秘された王女はひたむきに愛を貫く~男友達だった幼馴染の執着愛~

水瀬 立乃

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第3章

これ以上はたえられない

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南の塔には1日2回、要塞の地下にある厨房で筋骨隆々のシェフが作った食事が届けられる。
メイリスの部屋の前には司令官室と繋がる転移魔法陣が設置されていて、基本的にゼルキオンが合間を見て持って来ることが多かった。
彼は特段用事がなくてもメイリスの様子を見がてら他愛もない話をして帰っていく。
今日は夜明け前に警告音が鳴り響き、メイリスが一仕事を終えた数時間後にやって来た。
彼は焼きたてのブールやスープの入ったバスケットをジェイデンに手渡すと、朝陽の当たるソファに遠慮なく腰かける。

「調子はどうだ?」
「見ての通りよ。あなたは?」
「私も変わりない。ジェイデンとは上手くやれているようだな」
「それはどうかしら?まだわからないわよ。彼に家族のことを聞いたんだけど、兄弟が多いみたいね?」
「ああ。確か姉か妹がいたと言っていた気がするな…」
「そう…」

メイリスは何気なくジェイデンの発言の真偽を確かめた。
少なくとも彼に女兄弟がいるというのは本当らしい。

「彼が気になるのか?」
「気になるってほどではないわ。でもどんな為人かは知っておきたいじゃない。彼は仕事でここにいるけど、私はプライベートを見せるわけだし」
「心配しなくてもあの男は無害だ。君が懸念するようなことは起こらない」
「それならいいけど…」
「安心しろ、彼は実直な男だ。君の性格を十分に考慮した上で人選した。彼以上の適任者はいないと思っている」

メイリスは少し意外だった。
ゼルキオンは何も考えずにジェイデンを連れてきたのではないらしい。
彼にここまで言わせる人物なら、もっと信用してもいいのかも知れないと彼女は思った。
そのジェイデンは自分の話をされているとも知らずに、ダイニングキッチンで食事のセッティングをしている。

「彼、警護員らしくないわよね。家政夫みたい」
「かっ…」

ゴホゴホとゼルキオンが咽た。
何かを言おうとして喉に何かが詰まったようだった。

「そう言われるのは彼も心外だろうな。君があまりにだらしないから見かねてやっているんじゃないのか?」
「だらしないとは何よ。それこそ心外だわ」
「監視していないとまともに食事も睡眠も取らないし、服も着ないだろ。どれだけ私に注意されてきたか覚えていないのか?」
「はいはい、あなたの小言は聞き飽きたわ」
「メイリス」

咎めるように名前を呼ばれて、メイリスは口を噤む。

「以前私が話した言葉を忘れるな。君の将来の暮らしは私が保障する」
「……」

メイリスは表情もなくゼルキオンを見つめ返した。
今の彼女には与えられた役割を果たすこと以外に目標がなく、どこか投げ遣りな気持ちでいた。
そのことがバレていたのだろうなと思ったが、彼女は取り繕うことすら面倒だと感じていた。
戦争が終わった後、自分が何をして生きていけばいいのか展望が見えない。
ブレインが繰り返し見せる悪夢は、少なからずメイリスから生きる気力を奪っていた。

メイリスは残り1/3になった防衛魔法の再構築を迅速に、着々と進めていた。
ジェイデンが用意した夜食のフルーツサンドをつまみながら、血を染み込ませたガラスペンに魔力を注ぎ込む。
冬に近づいて日が短くなってきたおかげでカッタルタからの攻撃が止む時間帯も早まり、メイリスの自由時間も増えた。
ゼルキオンは魔法陣を全て改新させるまでに後1年はかかると見積もっているようだが、彼女の計画では来年の春までには作業を完了させる予定でいた。
無期限の攻防戦に終わりが見えてきたことで、一日でも早くゼルキオンを宮殿に還してあげたいという気持ちがより強くなった。
先日末の息子が5歳の誕生日を迎えたと聞いた時、メイリスは驚いた。
経過した時間の分だけ髪も伸びているので現実なのだと理解したが、ずっと同じ場所にいて同じ作業をひたすらに繰り返してきたために時間感覚が麻痺してしまっていた。
長男も長女も、そしてクレアも、きっと彼に会いたくて焦がれているに違いない。

