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★完結

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部屋に入ると、リチャード様はおひとりで寛いでいらした。

シャツ1枚のラフなスタイルは、いつ見てもセクシー過ぎてドキドキしてしまう。こんなにシンプルなシャツの似合う方が、他にいるかしら。シャープな顎のライン、喉元、鎖骨、少しだけ覗いた胸、鍛えられた腕・・・。

「どうした?やっぱり疲れたかな?」
「いっ、いえなんでもありませんっ、」

結婚して数ヶ月経つと言うのに、リチャード様と二人きりになると、どうしてもドキドキしてしまう。いけないわ、こんなでは。いい加減慣れないと、呆れられてしまうわ。

「やっぱりかわいいな、君は」
え、かわいいって!?やだ、なんて答えたらいいの。

「湯殿の支度ができたそうだよ。先に入っておいで」
よかった、話題が変わった。

「わあ、嬉しいです。でしたらリチャード様がお先に・・・」
「いや、君が先にお入り。僕も後から行くから」
「はい、ではお言葉に甘えて・・・えっ?!」

い、一緒に入るの?!?!

「もちろん。哀れな僕から、君に触れる時間を奪うなんてしないよね?」



湯殿は本当にすてきだった。大理石作りの湯船と床、湯船の周りは密林の樹で覆われて、松明の火が雰囲気を演出している。密林の奥にある秘密の神殿といった趣だ。お湯もトロリとして心地よい。

「ふうぅ、どうしよう・・・」
結局、先に入ってしまったのだけれど、湯船に顔まで浸かりながら、私はため息をついていた。

だって、一緒に入浴だなんてしたことないもの!子どもたちと入ることはあるけど。

それにしても、けっこうな時間が経ったけれど、リチャード様いらっしゃらないわ。もしかして寝てしまわれたのかしら?ほっとしたような、少し残念なような・・・。

その時、湯殿の入り口が開く音がして、私は飛び上がった。

「お、すごいな。密林の神殿みたいだ。お湯はどうだい?」
やっ、やだどうしよう、来ちゃった!
背中を向けたまま戸惑う私に構わず、リチャード様は湯船に入ってくる。

「はっ、はいぃっ!」
いつの間にか隣に並ばれていて、間抜けな声を上げてしまった。
「はは、そんなに緊張しないで」
リチャード様は笑って言うけれど、無理です・・・。恥ずかしさのあまり目も合わせられず、顔を背けて俯いてしまう。

「仕方ないな」
そう呟いたかと思うと、急に腕を掴まれて引き寄せられ、後ろ向きのまま膝に乗せられた。
りっ、リチャード様、強引すぎますっ・・・!

「こうでもしないと、永遠に触らせてもらえないだろう?」
そう言うと、ふいにうなじに口付けられる。

「ひゃぁっ?!」
身体に電力が走って、私は思わず声を上げる。
ダメ・・・リチャード様に口付けされると、もう何も考えられなくなってしまう・・・。

口付けはうなじを往復したあと、首の後ろへの攻めに変わった。口付けし、舌を這わせ、時に激しく吸い上げる。

「あぁっ!!」
「そそる声だ・・・」

リチャード様が耳元で囁き、吐息が耳にかかる。くすぐったいのと恥ずかしさで、私は思わず顔をそむけた。

「逃げないで」
そう言うと、顔を強引にリチャード様の方に向けさせられ、激しくキスされる。

そのまリチャード様は、熱い吐息で口内を責め立てたかと思うと、うしろから両手で胸の膨らみを鷲掴みにした。優しく、時に激しく揉みあげられ、やがて指先が頂を転がし始めると、熱い疼きが何度も、身体の奥から湧き上がる。

リチャード様の右手が下に降り、指先が脇腹を、腰をお腹を、優しく撫でて行く。やがて脚の付け根に到達すると、躊躇うことなく秘部に分け入った。リチャード様の巧みな愛撫に高められた身体は、いとも簡単に受け入れる。

