彼の隣に私は似合わない

うさみ

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4月

1年A組

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中学生の頃はあまり利用しなかった駅。
 
私達の家からはギリギリ徒歩圏内だが、少々複雑な地形も相まって到着が思いの外遅れてしまった。

それを見越して余裕を持って家を出たのは正解だった。

駅に着けば、同じ制服を着た人や学校名が入ったジャージを着た人が何人かいる。


「こっからはあの人たちに着いてけば絶対着けるな!」



そわそわしているのを抑えきれない大型犬みたいで非常に愛らしい。

花粉症というのもあるが、マスクをつけてきて本当に良かったと思う。

それがなければ今頃私はニヤニヤした変な女認定をされていただろう。

これが1ヶ月は堪能できるかと思うと幸せすぎてどうにかなりそうだ。





その後来た電車に乗り、揺られること十数分。

空いていた1人分の席を私に譲って、目の前に立つ彼の姿は何時間でも見ていられそうだった。

スマホを弄る彼とたまに目が合うと、どした?と言っているような優しい顔もたまらなく大好きだ。


電車を降りそこから十数分歩き、ようやくこれから3年間お世話になる学校に到着した。

校門を抜けると、人が集まっているのが見える。


「あそこでクラス見れるみたいだな」


「…見えるかなぁ」


残念ながらあまり背が高くない私にはかなりの無理ゲーのように思える


「俺がお前の名前も見つけるから心配すんなって」


頭にポンとさり気なく置かれた手の温度と大きさにドキッとする


「ほんと、ずるい…」


きっともう聞こえていないであろう彼の背中にそんな言葉を投げかける

中学ではバレーをやっていた彼は背も高く、周りと比べても頭半分くらい大きい

一番後ろからでも余裕で見えるらしく、すぐに戻ってきた。



「俺も鈴乃もA組だったぜ!他に知ってる名前いなかったから、鈴乃がいてくれてよかったー」



弾けんばかりの笑顔でそんなことを言われたら勘違いしてしまいそうだ。
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