(私にはそういう人がいないからうっかりしていたわ。できるときにできるだけ早く進めないと…)

集中して作業をしていると、突然液晶画面と顔の間に白い紙が現れた。
メイリスは肩をびくつかせて、かじりつくように注目していた端末から視線を上げた。

《食べるか作業をするかどちらかでお願いします》

紙に書かれた文字を目にした途端、彼女は脱力した。
うんざりした顔をして傍らに立つ男を見上げる。
猫背になっていた背中を伸ばし、デスクチェアの背もたれに体重をかけた。

「…なによ、もう出てきたの?」

不満たらたらなメイリスに、彼はいつもの仏頂面を返した。
とはいってもこの男が口元を緩めたことなどこの数ヶ月で一度も見たことがない。
悪夢にうなされて泣いているところを見られてから、メイリスとジェイデンはお互いの要望を伝え合える程度には気安い関係になっていた。
警護対象が食べなかったフルーツとヨーグルトをわざわざアレンジして夜食を作り、警護対象よりも先にシャワーを浴びてきた男は、黒に近いダークブラウンの髪からぽたりと水滴を落とした。

「髪の毛、乾いていないわよ。乾かしてから出直してきて」

挑戦的に命令したが、ジェイデンは持っている紙を取り下げない。
抗戦の構えを見せてくる彼に、メイリスは諦めたように溜息を吐いた。

「はいはい、わかったわよ。そっちで食べればいいんでしょ?」

彼女が降参のポーズを取ると、彼はようやく紙をくしゃくしゃにしてゴミ箱に捨てた。
その足でパウダールームに戻って行く背中を見送って、メイリスもサンドイッチの乗った皿を持って立ち上がる。
異変が起きたのはその直後だった。
強烈な睡魔に襲われたメイリスは、頽れるように膝をついた。
ブレインが何度か干渉しようとしているのを意識の片隅で感じ取っていたのに、一瞬の気の緩みを突かれてしまった。
彼女の手から皿が滑り落ち、床の上で音を立てて踊る。
皿の上のものがどこかに飛んでいったが、それを気にしている余裕はなかった。

「う…ぅ…」

メイリスは絨毯の上を四つん這いで進みながら、必死に意識を保とうと抵抗した。
どうせ眠ってしまうのなら、せめてベッドまでは辿り着きたい。
ここの硬い床で眠ると翌日は一日中体の痛みに耐えることになるので、できればそれは避けたかった。
しかし彼女の小さな希望は虚しく破れた。
ジェイデンが近づいてくる足音を聞きながら、メイリスは夢の中に堕とされた。

その日見た夢は史上最悪の内容だった。
天蓋付きの豪奢なベッドがふたつあり、そのうちの一つでメイリスはブレインに組み敷かれていた。
強引に服を脱がされ、両手を拘束され、ブレインに肌を舐め回される。
その様子をもう一台のベッドからゲイルが見ているのだ。
彼はただ黙ってメイリスがブレインに抱かれているのを眺めているだけで、どんなに助けを求めても何もしようとはしてくれない。

「いやぁっ!やめて…!ゲイルっ!助けて!」
「無駄だよ、メイリス。ゲイルは君のことを何とも思っていないんだから。さあ諦めてこっちに集中して?いっぱい気持ちよくしてあげるからね」
「いやよ!ゲイルじゃなきゃ嫌!助けて!ゲイル…!」

メイリスは泣き叫びながら必死でゲイルに視線を向けるが、一度かち合ったと思うとすぐに逸らされてしまった。
見捨てられたのだとショックを受けている内に、彼はメイリスに背を向けた。
そしてベッドにやってきた下着姿のミーアを両腕で受け止めて、愛おし気に抱きしめ合う。

