言い切ったその時、通信用のスピーカーから若い男の声が聞こえてきた。
〈殿下、どちらにいらっしゃいますか?し、至急司令室までお願いします〉
落ち着いて話しているように聞こえたが、声色にどこか焦りが混じっているように感じた。
「緊張しているみたいね」
メイリスが指摘すると、彼はやれやれと言ったふうに溜息を吐いた。
「君もそう感じたか。落ち着いて行動しろと言っているんだがな…」
「新人なの?」
「春で2年目だ。良い経験になるかと思って何人か派遣させたんだが、任に就かせるにはまだ早かったかも知れないな」
「……」
熱々のコーヒーを律儀に飲み干したゼルキオンが立ち上がる。
何やら思案顔をするメイリスに嫌な予感を覚えたが、気にしないことにした。
「私はもう行くが、ジェイデンは警護に戻らせる。反省しているようだから優しい言葉でもかけて…」
「ゼルキオン。今の新人がいいわ」
「なに?」
意外そうな顔で聞き返したが、内心では予想が的中したと脱力感を覚えていた。
「彼を私の警護につけて。ジェイデンと入れ替えで」
「ダメだ。君を任せるには明らかに経験が足りない」
「経験は作るものよ」
「正論だが、理想論だ。彼ではブレインに到底敵わない」
「太刀打ちできるように私が鍛えるわ。今すぐが無理なら見習いから始めるのはどう?1日数時間でもいいから来てもらって、慣れたら交代させる。あなたが教育する手間も省けるし、結構いい案じゃない?」
「……」
一歩も引かないメイリスの瞳を見つめて、ゼルキオンは諦めたように息を吐いた。
こうなった彼女に正面からぶつかり合っても時間の無駄だとわかっていた。
「…そうまでするほどジェイデンが嫌なのか」
「嫌ね」
「口を濯がせてもダメか?」
「女性は臭いに敏感なのよ。きっと初めから相性が良くなかったの」
「……わかった。見習いからな」
ゼルキオンは譲歩したように装って返事をした。
メイリスは言質を取ったと言わんばかりの顔をしたが、ジェイデンの続投を認めさせられたことにはまだ気が付いていなかった。
彼が部屋を出ると、扉の傍でゲイルが待機していた。
(あとは上手くやってくれ)
(ありがとうございます)
視線だけで会話を交わすと、ゼルキオンは呼び出しに応じて司令室へと戻っていく。
彼と入れ替わるようにして部屋へ入ると、彼女はさっきの今で気まずそうにしながらも自ら声をかけてきた。
「我儘な主人に仕えさせられて、あなたも災難だと思っているわよね」
(話も聞かずに一方的に追い出してごめんなさいって言いたいんだな)
表情を崩さないようにしながら、ゲイルはメイリス語を翻訳する。
「でも安心して。もう添い寝は頼まないし、後任が育つまでの辛抱だから」
(そんな日は来ないんだよ、メイス。殿下は見習いにするって言っただけだ。そういうとこかわいいんだよな…)
彼女が指名した新人がジェイデンの後任になることは永遠にない。
上官のゼルキオンにその気がないし、仮に実力が認められるまでに成長できたとしてもその頃にはとっくに帰還しているだろう。
「近々候補の子が来るわ。引継ぐことは少ないだろうけど、よろしくね」
(引き継ぎ…ね。俺が他の男にお前の世話をさせるわけないだろ。適当に仕事作るか)
ゲイルは僅かな間の後、声の出せない"ジェイデン"の反応を待っていたメイリスに言葉を綴った。
《あなたの警護に戻れて嬉しいです》
《先程のキスは忘れません》
《添い寝も続けます》
彼女は大きく目を見開き、数回瞬きをした後、抗議するように彼を睨みつけた。
その瞳は羞恥に潤んで、心なしか頬も赤い。
(これからお前を本気で口説くから。覚悟しろよメイリス)
他人の心の内など読めない彼女は、その筆跡に隠された真意に気付かずにふいと顔を背けた。
ジェイデンが出戻った数日後、メイリスが希望した通り後任候補の新人がやってきた。
名前はレイナート・レザントといい、なんとあのステイシアの甥だった。
少年のような面立ちをした彼は、羨ましいほど真っ直ぐなプラチナブロンドをさらりと揺らして挨拶した。
「ほ、本日よりこちらの塔で毎日数時間、研鑽を重ねるようにと命じられました!ご指導よろしくお願いいたしますっ」
(…そんな話だったかしら?)
