秘された王女はひたむきに愛を貫く~男友達だった幼馴染の執着愛~

水瀬 立乃

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第2章

次に会う時は

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仕方がないといったふうに肩を竦めるブレインを今一度よく観察する。

「前と随分印象が違うわね。眼鏡はどうしたの?」

彼は初めて会った時からずっと銀縁の眼鏡をかけていたが、今はかけていない。
下ろしたままでいた髪は整髪料で上げて固めている。

「あれは伊達だ。つけてるだけで誠実そうな男に見えるだろ?印象操作の一つだよ」
「誰かに成り済ましているの?それとも本当にカッタルタの王族になったの?」
「俺には元々カッタルタの王族の血が混じってる。インディカムは降嫁した曾祖母の姓でね。アレキウスはミドルネームだよ」
「どうやってあっちに行ったの?マギウスが他国に移住するのはそう簡単なことじゃないでしょう。手続きもあるし」
「そんなの身分証を偽造するとか、それこそ他人に成り済ますとか、いくらでも方法はある」

ブレインは発覚すれば重罪で、終身刑は免れないような方法を平然と言ってのけた。
危険な気配を感じて唇を引き締めたメイリスとは対照的に、彼は目尻を下げて彼女に微笑んだ。

「俺と隣国で幸せになろう、メイリス。俺達は祝福されている。カッタルタ人にとってマギウスは貴重な存在だからね」
「祖国を裏切ってまで私が欲しかったの?」
「その概念はなかったな。俺は愛国心を持ったことがないから。俺は君が手に入るならなんでもするよ。君に出会った時から、俺はずっと君の美しさに魅了されている」
「……」
「水のように澄んだ声も、宝石のように輝く瞳も、滑らかな肌も桜色の唇も…全てが愛おしい。もちろん魅力を感じているのは容姿だけじゃない。淡白そうに見えて懐が深いところも好きだ。博識で話も合うし、仕事のパートナーにもなれる。非の打ち所のない素晴らしい女性だよ。どんな手を使ってでも君を手に入れたい」
「!」

熱烈なプロポーズを受けた瞬間、メイリスは背中がソファの背もたれに接着されたような感覚を覚えた。
いつの間に魔法陣を展開したのか、ぴったりと張り付けられてしまい身動きが取れない。
抗議するようにブレインを睨みつけると、彼は立ち上がってメイリスに近づき、片手で彼女の小さな顎を掴んで持ち上げた。

「可哀想なメイリス…ゲイルに捨てられたんだろ?俺なら絶対に君を泣かせたりしない」
「捨てられたんじゃないわ。私が捨てたの」
「強がらなくていい。これからは俺が傍にいるから」
「なぜ強がりだと思うの?もしかして彼に何かした?」
「フフ、怒った顔も可愛いな」

ブレインはメイリスの質問をはぐらかし、機嫌良さげに首元のネクタイを寛げた。
メイリスの鋭い視線にも堪えた様子はない。
むしろ怒った顔のメイリスを愛おしそうに見つめると、ソファに手をついて覆いかぶさった。
メイリスが近づいて来た唇を避けるように顔を背けると、彼は楽しそうに肩を揺らす。

「君は焦らすのが得意だね。大丈夫、俺に全部任せて…あいつよりずっと気持ちよくしてあげる」
「あなたじゃ無理よ」
「どうして?俺はあいつより経験が豊富だ。絶対に君を満足させてあげられる」
「好きでもない男に抱かれて喜ぶ女性はいないわ。前にも言ったけど、私はあなたが好きじゃない。あなたのようなナルシストは嫌いなの」
「今はそうかもね。でも結婚してお互いのことをよく知れば、君は必ず俺を好きになる」

メイリスは閉口した。
いったいどこからそんな自信が湧いて出るのかと呆れ果ててしまう。
何度も告白を断り、嫌いだとも言っているのに全く話が通じない。
抽象的な言葉では伝わらないと判断した彼女は、彼に対して容赦するのを止めた。

