異世界転生を知らない幽閉王子は死にたがり。

いちご食べたい人

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転生

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誰かの声と頬を軽く叩かれている。
冷たい体を徐々に温かい血液が回り始めるのを感じ、意識が再浮上してきた。

「っ…かはっ!! ゴホッゴホッ! はぁはぁっ……」

必死に酸素を吸い込もうと肺が激しく上下に動いた。
うっすらと目を開けると騎士団の服装を着た男が立っていた。

「大丈夫ですか?スノードロップ様…ここで死なれては困りますから。とりあえず医者の元へ運びます。」

ため息をつきながら僕を冷たい目で見下ろしている。
その目線からは心配している様子は一切感じられない。

そんな目線を送る男は、僕の護衛のウルスだ。
母に部屋で鞭打ちされていても、家庭教師に頬叩かれていても決して助けてくれなかったつかえない護衛だ。

まぁ、部屋は防音になっていて音や助けを呼ぶ声は全く聞こえなかっただろうけどね…。

今度は楽になることを邪魔されるなんて……。

なんでだろうか、過去を思い出そうとすると、毎回眠くなってくる。
再び薄れていく意識の中、僕を抱える男に一言だけ言いたかった言葉を振り絞った。

「今度こそ楽になれると思った、のに……。」

酷く掠れた声だったが、言いたいことだけ言って僕はその眠気に従い眠りに落ちた。

◇ ◇ ◇ ◇

ーウルス視点ー

腕に抱えているのは、先程自殺に失敗した俺の主人だ。

また面倒くさいことに巻き込みやがって…と内心思いながらスタスタと医務室へと向かった。



俺は生まれた時から仕える方が決まっていた。
公爵家の第二子…名前は皆がスノードロップと呼ぶので俺もそう呼んでいる。
本当の名前は皆知らないんじゃないかと思う。

俺は同じ歳だからという理由で、遊び相手にもされたが…俺は彼を好きになることができなかった。

いつもオドオドしていて、細いし面白いやつでもない。
でも、好きではなかっただけで嫌いではなかった。

しかし、そんな俺が彼を嫌いになったのは6歳の頃だった。

外で遊んでいたスノードロップが突然姿を消したんだ。

しっかりと見ていなかった俺が悪いと、両親に散々説教され頬を殴られた。
その時の痛みは忘れられない。

結果的に言えば、日が落ちようとしている時間にスノードロップ見つかった。
普段は行かない屋敷の裏で花を見ていて眠っていたらしい。

勝手にいなくなった挙句、眠っていただと?!

いつも勝手な行動を取るなと言っているのに、動き回って…怪我をしたら全て俺が見ていなかったからだと激怒される……

俺が父に怒られている横目で保護されているスノードロップを見ていると、彼がこちらを見て笑っているように見えた。

その時、気づいてしまった。

今日のことを含めて、いつもわざと俺が怒られるように仕向けているのではないかということに。

スノードロップにはいつも使用人がついていない。
公爵家の子供なのに…だ。

いつも遊ぶ時は何も考えず過ごしてきたが、考えてみればおかしいのだ。

いつも俺と遊ぶ時にいないんだ。

屋敷の中ではよく見かけるのに…だから使用人がいないという理由ではないだろう。

だからその時に“あいつは俺を嵌めるためにわざと使用人を付けていないんだ“ということに気がついた。

俺があいつに何かしたか?

どちらかと…迷惑しかかけられていないんだがな。

その時からスノードロップを心から守ろうという気は失せた。

それから10年が経ち今に至る。

腕に抱いている主人はとても細く軽いが、心配する気にはならなかった。

婚約者の第一王子シシエノーク様のご友人のユリアス様を階段から落としたのだ。

以前から王子と仲の良いユリアス様を憎んでおり、様々な嫌がらせをしていたと聞く。
それに、周りの使用人の証言もあるのでスノードロップが犯人であることに間違いはないのだ。

そんな罪人にかける慈悲はない。

地下牢に食事を持っていった時に首を絞めて自戒しようとしているのを見た時は驚いたが…。

しかし、気絶する寸前の言葉が頭から離れなかった。

「楽になれると思ったのに…か。それはこっちのセルフだぞ全く!! 迷惑しかかけない穀潰しが。」

彼に聞こえないのをいいこと散々悪口を吐いてやった。
聞こえていたとしても、何も言わないと思うけどな。

…そういえば、こんなに性格が悪いのに言い返されたことも暴力を振るわれたこともなかったな。
会話もしたことがないし、今まで言っていた言葉は「はい」という返事だけだった。

ま、どうでもいいことだけどな。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

誤字・脱字があったらすみません。
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