愛されたい。

いちご食べたい人

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目が離せなかった。僕にあんなに優しい目を向けてくれる人は誰もいなかったから…

「ほら、アクィラも彼に自己紹介してないんじゃないの?」

僕が騎士様を見つめているとポールさんがまた勘違いをしていた。はぁ、言葉を話せないってこんなに不便なんだな…僕そんなに不機嫌そうに見えるのかな?

「そうだったな、すまない。アクィラだ、この国にある4つの騎士団の1つの黒曜の騎士団で隊長をしている。…助けに来るのが遅くなってすまなかった。もう少し早かったら君の足は無くならずに済んだかもしれない。」

騎士さ…アクィラさんが気を病むことはないのに。あんな場所にいた僕が悪いんですから。(いた理由もわからないんですけどね…)
って伝えたいけど…伝える手段がない。なんとか伝えようと、握ってくれている手の甲に僕のもう片方の手を乗せて優しくトントンと触れた。

青が混じっている綺麗な黒い目と再び目があった。僕はアクィラさんの目を見てゆっくりと首を横に振った。

アクィラさんのせいじゃないです。

「…気を遣ってくれるのか。優しいな君は。まだ完全に身体が回復していないんだろ?食事を用意するよう頼んでくる。一度きちんと顔を見て話したかったんだ。俺は仕事に戻るから、きちんと食事をしてまたゆっくり休むといい。何があったのか君の話を聞くのも喉が治ってからだな。」

そう言葉を残し、アクィラさんは部屋を後にした。

別に気を遣ってはないんだけどな、でも誤解が解けてよかった。食事を用意してくれるって言ってくれたけど、凄く眠くて……。
うつらうつらしているとポールさんがそれに気づいたらしい、体勢を自分で変えられない僕を横にしてくれた。

「失礼しますね、っと…先ほども思いましたがやはり軽いですね。眠いのは身体が回復しようとしているからです。まだ時間がかかりますので、食事が用意できた次第起こしますね。ゆっくり休んでください…」

ポールさんの言葉を聞いて僕は眠りについた。


~~~~~


次に目が覚めると窓から溢れる光は赤色に染まっていた。
食事の用意ができたら起こすって言ってくれたけど…起きれなかったのかな、時間のこと聞いてなかったからわかんないや…。

コンコンッ

「失礼いたします」

誰だろう、女の人の声だ。

扉が開き目線だけを向けると、背の高いメイドさんが立っていた。

うわぁ!!本物のメイドさんだ。

服装は日本で見たようなフリフリなメイド服ではなく、清潔感のあるクラスカルメイド服?のような服装だった。

年齢は40代後半くらいかな、優しそうな雰囲気だ。
でも…少し体格のいいメイドさんだな、と思っているとこちらを見てにっこりと微笑み話しかけてくれた。

「初めまして、黒曜の騎士団の宿舎でメイドをしております。メイド長のアンと申します。ポール様とアクィラ様からはお客様として丁重におもてなししろと仰せつかっております。身の回りのお手伝いも私がさせていただきますね。丁度お目覚めになられていてよかったです。食事をお持ちしましたので準備いたします。お身体を起こしますね、失礼いたします!」

僕はこくりと縦に頷いた。

アンさんはテキパキと準備をしてくれた。そして、男の僕を軽々しく横抱きにして起こして食事がしやすい体勢にしてくれた。女性の方にお姫様抱っこみたいな体勢にされるのは恥ずかしいな…
顔を赤くしている僕を見てアンさんは微笑んでいた。

恥ずかしい///

用意された食事は重湯と一口サイズに切られた桃のようなものだった。何日か眠っていたようなので、胃を驚かせないようにとのことだ。

食事の準備を終えたアンさんは、腕を動かせない僕のために食事の手伝いもしてくれた。

何から何まで申し訳ないです…。

それにしても、食事をする時に人がいるのは何年ぶりだろうか…アンさんは僕の介助のためにいてくれているだけなのだけれど。それでも僕は食事中に声をかけてくれる人がいることが少し嬉しかった。今までこんなに優しく話しかけられたこともなかった…。


その後、恥ずかしついでに言うとアンさんは僕に身体を温かいタオルで拭いて清潔にしてくれたり、トイレの手伝いもしてくれた。

アンさんの話を聞いていると、アンさんは昔アクィラさんの乳母だったらしく、小さい時から知っているらしい。だから恥ずかしいことはないですよ~お世話は慣れていますので!と言われた。
はぁ~、僕はここで何歳に見られているんだろうか…

それでもトイレまで御世話してもらうのは申し訳なさすぎる、そして恥ずかしい///

その後、再び布団に横にしてもらった。最後の方は慣れてきて、母さんにお世話されているような気分になってアンさんに身体を委ねてしまった。
身体をもたれかけてしまった時は優しく頭を撫でてもらったりした。(少し冷静に考えると何をしているんだと思ったが)僕のお手伝いを終えたアンさんは眠気と戦っている僕に気づいたのか、

「もうお休みした方がいいですね。何か必要なことがあればこのベルを押してください。」

と呼び出し用のベルを置いて、部屋を出ようとしていた。

こくこくと頷きアンさんが帰るのを見つめていると、こちらに向き直り優しく頭を撫でてくれた。

あったかいな…。

本物の母さんが生きていたら…こんなに優しかったのかな、などいろいろ考えていたらまた眠りについていた。

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