「私の好みを知っている?誠実で、愛嬌があって、努力家で、思いやりのある人よ。根暗で、計算高くて、利己的で、人の話を聞かないあなたとは正反対」
「うん、いいね。もっと罵ってよ」
「ついでに被虐性欲のある男も嫌い。そのモヤシみたいな体型もね。あなたに魅力を感じるところが一つもないのだけど、どうしたらいいかしら?」
「俺達は大人の男女だ。体で話せば大抵のことは解決する」
「あなたって正真正銘の馬鹿ね。悪いけどお断りよ。経験が豊富だか何だか知らないけど、あなたがゲイルより上手いとは思えないし」
「メイリス、過去の男のことを持ち出すのはいただけないな」
「あら、あなたが先に言ったのよ。不愉快だったのなら何度でも言ってあげるわ。私の体はゲイル以外には感じないの。私が抱いて欲しいと思うのもゲイルだけ。生涯身を捧げると決めたのも彼だけよ」
「夫に向かってなんて言い草だ?君は俺を本気で怒らせたいみたいだね」

魅力のなさを言って聞かせるより、ゲイルを引き合いに出したのが効果覿面だった。
ブレインは目の色を変えてメイリスに迫り、自分が贈ったドレスを胸元から引き裂いた。
襟元を装飾していた真珠がはじけ飛ぶ。
ブレインはネクタイピンを針型の魔導具に変化させると、魔法陣を展開してメイリスの肌に刻印しようとした。

(まさか直に埋め込むつもり?!ここまで堕ちていたとは思わなかったわ…)

私的な理由で人体に直接魔法陣を刻みつけるのは違法行為だ。
公的機関に勤める彼がそれを知らないはずはない。
息をするように法を犯すブレインに軽蔑の眼差しを送った彼女は、目視で魔法陣を分析した。
魔法陣自体は特殊な形をしていたが、基礎形状が情報操作系の魔法だと察しをつけて嘆息した。

(私があなたを好きにならないから、無理やり好きにさせようってこと?憐れね)

彼の意図に気付いたメイリスは、耳から下げたイヤリング型の魔導具に魔力を注ぎ込んだ。
針の先がメイリスの肌に届く前に魔法陣が霧散する。
僅か数秒の間に、ブレインの魔導具はただの針になった。
一瞬の出来事に彼は狐に摘ままれたような顔をしたが、メイリスが自分よりも先に魔法を発動させたのだと理解すると、瞳をギラつかせながら唇の端を吊り上げた。

「流石に早いな…惚れ直したよ。ますます君が欲しくなった」
「お生憎だけど、大人しくあなたの思惑に乗せられてあげるつもりはないの」
「君のその冷え切った視線。ゾクゾクするね…たまらないよ」

メイリスは背中の魔法陣を解除してブレインを突き飛ばし、ソファから離れて彼と距離を取った。
そこからは魔法の打ち合いが始まった。
いまメイリスが所持している魔導具はイヤリングだけで、中に記憶されている魔法陣も修復に必要な魔法に偏っていた。
一方のブレインは複数の魔導具を持ち、使える魔法も戦闘に特化したものばかりだった。
一見メイリスが不利に思えたが、彼女は驚異的な速度で複数の魔法陣を重複展開し、仕事で使う魔法を応用してブレインの魔法に対抗した。
ブレインの魔法陣の基礎形状を分析して複製し、複製したものを打ち返して相殺する。
相殺が有効ではない魔法には、複製した魔法陣に手を加えてブレインのものに上書きし、無効化する。
メイリスの脳内にはほとんどの系統の魔法陣が記憶されていて、そのベースを見ただけで大まかではあるがどんな効果のある魔法なのか瞬時に見極めることができた。

(これは身体拘束系ね。次は神経伝達系…麻痺、催淫、昏睡…何がしたいのか手に取るようにわかるわね…)

内心呆れながら魔法を放ち続け、隙をみて魔導具の無力化も試みた。
魔導具にも魔法陣を記憶するための魔法陣が組み込まれているので、それを破壊するか無効化してしまえば魔法は使えなくなる。
魔法陣が刻まれた物品の処理はメイリスとは別の部署が担当しているが、国家機密の魔法陣を扱う場合は修復困難と判断されたらその場で処分するように義務化されているので、彼女も稀にその処理を行うことがあった。
通常業務では滅多にないが、メイリスはその数回の経験を覚えていた。
ブレインは魔法が発動しない上に次々と魔導具が使用不能になり、苛立ちのままに舌打ちをした。