「ああんっ!」

指と一緒に湯もわずかに入り込み、初めて感じる刺激に思わず声が漏れる。リチャード様は構わず秘部を掻き回し、時に撫で上げ、その度に刺激も増して、快感の波に支配されそうになった。

「止めないで」
リチャード様が囁く。
「感じるままに、身を任せるんだ」

競り上がってくる甘い痺れに、何度も何度も翻弄されるうち、身体中が官能の波に支配されて行く。そしてついに、身体を、頭を、私の全てを電流が貫き・・・

「ああぁっ!!」

激しくのけ反り、ついに果ててしまったのだった。



「いい子だ。ずいぶん素直になったね」
ぐったりと果てた私の身体を後ろから抱き止めて、リチャード様が囁く。

「次は僕の番だ。こっちを向いて」
身体を回され、リチャード様と向き合う格好になった。

「自分で挿れて、動いてごらん」

えっ、ええっ?!な、っなにを?!?!
「でっ、できません、そんなこと・・・」
「できるさ。君だって欲しいはずだ」

リチャード様はそう言うと、突然胸の膨らみを鷲掴みにし、頂に吸い付いた。

「やっ、」

先ほど達したばかりだというのに、私の身体にまた、快感が競り上がってくる。
頂を舌で転がされ、膨らみに顔を埋められると、秘部が熱くなり、リチャード様を求めているのを感じないわけにはいかなくなった。

「はい・・・」

私は、リチャード様の身体を股越すような体勢になり、秘部にリチャード様自身の先端を当て、身体を沈めた。
リチャード様自身が深く私の中に埋まり、今までにない感覚が秘部を満たす。

「うあああっ」

リチャード様が声を上げ、のけ反った。熱量が上がり、リチャード様自身が脈打ち始める。

「ううっ、グレイス・・・グレイス!」
汗が滴り、顔は余裕なくしかめて眉間に皺が寄る。そんな彼が愛しくて、思わず顔を両手で挟んで口付けした。

漏れ出る吐息が熱い。手のひらから伝わる汗は、今までにないくらい熱く、湯気が立ちそうなほど煮えたぎっている。

熱い・・・!ダメ、もうもたない!
その時だった。

「もっ、もう無理だ、グレイス・・・うおっっ!!?」

リチャード様は雄叫びを発し、身体をビクビクと何度か痙攣させたかと思うと、私の中に熱い情熱を放出した。何度も激しくのたうち、熱い声を上げながら。

「・・・すごいよ、君は」

だいぶ時間が経った後、息を切らして私の肩に顔を預けたままのリチャード様がつぶやいた。何がすごいのか、私にはよくわからない。私はただ、誰よりも近く肌の触れ合うこの人が、愛しいと思うだけだ。

