彼の隣に私は似合わない

うさみ

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6月

非常事態と文化祭-01

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「えー、とりあえず中間試験お疲れ。次はお前らお待ちかねの文化祭だ。このHRで説明とクラスの出し物決めるから話ちゃんと聞いとけよ」


試験前の勉強会が功を奏し、4人とも成績は過去最高のものであった。

試験が終わったと思えば文化祭、忙しない感じが高校生っぽくて少しわくわく…なんて一ヶ月前の私なら安易に思っていた。


不覚にもあの勉強会で少し…いや、かなり恭介くんに心臓を打ち鳴らされてしまった。


もちろんそれが高校生にしては長い10年の片想いには遠く及ばないのだが。

しかし意識してしまったのは事実で、若干のぎこちなさが未だに残っていることも否定できない。

少し距離感を改めればあの日の心臓の高鳴りも忘れることはできるはずだが、



「だいたいの説明は以上だ。あとは学級委員の…宮下と矢上、前出て詳しく進めろ」



この通り距離は置かせてもらえない。


仕事は大してないから、と4月に作戦の一環として推薦を受け入れてしまったことを今更後悔している。

推薦者が裕太と李雪というのも悲しい話だ。






「…それではまず、文化祭の実行委員を男女1名ずつ選びます。主な仕事は先生が説明した通り、私達学級委員と一緒に文化祭全体の運営とクラスの指揮を取ることです。」


「推薦でも立候補でもなんでもいいから誰かいるか?」



先程までなにをするのかとか、楽しみだねとかと騒いでいたクラスメイトがしんと黙ってしまう。



「あのー、三芳くんと李雪ってふたりと仲いいからいいんじゃない?私ふたりを推薦しまーす」



自分がやりたくないというのが伝わってくるが、推薦理由としては妥当だ。



「…って言うことだけどふたりはどうだ?」




「えっとね、誰もいなかったら私達が立候補しよっかって言ってたから全然いいよ!むしろ私達で大丈夫か不安なくらいだよ。ね、裕太」


「そうそう!俺たちで不安なやつもいるだろうけど、頼もしい学級委員ふたりがついてるから安心していいぞー!」



ふたりの明るい雰囲気に固くなっていた教室の空気が和らいだのを感じた。


感謝の意を込めて李雪に微笑みを向けると、すぐに気が付いてもっと大きな笑顔を返された。


彼女のこういうところが、長年の片想い相手を取る-私のものでもないのだが-かもしれないけど嫌いになれない理由の一つだ。


きっと恭介くんもそういうところが好きなのだろう。


そう思い彼を見やると驚いたような表情をしていた。

彼にも可愛すぎてびっくりとかあるのかと思うと微笑ましくなった。
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