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転生
20 過去④
しおりを挟む◆ ◆ ◆
貴族の子息として、学園入学前の予習は必須らしくあの事件の数日後には新しい家庭教師が派遣されることになった。
新しい家庭教師は前回の家庭教師の知り合いで彼に何があったのかを知っていたため、スノードロップと接する時にはビクビクとしていたが日が経つにつれそんな対しは徐々に薄れていった。
そんなある日。
「そうだ、彼が君にプレゼントを渡すんだと言っていたのですがプレゼントは何をもらったのですか?」
授業の合間の小休憩時にそんなことを聞いてきた。
「あ、はい…先生が亡くなった日にいただきました。
あの棚の上のほうにある陶器です、香を炊くものなんですよ。」
そう返すと新しい家庭教師は「あぁ、そうなんだね。」と返すだけだった。
なぜそんなことを聞いてきたのか、その時はわからなかったが…
少し変だとは思ったが前の家庭教師と仲が良かったから気になっただけかな?とすぐにその疑問は消えていった。
その日の昼過ぎ、家庭教師が帰り際の頃だった。
「プレゼントでもらった香はまだもっているのですか? 良ければ焚いてかがせていただきたいのですが」
「え、でも僕はこの香の匂いは少し苦手で…」
そう返答したが「いえ、私が気になって…いいでしょう?」」とにこやかに答え、その香に火をつけた。
嗅がないように鼻と口を覆ったが、家庭教師はスノードロップの腕を掴み後ろに捻った。
「ウッ…痛っ、やめ……ンンッ!!」
痛みに声をあげると口を塞がれ、そのまま煙を嗅がされてしまった。
それから記憶はない…
目が覚めると前回の家庭教師にされたのと同じような状態だった。
体にはまた何かわからない白くて透明な液体が付けられており、匂いを嗅がなくてもあの生臭い何かだとは容易に想像できた。
スノードロップはその時にようやく、あの香の匂いを嗅いだらこうなるんだと知った。
気持ち悪い…
あたりを見渡したが、また家庭教師はいなかった。
脱がされあたりに散らされている服を着て廊下に出ると使用人たちが部屋の前に待機しており、また同じような光景が見えた。
そしてその時に聞いたんだ…
家庭教師が死んだんだと。
死因は帰宅途中に乗っている馬車が暴走して馬車の車輪が壊れて転倒した。
その時の頭の打ちどころが悪く、応急処置をする間もなく死亡したらしい。
それも、スノードロップが急かして帰らせたせいだという理由になっていた。
ここまでくると誰かがスノードロップを貶めようと考えていると思うのだが…幼いスノードロップには人を疑うということができなかった。
この事故の時は、お父様に呼び出しはされなかった。
もう呆れられたのか…言っても無駄だと思ったからか、なぜかはわからない。
◆◆◆
その数日後…
何事もなかったかのように新しい家庭教師は使用人に連れられてやってきた。
その新しい家庭教師は今までになく厳格で、少し問題を間違ったり話している最中に質問をした場合には鞭を打つような人だった。
鞭でできた傷が周りにばれなかったのは彼がポーションを持ち歩いており、見えるところの傷は全て治していたからだ。
目に見えるところの傷なのは、背中や太ももなども見えない箇所に関しては傷はそのまま放置していたからだ。そのおかげで自分で傷の手当てができるようになったんだけど…
しかし、そんなことをわざわざしなくても周りはもうスノードロップにかかわろうとはしない為、傷が見えたとしても誰も問題視しないだろう。
対応した家庭教師が2人も死んだのだ、しかもそれはスノードロップのわがままのせいで…だ。
自分がそんな奴とかかわって同じように事故に遭わないよう、距離を開けているのだろう。
そんな生活を続けていたある日、家庭教師は戸棚でもはや置物と化している香を焚く白い陶器を見つけ出してきた。
それを手に取りスノードロップに聞いてきた。
「これは何なのですか?」
「そ、それは、、あの… 最初の頃家庭教師をしてくれていた方がプレゼントとしてくれたものです。」
オズオズト答えると家庭教師は香の匂いを嗅ぎニヤリと笑った。
普段まったく笑わない人だったので急に笑ったことに恐怖を覚えたが、彼は「用事を思い出したので少し早く帰宅します…」と言い残し帰宅していった。
疑問は残ったが、早く帰ってくれて嬉しかったのを覚えている。
その翌日、普段の授業が始まる時間になっても家庭教師は姿を現さなかった。
時間を数十分過ぎた頃…
ーコンコン
「はい…先生ですか?」
そんなことを言いながら扉を開けるとそこにはお父様がいた。
最初にいた家庭教師がなくなった事故から会ってはいなかったが、変わらずスノードロップに向ける視線は冷たいままった。
そこには憎悪や軽蔑も含まれているようだった…
そのまま、ズカズカト部屋に押し入り後ろに控えていた者もそれに続いて部屋に入ってきた。
なんだろう?と疑問に思っているとお父様はなぜか白い陶器を持っていた。
あの香を焚く陶器だ。
「お父様… あの、それは貰い物なので……」
そう声をかけた瞬間、ものすごい怒鳴り声とともに左頬を殴られた。
「ぇ、、、ぁ… な、に?」
「お前が仕組んだのか!! 5歳でこれとは……なんて恐ろしい子供なんだお前は!!!」
殴られた頬を抑え、瞳には涙がたまって目の前は見えない。
なんで、なにかわるいことしたのかな…
スノードロップは恐怖はなかった。
自分に起こっていることが理解できず、ただ混乱ていたのだ。
そしてその時に怒りに任せたお父様の声で家庭教師から貰った香の効果を知った。
幼いスノードロップにはわからない言葉ばかりだったがその香に入っている草はとても体に悪いもので、国でも禁止しているものだということだけは理解できた。
でもスノードロップはそんなことを知らなった、家庭教師がくれたものだったからだ…
「知らない…… そんなの、知らなかったんです!! それは僕のものじゃないっ、貰った物なんです!」
そう何度言ってもお父様の耳には届かった。
床にへたり込み、泣きながら否定しているスノードロップをみて家庭教師はかすかに笑っていた。
「なんで、そんなことするんですか……僕何もしてないっ!!何が起こるか知っててお父様に言ったんですか、先生っ!!」
「黙れ!人のせいにして、なんてやつなんだ!!
