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転生
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落ちることを予測し、目を瞑ったが地面と衝突する衝撃は来なかった。
ゆっくりと上を見上げると、僕の腕を強く握り引き上げようとするウルスが見えた。
「…なんで助けたの?僕のこと嫌ってたじゃないか。」
「ふざけるな!! 死にそうになってるやつを見て助けないわけないだろう、馬鹿なのかお前は!!」
死にそうになってる?
あぁ、エントランスから落ちたんだっけ。
それでも……
「嫌ってる人間を助けようとしている方が馬鹿じゃないか。それに、僕は死を望まれて生きてきた人間で罪人だ。生きる価値なんてないと思わないのか。」
「…っ!!
長年一緒にいたんだ、お前が最低な人間なのは百も承知だ!
でもな、俺は目の前で死にそうな人間には誰でも手を差し伸べる。お前のような悪人でも見て見ぬふりをしてたら夢見が悪いからな。
…いい加減引き上げるぞ!!」
「……。」
僕の腕をギュウという音がなるほど強く握り、一気に僕を引き上げた。
再度地面い放り出された僕は、部屋の柔らかい絨毯に落とされた。
「礼は言わないからな、助けてなんて一言も言ってない。」
「そうか、別にどうでもいい。勝手に死なれたら俺は任務怠慢で叱られる…。
ーそれに、少し気になることもできたからな。」
「なんだ、最後の方は聞こえなかった「なんでもない」」
そう言い放ったあとは、僕がいくら話しかけても全て無視だった。
その後は着る途中だった服を着て布団に潜り込んだ。
そういえば、あんなに強く握られた腕もぶつけた親指も痛くないな。
なぜだろう……。
◇ ◇ ◇
ーウルス視点ー
自殺未遂をしたため、監視をするために部屋を用意した。
罪がしっかりと決まるまでは死なれたら困る。
そしてその監視が、俺だった。
昔からの付き合いだろう、気の知れる奴といた方が気も休まるだろう…という上からの命令だ。精神的なストレスがなければ死のうとは思わないだろうってか?
俺といた方が向こうもストレスが溜まると思うがな。
しばらく経ち、スノードロップの世話役の使用人が入ってきた。
見た目は幼く見えるがよく訓練されているように見える。
洗練された動きだ…隙がない。
スノードロップとの会話を聞いていると、使用人のくせに…罪人とはいえ一時的に仕える主人に対する態度ではない。
それに対して答えるスノードロップは全く気にしてはいないようだが。
使用人に対する態度も悪いと聞いていたが、こんな態度をとる奴に対しても普通の対応なのか。
その疑問は、彼が着替えている背を見てより一層膨れ上がっていった。
背には鞭で叩かれた跡がびっしりとついていたのだ。
それはかなりの力で叩かれていたのか、とても深い傷跡だった。
傷は完全に治っていることからかなり昔に付けられたこのだろう…。
いつなんだ?
公爵家の人間…しかも子息だ、次男でも大切に育てるはずだ。なぜこんな傷がついているんだ?!
そんな考えを巡らせていると、服を着ている途中で急に窓辺へ移動し始めた。
目は虚で何を考えているのかわからない…口元は微かに動いているように感じた。
「おい、どうした?」
声をかけても返事はない。
裸足でエントランス出て危険な予感がした。
落ちるつもりか!!
俺の予想通り、身を乗り出した瞬間外に誘い込まれるようにエントランスから落ちていった。
「っ!!」
咄嗟に腕を伸ばし、落ちるその腕を掴んだ。
きっと先に動き始めていなかったら間に合わなかっただろう。
「…なんで助けたの?僕のこと嫌ってたじゃないか。」
そう虚な目をして不思議そうに問いかける馬鹿にイライラが募った。
「ふざけるな!! 死にそうになってるやつを見て助けないわけないだろう、馬鹿なのかお前は!!」
なぜ死のうとするのか、公爵家では何が起きていたのか。
考えれば考えるほど謎が増える。
多少の言い合いが終わり、窓を閉めて服を着させて布団に入るのを確認した。
眠ったのを確認して数分で使用人の女がきたが、ぐっすりと眠る主人を見て今日は寝かせておくことにした。
部屋を出るのを確認し、スノードロップが眠るベッドを見つめた。
あどけない顔で眠る頬には綺麗に切り揃えられた銀髪がかかり、その銀髪は月光に反射してキラキラと輝きを放ちとても綺麗だった。
「見目はいいのにな…」
ボソリとつぶやいた俺の声は誰も聞いていない。
聞こえてはいけないんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
誤字・脱字があったらすみません。
落ちることを予測し、目を瞑ったが地面と衝突する衝撃は来なかった。
ゆっくりと上を見上げると、僕の腕を強く握り引き上げようとするウルスが見えた。
「…なんで助けたの?僕のこと嫌ってたじゃないか。」
「ふざけるな!! 死にそうになってるやつを見て助けないわけないだろう、馬鹿なのかお前は!!」
死にそうになってる?
