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第1章
不可逆な変化
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ブレインから不意打ちのキスをされた数日後。
ゲイルから夕食に誘われたメイリスは、不機嫌そうに串焼きの肉をかじる彼を不思議そうに見つめた。
「…ああいうこと、結構あるのか?」
「ああいうことって?」
「ブレインのことだよ。部屋に二人きりになることが頻繁にあるのかって聞いてる」
「あれはたまたまよ。そもそも部署が違うから、所内ですれ違うこともないわ」
メイリスが所属するのは劣化・破損した魔法陣を修復する部署で、ブレインは魔法陣を改良する部署にいた。
11階建ての研究所はかなりの広さで、部署はフロアごとに分けられている。
5階と10階には共有のスペースがあるが、あの日のように同じ時間に鉢合わせることは1年で数える程度にしかない。
「それならいいけど…気をつけろよ。あいつはお前に気があるんだから」
「心配しなくても大丈夫よ。もう冗談みたいになってるし、私も本気にしていないから」
「それが危ないんだよ。そうやって油断させてタイミングを計っているかも知れない。誰もいないところで襲われたらどうするんだ?」
「大声を上げて助けを呼ぶわ。それでだめならどこでもいいから思い切り蹴るとか…方法はあるわよ」
「まあ…抵抗できるならそれでもいいけど」
メイリスが答えると、ゲイルは頷きながらもどこか不安げな顔をした。
「あいつのしつこさからして、家に押しかけて来ないとも限らない。普段からしっかり鍵かけとけよ。お前たまに窓開けたまま寝るだろ。それから、誰か訪ねて来ても男なら居留守しろ。夜なら尚更な」
「…わかったわ」
そんなことは絶対にないだろうと思いながらも、ここで否定をするとまたお説教が始まりそうなので素直に頷いておく。
それでも心配が拭えないゲイルに、メイリスは先日育ての親から送られてきた手紙の話をした。
話題を変える作戦は上手くいき、それ以上彼がブレインについて触れることはなかった。
…
メイリスが彼とそんなやり取りをしたのは、つい一ヶ月前のことだ。
ドアを叩いているのがゲイルだと声でわかったから安心して開けられたが、こうなってみて初めて彼がどうしてあんなに心配していたのかわかった気がした。
これがブレインや他の人だったとして、近所迷惑を考えたら開けないままでいられたかどうか自信がない。
ブレインが言うようにまるで父親のようにメイリスを気にかけるゲイルはいま、娘の家の床で頼りない姿を晒している。
ゲイルがこうして突然訪ねてくるのは決して珍しいことではなかったが、ここまで酔っている状態の彼を目にしたのは初めてだった。
メイリスにフルネームで呼ばれた彼は、うつ伏せに倒れ込んだまま首だけを動かして彼女に顔を向けた。
「合ってるよ…今日はここで寝る」
「ふざけたこと言わないで。ここに客間はないわよ。それにあなた恋人がいるでしょう?」
「別れた…」
「ああ、なるほど。それでそんな状態なわけね」
呆れた視線をぶつけて、メイリスはその場を立ち去る。
程なくして水の入ったグラスを持って戻ってきた。
「ほら、飲んで。さっさと酔いを覚まして帰って」
「…冷たいな」
「氷を入れたから」
「いや、お前が」
近い距離から熱の籠もった鋭い眼光で射抜かれて、メイリスは不覚にもドキリとした。
完全に泥酔した人間の目だった。
「こんなに弱っているおれを見て、慰めようとは思わないの?」
「思わないわね。そういうのは他を当たって。私の役目じゃないわ」
「…おれは、メイスがいい」
「はいはい、そうやっていつも女の子を落としているのね?お生憎だけど、私は絆されないわよ。あなたなら誘えば乗ってくれる子が他に大勢いるでしょ」
「他はいらない。メイスがいいんだ…お前を抱きたい」
不意に腕を取られた彼女は、体勢を崩してゲイルの上に倒れ込んだ。
すぐに体を離そうとしたが、腕と足でがっしりと固められてしまい身動きが取れない。
彼は抵抗できないメイリスの胸元に鼻を埋めて息を吸い込んだ。