確かにブレインに太刀打ちできるように鍛えるとは言ったが、本来の目的はジェイデンの後任を育てるためだったはずだ。
何か腑に落ちないものを感じたが、彼に説明を求めても混乱させるだけのような気がしたので後でゼルキオンを問い詰めることにする。
「こちらこそよろしくね、レイナート。私はあなたをどこに出しても恥ずかしくないマギウスに育てるわ」
メイリスは自信ありげに口元に弧を描いた。
それを聞いていたゲイルは「花嫁修業でもする気か?」と突っ込みを入れたが、当然声には出さなかった。
レイナートは彼女の色香に当てられてほんのりと頬を朱に染めた。
「その他の詳しいことはジェイデンに聞いて。彼は話すことができないから、筆談になるけれど」
続けられた言葉にはっと我に返った彼は、いつもの調子で「了解しました!」と元気よく返事をする。
無邪気な若さを見せるレイナートが微笑ましく思えたメイリスは、目を細めて笑みを深めた。
その表情に見惚れたレイナートは、間の抜けた顔でメイリスを見つめる。
化け物が棲んでいると噂されていた場所には美しい女神がいたのだと、感動すら覚えていた。
彼は今が勤務中であることも、すぐ傍にジェイデンの存在があることも一時忘れてしまっているようだった。
(天然でやってるとこがお前の良いところでもあるけど、たまに面白くないんだよな…)
メイリスを崇拝していたユーフェミアやいつか偶然出くわした後輩達の反応を思い出した彼は、仮面の下から呆れたような視線を送る。
その夜、彼は痛みで気をやったメイリスをキスで起こした。
労るように顔中に唇を落としていると、しばらくして違和感に気付いた彼女がハッと目を見開く。
「?!…あなた今なにして…」
《今夜は冷えるのでこのまま眠ると風邪を引きます》
《シャワーを浴びて下さい》
《必要なら手伝います》
「……」
抗議の声が上がる前に何食わぬ顔でスケッチブックを掲げると、彼女はジェイデンに非難の目を向けたが否とは言わなかった。
バスルームまで横抱きにして運ぶと、「あとは結構」と言わんばかりにドアの外に締め出される。
その時のメイリスの不服そうな顔が可愛くて、彼は手のひらで口元を押さえた。
他人には本心を見せたがらない彼女からあの頃のように素直な感情をぶつけてもらえることが幸せで、愛おしくさに緩む頬を抑えられない。
ゲイルがバスルームの前で悶絶している中、メイリスは言われた通りに汗を流しながら悶々としていた。
彼女は無害な忠犬から狼に豹変したジェイデンに困惑を隠せずにいた。
(あんなことがあったのにどうして平然としていられるの?それにさっきまたキス…したわよね?境界線を越えるなって警告したのに…どういうつもり?やっぱり何を考えているのかわからない男だわ…早くレイナートを一人前にしないと)
熱めのお湯を頭からかぶりながら、彼女は使命感を燃やした。
境界線を意識しているにもかかわらず彼とのキスを嫌がらない理由も、彼をまた追い出そうと思わない気持ちの変化にも、彼女自身はまだ気が付いていなかった。
季節は冬に移り変わり、しんしんと降る雪で窓の外はどこもかしこも白くなっていた。
連日の寒さに比例するように隣国の勢いもなくなり、メイリスの計画は順調に進んでいた。
職務の傍らレイナートを教育するは思いのほか楽しく、気晴らしにもなった。
彼は多少不器用なところはあるが素直で前向きなので、メイリスの話を真剣に聞いてくれた。
「私が教えるのは学校で習ってきた基本的な魔法よ。復習と思ってくれていいわ。地味で面白みがないと思うでしょうけど、どんなに難しい魔法も元を辿れば基本の応用なの。それがわかっていれば、どんな相手でもそれなりに対処できるようになるわ」
「はいっ」
「敵の性格を見極めるのも大切ね。特に自己顕示欲の強いナルシストのマギウスは、複雑でマイナーな魔法ばかりを使いたがる傾向があるの。でもただ単に見たことのない魔法陣だというだけで、慌てる必要はないわ。どんな魔法陣にも必ずベースがあるから、各系統の基礎形状さえ抑えておけばなんとかなるものよ」
「なるほど…」
「だからできるだけ早く覚えて欲しいの。3日後に簡単なテストをするから、それまでには覚えてきてね」
「3日?!そんなに早く全部は覚えられません!せめて一週間はいただきたいです…!」
涙目で訴えてくるレイナートは必死な顔をしていた。
言われてみれば彼にも他に仕事があるし、急ぎすぎてしまったかも知れない。
「仕方ないわね…それじゃあ10日あげるから、完璧に覚えてきてね」
「かんぺき…」
呆然とした様子でオウム返しをする彼に、メイリスは弟ができたような気持ちになってその頭を撫でた。
後任の育成は順調に思われたが、その分なぜか先任のスキンシップに悩まされることになった。
さり気なく腕や背中に触れてきたり、レイナートの見えないところで体を寄せたりしてくるので困ってしまう。
「…あの子に嫉妬してるの?」
