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番外編 リチャード編04
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グレイスへの想いを自覚してからというもの、僕はハラハラドキドキのしどうしで、休まる暇がなかった。
顔を合わせるのは、食事と子供たちを寝かしつけるときぐらいだから助かったけど、離れている時は姿が見たくてしょうがない。でも姿を見たらドキドキしてしまって、何を話したらいいかわからなくなる始末。
だけど僕は大人で国王だ、情けない姿は見せられないと、精一杯取り繕った。
だけどある朝リアが突然、「グレイスがおとうさまのことすきだって」なんて言ったときは、本当にどうしていいかわからなくなったよ。
好き?好きって何だ?と、疑問符ばかりが駆け巡る。
子どもの言うことだから、何かを省略してそうなったんだと思うけど、理解が追いつかないんだ。
グレイスを見たら、案の定固まってて、僕は自分が情けなかった。
僕は恋愛経験だって豊富な大人なのに、好きな女性が困ってても助けてあげられないなんて。
・・・ちょっと待て。恋愛経験豊富だって?
僕は今まで、片想いなんかしたことないじゃないか!
いいな、と思った時には相手も好いてくれてたし、ユリアーナとは婚約者として出会ってから愛を深め合った。
恋しい女性を手に入れたくて悩んだことなんて、ただの一度もなかったんだ。
なんてことだ。
僕の恋愛経験は、まるで役に立たない・・・僕はますます、途方に暮れるしかなかった。
ほどなくしてザッハール使節団が来て、僕は外交に忙殺された。
ようやく2日後に帰国という夜、ファティマ皇女が訪ねてきて、フェロモン全開で迫られる。適当にかわしてお帰り頂こうとしたんだけど・・・部屋の出入り口まで見送ったとき、不意の熱烈なキス。油断したよ。
やれやれ、どうやってあしらおうかと考えたとき、ありえないものが目に入った。なんとそこに、青い顔をしたグレイスがいたんだ!
目が合った瞬間、彼女は駆け去って・・・僕は後先考えずに彼女を追っていた。
グレイスは、庭園の東屋にいた。
彼女は明らかに取り乱している。ファティマ皇女とのことを怒っているようだけど、なぜグレイスが怒るんだ?わけがわからない。だけど、こんな彼女を放っておけない。
あれは事故だと伝えるけれど、彼女は聞く耳を持たないんだ。
誤解されたまま帰せるものか!走って暴れて逃げようとするから、僕は思わず、彼女を押さえつけてしまった。
断じて言うけど、僕は今まで女性を押さえつけたことなんかないんだ。グレイス相手だと、どうしてこう、調子が狂うんだろう。
両手が彼女の肌に触れ、怒りに上気した彼女の顔が、息の掛かるほど近くにある。
そんな爆発寸前の状況で、彼女が言ったんだ。
僕が他の女に触れるのが、ゆるせないと。気が狂いそうだと。
・・・これは夢か?グレイスが、嫉妬してる?
彼女も、僕に恋してるというのか?
もう限界だった。彼女は今、僕の腕の中にいる。この時を逃してなるものか。
僕は想いに任せて口付けをした。
彼女の唇は柔らかくて熱くて、もうこのまま、どうにでもなれと思った。
彼女を抱き上げて、小屋に入り、ベッドに押し倒す。キスして、名前を呼ばせて、何度も彼女を呼んで。
彼女の吐息も熱くなっていた。こうなったらもう止まらない。ドレスのボタンを外し、そっと引き下ろすと、雪のような素肌が露わになった。なんて白くて滑らかな肌なんだ!
震えながら触れようとしたとき・・・急に彼女が拒絶の声を上げて、僕を突き飛ばしたんだ。
グレイスは怯えたような目をして、微かに震えている。
僕ははっと我に返った。
僕は、いったい何をしようとしてたんだ?彼女の気持ちも確かめず、一方的に暴走するなんて!グレイスを傷つけるつもりだったのか?!