「ん…いい匂いがする。おっぱい柔らか…下着つけてないんだな」
「ちょっと、やめなさい!やめて、ッン、触らないで…!」
「なに今の声?感じたの?俺におっぱい触られて感じちゃった?」
「少しくすぐったかっただけよ。早く放して」
「…ったく、素直じゃないな」
ゲイルは軽く舌打ちをすると、メイリスの体を反転させて馬乗りになった。
自分のものより一回り細い両手首を片手でまとめて頭上に縫い付け、捕縛の魔法陣を展開する。
魔法を使われるとは思わなかったメイリスは動揺した。
「ちょっとゲイル、何してるの?本当にやめなさい。あなた相当お酒臭いわよ」
「だから何?くすぐったいのがヨくなるまでいじめてやるよ」
彼はにたっと妖艶に目を細めると、寝間着の上からぷっくらしている胸の頂に吸い付いた。
薄い布地ごと舌で輪郭をなぞり、つつき、カリカリと引っかけるように歯を立てる。
反対側の胸も指の先で摘ままれ、擦られて、メイリスは否が応にも快感から喉が震えるのを止められなかった。
「ンッ…ァ、やめぇ…アッ…!」
「さっそくカワイイ声出しちゃって。乳首気持ちいいんだな。もうこんなに勃ってる」
「ハァ…ッ、ン…も、いい加減に…ンッ、アッぁ…」
「んー、その声やばい。布越しでこれなら生で触ったらどうなるかな?」
ゲイルは鼻息荒く独り言ちて、彼女のシャツの裾をたくし上げた。
豊満なふたつの乳房がぷるんと震え、隠されていた薄紅色の突起が顔を出す。
彼はわざとらしく「れろー」と声を出しながら舌全体で敏感になっている乳首を舐め上げた。
メイリスがびくびくしながら背中をしならせたことに気を良くして、口に含んでちゅうちゅうと吸いながら指と舌で両方を愛撫する。
「アッ!ハァぁ…ンンン!ンあ、いやぁ…!」
「えっろ…やっぱ直に舐められる方がキモチイイんだな?ハァ…すごい興奮してきた」
「ばか、もうやめなさいって…ンッ!だめ、それ…っ!いや、ァッ…ンァ、はぁ…」
「あーメイスのおっぱい最高…。すごく柔らかくて弾力もあって感度も超いいなんて…理想的すぎ。もっと舐めさせて」
「ゲイルっ…ンン、だめだったら…!」
彼女はなんとかして拘束を解こうと試みるものの、ゲイルの手ごと魔法陣で強制的に押さえつけられているせいでびくともしなかった。
むしろ抵抗すればするほど彼の腕の力は強くなり、乳首への刺激も激しくなる。
仕方なく快感に耐えながら身を任せていると、そのうちゲイルがちゅぱっと音を立ててメイリスから離れた。
やっと満足したかと気を抜いた時、唾液で濡れた先にふうと息を吹きかけられて、もどかしさに達してしまう。
「アッ…ン、ンンッ、ンッ…!」
「メイス、もしかしてイってるのか?イったの?」
気付かれないように全身に力を入れて身悶えないようにしていたのに、子宮は正直で下腹部がびくびくと動いてしまう。
「ンっ…イって、ない…っ」
「イってんだろ。あぁもう…えろすぎ。勃ちすぎて股間痛い。どうしてくれんの?」
「し、知らないわよ…!」
ゲイルは服の上からでもわかるくらいに硬く膨らんだものをメイリスの柔らかい場所にぐりぐりと押し付けた。
彼女は上気していた頬を更に赤く染めて腕に力をこめる。
「あなたが勝手にやったんだから、自分でなんとかしたらいいでしょ?もういい加減に放しなさいよ…!」
「いやだ。メイス、責任とって。俺早くメイスに入れたい。入れていいだろ…?」
「は…はあ?だめに決まってるでしょ?!」
「なんで?ブレインには入れさせたんだろ?なんで俺はダメなんだ?」
思いもよらない言葉に、メイリスは怪訝な顔をした。
ブレインは彼女にとってただの同級生で職場の同期でしかなく、何度告白されても一貫して交際を断り続けている。
それをゲイルも知っているはずなのに、そもそも気をつけろと先日忠告してきたのは彼の方なのに、今度はなぜそんな勘違いをしているのかさっぱりわからない。
「入れさせてなんていないわよ!ふざけた勘違いはやめて」
「え……じゃああいつとはヤってないのか?」
「ヤるわけないでしょ!わかったのなら早く放して」
「そうか…。なんだ、違ったのか…くそ、あいつら適当なこと言いやがって…!」