用を足した後にパウダールームで手を洗っていると、背後からぬっと現れた彼が触れるか触れないかのギリギリまで迫ってきた。
リビングにはメイリスが作成した教材を前にうんうん唸っているレイナートがいると思うと落ち着かない。
まさかと思いつつ鏡越しに聞いてみると、返ってきたのは潔い肯定だった。
鏡に映った文字を理解するまでに数秒の時間がかかった。
《そうです》
《彼に嫉妬しました》
《誑かすのは私だけにしてください》
「たぶらかす?何を言っ…あっ?!はなして…!」
いきなり背後から抱きしめられたかと思うと、項に柔らかいものが触れた。
それがジェイデンの唇だとわかって、鼓動が一気に飛び跳ねる。
全身を巡る血液が沸騰したように熱くなり、肌が紅潮していく。
離すまいと締め付けてくる腕の力が心地良いと感じてしまって振りほどけない。
「ゃ…ジェイデン…っ」
抗議の声は彼を思い留まらせるには至らず、メイリスは長い指で口を塞がれた。
首筋にちゅっちゅっと唇を落とされて、くすぐったさにぶるぶると体が震える。
これから何をされるのかと不安と期待に胸を高鳴せた時、彼はメイリスを解放した。
呆気に取られて振り返ると、彼は何事もなかったかのように床に落ちたスケッチブックを拾って、パウダールームを出ていく。
メイリスの体には発散のしようもない熱だけが残された。
貞操の危機を覚えたメイリスだったが、添い寝をしている間はただ寄り添って眠るだけで手を出してはこない。
寝ている時にキスをされたのもあの一度だけで、したい素振りも見せない。
(なんなの…?彼が何をしたいのか全然わからない…。ただ性欲を発散したいだけ?でも嫉妬したって言っていたし…単にムラムラしただけならわざわざ嫉妬したなんて言う必要はないわよね。でもまって…それを触る口実にしたってこともあるかも…)
メイリスは気が付けばジェイデンのことばかり考えるようになっていた。
好きだと言われたことはないが、そう思わせる行動やなんとなくの雰囲気で好意が伝わってくるので、彼の気持ちが気になって仕方がない。
それが彼の戦略とも知らず、彼女はうとうとしながら、眠る直前まで白か黒かを推測した。
ブレインの干渉で疲労が蓄積していたこともあり、彼女はすぐに眠りに落ちた。
そうしてついにゲイルが密かに待ち望んでいた時がきた。
静かに寝息を立てていたメイリスが突然むくりと起き上がり、夢遊病のように部屋の中を歩き始める。
焦点の合わない瞳を見て、ブレインに意識を操作されているのだとすぐに気付いた。
(同じことをやってみろ。今度は思い通りにさせないからな…)
メイリスは歩きながらゆっくりと服を脱ぎ捨て、ソファに座った時には何も纏っていなかった。
しばらく自分の体を眺めていた彼女は、下ろしていた手をおもむろに持ち上げる。
自分の大きな胸をたゆたゆと掬い上げた後、片方の手指で硬くなった蕾に触れ、もう片方を秘部に移動させた。
ゲイルは彼女が快感を覚える前に、その白い手を掴んで制止した。
両手首を背もたれに縫い止めると、抵抗するように彼女の体がもぞもぞと揺れた。
(メイス…勝手にごめんな。でもこれ以上お前をブレインの好きにさせたくないんだ)
魔法陣を展開して手の自由を奪うと、彼女の代わりに自分の指を肌に這わせる。
むずかるような声が上がったが、陰部は乾いたままだった。
唇を塞ぎ、上を向かせるように深く重ね合わせて唾液を流し込む。
少し苦しげに鼻から息を吸う度に、彼女の小さな喉が上下に動いた。
乳房を弱い力で揉み込んで感触を楽しみ、乳首を指で挟んで捏ね回した。
すると間もなく準備ができたと言わんばかりにとろりとした液体が指先に纏わり付くのを感じて、ゲイルはごくりと喉を鳴らした。
優しく入口を撫でてから中に突き入れると、メイリスの背中がソファの背もたれから浮き上がった。
(せま…初めての時みたいだ。お前あれから誰ともしてないのか?嬉しすぎて加減誤りそう…)
ゲイルは喜びに顔を綻ばせると、そのまま口付けながら愛撫を再開する。
彼女のイイところは熟知していた。
メイリスの意識を操っていたブレインはその時、漠然としていた第三者の存在を確信した。
ここ数週間かけて痛みを与え続けて疲弊させたおかげで、彼は久しぶりにメイリスの意識を奪うことができた。
初めのうちはゲイルとミーアの幻覚を見せていれば比較的簡単に隙ができていたのに、今ではそうもいかないのがもどかしい。
メイリスの意識を乗っ取ったブレインは彼女自身の手を借りて愛撫をし、欲して止まない体を火照らせて愉しんでいた。
口を使えないのがもどかしいが、それでも自分の性技で彼女が身悶える姿や声を聞くとたまらなく興奮した。
そんな彼の歪んだ遊びを何者かが邪魔してきた。
仮面をつけた男がメイリスの唇を奪い、体を弄んでいる。
彼女は上体を大きくしならせ、過去に自分がした時よりも艷やかな声を上げて啼いた。
(君は誰だ?!俺のメイリスに何をしてる?!このままじゃ危ない…起きて抵抗するんだ!メイリス!!)