あぁ、エントランスから落ちたんだっけ。
それでも……
「嫌ってる人間を助けようとしている方が馬鹿じゃないか。それに、僕は死を望まれて生きてきた人間で罪人だ。生きる価値なんてないと思わないのか。」
「…っ!!
長年一緒にいたんだ、お前が最低な人間なのは百も承知だ!
でもな、俺は目の前で死にそうな人間には誰でも手を差し伸べる。お前のような悪人でも見て見ぬふりをしてたら夢見が悪いからな。
…いい加減引き上げるぞ!!」
「……。」
僕の腕をギュウという音がなるほど強く握り、一気に僕を引き上げた。
再度地面い放り出された僕は、部屋の柔らかい絨毯に落とされた。
「礼は言わないからな、助けてなんて一言も言ってない。」
「そうか、別にどうでもいい。勝手に死なれたら俺は任務怠慢で叱られる…。
ーそれに、少し気になることもできたからな。」
「なんだ、最後の方は聞こえなかった「なんでもない」」
そう言い放ったあとは、僕がいくら話しかけても全て無視だった。
その後は着る途中だった服を着て布団に潜り込んだ。
そういえば、あんなに強く握られた腕もぶつけた親指も痛くないな。
なぜだろう……。
◇ ◇ ◇
ーウルス視点ー
自殺未遂をしたため、監視をするために部屋を用意した。
罪がしっかりと決まるまでは死なれたら困る。
そしてその監視が、俺だった。
昔からの付き合いだろう、気の知れる奴といた方が気も休まるだろう…という上からの命令だ。精神的なストレスがなければ死のうとは思わないだろうってか?
俺といた方が向こうもストレスが溜まると思うがな。
しばらく経ち、スノードロップの世話役の使用人が入ってきた。
見た目は幼く見えるがよく訓練されているように見える。
洗練された動きだ…隙がない。
スノードロップとの会話を聞いていると、使用人のくせに…罪人とはいえ一時的に仕える主人に対する態度ではない。
それに対して答えるスノードロップは全く気にしてはいないようだが。
使用人に対する態度も悪いと聞いていたが、こんな態度をとる奴に対しても普通の対応なのか。
その疑問は、彼が着替えている背を見てより一層膨れ上がっていった。
背には鞭で叩かれた跡がびっしりとついていたのだ。
それはかなりの力で叩かれていたのか、とても深い傷跡だった。
傷は完全に治っていることからかなり昔に付けられたこのだろう…。
いつなんだ?
公爵家の人間…しかも子息だ、次男でも大切に育てるはずだ。なぜこんな傷がついているんだ?!
そんな考えを巡らせていると、服を着ている途中で急に窓辺へ移動し始めた。
目は虚で何を考えているのかわからない…口元は微かに動いているように感じた。
「おい、どうした?」
声をかけても返事はない。
裸足でエントランス出て危険な予感がした。
落ちるつもりか!!
俺の予想通り、身を乗り出した瞬間外に誘い込まれるようにエントランスから落ちていった。
「っ!!」
咄嗟に腕を伸ばし、落ちるその腕を掴んだ。
きっと先に動き始めていなかったら間に合わなかっただろう。
「…なんで助けたの?僕のこと嫌ってたじゃないか。」
そう虚な目をして不思議そうに問いかける馬鹿にイライラが募った。
「ふざけるな!! 死にそうになってるやつを見て助けないわけないだろう、馬鹿なのかお前は!!」
なぜ死のうとするのか、公爵家では何が起きていたのか。
考えれば考えるほど謎が増える。
多少の言い合いが終わり、窓を閉めて服を着させて布団に入るのを確認した。
眠ったのを確認して数分で使用人の女がきたが、ぐっすりと眠る主人を見て今日は寝かせておくことにした。
部屋を出るのを確認し、スノードロップが眠るベッドを見つめた。
あどけない顔で眠る頬には綺麗に切り揃えられた銀髪がかかり、その銀髪は月光に反射してキラキラと輝きを放ちとても綺麗だった。
「見目はいいのにな…」
ボソリとつぶやいた俺の声は誰も聞いていない。
聞こえてはいけないんだ。
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誤字・脱字があったらすみません。
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