「悪態を吐きたいのはこっちよ…」
やっと腕を解放されたメイリスは溜息を吐いた。
痛みはないが少し赤くなってしまった両手首をさする。
手は自由になったが、肝心の本体がまだ脚の付け根辺りに座り込んでいるので、殴ろうにも殴れない。
取り急ぎ丸見えになっている胸を隠すために捲れ上がった服の裾を元に戻そうとした時、彼女よりも先にゲイルがまだ主張し続けている乳首を摘まみ上げた。
「アッ?!な、なにするのよ?!」
「なにって、続きだろ。興覚めさせてごめんな。もう一回イカせてやるから…」
「結構よ!もういいからンッ、放し…アッ、なさいよ、このッ、アァ…酔っ払いっ!」
「メイリス…」
見上げた先から甘く名前を囁かれて、一瞬息を止める。
普段は"メイス"と幼い頃からの愛称で呼んでくるゲイルにはっきりと名前を呼ばれることは少ない。
そういう時は大抵怒ったり揶揄ったりする時なのだが、いつもとは違う艶めかしい響きに心臓が跳ねた。
酒と欲望にまみれた瞳で微かに笑みを浮かべる彼の蠱惑的な表情に、メイリスは見惚れた。
近づいてくる気配に双眸を閉じると、二人の唇が触れ合う。
抵抗するばかりだったメイリスはついに折れ、どんどん深くなっていく官能的なキスに応えた。
ちゅっ、ちゅっと音を立てながら繰り返し唇を重ねるうちに息が上がり、強張っていた体から力が抜けていく。
「ん…キス、キモチイイ?」
「ふ、ッン…はぁ…」
「蕩けた顔して…その気になった?」
「はぁ…なって、ない…」
「…っとに、かわいくない奴だな。素直になるまで、いじめてやる……」
「んっ……ゲイル?」
ゲイルはメイリスの鎖骨に唇を寄せた後、突然動かなくなった。
ずっしりと体重がのしかかる感覚に嫌な予感を覚えてみれば、案の定彼はすやすやと寝息を立てていた。
「重い…」
文句を言ってみても反応はなく、メイリスは溜息を吐いた。
酔っ払っていて本意ではなかったにしても、二人は友達として越えてはならない一線を越えてしまった。
純粋な友情だけで成り立っていた関係は崩された。
「まったく、どうしろっていうのよ…」
メイリスの嘆きの声は、ゲイルの寝息と共に虚しく空に消えていった。
ゲイルから夕食に誘われたメイリスは、不機嫌そうに串焼きの肉をかじる彼を不思議そうに見つめた。
「…ああいうこと、結構あるのか?」
「ああいうことって?」
「ブレインのことだよ。部屋に二人きりになることが頻繁にあるのかって聞いてる」
「あれはたまたまよ。そもそも部署が違うから、所内ですれ違うこともないわ」
メイリスが所属するのは劣化・破損した魔法陣を修復する部署で、ブレインは魔法陣を改良する部署にいた。
11階建ての研究所はかなりの広さで、部署はフロアごとに分けられている。
5階と10階には共有のスペースがあるが、あの日のように同じ時間に鉢合わせることは1年で数える程度にしかない。
「それならいいけど…気をつけろよ。あいつはお前に気があるんだから」
「心配しなくても大丈夫よ。もう冗談みたいになってるし、私も本気にしていないから」
「それが危ないんだよ。そうやって油断させてタイミングを計っているかも知れない。誰もいないところで襲われたらどうするんだ?」
「大声を上げて助けを呼ぶわ。それでだめならどこでもいいから思い切り蹴るとか…方法はあるわよ」
「まあ…抵抗できるならそれでもいいけど」
メイリスが答えると、ゲイルは頷きながらもどこか不安げな顔をした。
「あいつのしつこさからして、家に押しかけて来ないとも限らない。普段からしっかり鍵かけとけよ。お前たまに窓開けたまま寝るだろ。それから、誰か訪ねて来ても男なら居留守しろ。夜なら尚更な」
「…わかったわ」
そんなことは絶対にないだろうと思いながらも、ここで否定をするとまたお説教が始まりそうなので素直に頷いておく。
それでも心配が拭えないゲイルに、メイリスは先日育ての親から送られてきた手紙の話をした。
話題を変える作戦は上手くいき、それ以上彼がブレインについて触れることはなかった。
…
メイリスが彼とそんなやり取りをしたのは、つい一ヶ月前のことだ。
