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転生

19 過去③

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執務室は酷いありさまだった。
扉の横には花瓶だったモノの破片が散乱し、案内した者のものであろう血痕が残っていた。

スノードロップはお父様の冷たい視線にびくびくしながらも室内へ連れられた。

興奮状態のお父様はドスドスと大きな音を立ててスノードロップの目の前に立ち、手を大きく振りかぶった。

その瞬間頬に大きな衝撃がきたとともにその勢いのまま後方へ倒れこんだ。

お父様にはたかれたのだ。

「…ぅうっ、おとう…さま?」

痛みに唸り、涙目でお父様を見上げた。
そこには腕が振るえるほど怒り・軽蔑している表情のお父様がいた。

「何をしていたんだ貴様は!!」

「…ぇ 」

怒鳴り声が右耳から聞こえた。
ジーンと痛む左頬を触り、いまだにキーンと鳴り痛みがする左耳へ触れると血が流れていた。

鼓膜が破れてしまっているようだ。

何が起こっているか、なぜ起こられているのかわからないスノードロップは恐怖心・驚き・何が起きているのか…

そんなことで頭がいっぱいだった。

「なんだその顔は。まさかお前、人に頼んだことを忘れて寝こけていたんじゃないだろうなっ!!
お前があの子を買い物に行かせたんだろうが!!」
「お前が余計なことを頼まなければ、あの子は死ななかったはずだ!!我が侯爵家と彼の家との繋がりにも亀裂が入るだろう……それがどういうことかわかっているのか!」

あの家庭教師が死んだ…
お父様はスノードロップへの暴言をやめなかったが、スノードロップは身に覚えのないことに対しての暴言などを聞いても悲しくはならなかった。

本当に家庭教師にはお願いなどしていない…

それでも、あの香を嗅いだ瞬間からの記憶がないため、家庭教師がその後どのような行動をとっていたのか自身もどんな行動をとっていたのか、スノードロップにはわからなかった。


その時にメイドがなぜドアの前で待機していたのかも知った。

部屋の前にいたメイドは家庭教師からお願いをされ扉の前に待機していたらしいのだ。
何でも、スノードロップが授業を休憩したいと言ったためそのタイミングで家庭教師はスノードロップが頑張っているからとプレゼントを渡したが「いらない、違うのが欲しい買ってきて!!」とわがままを言いだした。
そのため今から城下町へ向かい人気のデザートなどを買ってこようと思っている…と家庭教師が言ったらしい。
扉の前にメイドを待機させた理由は、待っている間自習をしているスノードロップが呼んだらすぐに出られるように、今は機嫌が悪いので呼ばれるまでは待機していたほうが良いと言われて待機していたとそのメイドは言った。

その話を聞いても全く身に覚えはなかった。
プレゼントはもらったし、いらないなんて言ってない!
家庭教師が城下町に向かったことすら知らなかった…

家庭教師はメイドに待機するよう命じたあとすぐに城下町へ向かったらしい。
その後、家庭教師は城下町で発見されたそうだ。
彼は屋敷から城下町まで向かう途中に誘拐され、発見されたときには死亡していたらしい。身包みをはがされ金目のものは一切なかったことから金目当てだったことが分かった。


お父様はスノードロップに暴言混じりだが今の状況を説明してくれた。
しかしそのことは全く見覚えのないことだらけだ。
恐怖で口がガクガクと震えて上手く話せそうもなかったが、身に覚えがないことを説明しようとしたが全く聞いてくれる気配がない。
それどころか、「言い訳はやめろ!!」ともう一度頬を叩かれまた後ろに倒れ込んでしまった。

これ以上何か話そうとするとどうなるかわからない…
そう思ったスノードロップはそれ以降口を出さずお父様の暴言を聞き周りからも冷たい視線を受けた。

数時間執務室に拘束された後は、自分の部屋に戻された。

結局この事故はスノードロップが原因だということで終わり、それから2ヶ月は部屋で謹慎生活を送った。


あの事故からスノードロップは屋敷の使用人たちからは冷たい視線を浴びることになった。
仕事はするが話しかけても冷たく返されるだけで終わるし、しつこく話しかけた際には睨まれ何も言えなかった。
それからは自分から話しかけることはしなかった。

家庭教師の家からは「どう責任をとるんだ」と家で問題になっているのをこそこそ話しているメイドたちから聞いた。


言い訳すらできない。

いや、言い訳でもないかな。
だって本当に身に覚えのないことだったのだから…

スノードロップはその頃から少しずつ心を閉ざしていった。


ーーーーーーーーー


誤字脱字があったらすみません。
次のお話で過去回は終了です!
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