ブレインが操作できるのは肉体だけで、彼女に代わって魔法を使うことはできない。
二人の関係を知らない彼は魔力の接続を切り、メイリスが仮面の男から逃げ切ることを祈った。
全身に灼けるような嫉妬と激しい焦燥感を覚えた彼はメイリスの元に駆け付けようと方法を探ったが、前回から強度を増した防犯魔法のせいで侵入は限りなく困難になっていた。
為す術のない状況に、ブレインは室内で滅茶苦茶に魔法を放って暴れた。
カッタルタの基地内で爆発が起き、炎と黒煙が上がった。
ブレインからの支配が解かれるのと、メイリスが達したのはほとんど同時だった。
ゲイルの巧みな舌と指使いで絶頂に導かれた彼女は、ぴしゃぴしゃと潮を吹きながら全身を強張らせた。
「ひあぁっ…ン、ン、アアァッ…!」
食いちぎられそうなほど締めつけてくる蜜壷から指を引き抜くと、彼の手のひらに溜まっていた愛液がとろりと流れ落ちた。
絶頂の気配を感じてキスを止めたゲイルは、その表情を間近で見つめながら唾液で濡れた口元を手の甲で拭った。
ふとメイリスの目が正気に戻っていることに気が付いて拘束を解除し距離を取ると、彼女はくたりとソファに横たわった。
僅かに呼吸を乱し、恍惚とゲイルを見つめる視線に理性がぐらつく。
興奮していることを悟られたくなくて、顔を背けることで劣情を抑え込んだ。
「私またブレインに操られたのね…」
ぽそりと呟いた彼女は溜め息を零し、頬に睫毛の影を落とした。
目は虚ろなままだったが、過去に自分が何をされてきたのか察しているような顔付きだった。
「ところであなたはなぜそんなところにいるの…?」
気怠そうに尋ねられたゲイルは、罵倒を覚悟していただけに呆気に取られてしまった。
どうやら先程までジェイデンにされていたことには気付いていないらしかった。
緊張を解いてメイリスに歩み寄り、ソファに畳んで置いていたひざ掛けを広げて体にかけてやる。
落ち込む彼女の傍に膝をついて、乱れた髪を優しく撫ですいた。
初めは心地よさそうにされるがままになっていた彼女は、ふと何かに気が付いたように顔を上げた。
何を言われるのかと身構えると、メイリスの口からとんでもない言葉が飛び出した。
「それ…手伝ってあげましょうか?」
彼女が一瞥した先には、彼の股間を押し上げる不自然な膨らみがあった。
部屋に入ると、彼女はキッチンでコーヒーを淹れていた。
ナッツを炒った時のような芳ばしい香りが室内に漂っている。
「ちょっと座って待っていて。あなたも飲むでしょ?」
そう話しかけてきた声はいつも通りに思えたが、少し空元気のような気もした。
数分後に二人分のカップを持ってきた彼女から一つを受け取って、口をつける。
その美味しさに思わず目を見張ったが、感想は言わなかった。
「ジェイデンを解任すると言って部屋から追い出したらしいな。勝手なことをするな。君にその権限はない」
「…私を警護するのは彼じゃなくてもいいでしょ?もう人の気配がどうのなんて我儘は言わないから、彼を他の人と交代させて」
「それは無理だ。以前にも伝えたが、彼以外に適任はいない。何故急にそんなことを言い出すんだ?」
「彼、息が臭くて」
ゼルキオンは口に含んだコーヒーを吹き出しそうになった。
真面目な顔をして言っているが彼には出任せだとわかっていた。
どんな理由だと突っ込みを入れたくなる。
「我慢していたけど耐えられなくて」
「何ヶ月も一緒にいて今更じゃないのか?」
「気になりだすと止まらなくなってしまったのよ。なんとかならない?」
「君の気持ちはわかったが、無理だ。諦めてくれ」
キッパリと言い切ったその時、通信用のスピーカーから若い男の声が聞こえてきた。
〈殿下、どちらにいらっしゃいますか?し、至急司令室までお願いします〉
落ち着いて話しているように聞こえたが、声色にどこか焦りが混じっているように感じた。
「緊張しているみたいね」