ドアを叩いているのがゲイルだと声でわかったから安心して開けられたが、こうなってみて初めて彼がどうしてあんなに心配していたのかわかった気がした。
これがブレインや他の人だったとして、近所迷惑を考えたら開けないままでいられたかどうか自信がない。
ブレインが言うようにまるで父親のようにメイリスを気にかけるゲイルはいま、娘の家の床で頼りない姿を晒している。
ゲイルがこうして突然訪ねてくるのは決して珍しいことではなかったが、ここまで酔っている状態の彼を目にしたのは初めてだった。
メイリスにフルネームで呼ばれた彼は、うつ伏せに倒れ込んだまま首だけを動かして彼女に顔を向けた。
「合ってるよ…今日はここで寝る」
「ふざけたこと言わないで。ここに客間はないわよ。それにあなた恋人がいるでしょう?」
「別れた…」
「ああ、なるほど。それでそんな状態なわけね」
呆れた視線をぶつけて、メイリスはその場を立ち去る。
程なくして水の入ったグラスを持って戻ってきた。
「ほら、飲んで。さっさと酔いを覚まして帰って」
「…冷たいな」
「氷を入れたから」
「いや、お前が」
近い距離から熱の籠もった鋭い眼光で射抜かれて、メイリスは不覚にもドキリとした。
完全に泥酔した人間の目だった。
「こんなに弱っているおれを見て、慰めようとは思わないの?」
「思わないわね。そういうのは他を当たって。私の役目じゃないわ」
「…おれは、メイスがいい」
「はいはい、そうやっていつも女の子を落としているのね?お生憎だけど、私は絆されないわよ。あなたなら誘えば乗ってくれる子が他に大勢いるでしょ」
「他はいらない。メイスがいいんだ…お前を抱きたい」
不意に腕を取られた彼女は、体勢を崩してゲイルの上に倒れ込んだ。
すぐに体を離そうとしたが、腕と足でがっしりと固められてしまい身動きが取れない。
彼は抵抗できないメイリスの胸元に鼻を埋めて息を吸い込んだ。
「ん…いい匂いがする。おっぱい柔らか…下着つけてないんだな」
「ちょっと、やめなさい!やめて、ッン、触らないで…!」
「なに今の声?感じたの?俺におっぱい触られて感じちゃった?」
「少しくすぐったかっただけよ。早く放して」
「…ったく、素直じゃないな」
ゲイルは軽く舌打ちをすると、メイリスの体を反転させて馬乗りになった。
自分のものより一回り細い両手首を片手でまとめて頭上に縫い付け、捕縛の魔法陣を展開する。
魔法を使われるとは思わなかったメイリスは動揺した。
「ちょっとゲイル、何してるの?本当にやめなさい。あなた相当お酒臭いわよ」
「だから何?くすぐったいのがヨくなるまでいじめてやるよ」
彼はにたっと妖艶に目を細めると、寝間着の上からぷっくらしている胸の頂に吸い付いた。
薄い布地ごと舌で輪郭をなぞり、つつき、カリカリと引っかけるように歯を立てる。
反対側の胸も指の先で摘ままれ、擦られて、メイリスは否が応にも快感から喉が震えるのを止められなかった。
「ンッ…ァ、やめぇ…アッ…!」
「さっそくカワイイ声出しちゃって。乳首気持ちいいんだな。もうこんなに勃ってる」
「ハァ…ッ、ン…も、いい加減に…ンッ、アッぁ…」
「んー、その声やばい。布越しでこれなら生で触ったらどうなるかな?」
ゲイルは鼻息荒く独り言ちて、彼女のシャツの裾をたくし上げた。
豊満なふたつの乳房がぷるんと震え、隠されていた薄紅色の突起が顔を出す。
彼はわざとらしく「れろー」と声を出しながら舌全体で敏感になっている乳首を舐め上げた。
メイリスがびくびくしながら背中をしならせたことに気を良くして、口に含んでちゅうちゅうと吸いながら指と舌で両方を愛撫する。
「アッ!ハァぁ…ンンン!ンあ、いやぁ…!」
「えっろ…やっぱ直に舐められる方がキモチイイんだな?ハァ…すごい興奮してきた」
「ばか、もうやめなさいって…ンッ!だめ、それ…っ!いや、ァッ…ンァ、はぁ…」
「あーメイスのおっぱい最高…。すごく柔らかくて弾力もあって感度も超いいなんて…理想的すぎ。もっと舐めさせて」
「ゲイルっ…ンン、だめだったら…!」
彼女はなんとかして拘束を解こうと試みるものの、ゲイルの手ごと魔法陣で強制的に押さえつけられているせいでびくともしなかった。
