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21 疾風の英雄って

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「あーその、本当なのか?疾風の英雄にいたっていうのは」

 二人の言葉に驚いていたギルドマスターが気を取り直して聞いてくる。

「ああ、本当だ、とはいってももう関係ないから気にしなくていいぞ、言ってることが事実だろうってのはわかっているからな」

 その言葉にホッと一息ついてマスターが口を開く。

「そりゃよかった、流石にあれを面前で言うのは拙いからな、すまねえが黙っていてくれないか」

「ああ、気にする必要ないぞ、それについては理解出来るからな、それにパーティを追い出された俺がそれを教えてやる義理もない」

「そうか、助かる」

 そういって胸を撫で下ろすギルド陣営。

 と、そこへルイスが口を開く。

「そういえばお兄ちゃん、全員伸して抜けてきたって言ってたけど、なんで追放されたの?」

 その言葉に空気が凍る。

 なんていうか、そんな見え見えの地雷踏んじゃうの!?っていうような驚きの顔を見せる面々。

「あー、それな、俺の戦い方って割と地味だろ?それに割と地味な事もよくやるんだけど、あいつらとは真逆なわけよ」

「え、あれで地味なの!?」

 驚きの表情を浮かべるルイス。

「そうだぞ、地震起こしたり、街の一区画を焼き払ったり、そういうのを魔術一つとか技一つでやるのがアタッカーだからな、それに比べたら俺のは地味だし威力あるように見えないぞ」
 
「そ、そうなんだ、化け物ね……」

 若干引き気味になってきた。

「そうはいっても多分それだけじゃリンも捌くからな、高ランクってのはそんなもんだぞ」

「あっちもだけど、リンちゃんも規格外ね」

 その言葉に驚きを通り越して呆れの表情を浮かべるルイス。

「そりゃ、あの親にしてこの子だからなぁ」

「よくわからないけどリンちゃんすごいのね」

 そういってリンの頭をなでると。

「ロイドお兄さんはお母さんにも勝った」

 何気なく言った言葉にまたしてもルイスは驚きで顔を満たす。

「え、お兄ちゃん、それって……」

「あー、まぁ、そういうことだ」

 頭をかいて肯定するしかなかった。

「一番の化け物はお兄ちゃんね……」

 溜息をつくようにいった言葉に全員が同意するのだった。

 何故だ!?




 いたたまれない空気を暫く味わった後に話しを戻す。

「とりあえず、そういう事であいつらの攻撃だけで大抵の依頼は終わって俺は解体とか運搬っていう雑用メインでしていたんだが。それがお荷物に見えたみたいでな。」

「理解できませんね……」

「そうだな」

「まぁあいつらにやらせるとゴミになるからやらせなかった俺にも原因があるかもしれないが、派手な分暫く魔物も近寄らないから先に帰るわけよ」

「最低ですね」

「信じられないよね」

 憤懣やるかたないといわんばかりに憤るアンジェとルイス

「そういう訳で雑用についてあいつらは誰でも出来るって思ってる訳だな、で、俺がいると分け前が減る、パトロンもついたから人も提供される、だから出て行けってなったわけだな」

「そりゃまた……」

「驚くほどに物が見えてないですね」

 呆れるギルド組

「それでだ、地竜を持って帰ってきたら酒盛りして挙句追放だのなんだの言ってきたからムカっときてな、報酬を分割していれた袋で顎を打ち抜いてその場で抜けてきたって訳だよ」

「それはまた……」

「やっぱり一番の化け物はお兄ちゃんだった」

 その言葉に首を縦に振る面々。

「いや、そんな大したことじゃないだろ?酔っ払ってる上に油断してるような奴等だぞ?そこに奇襲をかければ誰だって簡単にできるだろ」

 反論を返すが反応は芳しくない。

「あー、ロイド?一応俺も元S級冒険者なんだが、SS級とべろんべろんになるまで酒を飲んでも、そんなこと出来る気がしないぞ?」

「あー、あの?」

「奥様未だに現役ですもんね」

「そうなんだよ、昔っから勝てた試しがない上にあれで本人は魔道士って言い張るんだからな、勝てる気がしねえよ」

 そういってお手上げとばかりに両手をあげて手を振るマスター

「そんな事言って、しっかり子供3人も作ってるくせに」

「ば、それはだな」

「わかってますって、家ではいいパパしてますもんね?」

「挙句孤児院の子供達を守れって訓示までして」

「ば、あれはマリアの奴がだな」

「はいはい、わかってますって」

「夫婦そろって無類の子供好きだって皆分かってますからね?」

「そうですよ、子供の守護者って皆呼んでるの知らないわけないですよね?」

 そう言ってニヤニヤとマスターを見るライドとナディの二人に何とも言えない表情のマスター、満更でもなさそうなんだが、恥ずかしいような、そんな感じで唸っている。

「あのー、もしかして炊き出しの時の冒険者の人達って」

「そうですよ、孤児院で育って人が主にしてますけど、あれ、マスターの差し金です」

「たまに自腹で警護させてるくらいですし、間違いないですよ」

「そうなんだ、えっと、ありがとうございます」

 そう言って頭を下げるルイスにマスターは言葉に詰まるが。

「お、おう、マリアにも言っとく。それはそうとして、そういうわけだからロイド、お前も間違いなく化け物といわれるレベルで間違いない」

 話しを強引に切って元に戻したマスターに不承不承に首を縦に振るしかできない。

 そしてその後に続く言葉が、国の命運を左右することになった。

「そういう訳でだ、これは俺の考えなんだが、指名依頼を出させてもらいたいと思っている、依頼内容は……」
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