お前は危険だ、外部と連絡を取れないよう厳重な部屋に連れて行け!」
そう使用人に命じた父によって、スノードロップは窓のない、最低限のものしかない部屋に移された。
その部屋に移されてから、侯爵家の子息としての対応はされなくなった。
部屋に来る使用人は最低限の仕事しかしない。
いや、その仕事もしない時があった。
仕事も部屋の掃除と最低限の食事を持ってくること…
スノードロップには目も合わせないし話しかけない。
それどころか冷たい視線を向け、ぶつかりそうになった時には叩かれた時もあった。
使用人は新人らしく年齢もとても若い男の人だった。
冷たい目線は向けてくるが、スノードロップの顔は好みだったらしく部屋に来るたび顔を凝視してくることがあった。「顔はいいのにな…」と声に出していることもあった。
向けてくる目線は軽蔑している者への視線とわずかに熱のこもった視線で気持ち悪いと感じていた。
そんなある夜、ノックもなしに部屋の扉が開き、何者かが部屋の中に入った気配がした。
「こんばんわ♡」
そう見知った声が聞こえて身じろぎをした瞬間、目隠しをされ視界が暗くなった。
「え、やっ……んぐっ!!」
叫ぼうとしたが口もふさがれ手足も縛られて身動きの状態にされ、恐怖で体がガクガクと震えた。
「ん゛ーー!!」
「あらら、そんなに声出しちゃって…余計にそそるなぁ。 ほんとかわいい顔してるよなお前♡ やばい薬使って先生たちと何してたんだよ~!俺にも教えてほしいなぁ♡」
‘いやだ、こわいこわいこわいこわい!!‘
どんなに声を出しても誰も来てくれない。
この部屋は地下にあり窓もなければ、壁も厚く隣にも声は聞こえない…
そこからの記憶はもやがかかって思い出せない…思い出したくない記憶なんだろう。
体の防衛本能とでもいうのか。
その後気絶をしていたようで、目が覚めると体が痛くてだるくて…すぐに動くことはできなかった。
かなり叫んだようで喉も枯れていた。
何があったか思い出そうとしても吐き気をもよおすだけで思い出すことはできなかった。
部屋に入ってきた人物はあの新しい使用人だった。
聞いたことのある声で、少し気が緩んだのは覚えていて記憶に残っている。
その翌日の朝、スノードロップは目が覚めてからガクガクと体を震わせていた。
朝食の時間になったらあの使用人が来るからだ。
そんな恐怖に体を震わせていたが一向に来る気配はなかった。
おなかがなり始めたころにやってきたのは違う使用人だった。
あの新人の使用人は死亡したらしい…部屋にきた使用人が教えてくれた。
詳しい死因は聞くことはできなかったが…
◆ ◆ ◆
その後も新しい使用人が来ては同じようなことをされて、その翌日には死んでいった。
その時に何をされていたかは幸か不幸か今は全く覚えていないのだが…
数人がなくなったころからは、よりスノードロップに関わる者がいなくなった。
食事も今まで量は少なかったが3食あったのが、1食になったり部屋は掃除されずどんどん汚くなっていった。
これがスノードロップが5歳から6歳までに起こった出来事だ。
こんな短期間でこんなに人に嫌われることができるなんて知らなかったな…
昔の記憶をみている… いや、思い出している僕はそんなことを思った。
あぁでもお義母さんに嫌われたのも一瞬だったなぁ…
人に嫌われるのは一瞬なんだよ。
そのくせその反対は大変なんだ…
そして6歳になった年に初めてウルスにあったんだ。
なぜか初日に嫌われたけど…
でもスノードロップはウルスに会うのが楽しみだった。
なぜなら、ウルスに会うときだけきちんとしか格好を許されたし美味しいご飯やお菓子を食べられたからだ。
だからスノードロップは嫌われてもめげずに話かけていたのだ。
そんな日々を過ごしていた頃、検診でスノードロップの体質を知り対応は良くなったものの王子との婚約が決まった。
まだ会ったことのない相手との婚約は怖かったがお父様に逆らうことはできない。
そっちの方が怖いからだ…
スノードロップの過去を思い出した僕は、彼の悲惨な過去を見て自分を重ねた。
あぁ、神様。
なぜ僕達はこんな思いをして生きていかなければならないのでしょうか。
生きてと言ったのは神様ですよね…生きたいと思えるような人生だったらよかったのに。
絶望が心を占めている。
ここにも僕の…いや、僕達の居場所はないんだね。
そんなことを考えていると、少しずつ意識が浮上してきた。
あれ、今なんで昔のことなんて思い出してたんだっけ?
あれ、、、
あ、れ?
徐々に過去から現在の記憶が頭に流れてきた。
前の人生とスノードロップになってからの人生…
あぁ、走馬灯かな。
走馬灯って楽しいことも思い出せると思ってたけど…スノードロップに至っては全く楽しい記憶はないな。
初めてきた家庭教師から貰った香の香りが異質な部屋に充満している。
もう、疲れたなぁ。
ーーーーーーーー
誤字脱字があったらすみません。
描きたいこと詰め合わせたのでかなり文章量が多くなってしまいました…
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