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連れられた部屋で呆然と立っているとノック音がして使用人らしき少女が入ってきた。
年齢は…10~12歳ぐらいだろうか?
使用人服を身にまとい無表情の顔で僕を見ていた。
オドオドしている医者が彼女を紹介してくれた。と言っても名前は教えてくれなかったけどね…。
「しょ…紹介しますね、彼女はここで君のお世話をする使用人です。 僕の指示しか従わないので、城の状況とか諸々の情報を聞き出そうとしても…意味ないですからね!!
そうだ、そ…その服は、汚いので……新しい服を着てください。正面の机においてありますので。
では…失礼します。」
そう説明した彼は、そのまま部屋を後にした。
言いたいことだけ言って出ていった…名前もわからないしオドオド先生と命名しておこう。
とりあえず着替えようと体を動かした瞬間、横にいた少女が過敏に反応しこちらを睨んできた。
「行動するのであれば先に言ってから行動して下さい。変な動きをした瞬間取り押さることと、貴方の行動を終始目視して報告しろと命令されています。
貴方には信用なし微塵もないのですから。
それと、逃げ出そうとしても無駄ですので…無駄な行動はしないで下さいませ。
また怪我を増やしたくないですよね。」
彼女は冷たく、冷め切った目でこちらを睨んでいた。
地下牢よりはマシな部屋だと思ったが、さっきよりも警備は厳しいようだ…。
息苦しい。
とにかく…まずは着替えてからだな。
「わかった。 では…着替えたいから服を取りたいんだ。歩いてもいいだろうか。あと、着替えられないから手の手錠を外して欲しいんだが……随一報告とはこんな感じで合ってるのか?」
「着替えは主人様が用意してくれているのでそれを着てください。手錠があっても着れるようになってますので、残念ですが手錠は外せません。
しかし、言葉が通じてよかったです。こちらの話を聞いてくれないと困りますからね…。では、夕食の時間なので取りに行って参ります。
それまでウルス殿に監視を頼みますので、くれぐれも妙な行動はとらないようにして下さいませ。」
そう言い残し彼女は部屋を後にした。
「はぁ…。」
無駄に広い部屋に僕のため息が響いた。
物も少ないのでかなり響いた。
ウルスも同じ部屋にいるはずなのに物音ひとつしないので、誰も近くにいないように感じる。
まぁいいか。
テーブルに置かれている着替えに手をかけ、着替え始めた。ウルスの監視を背にボロボロの服を脱いだ時だった。
「…っ?!」
息の詰まったような声が背後から聞こえてきた。きっと僕の背中の傷に驚いているんだろう。
どう考えても公爵家の息子がつけられていていい傷じゃないから…。
でも、こんな傷はただの昔の思い出だ。
魔法測定のひに魔法が使えないと言われた日、貴族なのに使えないなんて!!と怒り狂った母に屋根裏部屋で叩かれた時の傷…だったはずだ。
ご親切に、傷が残るよう黒い鞭で何回も何回も叩かれた…。
その時の僕は、僕ではないので痛い思いをした…という記憶はあるが僕自身身が体験したという感覚がない。
だから昔の記憶という感覚なんだ。
でも、実際の痛みは分からないがその時も胸の痛みは今でもわかる。胸が締め付けられるような悲しみが…思い出すたび僕に襲い掛かるからだ。
多分傷の痛みよりも…胸の痛みの方が強かったんだと思う。
あの時から、僕の扱いはより一層酷くなった。
でも、あのころは“頑張れば報われる”とか“いつか振り向いてくれるように努力するんだ”などという決して報われない思いを胸に抱いていた。
希望を持っていた。
だから、そんなに苦しくても・悲しくても頑張れた。
でも、今は違う。
もう、報われないということは知っている。
そんなに努力しても!
どんなに我慢しても!
初めからダメだったものはどうしようもないんだ。
だから決めたじゃないか、なんで…もう一回頑張ろうなんて思ったんだろう。
どうせ、結果は同じだ。
同じだったじゃないか!!
服を着ている手を止めて、そよそよと入る風を感じ手を止めた。
ここって何階なんだろうか、風が吹いていて気持ちいなぁ。
風が入る窓に吸い寄せられるように近づいた。
窓を出るとエントランスがあり、そこから見える景色はとても綺麗だった。
高さは…マンションの3~4階くらいかな。
「…綺麗だな。」
足が止まらない。
外の景色に見惚れているとエントランスの端には足先がついた。
「痛っ。」
結構な力が入っていたのか、親指の爪が割れていた。そういえば、靴も履いていなかったっけ。
でも、もっと景色が見たい。
…この真下はどんなふうになってるんだろう。
エントランスの縁に身を乗り出し、下を見た。真下には、花壇に不器用に埋められた花たちがあった。
そういえば昔、学校で朝顔植えてたな。…日本での記憶が一瞬蘇った。
あれ…でも、その花はどうなったんだっけ?あれ……。
その先の記憶は白い靄がかかったように思い出せない。
なんでだろうか?
真下には花壇を眺めて思い耽っていると、不意に少し強めの風が吹いた。
花弁が散って風に乗っている…綺麗。
ーズルッ
手が滑って体がエントランスの外に放り出され、体が宙に浮いた。
周りには一緒に落ちている花弁が舞っている。
「…綺麗」
あぁ、今度こそ。
ー死ねる。
ーーーーーーーーーーーーーーー
誤字・脱字があったらすみません。
連れられた部屋で呆然と立っているとノック音がして使用人らしき少女が入ってきた。
年齢は…10~12歳ぐらいだろうか?