メイリスが指摘すると、彼はやれやれと言ったふうに溜息を吐いた。
「君もそう感じたか。落ち着いて行動しろと言っているんだがな…」
「新人なの?」
「春で2年目だ。良い経験になるかと思って何人か派遣させたんだが、任に就かせるにはまだ早かったかも知れないな」
「……」
熱々のコーヒーを律儀に飲み干したゼルキオンが立ち上がる。
何やら思案顔をするメイリスに嫌な予感を覚えたが、気にしないことにした。
「私はもう行くが、ジェイデンは警護に戻らせる。反省しているようだから優しい言葉でもかけて…」
「ゼルキオン。今の新人がいいわ」
「なに?」
意外そうな顔で聞き返したが、内心では予想が的中したと脱力感を覚えていた。
「彼を私の警護につけて。ジェイデンと入れ替えで」
「ダメだ。君を任せるには明らかに経験が足りない」
「経験は作るものよ」
「正論だが、理想論だ。彼ではブレインに到底敵わない」
「太刀打ちできるように私が鍛えるわ。今すぐが無理なら見習いから始めるのはどう?1日数時間でもいいから来てもらって、慣れたら交代させる。あなたが教育する手間も省けるし、結構いい案じゃない?」
「……」
一歩も引かないメイリスの瞳を見つめて、ゼルキオンは諦めたように息を吐いた。
こうなった彼女に正面からぶつかり合っても時間の無駄だとわかっていた。
「…そうまでするほどジェイデンが嫌なのか」
「嫌ね」
「口を濯がせてもダメか?」
「女性は臭いに敏感なのよ。きっと初めから相性が良くなかったの」
「……わかった。見習いからな」
ゼルキオンは譲歩したように装って返事をした。
メイリスは言質を取ったと言わんばかりの顔をしたが、ジェイデンの続投を認めさせられたことにはまだ気が付いていなかった。
彼が部屋を出ると、扉の傍でゲイルが待機していた。
(あとは上手くやってくれ)
(ありがとうございます)
視線だけで会話を交わすと、ゼルキオンは呼び出しに応じて司令室へと戻っていく。
彼と入れ替わるようにして部屋へ入ると、彼女はさっきの今で気まずそうにしながらも自ら声をかけてきた。
「我儘な主人に仕えさせられて、あなたも災難だと思っているわよね」
(話も聞かずに一方的に追い出してごめんなさいって言いたいんだな)
表情を崩さないようにしながら、ゲイルはメイリス語を翻訳する。
「でも安心して。もう添い寝は頼まないし、後任が育つまでの辛抱だから」
(そんな日は来ないんだよ、メイス。殿下は見習いにするって言っただけだ。そういうとこかわいいんだよな…)
彼女が指名した新人がジェイデンの後任になることは永遠にない。
上官のゼルキオンにその気がないし、仮に実力が認められるまでに成長できたとしてもその頃にはとっくに帰還しているだろう。
「近々候補の子が来るわ。引継ぐことは少ないだろうけど、よろしくね」
(引き継ぎ…ね。俺が他の男にお前の世話をさせるわけないだろ。適当に仕事作るか)
ゲイルは僅かな間の後、声の出せない"ジェイデン"の反応を待っていたメイリスに言葉を綴った。
《あなたの警護に戻れて嬉しいです》
《先程のキスは忘れません》
《添い寝も続けます》
彼女は大きく目を見開き、数回瞬きをした後、抗議するように彼を睨みつけた。
その瞳は羞恥に潤んで、心なしか頬も赤い。
(これからお前を本気で口説くから。覚悟しろよメイリス)
他人の心の内など読めない彼女は、その筆跡に隠された真意に気付かずにふいと顔を背けた。
ジェイデンが出戻った数日後、メイリスが希望した通り後任候補の新人がやってきた。
名前はレイナート・レザントといい、なんとあのステイシアの甥だった。
少年のような面立ちをした彼は、羨ましいほど真っ直ぐなプラチナブロンドをさらりと揺らして挨拶した。
「ほ、本日よりこちらの塔で毎日数時間、研鑽を重ねるようにと命じられました!ご指導よろしくお願いいたしますっ」
(…そんな話だったかしら?)
