猫の手は借りたくない

ミャア

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色々(etc)振り回される猫 その4

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「おいおい、手加減してやれよ?」
笑いながら別の男が声を掛ける。

完全に舐められているロストである。
「と、言うか大丈夫なのロストちゃん?」

「大丈夫だよ! ……最悪未夜が居るし、フレクション、あるし……」
声を張り上げた後、凄い嫌そうにロストは言う。

「……ん? 未夜だと?」
ロストが言った未夜と言う言葉に観戦していた男が反応する。

「あ? 誰だそれ?」

「最近話題の『猫の手』のリーダーだよ! あの曰くつきスキルの!」
曰くつきスキル、未夜はそんなスキルを持っていた。

「げ、あの『強力なバフを付ける代わりに厄介なデバフも付く』と言う、あの残念スキルで有名なあの黒猫の未夜か!!」

「んー知ってるかなキミ達、猫も涙は出すんだよ?」
余りの言われように笑顔の端の目じりから涙が一滴零れる未夜。

「……そう言う訳だから、大人しく引いてくれない?」
とっても嫌そうにロストは言う。
それ程未夜のスキル、フレクションを受けたく無いのだろう。

毎度の事ながら、誰も心良く未夜のスキルを受けようとはしない。

「は、知るかよ! そんなのやったところでチビはチビだろ!」
しかしロストと対峙しようとした男は怯まずロストと戦闘をしようとする。

「はぁ~~~~~~~………」

「あのーロストさん…… 幾ら何でも露骨にため息付きすぎです」
本当に嫌なのかとっても長いため息を付くロスト。

「手加減しねぇぞチビ! 大人の怖さを教わりな!」

「……未夜お願い」

「はいはいミャアミャア、素早さアップの『フレクション』!」
ロストにフレクションを掛ける未夜。

「後悔しやが----」
と、男が拳をロストに当てるよりも早く、
「がぁぁぁぁーーーー!!?」

「っと」
気付いた時には、男が短剣で切られてやられていた。

「…………………………は?」
長い沈黙の後、男の一人がそう呟いた。

「次、どうする?」
男達に向かってロストは言う。

先ほどまでとは違い、妙な気迫がロストにはあった。

「------に、逃げろーーー!!」

「ま、待て! こいつを置いてくな!」
ロストに倒された男を背負って、男達は一目散に逃げてしまった。

「大丈夫かいお嬢さん?」
未夜はローブの少女に駆け寄って言う。

「ええ、大丈夫よだー。ありがとうねー」
何処か可愛さをアピールするような口調で少女は言う。

未夜は一瞬作り可愛さをするウザい女子を思い浮かべたが、まぁきっと素なのだろうと思い直す。
素ならば仕方が無い。

「そこの小さい君もありがとうねー」
少女はロストにもお礼を言う。

が、
「うえぇぇぇぇーーーーん!!」

「わっとー!」
何故か唐突にロストが泣き出して、ローブの少女にしがみ付く。
その拍子でローブが捲れ上がり素顔が露わになる。

ローブの少女は長い金髪の髪に蒼い瞳、それから怪我でもしたのかほっぺにガーゼが張られていた。

「えーーーん! エトセトラってアイドルのコンサート行きたかったよーーー!!!」

「………えーとー?」
突然の事に困惑するローブの少女。

「あー、ごめん、これワタシのフレクションのデメリット効果で感情制御が出来なくなってるっぽいね……」
未夜のスキルのフレクションの強力効果の代償のデメリット効果、どうやら今回は『感情制御が出来なくなる』デバフのようだった。

「いやー、これは相手逃げてくれて助かったな…… 下手したらロストちゃんが泣いて戦闘不能になってたわ……」
あいつらがヘタレで良かったと思う未夜。

「と言うかさ、そんなにエトセトラって子のコンサート行きたかったの? 別に歌も姿も知ら無いよね?」

「だって気になるんだもんーーーー!!」
わんわんと泣きながらロストは言う。

「気になる気になる気になるーーー!! 僕も歌声聞いてみたいーーー!!」

「あー、ごめんねお嬢ちゃん」

「気にしないでー」
完璧スマイルで少女は言う。

「………………」
……それにしても、顔立ちと言い、口調と言い、何だかアイドルめいた少女だな。
未夜は少女の立ち振る舞いを見てそう思った。

「ほらほら泣かないー」

「うぅ……」
少女に頭を撫でられて少しだけ落ち着いたロスト。

「ほら、そんなに見たいならこれ上げるよー?」
そう言って少女が差し出したのは……

「え、えー! み、未夜未夜!!」

「ん? 何これ……? って、エトセトラのライブのプレミアムチケット!?」
渡された物を見て見ると、どうやらライブのプレミアム席チケットのようだった。
しかも二つ分。