「ぁ……やめて…」
「うん、その気持ちは俺にもわかるよ。俺もゲイルに先を越されて同じ思いをしたからね。苦しいね、メイリス…でも俺がその悲しみを塗り替えてあげるから。諦めて俺と気持ちよくなろう?」

メイリスは両手を縛られたまま、鏡のようにミーアと同じ四つん這いの格好にさせられた。
好きでもない男に体を貫かれている横で、かつての恋人が他の女性と情熱的に交わっている。
二人の声と音が嫌でも耳に響いて、メイリスはぎゅっと目を固く閉じた。

(やめて…!これ以上はもう…たえられない……)

ブレインに後ろから揺さぶられながら、メイリスは唇を噛みしめて泣いた。
早くこの最低な行為が終わって欲しい。
ただひたすらに耐えていると、ふと頬に当たっているシーツにぬくもりを感じた。
その温かさが心地よくて、なぜただの布に温度があるのかと疑問を抱いたのと同時に意識が浮上した。
瞼を開けると、見覚えのある襟シャツが目の前にあった。
それは彼女が眠る前にジェイデンが着ていた色に似ていて、自分の顔があった場所に染みができていた。
顔を上げれば彼の仮面が目の前にあって、混乱して体を離せば浮遊する感覚の後で何かに前へと押し戻される。
どういう状況なのかわからず頭に疑問符を浮かべていると、自分の太ももの下に黒のスラックスが見えた。
自分がジェイデンの膝の上にいるのだと気が付いたメイリスは、文字通り飛び上がりそうになった。
どうやら夢を見ながら無意識にジェイデンの体に縋りついてしまっていたらしい。

「えっ?!あっ?!ごめんなさい…!」

メイリスは珍しく動揺して彼に謝った。
異性とこんなに密着したのはゲイル以外に経験がなく、どうしていいのかわからない。
すると彼はゆっくりとメイリスを抱き上げた。
慌てふためく彼女に表情を動かすこともなく、壊れものを扱うような手つきで座っていたベッドに横たえる。
驚いて見上げる彼女の肩を宥めるように叩くと、彼はいつかのようにそっとその場を離れていった。

(妹みたいに思っているのかしら…)

もしゲイルなら慌てるメイリスを見て「慌てすぎ」と笑っただろうし、ゼルキオンなら気を逸らそうと「意外に重かった」なんて皮肉を言ってきそうなのにと勝手な想像をする。
ジェイデンはそのどちらでもなく、二人の間に起こったことをなかったことにした。
肩を叩いた彼の手は幼い頃に育ての父親が抱き上げてくれた腕の安心感に似ていた。

ジェイデンの行動に呆気に取られてしまい、先程まで見ていた嫌な夢はどこかに吹き飛んでしまった。
頭をスッキリさせる為に熱いシャワーを浴びながら、彼女はある決心をする。
髪を乾かす時間も惜しく、乱暴にタオルで拭いて一纏めにすると、湯上りの飲み物を用意していたジェイデンに話があると声をかけた。

「度々迷惑をかけてしまってごめんなさいね」

リビングのソファに向かい合って腰を下ろす。
こうして彼と膝を突き合わせて話すのは初めてだった。
メイリスは何の前触れもなく、着ていたブラウスの胸元を開襟した。
風呂上がりのもちもちとして柔らかそうな胸の谷間が露わになって、ジェイデンがさっと顔を背ける。
その純真で紳士的な振る舞いにくすりと笑みが零れた。