自分で自分が赦せなかった。彼女に服を着せ、立ち去ろうとする。このままそばにいたら、何をするかわからない。
だけど彼女は、僕にしがみついて来て言ったんだ。嫌だったんじゃない、ただ恥ずかしくて怖かったんだと。
だめだな、僕は。女性にこんなこと言わせるなんて。どこまで余裕がないんだろう。何が大人だ。
愛してる。
僕は告げた。こういうことはまず、愛を告げてからだろう。そしたら彼女も返してくれた。僕は天にも昇る心地だった。
それからのことは、もう無我夢中で、よく覚えていない。
彼女の肌は滑らかで、彼女の声は官能的で、吐息は熱くて、蒼い瞳は吸い込まれそうに深くて。
気遣ったつもりだけど、どこまで優しくできたかは自信がない。それくらい、彼女は素晴らしかった。
顔を合わせるのは、食事と子供たちを寝かしつけるときぐらいだから助かったけど、離れている時は姿が見たくてしょうがない。でも姿を見たらドキドキしてしまって、何を話したらいいかわからなくなる始末。
だけど僕は大人で国王だ、情けない姿は見せられないと、精一杯取り繕った。
だけどある朝リアが突然、「グレイスがおとうさまのことすきだって」なんて言ったときは、本当にどうしていいかわからなくなったよ。
好き?好きって何だ?と、疑問符ばかりが駆け巡る。
子どもの言うことだから、何かを省略してそうなったんだと思うけど、理解が追いつかないんだ。
グレイスを見たら、案の定固まってて、僕は自分が情けなかった。
僕は恋愛経験だって豊富な大人なのに、好きな女性が困ってても助けてあげられないなんて。
・・・ちょっと待て。恋愛経験豊富だって?
僕は今まで、片想いなんかしたことないじゃないか!
いいな、と思った時には相手も好いてくれてたし、ユリアーナとは婚約者として出会ってから愛を深め合った。
恋しい女性を手に入れたくて悩んだことなんて、ただの一度もなかったんだ。
なんてことだ。
僕の恋愛経験は、まるで役に立たない・・・僕はますます、途方に暮れるしかなかった。
ほどなくしてザッハール使節団が来て、僕は外交に忙殺された。
ようやく2日後に帰国という夜、ファティマ皇女が訪ねてきて、フェロモン全開で迫られる。適当にかわしてお帰り頂こうとしたんだけど・・・部屋の出入り口まで見送ったとき、不意の熱烈なキス。油断したよ。
やれやれ、どうやってあしらおうかと考えたとき、ありえないものが目に入った。なんとそこに、青い顔をしたグレイスがいたんだ!
目が合った瞬間、彼女は駆け去って・・・僕は後先考えずに彼女を追っていた。
グレイスは、庭園の東屋にいた。
彼女は明らかに取り乱している。ファティマ皇女とのことを怒っているようだけど、なぜグレイスが怒るんだ?わけがわからない。だけど、こんな彼女を放っておけない。
あれは事故だと伝えるけれど、彼女は聞く耳を持たないんだ。
誤解されたまま帰せるものか!走って暴れて逃げようとするから、僕は思わず、彼女を押さえつけてしまった。
断じて言うけど、僕は今まで女性を押さえつけたことなんかないんだ。グレイス相手だと、どうしてこう、調子が狂うんだろう。
両手が彼女の肌に触れ、怒りに上気した彼女の顔が、息の掛かるほど近くにある。
そんな爆発寸前の状況で、彼女が言ったんだ。
僕が他の女に触れるのが、ゆるせないと。気が狂いそうだと。
・・・これは夢か?グレイスが、嫉妬してる?
彼女も、僕に恋してるというのか?
もう限界だった。彼女は今、僕の腕の中にいる。この時を逃してなるものか。
僕は想いに任せて口付けをした。
彼女の唇は柔らかくて熱くて、もうこのまま、どうにでもなれと思った。
彼女を抱き上げて、小屋に入り、ベッドに押し倒す。キスして、名前を呼ばせて、何度も彼女を呼んで。
彼女の吐息も熱くなっていた。こうなったらもう止まらない。ドレスのボタンを外し、そっと引き下ろすと、雪のような素肌が露わになった。なんて白くて滑らかな肌なんだ!
震えながら触れようとしたとき・・・急に彼女が拒絶の声を上げて、僕を突き飛ばしたんだ。
グレイスは怯えたような目をして、微かに震えている。
僕ははっと我に返った。
僕は、いったい何をしようとしてたんだ?彼女の気持ちも確かめず、一方的に暴走するなんて!グレイスを傷つけるつもりだったのか?!
自分で自分が赦せなかった。彼女に服を着せ、立ち去ろうとする。このままそばにいたら、何をするかわからない。
だけど彼女は、僕にしがみついて来て言ったんだ。嫌だったんじゃない、ただ恥ずかしくて怖かったんだと。
だめだな、僕は。女性にこんなこと言わせるなんて。どこまで余裕がないんだろう。何が大人だ。
愛してる。
僕は告げた。こういうことはまず、愛を告げてからだろう。そしたら彼女も返してくれた。僕は天にも昇る心地だった。
それからのことは、もう無我夢中で、よく覚えていない。
彼女の肌は滑らかで、彼女の声は官能的で、吐息は熱くて、蒼い瞳は吸い込まれそうに深くて。
気遣ったつもりだけど、どこまで優しくできたかは自信がない。それくらい、彼女は素晴らしかった。
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