確かにブレインに太刀打ちできるように鍛えるとは言ったが、本来の目的はジェイデンの後任を育てるためだったはずだ。
何か腑に落ちないものを感じたが、彼に説明を求めても混乱させるだけのような気がしたので後でゼルキオンを問い詰めることにする。
「こちらこそよろしくね、レイナート。私はあなたをどこに出しても恥ずかしくないマギウスに育てるわ」
メイリスは自信ありげに口元に弧を描いた。
それを聞いていたゲイルは「花嫁修業でもする気か?」と突っ込みを入れたが、当然声には出さなかった。
レイナートは彼女の色香に当てられてほんのりと頬を朱に染めた。
「その他の詳しいことはジェイデンに聞いて。彼は話すことができないから、筆談になるけれど」
続けられた言葉にはっと我に返った彼は、いつもの調子で「了解しました!」と元気よく返事をする。
無邪気な若さを見せるレイナートが微笑ましく思えたメイリスは、目を細めて笑みを深めた。
その表情に見惚れたレイナートは、間の抜けた顔でメイリスを見つめる。
化け物が棲んでいると噂されていた場所には美しい女神がいたのだと、感動すら覚えていた。
彼は今が勤務中であることも、すぐ傍にジェイデンの存在があることも一時忘れてしまっているようだった。
(天然でやってるとこがお前の良いところでもあるけど、たまに面白くないんだよな…)
メイリスを崇拝していたユーフェミアやいつか偶然出くわした後輩達の反応を思い出した彼は、仮面の下から呆れたような視線を送る。
その夜、彼は痛みで気をやったメイリスをキスで起こした。
労るように顔中に唇を落としていると、しばらくして違和感に気付いた彼女がハッと目を見開く。
「?!…あなた今なにして…」
《今夜は冷えるのでこのまま眠ると風邪を引きます》
《シャワーを浴びて下さい》
《必要なら手伝います》
「……」
抗議の声が上がる前に何食わぬ顔でスケッチブックを掲げると、彼女はジェイデンに非難の目を向けたが否とは言わなかった。
バスルームまで横抱きにして運ぶと、「あとは結構」と言わんばかりにドアの外に締め出される。
その時のメイリスの不服そうな顔が可愛くて、彼は手のひらで口元を押さえた。
他人には本心を見せたがらない彼女からあの頃のように素直な感情をぶつけてもらえることが幸せで、愛おしくさに緩む頬を抑えられない。
ゲイルがバスルームの前で悶絶している中、メイリスは言われた通りに汗を流しながら悶々としていた。
彼女は無害な忠犬から狼に豹変したジェイデンに困惑を隠せずにいた。
(あんなことがあったのにどうして平然としていられるの?それにさっきまたキス…したわよね?境界線を越えるなって警告したのに…どういうつもり?やっぱり何を考えているのかわからない男だわ…早くレイナートを一人前にしないと)
熱めのお湯を頭からかぶりながら、彼女は使命感を燃やした。
境界線を意識しているにもかかわらず彼とのキスを嫌がらない理由も、彼をまた追い出そうと思わない気持ちの変化にも、彼女自身はまだ気が付いていなかった。
季節は冬に移り変わり、しんしんと降る雪で窓の外はどこもかしこも白くなっていた。
連日の寒さに比例するように隣国の勢いもなくなり、メイリスの計画は順調に進んでいた。
職務の傍らレイナートを教育するは思いのほか楽しく、気晴らしにもなった。
彼は多少不器用なところはあるが素直で前向きなので、メイリスの話を真剣に聞いてくれた。
「私が教えるのは学校で習ってきた基本的な魔法よ。復習と思ってくれていいわ。地味で面白みがないと思うでしょうけど、どんなに難しい魔法も元を辿れば基本の応用なの。それがわかっていれば、どんな相手でもそれなりに対処できるようになるわ」
「はいっ」
「敵の性格を見極めるのも大切ね。特に自己顕示欲の強いナルシストのマギウスは、複雑でマイナーな魔法ばかりを使いたがる傾向があるの。でもただ単に見たことのない魔法陣だというだけで、慌てる必要はないわ。どんな魔法陣にも必ずベースがあるから、各系統の基礎形状さえ抑えておけばなんとかなるものよ」
「なるほど…」