使用人服を身にまとい無表情の顔で僕を見ていた。
オドオドしている医者が彼女を紹介してくれた。と言っても名前は教えてくれなかったけどね…。
「しょ…紹介しますね、彼女はここで君のお世話をする使用人です。 僕の指示しか従わないので、城の状況とか諸々の情報を聞き出そうとしても…意味ないですからね!!
そうだ、そ…その服は、汚いので……新しい服を着てください。正面の机においてありますので。
では…失礼します。」
そう説明した彼は、そのまま部屋を後にした。
言いたいことだけ言って出ていった…名前もわからないしオドオド先生と命名しておこう。
とりあえず着替えようと体を動かした瞬間、横にいた少女が過敏に反応しこちらを睨んできた。
「行動するのであれば先に言ってから行動して下さい。変な動きをした瞬間取り押さることと、貴方の行動を終始目視して報告しろと命令されています。
貴方には信用なし微塵もないのですから。
それと、逃げ出そうとしても無駄ですので…無駄な行動はしないで下さいませ。
また怪我を増やしたくないですよね。」
彼女は冷たく、冷め切った目でこちらを睨んでいた。
地下牢よりはマシな部屋だと思ったが、さっきよりも警備は厳しいようだ…。
息苦しい。
とにかく…まずは着替えてからだな。
「わかった。 では…着替えたいから服を取りたいんだ。歩いてもいいだろうか。あと、着替えられないから手の手錠を外して欲しいんだが……随一報告とはこんな感じで合ってるのか?」
「着替えは主人様が用意してくれているのでそれを着てください。手錠があっても着れるようになってますので、残念ですが手錠は外せません。
しかし、言葉が通じてよかったです。こちらの話を聞いてくれないと困りますからね…。では、夕食の時間なので取りに行って参ります。
それまでウルス殿に監視を頼みますので、くれぐれも妙な行動はとらないようにして下さいませ。」
そう言い残し彼女は部屋を後にした。
「はぁ…。」
無駄に広い部屋に僕のため息が響いた。
物も少ないのでかなり響いた。
ウルスも同じ部屋にいるはずなのに物音ひとつしないので、誰も近くにいないように感じる。
まぁいいか。
テーブルに置かれている着替えに手をかけ、着替え始めた。ウルスの監視を背にボロボロの服を脱いだ時だった。
「…っ?!」
息の詰まったような声が背後から聞こえてきた。きっと僕の背中の傷に驚いているんだろう。
どう考えても公爵家の息子がつけられていていい傷じゃないから…。
でも、こんな傷はただの昔の思い出だ。
魔法測定のひに魔法が使えないと言われた日、貴族なのに使えないなんて!!と怒り狂った母に屋根裏部屋で叩かれた時の傷…だったはずだ。
ご親切に、傷が残るよう黒い鞭で何回も何回も叩かれた…。
その時の僕は、僕ではないので痛い思いをした…という記憶はあるが僕自身身が体験したという感覚がない。
だから昔の記憶という感覚なんだ。
でも、実際の痛みは分からないがその時も胸の痛みは今でもわかる。胸が締め付けられるような悲しみが…思い出すたび僕に襲い掛かるからだ。
多分傷の痛みよりも…胸の痛みの方が強かったんだと思う。
あの時から、僕の扱いはより一層酷くなった。
でも、あのころは“頑張れば報われる”とか“いつか振り向いてくれるように努力するんだ”などという決して報われない思いを胸に抱いていた。
希望を持っていた。
だから、そんなに苦しくても・悲しくても頑張れた。
でも、今は違う。
もう、報われないということは知っている。
そんなに努力しても!
どんなに我慢しても!
初めからダメだったものはどうしようもないんだ。
だから決めたじゃないか、なんで…もう一回頑張ろうなんて思ったんだろう。
どうせ、結果は同じだ。
同じだったじゃないか!!
服を着ている手を止めて、そよそよと入る風を感じ手を止めた。
ここって何階なんだろうか、風が吹いていて気持ちいなぁ。
風が入る窓に吸い寄せられるように近づいた。
窓を出るとエントランスがあり、そこから見える景色はとても綺麗だった。
高さは…マンションの3~4階くらいかな。
「…綺麗だな。」
足が止まらない。
外の景色に見惚れているとエントランスの端には足先がついた。
「痛っ。」
結構な力が入っていたのか、親指の爪が割れていた。そういえば、靴も履いていなかったっけ。
でも、もっと景色が見たい。
…この真下はどんなふうになってるんだろう。
エントランスの縁に身を乗り出し、下を見た。真下には、花壇に不器用に埋められた花たちがあった。
そういえば昔、学校で朝顔植えてたな。…日本での記憶が一瞬蘇った。
あれ…でも、その花はどうなったんだっけ?あれ……。
その先の記憶は白い靄がかかったように思い出せない。
なんでだろうか?
真下には花壇を眺めて思い耽っていると、不意に少し強めの風が吹いた。
花弁が散って風に乗っている…綺麗。
ーズルッ
手が滑って体がエントランスの外に放り出され、体が宙に浮いた。
周りには一緒に落ちている花弁が舞っている。
「…綺麗」
あぁ、今度こそ。
ー死ねる。
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誤字・脱字があったらすみません。
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