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06野生馬のように
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さっ、最悪・・・。最悪だわ!
よりによって陛下に、あんな姿を見られてしまうなんて。
きっと、なんて品がなくておかしな娘だろう、と思われたに違いないわ。
陛下に羽毛姿を笑われてしまった日の夕方。
夕食の部屋に着いた時も、私は涙目になりそうなのを堪えて、ため息を繰り返していた。
ふと、リア王女が、不安そうな表情で私を見上げていることに気付く。いけない、心配させちゃったんだわ。
「リア様、大丈夫ですよ。ちょっとはしゃぎ過ぎてしまって、恥ずかしかっただけですわ」
安心させようとそう言ったのだけれど、リア様の顔は曇ったままだ。
と、何かを決意したように、リア様が口を開く。
「グレイスはお父さまのことキライなの?」
えっ?!ええっ?
なぜそんな話に?
「だってグレイス、お父さまがいるときはぜんぜんわらわないし、おはなししてても、たのしそうじゃないんだもん」
・・・?!?!
ああ、子どもにはそう見えていたのね。
三ヶ月の間、陛下の前では固まって無口になるか、せいぜいぎこちない笑顔を返せるだけだったもの。
こんな可愛い王女様を悩ませるなんて、大人失格だわ・・・。
「不安にさせて申し訳ありません、リア様。
私が陛下を嫌いだなんて、そんなはずがないではありませんか。
この国に、陛下を嫌う者などおりませんよ」
私はそう言うと、椅子から降りて膝をつき、リア様と目線を合わせる。
リア様は聡く繊細な方だ。
適当なごまかしでは、納得なさらないだろう。
「国王陛下があまりにお美しくて、どうしてよいかわからなくなってしまうのです。
ドキドキして、怖くなって逃げ出したくなるような・・・」
「きれいだと、こわいの?」
「例えばリア様は、馬がお好きでしょう?
ある日草原で、とても美しい野生馬に出会ったとします。
リア様はどうなさいますか?」
「んんと、さわりたいけど、こわいな。
だってちかづいたら、にげてしまうかもしれないもの」
「そうでしょう。
野生馬というのは、誇り高く警戒心が強い生き物です。不用意に近づいたら、驚いて逃げてしまう。
だから、遠くからひっそり息を殺して眺めるのです。だって、いつまでも見ていたいですものね」
「んー」
リア王女が、かわいらしいお顔をしかめて考えていらっしゃる。
馬の喩えでは、わかりにくかったかしら?
「じゃあグレイスはお父さまのこと、やせいのうつくしいウマのように、すきだってこと?」
「ええ、そうですよ。リア様が馬をお好きなように、、」
「あっ、お父さまー!」
話終える前に、陛下がいらっしゃった。
「やあ、リア、タクト、グレイスも」
「はいっ、陛下。ごきげんうるわしゅう」
私は立ち上がり、どうにか合格点の礼で挨拶する事ができた。
リア様とタクト様は、いつものように陛下に飛びついている。
陛下と顔を合わせるのはとても恥ずかしいけれど、リア様を不安にさせてはいけない。
リア様の不安は、タクト様にも伝わるし。
人知れず決意を固めて、緊張しながらも笑顔を向けたときだった。
「お父さま、あのね。グレイスがお父さまのことすきだって」
?!?!
リア様っっっ??!!
「それでね、お父さまのこといつまでもみていたいし、さわりたいって」
?!?!☆※★☆※?!!
うっ、嘘でしょう?!