その夜は、湯殿から上がってからも何度も愛し合った。そうして密林の夜は更けていったのだった。




「リチャードさまあぁ!やっぱりオレもついていくうぅ・・・!!」
「一国の王になった者が何言ってるんだ。いい加減、親離れせんか!」

大河の船上で、伝説の英雄が盛大に大泣きし、王に叱られていた。

私たちは7日間の滞在を終え、密林の王国から出国するところだ。

「まだ言っとるのか、ゼノン!そうやって昨日も大泣きして、王女様方に引かれたばかりではないか」

ファティマ様の言うとおり、今日もリアとタクトが、なんとも言えない表情で見ている。聞くところによると、いつものことだそうだ。

「ファティマ殿、今回は世話になった。あなた方もぜひ、ローザンを訪れてほしい」

リチャード様が艶然と微笑みながら頭を下げる。あっ、この笑み!リチャード様は全く意識していないけれど、世の女性全てを魅了してしまう微笑みなのよね・・・。

「はっ、はいいっ!」

案の定、ファティマ様が顔を真っ赤にしながら、しどろもどろになっている。まずいわ、こんなのゼノン様が何と思うか・・・

「おい、リチャード様。人の女誘惑すんのやめろよな!」
急に泣き止んだゼノン様が、ファティマ様の腰を抱き寄せる。

「オレ、他のもんだったらいくらでもリチャード様にあげるけど、ファティマだけはやらないからな!」
そう言うや否や、熱烈なキスをする。

よかった!ほら、ファティマ様。ちゃんと愛されてるじゃない。

「お前も言うようになったじゃないか。呆れられて捨てられないように、頑張るんだな」
リチャード様も憎まれ口を言うけれど、表情は嬉しそうだ。



こうして私たちは、帰国の途についた。

私たちの人生の旅はまだ、始まったばかり。
王妃としては未熟なことばかりで、これからたくさんの困難が待ち受けていると思うけれど、今回の旅で、かつての敵とも分かり合えると知ったもの。

敵対する人がいても、突き放さず、分かり合えるまでぶつかろう。
何があっても諦めず、真っ直ぐに受け止めて生きて行こう。


大海の明るい空を見上げながら、私は誓った。




~・~・~・~・~・~・~・~

読んでくださった皆様、ありがとうございました。
この回で本当に完結です。
初めての連載、こんなにたくさんの方に読んでいただけて、本当に感謝しかありません。

次回作も構想中ですので、楽しみにしていてくださいね!


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みんなの感想(6件)

wawhon
2021.05.10 wawhon

色々つっこみどころしかない
毒婦皇女が公爵令嬢を下賤だとか頭沸いてるの?あんな言動した時点で正式に皇女の国に抗議もしないってどれだけ小国で立場の弱い国なんですか主人公の国は。
まあ母親が男爵令嬢なんていう貴賤結婚も甚だしい身分違いの女だったから下賤と罵られても事実だから否定しようがないですけど。そういう血筋が劣る設定必要だったのでしょうか?
このような産まれの女だったら周りから中傷されて後妻だろうが王妃なんて相応しくないと思いますけど。
現代じゃないんだから身分制度が背景にある話で読者に親しみを持たせるためかわかりませんが母親は身分の低い平民に近い人なんですよは要らない。逆に反感を持ってしまう。
平民に近くても爵位持ちとそうでないかは天と地の差がある。男爵家の娘である以上は平民ではないですし。それでも王家に次ぐ公爵家がそんなのと婚姻を結ぶのは眉を顰められるでしょう。
簡単に想像出来ますけど、この主人公だと、身分の上の人間にすり寄って母親譲りの顔と身体を使って母親と同じように上手く誑し込んだと中傷されるのが目に見えてる。
婚約者に嫌われたのもそんな血のせいだと思えば納得できる。血を重んじて血を繋ぐ階級制度ですし、それを逸脱し反故にした公爵家は異端でしかないでしょうし倦厭されてもしかたがないと思う。
主人公の家は公爵家なんですよね?なんでそんな家の人間が他国の地理も疎い人間が攫ったり出来るの?
どれだけ警備ガバガバなの?まともに護衛もいないんですか?公爵家の人間なのに??
それで攫われる公爵家の家族もアレですし、主人公ってもう王妃になれないですよね?
傷物にされたとしか思われない。無事でも何もされる前に救い出されてもそんなの嘘だと本当は穢されたと周りに良いように言われるだけでしかないのに主人公ピンチの演出に安易に誘拐話入れるのが本当に杜撰。
媚薬を口実にことを迫る男がヒーローなのも不誠実で気持ち悪さしかない。

Narian
2021.05.10 Narian

感想ありがとうございます。
細かいところまで読んでくださって感謝いたします。
至らないところも多いですが、また次回作も読んでいただけるも嬉しいです。

解除
奏瑪
2021.05.09 奏瑪

8話でタクト皇子の名前がクルトになっている箇所があったのでご報告致します。

Narian
2021.05.09 Narian

うわ。申し訳ありません。訂正させていただきますね。
ご指摘ありがとうございます

解除
2021.05.09 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

Narian
2021.05.09 Narian

あわわわ、すみません!訂正させていただきます。
作者も見落としているところを、ご指摘ありがとうございます。

解除
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