「やるね、メイリス。3つの魔法をほぼ同時に展開できるなんてすごいな」
「あなたが遅いからできるのよ。もっと腕を磨いたら?」
「これでもスピードにはかなり自信あったんだけどね。悔しいけど君相手では実力不足を認めるしかないな」

無益な争いだと悟ったのか、ブレインは攻撃を止めた。
異変に気付いた護衛達が室内に飛び込んでくる。
メイリスを守護するように男女7名のSPが彼女を取り囲んだ。
そのうちの1人、灰青色の瞳を持った男が一歩前に出る。

「アレキウス殿。いや、ブレイン・コーニアス。君がパレシア人でマギウスだと分かった以上、このまま隣国へ帰すことはできない」
「フフ、まさか王子殿下自らお出ましくださるとは。余程私の妻を気にかけてくださっているのですね。ありがとうございます」
「申し訳ないが彼女との婚姻は白紙だ。この男を捕らえろ!」

密かに護衛に紛れていたゼルキオンが命じると、メイリスの前方にいた3名の女性SPが動いた。
ブレインを捕縛しようと魔法陣を展開する。
王族を警護する熟練者達だったが、魔法陣を展開する速度はブレインの方が上だった。
自信があると言っていただけあって、SPが魔法陣を展開するよりも早く魔法を繰り出して反撃する。
3人は善戦したが、ブレインに傷一つつけられないまま昏倒させられてしまった。
ブレインの実力を目の当たりにしたゼルキオンは内心舌を巻いたが、おくびにも出さずに彼と対峙した。

「それで本当に後悔しませんか?メイリスとの結婚は不可侵条約継続の条件だったことをお忘れのようですね。私が帰らなければ我が国はパレシアを侵略しますよ」
「やれるものならやってみるといい。魔力を持たない他国など我々の相手にはならない。そもそも立場の弱い国から戦争をふっかけること自体、愚かなことだと思わないか?自国民を無闇に危険に晒すような方法は賢明ではないな」
「無闇に、ではありませんよ。勝算はある。カッタルタには私がいますからね。あなた方が全幅の信頼を置く防衛魔法を跡形もなく消し去って差し上げますよ」
「帰る前提で話をしているようだが、この国から出られると思っているのか?」
「もちろんです」

メイリスはブレインが会話の合間にこっそりとカフリンクス型の魔導具で微小な魔法陣を展開したことに気が付いた。
それが殺傷能力のある魔法だと認識した瞬間、咄嗟に体が動いた。
彼女はゼルキオンを庇うようにブレインの間に割って入る。
ブレインの口元が怪しく歪んだ。
放たれると思った魔法は消失し、代わりにブレインがメイリスに向かってきた。

「?!」
「予想通りだよメイリス…優しい君なら絶対に助けに入ると思ったんだ」

メイリスの左胸に鍵のような形をした魔導具の針が刺し込まれている。
魔法が発動する前に後退しようとしたが、ブレインの腕が腰に回されていて逃げられない。
彼女の繊細な肌に魔法陣が刻みつけられた。

「アァッ…!」
「ハァ…メイリス…やっと君を抱きしめられた…」

肌に刺繍をされているかのような、鋭い痛みがメイリスを襲った。
思わず首を仰け反らせた彼女の喉元にブレインがキスをする。
ぞわぞわと嫌な感覚が背筋を駆け抜けたが、灼け付くような痛みのせいで抵抗ができない。
メイリスを抱きしめたまま、ブレインは驚きに呆然としているゼルキオンに挑戦的な視線を送った。
一瞬の出来事に何が起きたかわからないでいた彼は、正面から向けられるギラついた視線に気が付いてハッと我に返った。

「メイリス!!」

明らかに何らかの苦痛を与えられているメイリスを助けようと、ゼルキオンが手を伸ばす。
その動きを読んだブレインは床を蹴り、彼女を抱いたまま窓際まで後退した。

「彼女を解放しろ、ブレイン」
「約束は守っていただきますよ。この結婚はあなたと私じゃない、パレシアとカッタルタの、国同士の約束です」
「私は今、珍しく自分の判断を後悔している。この婚姻を承諾したのは失敗だった。相手の男がこれほど歪んだ性格だったとは思わなかったからな」