むしろ抵抗すればするほど彼の腕の力は強くなり、乳首への刺激も激しくなる。
仕方なく快感に耐えながら身を任せていると、そのうちゲイルがちゅぱっと音を立ててメイリスから離れた。
やっと満足したかと気を抜いた時、唾液で濡れた先にふうと息を吹きかけられて、もどかしさに達してしまう。
「アッ…ン、ンンッ、ンッ…!」
「メイス、もしかしてイってるのか?イったの?」
気付かれないように全身に力を入れて身悶えないようにしていたのに、子宮は正直で下腹部がびくびくと動いてしまう。
「ンっ…イって、ない…っ」
「イってんだろ。あぁもう…えろすぎ。勃ちすぎて股間痛い。どうしてくれんの?」
「し、知らないわよ…!」
ゲイルは服の上からでもわかるくらいに硬く膨らんだものをメイリスの柔らかい場所にぐりぐりと押し付けた。
彼女は上気していた頬を更に赤く染めて腕に力をこめる。
「あなたが勝手にやったんだから、自分でなんとかしたらいいでしょ?もういい加減に放しなさいよ…!」
「いやだ。メイス、責任とって。俺早くメイスに入れたい。入れていいだろ…?」
「は…はあ?だめに決まってるでしょ?!」
「なんで?ブレインには入れさせたんだろ?なんで俺はダメなんだ?」
思いもよらない言葉に、メイリスは怪訝な顔をした。
ブレインは彼女にとってただの同級生で職場の同期でしかなく、何度告白されても一貫して交際を断り続けている。
それをゲイルも知っているはずなのに、そもそも気をつけろと先日忠告してきたのは彼の方なのに、今度はなぜそんな勘違いをしているのかさっぱりわからない。
「入れさせてなんていないわよ!ふざけた勘違いはやめて」
「え……じゃああいつとはヤってないのか?」
「ヤるわけないでしょ!わかったのなら早く放して」
「そうか…。なんだ、違ったのか…くそ、あいつら適当なこと言いやがって…!」
「悪態を吐きたいのはこっちよ…」
やっと腕を解放されたメイリスは溜息を吐いた。
痛みはないが少し赤くなってしまった両手首をさする。
手は自由になったが、肝心の本体がまだ脚の付け根辺りに座り込んでいるので、殴ろうにも殴れない。
取り急ぎ丸見えになっている胸を隠すために捲れ上がった服の裾を元に戻そうとした時、彼女よりも先にゲイルがまだ主張し続けている乳首を摘まみ上げた。
「アッ?!な、なにするのよ?!」
「なにって、続きだろ。興覚めさせてごめんな。もう一回イカせてやるから…」
「結構よ!もういいからンッ、放し…アッ、なさいよ、このッ、アァ…酔っ払いっ!」
「メイリス…」
見上げた先から甘く名前を囁かれて、一瞬息を止める。
普段は"メイス"と幼い頃からの愛称で呼んでくるゲイルにはっきりと名前を呼ばれることは少ない。
そういう時は大抵怒ったり揶揄ったりする時なのだが、いつもとは違う艶めかしい響きに心臓が跳ねた。
酒と欲望にまみれた瞳で微かに笑みを浮かべる彼の蠱惑的な表情に、メイリスは見惚れた。
近づいてくる気配に双眸を閉じると、二人の唇が触れ合う。
抵抗するばかりだったメイリスはついに折れ、どんどん深くなっていく官能的なキスに応えた。
ちゅっ、ちゅっと音を立てながら繰り返し唇を重ねるうちに息が上がり、強張っていた体から力が抜けていく。
「ん…キス、キモチイイ?」
「ふ、ッン…はぁ…」
「蕩けた顔して…その気になった?」
「はぁ…なって、ない…」
「…っとに、かわいくない奴だな。素直になるまで、いじめてやる……」
「んっ……ゲイル?」
ゲイルはメイリスの鎖骨に唇を寄せた後、突然動かなくなった。
ずっしりと体重がのしかかる感覚に嫌な予感を覚えてみれば、案の定彼はすやすやと寝息を立てていた。
「重い…」
文句を言ってみても反応はなく、メイリスは溜息を吐いた。
酔っ払っていて本意ではなかったにしても、二人は友達として越えてはならない一線を越えてしまった。
純粋な友情だけで成り立っていた関係は崩された。
「まったく、どうしろっていうのよ…」
メイリスの嘆きの声は、ゲイルの寝息と共に虚しく空に消えていった。
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