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番外編 ファティマ編01
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「ほら、降りろよ。お迎えだぜ、ファティマさんよ」
馬車が止まり、鉄格子の扉が開いて、乱暴に引きずり降ろされる。
「貴様、無礼じゃぞ!わたくしを降ろすときは地面にひれ伏して、踏み台になれと申したであろうが!」
「オレにはゼノンって名前があるって、何回教えたらわかるんだ?」
無知な御者を教育するつもりで叫んだが、御者のやつめ、まるで興味なさそうに答えおる。名前だと?下賤の者の名など、覚える必要ないわ!
「この・・・っ、手打ちにして、」
御者に掴み掛かろうとしたとき、後ろから襟首を掴まれて引き倒され、尻餅をつく。
な、なんじゃっ?!誰がこのような無礼を・・・?!
見上げると、褐色の肌をした女たちに囲まれている。
「なんじゃ、おのれら?!」
「密林の民さ。お前は密林の王国で、下働きとして暮らすんだ。」
無礼な御者ゼノンが応える。
「な、なんじゃと?!」
「民の心を知れ、とリチャード陛下のお言葉だ。せいぜいしっかり働いて、生き残るんだな」
「じょ、冗談ではないぞ?!誰が下働きなんぞ、うあああぁっ!」
そしてわたしくしは、女たちに首根っこをつかまれ、密林の奥へと引きずり込まれていったのであった。
「おのれっ、貴様、助けぬか!おいっ、お前、ゼノンーっ・・・!」
小娘の誘拐に失敗したあと、わたくしは牢屋に閉じ込められておった。王族ともあろう身が、なぜこんな扱いを受けねばならんのじゃ!
牢番はゼノンひとり。よし、不本意じゃが、この男を誘惑して取り込んでやろう。若いし見た目は悪くないしな。若くてウブな男なぞ、わたくしの色香でイチコロじゃ。
甘えるような声で、妖艶な笑みを・・・。
「あ、オレそういうの無駄だから」
なっ、なんじゃと?
「オレ、女に興味ないから。好きな男いるし」
・・・くっ!こやつ、同性愛者じゃったか!
リチャード王め、どこまでも周到じゃ。
まあよい、いずれ他の者と交代することもあろう、と思っていたが、牢を出されて移動する間も、見張りはずっとゼノン1人であった。
だから連れて来られた先で今度こそ、と思ったのじゃが。
密林の王国は、なんと女だけの国であった・・・。くっ、リチャード王め!
「ほら、これがあんたの仕事だよ。夕方までに全部洗うんだ」
恰幅のいい中年の女中から手渡されたのは、大量の汚れ布。
「はああ?!なぜわたくしが洗濯なぞせねばならんのじゃ」
「あんた下働きだろ。なんでがあるかい。さっさと洗いな」
無礼な女中はそう言って、有無を言わさず布を置いて行ったが、わたくしが洗濯なぞするわけなかろう。放置して木陰で昼寝する。
昼ごろ、女中が戻ってきた。
「あんた、全然できてないじゃないか!何やってたんだい!?」
「洗濯なぞするわけなかろう。だいたい、おまえ・・・」
「そうかい。じゃ、昼飯は抜きだよ」
なっ、なんじゃと?!
「ここじゃ、働いた分だけ食べられるようになってんだ。あんたは何もしてないんだから、飯もないさね!」
「・・・」
そして、本当に昼食はもらえなかった。
なぜわたくしが、ザッハールの第一皇女たるこのファティマが、洗濯なぞせねばならんのじゃ!