「だからできるだけ早く覚えて欲しいの。3日後に簡単なテストをするから、それまでには覚えてきてね」
「3日?!そんなに早く全部は覚えられません!せめて一週間はいただきたいです…!」
涙目で訴えてくるレイナートは必死な顔をしていた。
言われてみれば彼にも他に仕事があるし、急ぎすぎてしまったかも知れない。
「仕方ないわね…それじゃあ10日あげるから、完璧に覚えてきてね」
「かんぺき…」
呆然とした様子でオウム返しをする彼に、メイリスは弟ができたような気持ちになってその頭を撫でた。
後任の育成は順調に思われたが、その分なぜか先任のスキンシップに悩まされることになった。
さり気なく腕や背中に触れてきたり、レイナートの見えないところで体を寄せたりしてくるので困ってしまう。
「…あの子に嫉妬してるの?」
用を足した後にパウダールームで手を洗っていると、背後からぬっと現れた彼が触れるか触れないかのギリギリまで迫ってきた。
リビングにはメイリスが作成した教材を前にうんうん唸っているレイナートがいると思うと落ち着かない。
まさかと思いつつ鏡越しに聞いてみると、返ってきたのは潔い肯定だった。
鏡に映った文字を理解するまでに数秒の時間がかかった。
《そうです》
《彼に嫉妬しました》
《誑かすのは私だけにしてください》
「たぶらかす?何を言っ…あっ?!はなして…!」
いきなり背後から抱きしめられたかと思うと、項に柔らかいものが触れた。
それがジェイデンの唇だとわかって、鼓動が一気に飛び跳ねる。
全身を巡る血液が沸騰したように熱くなり、肌が紅潮していく。
離すまいと締め付けてくる腕の力が心地良いと感じてしまって振りほどけない。
「ゃ…ジェイデン…っ」
抗議の声は彼を思い留まらせるには至らず、メイリスは長い指で口を塞がれた。
首筋にちゅっちゅっと唇を落とされて、くすぐったさにぶるぶると体が震える。
これから何をされるのかと不安と期待に胸を高鳴せた時、彼はメイリスを解放した。
呆気に取られて振り返ると、彼は何事もなかったかのように床に落ちたスケッチブックを拾って、パウダールームを出ていく。
メイリスの体には発散のしようもない熱だけが残された。
貞操の危機を覚えたメイリスだったが、添い寝をしている間はただ寄り添って眠るだけで手を出してはこない。
寝ている時にキスをされたのもあの一度だけで、したい素振りも見せない。
(なんなの…?彼が何をしたいのか全然わからない…。ただ性欲を発散したいだけ?でも嫉妬したって言っていたし…単にムラムラしただけならわざわざ嫉妬したなんて言う必要はないわよね。でもまって…それを触る口実にしたってこともあるかも…)
メイリスは気が付けばジェイデンのことばかり考えるようになっていた。
好きだと言われたことはないが、そう思わせる行動やなんとなくの雰囲気で好意が伝わってくるので、彼の気持ちが気になって仕方がない。
それが彼の戦略とも知らず、彼女はうとうとしながら、眠る直前まで白か黒かを推測した。
ブレインの干渉で疲労が蓄積していたこともあり、彼女はすぐに眠りに落ちた。
そうしてついにゲイルが密かに待ち望んでいた時がきた。
静かに寝息を立てていたメイリスが突然むくりと起き上がり、夢遊病のように部屋の中を歩き始める。
焦点の合わない瞳を見て、ブレインに意識を操作されているのだとすぐに気付いた。
(同じことをやってみろ。今度は思い通りにさせないからな…)
メイリスは歩きながらゆっくりと服を脱ぎ捨て、ソファに座った時には何も纏っていなかった。
しばらく自分の体を眺めていた彼女は、下ろしていた手をおもむろに持ち上げる。
自分の大きな胸をたゆたゆと掬い上げた後、片方の手指で硬くなった蕾に触れ、もう片方を秘部に移動させた。
ゲイルは彼女が快感を覚える前に、その白い手を掴んで制止した。
両手首を背もたれに縫い止めると、抵抗するように彼女の体がもぞもぞと揺れた。
(メイス…勝手にごめんな。でもこれ以上お前をブレインの好きにさせたくないんだ)
魔法陣を展開して手の自由を奪うと、彼女の代わりに自分の指を肌に這わせる。
むずかるような声が上がったが、陰部は乾いたままだった。
