愛されたい。

いちご食べたい人

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グロR18なので注意です!!
…人によってはかなりグロかもしれないです。

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そのナニカは、なんなのか分からなくても危険なものだとすぐに分かった。
ナニカは猪の形をしていて、目が無く空洞のようになっていた。その目からは黒い空気のようなのがどろどろと出ていて、僕はそれに恐怖心を覚えた。

元いたところでは見たことがない禍々しいそれは僕をじっと見ている。
動いたらすぐに殺される、そう思うほど空洞な黒いその目は恐ろしかった。

逃げなきゃ、でも動いたら殺される。
でも動けない…
助けを呼びたい。声が出ない。
呼べない、助からない!
怖い、もう痛いのは嫌だ。
死ぬのは嫌だ。
怖い怖い怖い。

綾はあまりの恐怖からパニックになっていて、なにがなんだかわからなくなっていた。
目からは涙が出て、口からは声にならない嗚咽が出た。

泣いている僕を嘲笑うかのようにナニカは近づいて来た。

来ないでよ!嫌だ嫌だ!!

声が出ないのが幸か不幸か、ナニカはゆっくりと僕の足元に来た。声を出していたらすぐさま襲われていただろう。

足にぽたぽたと液体が落ちた。
ナニカの涎(よだれ)だろうか、そう思った瞬間焼けるような溶けるような熱さが足を襲った。涎のような黒い液体のせいだろうか。足からは肉が焼けるような匂いがした。

痛いっ、痛いよ!
やだ、怖い、やだよ!
痛いよぉ、誰か助けて、騎士様!

どんなに痛くても声は出ない。
声にならない静かな嗚咽とヒューヒューという息遣い、ナニカの動く音、足の肉が溶けるジューという音だけがその空間に響いていた。

ナニカは僕の足を見ている。

なにをするのかは分かりたくない。

ナニカは僕の顔を見て笑ったように見えた、次の瞬間僕の足はナニカに喰われた。

へっ?!
あっ、痛い痛いっ痛いっ。
痛い…いだい、いだぁい!!
は、あ゛ぁっ…うぅ。

一瞬の出来事だった。
あまりの痛さに気が遠のきそうになったが、今気を失ったら本当に死んでしまう。

喰われた足を見ると左足の膝辺りから下は無くなっていた。その視界の衝撃に息が詰まる。
過呼吸のように息が苦しくなり、吐き気がしてその場で吐いてしまった。

ナニカは綾の足に夢中になっていた。
逃げるなら今しかなかった。
しかし、あまりの衝撃に血の気が引いてそれを見ているしかできなかった。
ただ呆然とその光景を見ていた。
見ることしかできなくなっていた。
ただでさえパニックを起こしていたのにあのようなことがあったらなにもできるはずはないだろう。

“助けて、誰か助けてっ!!
誰でもいいから、ここにいるから!”

僕は強く祈った。
動くことも、助けを呼ぶこともできない僕はただ祈ることしかできなかった。

ナニカはまた近くまで来ていた。
今度は腕が食べたいらしい。

僕が動けないことがわかったのか、警戒も無しにノソノソと僕の右腕の方に近づいた。

嫌だ、怖い、もう嫌だ!!
痛いっ、苦しいっ息ができない。
死んでまでこんな酷い目に遭うなんて。
僕は何もしてないじゃないか!
なにもしていない!
…なにも、していないからダメだったんだよな。
ごめんなさい母さん、僕にせいで死んでしまった母さん。何もできない僕が生きていたより母さんのような沢山の人を救える人が生きていた方がよかったんだ。

走馬灯のように色々な思い出、母さんに対する思いが頭に流れた。

車にはねられた時はなにも感じなかったんだけどな、不思議な気持ち。

どんどん意識がなくなっていく。
目の前が水でぼやけてなにも見えない。

コイツに喰われるのか。
自分の運命に思わず笑ってしまう。

腕にも黒い涎がかかる。

うぅっ…っ痛、い。
今度は気を失えたらいいな。

ぎゅっと目を閉じて、腕を噛まれる瞬間を待っていた。
しかし、その痛みはこなかった。

そのかわりにドスンッという大きな音が横で聞こえた。

痛くない?!
誰、僕は…助かったの?

顔は上げれないため、目線だけを上にあげる。
そこには綺麗な漆黒の色をした髪を風に靡(なび)かせ、駆け寄ってくるイケメンがいた。

「本当に人がいたのか。おい、大丈夫か?!」

声かけてくれるの?
助けてくれるの…こんな僕を。

漆黒の騎士様は僕を優しく抱き上げた。
シャンプーのような爽やかな匂いがする。

「今向こうに治療できる者がいる。気をしっかり持て!助けてやるからな」
「寝たらダメだぞ!おい、おいっ!」

安心…でき、るにおぃ…
僕は、助かるんだ。

不思議と身体に痛みはなかった。
安心して意識が朦朧としてきた。

遠くで騎士様の声がする気がする。
最後に人と話せてよかったなぁ、こんなイケメンに抱き上げられるなんて夢みたいだ。

深い水の中に沈んでいくようなふわふわとした感覚に包まれた。でも、暖かい。

僕はそのまま意識を手放した。

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ごめんね綾くん、めっちゃ痛そう。
書いてて痛そうだった…
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