リア様ったら、核心つきすぎっ。
じゃなくて・・・っ。
私は耳まで真っ赤になって、額から汗が出るのを感じた。それでもうつむくわけにもいかず、恐る恐る陛下のほうを見た。
すると、なぜか陛下も顔を赤くして絶句していらっしゃる。
ええっと・・・。
お困りなのよね。
当然よね。
夕食は、ひさしぶりに食べた気がしなかった。
リア様の話は、すぐ今日のできごとに移ったから、よかったけれど。
よりによって陛下に、あんな姿を見られてしまうなんて。
きっと、なんて品がなくておかしな娘だろう、と思われたに違いないわ。
陛下に羽毛姿を笑われてしまった日の夕方。
夕食の部屋に着いた時も、私は涙目になりそうなのを堪えて、ため息を繰り返していた。
ふと、リア王女が、不安そうな表情で私を見上げていることに気付く。いけない、心配させちゃったんだわ。
「リア様、大丈夫ですよ。ちょっとはしゃぎ過ぎてしまって、恥ずかしかっただけですわ」
安心させようとそう言ったのだけれど、リア様の顔は曇ったままだ。
と、何かを決意したように、リア様が口を開く。
「グレイスはお父さまのことキライなの?」
えっ?!ええっ?
なぜそんな話に?
「だってグレイス、お父さまがいるときはぜんぜんわらわないし、おはなししてても、たのしそうじゃないんだもん」
・・・?!?!
ああ、子どもにはそう見えていたのね。
三ヶ月の間、陛下の前では固まって無口になるか、せいぜいぎこちない笑顔を返せるだけだったもの。
こんな可愛い王女様を悩ませるなんて、大人失格だわ・・・。
「不安にさせて申し訳ありません、リア様。
私が陛下を嫌いだなんて、そんなはずがないではありませんか。
この国に、陛下を嫌う者などおりませんよ」
私はそう言うと、椅子から降りて膝をつき、リア様と目線を合わせる。
リア様は聡く繊細な方だ。
適当なごまかしでは、納得なさらないだろう。
「国王陛下があまりにお美しくて、どうしてよいかわからなくなってしまうのです。
ドキドキして、怖くなって逃げ出したくなるような・・・」
「きれいだと、こわいの?」
「例えばリア様は、馬がお好きでしょう?
ある日草原で、とても美しい野生馬に出会ったとします。
リア様はどうなさいますか?」
「んんと、さわりたいけど、こわいな。
だってちかづいたら、にげてしまうかもしれないもの」
「そうでしょう。
野生馬というのは、誇り高く警戒心が強い生き物です。不用意に近づいたら、驚いて逃げてしまう。
だから、遠くからひっそり息を殺して眺めるのです。だって、いつまでも見ていたいですものね」
「んー」
リア王女が、かわいらしいお顔をしかめて考えていらっしゃる。
馬の喩えでは、わかりにくかったかしら?
「じゃあグレイスはお父さまのこと、やせいのうつくしいウマのように、すきだってこと?」
「ええ、そうですよ。リア様が馬をお好きなように、、」
「あっ、お父さまー!」
話終える前に、陛下がいらっしゃった。
「やあ、リア、タクト、グレイスも」
「はいっ、陛下。ごきげんうるわしゅう」
私は立ち上がり、どうにか合格点の礼で挨拶する事ができた。
リア様とタクト様は、いつものように陛下に飛びついている。
陛下と顔を合わせるのはとても恥ずかしいけれど、リア様を不安にさせてはいけない。
リア様の不安は、タクト様にも伝わるし。
人知れず決意を固めて、緊張しながらも笑顔を向けたときだった。
「お父さま、あのね。グレイスがお父さまのことすきだって」
?!?!
リア様っっっ??!!
「それでね、お父さまのこといつまでもみていたいし、さわりたいって」
?!?!☆※★☆※?!!
うっ、嘘でしょう?!
リア様ったら、核心つきすぎっ。
じゃなくて・・・っ。
私は耳まで真っ赤になって、額から汗が出るのを感じた。それでもうつむくわけにもいかず、恐る恐る陛下のほうを見た。
すると、なぜか陛下も顔を赤くして絶句していらっしゃる。
ええっと・・・。
お困りなのよね。
当然よね。
夕食は、ひさしぶりに食べた気がしなかった。
リア様の話は、すぐ今日のできごとに移ったから、よかったけれど。
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