唇を塞ぎ、上を向かせるように深く重ね合わせて唾液を流し込む。
少し苦しげに鼻から息を吸う度に、彼女の小さな喉が上下に動いた。
乳房を弱い力で揉み込んで感触を楽しみ、乳首を指で挟んで捏ね回した。
すると間もなく準備ができたと言わんばかりにとろりとした液体が指先に纏わり付くのを感じて、ゲイルはごくりと喉を鳴らした。
優しく入口を撫でてから中に突き入れると、メイリスの背中がソファの背もたれから浮き上がった。
(せま…初めての時みたいだ。お前あれから誰ともしてないのか?嬉しすぎて加減誤りそう…)
ゲイルは喜びに顔を綻ばせると、そのまま口付けながら愛撫を再開する。
彼女のイイところは熟知していた。
メイリスの意識を操っていたブレインはその時、漠然としていた第三者の存在を確信した。
ここ数週間かけて痛みを与え続けて疲弊させたおかげで、彼は久しぶりにメイリスの意識を奪うことができた。
初めのうちはゲイルとミーアの幻覚を見せていれば比較的簡単に隙ができていたのに、今ではそうもいかないのがもどかしい。
メイリスの意識を乗っ取ったブレインは彼女自身の手を借りて愛撫をし、欲して止まない体を火照らせて愉しんでいた。
口を使えないのがもどかしいが、それでも自分の性技で彼女が身悶える姿や声を聞くとたまらなく興奮した。
そんな彼の歪んだ遊びを何者かが邪魔してきた。
仮面をつけた男がメイリスの唇を奪い、体を弄んでいる。
彼女は上体を大きくしならせ、過去に自分がした時よりも艷やかな声を上げて啼いた。
(君は誰だ?!俺のメイリスに何をしてる?!このままじゃ危ない…起きて抵抗するんだ!メイリス!!)
ブレインが操作できるのは肉体だけで、彼女に代わって魔法を使うことはできない。
二人の関係を知らない彼は魔力の接続を切り、メイリスが仮面の男から逃げ切ることを祈った。
全身に灼けるような嫉妬と激しい焦燥感を覚えた彼はメイリスの元に駆け付けようと方法を探ったが、前回から強度を増した防犯魔法のせいで侵入は限りなく困難になっていた。
為す術のない状況に、ブレインは室内で滅茶苦茶に魔法を放って暴れた。
カッタルタの基地内で爆発が起き、炎と黒煙が上がった。
ブレインからの支配が解かれるのと、メイリスが達したのはほとんど同時だった。
ゲイルの巧みな舌と指使いで絶頂に導かれた彼女は、ぴしゃぴしゃと潮を吹きながら全身を強張らせた。
「ひあぁっ…ン、ン、アアァッ…!」
食いちぎられそうなほど締めつけてくる蜜壷から指を引き抜くと、彼の手のひらに溜まっていた愛液がとろりと流れ落ちた。
絶頂の気配を感じてキスを止めたゲイルは、その表情を間近で見つめながら唾液で濡れた口元を手の甲で拭った。
ふとメイリスの目が正気に戻っていることに気が付いて拘束を解除し距離を取ると、彼女はくたりとソファに横たわった。
僅かに呼吸を乱し、恍惚とゲイルを見つめる視線に理性がぐらつく。
興奮していることを悟られたくなくて、顔を背けることで劣情を抑え込んだ。
「私またブレインに操られたのね…」
ぽそりと呟いた彼女は溜め息を零し、頬に睫毛の影を落とした。
目は虚ろなままだったが、過去に自分が何をされてきたのか察しているような顔付きだった。
「ところであなたはなぜそんなところにいるの…?」
気怠そうに尋ねられたゲイルは、罵倒を覚悟していただけに呆気に取られてしまった。
どうやら先程までジェイデンにされていたことには気付いていないらしかった。
緊張を解いてメイリスに歩み寄り、ソファに畳んで置いていたひざ掛けを広げて体にかけてやる。
落ち込む彼女の傍に膝をついて、乱れた髪を優しく撫ですいた。
初めは心地よさそうにされるがままになっていた彼女は、ふと何かに気が付いたように顔を上げた。
何を言われるのかと身構えると、メイリスの口からとんでもない言葉が飛び出した。
「それ…手伝ってあげましょうか?」
彼女が一瞥した先には、彼の股間を押し上げる不自然な膨らみがあった。
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