彼の隣に私は似合わない

うさみ

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6月

荒れ模様の文化祭-02

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心地よい沈黙の中、学校へ着いた


 

もう既に準備に取り掛かっている人も何人かいたが、普段からは想像できないほど静かな校内


 
控室仕様になっている教室で、場所は違うがいつものように隣合って座る


 
座った途端に襲ってくる眠気と戦いながら、膝に乗せたリュックの中を漁る



 


「恭介くん、こっち向いて目瞑って」


 


同じく眠そうな恭介くんは黙って私の言葉に従う



特別イケメンと騒がれる顔立ちではないが、日本人らしいパーツと凛々しさが伺える彼の顔が実は好きだ


裕太は真逆で、欧米とのハーフ顔


裕太のことは好きだけど、思い出やら性格やらを取り除いて容姿だけを見るのなら、私は恭介くんの方が好みというやつだ



普段のきりっとした雰囲気はどこえやら、眠気と閉じられた目により幼く見えるのもまたギャップというものだろうか、推せるというのはこんな感情なのかもしれない



目を閉じたのはいいものの何もされないのを不思議に思ったのか、目の前で片目だけが開かれる



 

「…してくれるんじゃないの?」




「…うん、するよ。ごめんね、眠くてぼーっとしてたのかも」





パッと浮かんだ適当な言い訳を並べて再び目を閉じてもらう




剣道をしているからか、背筋がいつも伸びていて顔が少し遠い



腰を浮かせて椅子ごと距離を詰めて、メイクを施す


 



「うん、できたよ」





なかなか上手に隠せたのではないだろうか


メイク感もないし上出来だろう



だが恭介くんは目を閉じたまま


 

「京介くん?」



肩を軽く叩くとびくっとした後目を開いた




 



っ…これ顔近い






 
そんな私の動揺にも気付かない彼はさらなる追い打ちをかける





 
「ごめん…寝てた。落ち着くからかな」






 
目元を緩ませ、包み込むような雰囲気の笑顔に全身の熱が顔に集まる


 

すぐさま椅子を引き距離を取る



顔をそらすように机の上のメイクポーチのなかをガサゴソと漁る



 
「い、一応…確認してみて」





顔はそのまま、手だけ彼の方に差し出し鏡を渡す




 

「私も自分のやってくるから、待ってて」


 


メイクポーチを掴み教室を足早に出た
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