食事のため、致し方なく洗い物をするが、半分も終わらない。
夕方戻ってきた女中は不満そうだったが、夕食は半分もらうことが出来た。
だが、これが夕食か!硬いパンに味の薄いスープ、それだけ!こんなもののために働いたと思うと、情けなくなる。
まあよい、いずれ逃げ出してやる。父上もわたくしを取り戻そうと、力を尽くしておられるはず。もう少しのがまんじゃ。
馬車が止まり、鉄格子の扉が開いて、乱暴に引きずり降ろされる。
「貴様、無礼じゃぞ!わたくしを降ろすときは地面にひれ伏して、踏み台になれと申したであろうが!」
「オレにはゼノンって名前があるって、何回教えたらわかるんだ?」
無知な御者を教育するつもりで叫んだが、御者のやつめ、まるで興味なさそうに答えおる。名前だと?下賤の者の名など、覚える必要ないわ!
「この・・・っ、手打ちにして、」
御者に掴み掛かろうとしたとき、後ろから襟首を掴まれて引き倒され、尻餅をつく。
な、なんじゃっ?!誰がこのような無礼を・・・?!
見上げると、褐色の肌をした女たちに囲まれている。
「なんじゃ、おのれら?!」
「密林の民さ。お前は密林の王国で、下働きとして暮らすんだ。」
無礼な御者ゼノンが応える。
「な、なんじゃと?!」
「民の心を知れ、とリチャード陛下のお言葉だ。せいぜいしっかり働いて、生き残るんだな」
「じょ、冗談ではないぞ?!誰が下働きなんぞ、うあああぁっ!」
そしてわたしくしは、女たちに首根っこをつかまれ、密林の奥へと引きずり込まれていったのであった。
「おのれっ、貴様、助けぬか!おいっ、お前、ゼノンーっ・・・!」
小娘の誘拐に失敗したあと、わたくしは牢屋に閉じ込められておった。王族ともあろう身が、なぜこんな扱いを受けねばならんのじゃ!
牢番はゼノンひとり。よし、不本意じゃが、この男を誘惑して取り込んでやろう。若いし見た目は悪くないしな。若くてウブな男なぞ、わたくしの色香でイチコロじゃ。
甘えるような声で、妖艶な笑みを・・・。
「あ、オレそういうの無駄だから」
なっ、なんじゃと?
「オレ、女に興味ないから。好きな男いるし」
・・・くっ!こやつ、同性愛者じゃったか!
リチャード王め、どこまでも周到じゃ。
まあよい、いずれ他の者と交代することもあろう、と思っていたが、牢を出されて移動する間も、見張りはずっとゼノン1人であった。
だから連れて来られた先で今度こそ、と思ったのじゃが。
密林の王国は、なんと女だけの国であった・・・。くっ、リチャード王め!
「ほら、これがあんたの仕事だよ。夕方までに全部洗うんだ」
恰幅のいい中年の女中から手渡されたのは、大量の汚れ布。
「はああ?!なぜわたくしが洗濯なぞせねばならんのじゃ」
「あんた下働きだろ。なんでがあるかい。さっさと洗いな」
無礼な女中はそう言って、有無を言わさず布を置いて行ったが、わたくしが洗濯なぞするわけなかろう。放置して木陰で昼寝する。
昼ごろ、女中が戻ってきた。
「あんた、全然できてないじゃないか!何やってたんだい!?」
「洗濯なぞするわけなかろう。だいたい、おまえ・・・」
「そうかい。じゃ、昼飯は抜きだよ」
なっ、なんじゃと?!
「ここじゃ、働いた分だけ食べられるようになってんだ。あんたは何もしてないんだから、飯もないさね!」
「・・・」
そして、本当に昼食はもらえなかった。
なぜわたくしが、ザッハールの第一皇女たるこのファティマが、洗濯なぞせねばならんのじゃ!
食事のため、致し方なく洗い物をするが、半分も終わらない。
夕方戻ってきた女中は不満そうだったが、夕食は半分もらうことが出来た。
だが、これが夕食か!硬いパンに味の薄いスープ、それだけ!こんなもののために働いたと思うと、情けなくなる。
まあよい、いずれ逃げ出してやる。父上もわたくしを取り戻そうと、力を尽くしておられるはず。もう少しのがまんじゃ。
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