「って、あれ? チケットの発売は三日後じゃ……?」

「ちょーっと別ルートで先に貰っててねー?」
イタズラっぽく少女は言う。

闇ルート……では無いよね……?
まぁ、チケット販売の事は知らないしそうゆうのもあるのだろうと思う未夜。

「い、良いのそんなのを貰って!」

「うん良いよー。助けてくれたお礼と、持っててもまたあーんな男どもにカツアゲされるだけだからねー」

「わーい! やったやったありがとう!!」
まだフレクションのデバフが抜けて無いのか、精一杯の喜びを見せて、少女に抱き着くロスト。

「え、えーとー……」
予想外に喜ばれて少し顔を赤くして未夜の事を見る少女。

「そろそろデバフ効果切れるだろうし、もう少しお待ちを」

「んー! ありがとうー!!(すりすり)」

「あー、あー…… ちょーっと可愛さで持たなそうなんだけどー……」
すりすりと顔を擦り付けるロストの姿を見て心を射抜かれそうな少女。

「ありが………」
しばらくすりすりをしていたロストだったが、段々とすりすりの速度が遅くなっていき、まるで電池が切れたかのようにピタっと止まるロスト。

「お、正気に戻った?」
未夜はロストに近づきそう言うと……

「いだだだだだだだだ!!?」
素早く少女の元を離れて未夜の尻尾の一つを引っ張るロスト。

「もー! だから未夜のコレは嫌なんだよー!」

「やめっ、やめっ!! 千切れる千切れる千切れる!!」

「ごめんなさい、お見苦しい所を見せてしまって……」

「い、いやー大丈夫だよー?」
果たしてそのお見苦しい所と言うのはロストの過剰な喜びか、それとも目の前の今にも意識が飛びそうな程痛がっている未夜の事か悩む 少女であった。

「限界! もう尻尾限界!!」

「ならもう片方の尻尾を引っ張ってあげるよ」

「そこのお嬢さん、お願い助けて! 助けて!!」

「……もうその辺でねー」
少女になだめられ、ようやく未夜の尻尾を離すロスト。

「はぁ、はぁ…… に、人間に戻るかと思った……」

「別に尻尾が無くなったところで人にはならにと思うけど」
その場で倒れこむ未夜にぽつりとロストが一言。

「ふふ、仲が良いんだねー」

「どうしてそうなる……」
ぜぇぜぇと喘ぎ倒れる未夜とそれを冷たい目で見るロストを見て、少女は笑ったのだった。

「あ、ありがとう止めてくれて……」
ようやく未夜が立ち上がり、少女にお礼を言おうとして、ふと。

「……そう言えば、お嬢さん、キミの名前を聞いてなかったね」

「あ、この私ー?」

「その私」
一人称妙に傲慢ちきだな…… 未夜はそう思った。

「この私の名前はー…… 『エトラ』で良いよー」

「エトラ……?」
その名前、何処かで聞いたような…… いや、気のせいか。

「エトラさんだね。そう言えば僕も名乗って無かったな。僕はロスト、それからこっちの黒猫が……」

「未夜ちゃんだよ」

「ロストに未夜だねー」
と、エトラは未夜を見て、次にロストをげしげしと見て……

「……ロストって、男の子?」

「女の子!!」
見た目が少し男の子に似ている為か、エトラにそう言われるロスト。

「へぇー、そうなんだー。ふんふんふん……」

「本当に女の子だよ!!」
エトラの顔を見てロストが再び叫ぶ。

きっとロストにはエトラの顔がからかってるように見えただろうが、未夜にはそのエトラの顔が、明らかロストを狙っている顔に見えた。

もしかしてエトラってそうゆうボーイッシュな女の子が好みなのだろうか……
そう未夜が思って居ると、

「ねぇロストちゃんー」
と、エトラはロストに抱き着いて、

「え、な、何!?」

「実はこの私さー、この街に来るの初めてなんだよねー。だからさ、チケットのお礼と言っちゃなんだけど、ちょーっと街を案内してくれると助かるんだけど……」

「あ、うん! それは全然良いよ!」
未夜の予想通りロストにナンパを仕掛けるエトラ。

そしてそのナンパを快く了承するロスト。
まぁ、ロストにこれがナンパだと思えるほど察しも歳も無いのだろうが。

「んー、じゃあお二人で楽しんでおいで」
逆に察しが良かった未夜はめんどくさい事をしなくて良いようにその場を離れようとしたが、

「未夜も一緒に! チケット二枚分貰ったんだし」

「えー……」
ワタシ邪魔でしょ? と逃げる口実を作る為に未夜はエトラを見るが……

「折角ここで出会ったんだし、一緒に観光しようよー」

「えー……」
まさか誘って来るとは予想外の未夜。

「あー、もう分かったよ」
そう言われては仕方が無いと思い、未夜もエトラの観光に付き合う事にしたのだった。
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