「こっちを向いて、ジェイデン。見て欲しいものがあるのよ」
「……」
「ちょっと小さいけれど、左胸に魔法陣が刻まれているの。わかるかしら?」

おそるおそるといった様子でメイリスの胸に視線を注いだ彼は、数拍の間の後で静かに頷いた。

「犯人はブレインよ。位置探知と神経伝達系の魔法を組み合わせてあって、解除ができない。きっと防衛魔法と同じ原理で魔力に自分の血を混ぜたのね。ゼルキオンには話していないけど、ブレインは時々これで私を思い通りに操るの」
「……」
「意識があるうちは抵抗できるんだけど、眠らされた時が厄介で…。見たくもない夢を何度も見せられたり、たまに本当に体を操られることもあるわ。目が覚めたら服を脱いでいたとか…そんな程度だけれど」
「……」

それを聞いたジェイデンは何か思案をしているようだったが、ふと気が付いたようにスケッチブックに文字を書き始めた。

《情報操作をされることは?》

「それはないわ。埋め込まれそうにはなったけど、その前に無効化してやったから。他人の意識や感情を思い通りにしようだなんて下衆の極みよ。絶対に許せないわ」

ジェイデンは返事の代わりに唇を引き結んだ。
同じ意見だと言われた気がした。

「そういう事情だから、さっきみたいに眠っている間に何かおかしなことをするかも知れない。その時は止めてくれたら有難いわ。必要なら手荒にしてくれて構わないから」

《優しく止めます》

「ばかね…優しくなんてしてたら止めきれないでしょ?」

矛盾したことを真面目な顔で書いたのが可笑しかった。
メイリスは自分でも気が付かないほどごく自然に相好を崩した。


ジェイデンに左胸の魔法陣のことを打ち明けてから、メイリスはブレインの支配に以前より身構えなくなった。
しかし彼女の心境の変化とは相反して、夢を見せられる頻度は増えた。
ゲイルとミーアのベッドシーン上映に加えて、教会で華やかに結婚式を挙げるシーンも追加された。

「俺達の時はもっと盛大な結婚式になるよ。あの二人も招待してあげようね」
「招待状を出しても来てもらえるとは限らないわよ」
「ゲイルはともかく、彼女の方は行くって言うさ。俺達が幸せになったところを二人に見せてあげよう」
「……」

心底幸せそうに笑う新郎新婦を見て、メイリスは思いのほか悲しくない自分に気が付いた。
ゲイルには幸せになって欲しいと思っていたし、むしろ喜ばしいとさえ思った。
ミーアへの嫉妬心がないわけではないが、妬んだところで彼女に成り代わりたいとは思わない。
ゲイルにも名残惜しさを感じるより、思い出を懐かしく振り返られるようになってきた。
ようやく彼との別れを乗り越えられそうな予感を覚えて、メイリスは涙で濡れた目を細めて安堵の笑みを浮かべた。
これでもう二人を夢に見せられても心を乱されることがないと思うと、寂しさよりも解放感の方が大きかった。

(こんな気持ちになれたのは、彼のおかげね…)

失恋を癒やしてくれたのが異性の優しさであることに複雑な気持ちを覚えたが、それがジェイデンだと思うと言い様のない安心感があった。
恋愛感情を抱かない相手だからこそ良かったのかも知れない。

「フフ、やっと諦めがついてきた?」

彼女の表情の変化を目敏く見抜いたブレインが目を細める。
その笑顔を薄気味悪いと思いながら、彼女は言葉を返した。

「ええ。もうこの二人を見ても何とも思わないわ。だからこんなくだらないことはやめてもらえる?」
「やっと俺を好きになってくれたと思っていいのかな?」
「あなたを好きになることなんてないわよ。それこそ永遠にね」
「……」

メイリスが冷たく返すと、ブレインの顔から笑みが消えた。
寒気がするほど陰湿な瞳で見下ろされたが、彼女は真っ直ぐに視線を返した。

「…君をそんなふうにしたのは誰だ?」
「?」
「どうやらゆっくり構えすぎていたみたいだ。君が俺のものだって、もっとしっかりわからせてやらないといけないな…」

呟くように言うと、ブレインはメイリスを夢から解放した。

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