ゼルキオンは不愉快そうに眉根を寄せた。
ブレイン・コーニアスからは父親と同類の匂いがする。
父親に彼女の存在を隠し通せても結局似たような男に捕らわれてしまうのなら、彼女が最初に希望していた通りに一人でどこぞへ逃がせばよかった。

「いえいえ、ご英断ですよ。無益な戦争を回避したんですから。これでしばらくはカッタルタ王も大人しくなるはずです」

そう言ってニッコリ笑うと、ブレインは自分の足元に転移魔法陣を展開した。
彼の後ろで人形同然になっているカッタルタ兵と、気を失っている3人の警護員達にも同じように魔法陣を展開する。
ぎょっとするゼルキオン達をよそに、ブレインは場にそぐわぬ爽やかな笑顔を見せた。

「このマギウスは駄賃としていただいていきますね。妻を迎えに来ただけなのに大変熱烈な歓迎を受けましたから。カッタルタ王は魔法に傾倒しているんです。妻に目を付けられかねないので、目眩ましにこちらの方々を献上しようと思います。多少無体をされるかも知れませんが厚待遇を受けられますし、悪いようにはなりませんよ」
「君の思惑に乗せられてやるつもりはない」
「招待状をお送りしますよ。次は私達の結婚式でお会いしましょう」

ブレインはゼルキオンの牽制を無視し、痛みで意識を失くしたメイリスの額に唇を寄せた。
対になる魔法陣との接続が完了し、足元の魔法陣が光を放ち始める。
ゼルキオン達は妨害を試みたが、ブレインが次々に展開する障壁の魔法陣に阻まれて上手くいかない。
このまま逃げられてしまうのかと焦燥感を募らせたその時。
ブレインの姿が光の帯の中に消える数秒前、眠っていると思われていたメイリスが顔を上げた。

「…いいえ。次に会う時は戦場でよ、ブレイン」
「!」

不敵な笑みを浮かべた彼女に、彼は目を見開くことしかできなかった。
ブレインと兵士達は隣国に仕掛けたもう片方の魔法陣に転移し、姿を消した。
しかし拉致されようとしていた女性達はまだ床に倒れたままでいる。
何が起きたのかは全く理解できなかった。
一先ず部下が助かったことにほっと息を吐き、メイリスを探す。
見た限り部屋の中にメイリスの姿はない。
あのままブレインに連れ去られてしまったのだと絶望した瞬間、突如魔法陣と共に彼女は現れた。

「メイリス…!」

どさりと音を立てて崩れ落ちたメイリスに、ゼルキオンが駆け寄る。
その声に反応するように彼女の体がぴくりと体を震えた。
幸い意識はあったようで、ゼルキオンは起き上がろうとするメイリスに手を貸した。
そのまま絨毯の上に座らせ、体を支えながら何があったのかを尋ねると、彼女は苦しげに肩で息をしながら答えた。

「ずっと意識が曖昧だったんだけど…キスされた時に気持ちが悪くて目が覚めたの。そしたら転移させられそうになっていたから…彼女達の魔法陣を無効化して、私はここに戻って来るようにこっそり魔法陣を仕込んだのよ。体が一度あっちに行ったから、なんだか酔ったみたい。頭が揺れて気持ち悪いわ…」
「あの一瞬で…とんでもないな、君は」

感嘆の声を上げた異母兄に、メイリスはふっと表情を和らげた。

その頃、ブレインは転移先のカッタルタ城の一室で呆然と立ち尽くしていた。
確かにメイリスを連れて帰ってきたはずなのに、彼女は一瞬の内に腕の中から消えてしまった。
しばらくして状況を理解した途端、彼は声を上げて笑い始めた。

「やっぱり君は最高だよ、メイリス!」

突然狂ったように笑い始めたブレインを、カッタルタ兵が不穏な表情で見つめている。
彼はひとしきり笑った後、パレシアに舞い戻ったであろうメイリスに思いを馳せた。
次は戦場でと笑っていた彼女の凛々しい顔を思い出し、眩しそうに目を細める。

「いいよ、俺は気が長い方だ。君が手に入るまで戦争ごっこでもして遊ぼうか…」

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