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第79話 魔マ王、邪神を甚振る。
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『わ、我の領域を乗っ取った……だと!? 貴様、本当にただの魔王なのか?!』
「ええ、今は魔マ王よぉ」
白く染まった自らの領域を驚愕した表情で見つめる邪神、その姿を見ながら、私は音が響くように一歩歩く。
――カツン。
その音に気づき、困惑していた邪神が怯えるように一歩後ずさる。
――カツン。
また一歩進むと、同じように邪神は後ずさる。
その様子を見ながらゆっくりと腕を振るう。
邪神は何が起きたのか分からないようだったけれど、一歩後ずされば分かること。
そう思いながら、カツンとまた一歩歩くと同じように邪神は一歩後ずさる。……はずだった。
『は…………? な、あ……あ――ぎゃあああああああああああああ!!? あ、足が!? 我の、我の足があああああああっ!?』
後ずさろうとした邪神の足が、その場に残り……邪神は背中から大きく倒れた。
いったい何が起きたのか、それを知るために前を見ると……見慣れた黒い足が白い空間に2つあるのが見えたのだと思う。
それを見て、斬られた。という事を理解したであろう邪神は悲鳴を上げた。
「汚い悲鳴ね~? 邪神には、神のプライドっていう物がないのかしらぁ?」
もし私が足を斬られたとしたら、斬られた箇所を地面につけて足がなくても移動するかも知れないし……痛みに涙を流すけど叫びはしないと思うわぁ。
ついでに言うと、手が無くなったら口を使うわね~。
そんなこともしようとしないなんて、本当に……私を舐めすぎているんじゃないかしら?
「ねえ、貴方はどう思うかしら?」
『ひぃ!? わ、我の足、我の足が……!!』
「同じことしか口にしないのは駄目よ~?」
手に握り締めていた【魔王剣ダークネス・フレイム】を軽く振って、その場に残された足を存在ごと焼却しながら邪神に問いかける。
だけど、手と足が消えたことにショックを受けているのか、それとも痛いからか悲鳴しか上げていない。
「まったく、体の何処も失っていないのに良く邪神を名乗っていられるわねぇ?」
呟きながら素早く剣を振るう。すると銀閃が煌き、その直後、剣が走った後に炎が疾走し……切り刻まれて悲鳴を上げる邪神の体の表面を燃やしていく。
チリチリと臭いにおいが立ち込める。ああ、臭いわぁ。
『な、なんなんだっ! 貴様は……キサマは何なんだぁぁぁぁっっ!!』
「何って……ただの元魔王で、現魔マ王よぉ?」
まあ、その前は頂点に居たけどね~? ま、知らなくても良いことだから、別に良いわねぇ。
あと邪神の悲鳴もそろそろ聞き飽きたから……。
「首以外はばいばいしましょうか~」
『え――――あ、あが――!?』
戸惑う邪神の声を聞きながら、一瞬で距離を詰め――素早く剣を振るう。
トーフを斬るよりも簡単に邪神の首は斬れて、それ以外は剣の追加効果である炎によって燃え上がった。
ぷすぷすと燃えていく自らの体を見ながら、邪神は私に掴まれた角から分かるほどに頭をガクガクと震わせる。
『か、からだ。からだだがが……。わ、れれれれのかかかっかあらからかから、からだが……?!』
「そうそう、私がどうしてこんな面倒なことをして貴方の所にやって来たのか教えてあげるわぁ」
そう私が言うと、ビクッと邪神は動けない頭で私を見ようとする。
だけど見れないようなので、優しい私は角を持ちながら顔の近くまで持って行く。
「私がここにやって来たのはね~、経験値を可愛い可愛いヨシュアに上げるためよぉ♪」
『けい、けん……ち?』
「ええ、貴方の僕を操作して、ヨシュアに襲わせてあげる。ちょっと心が苦しいけど……乗り超えたら、ヨシュアはすっごく強くなってくれるはずだからぁ♪」
私が楽しそうに、それでいて嬉しそうにそう言うと……邪神は目を見開いているように見えた。
まるで狂っているモノを見るような目。
「失礼するわね~、こう言うのは私達なら当たり前の感情でしょぉ? 勇者を導くとか、人に分け与えるとか~」
『な、なんだ……まるで、まるで貴様は神にでもなったかのような物言いではないか……っ!?』
「さあ、どうかしらねぇ? さてと、それじゃあ連絡に応じましょうか~♪ ア、アー……」
さっきから聞こえて来る経験値の呼び声にようやく私は返事を返す。
声が違う? 別人だから当たり前よぉ。
そしてやる気がないように返事を返しながら、経験値の潜在意識にハジメーノ王国に向かうように仕向ける。
そうして、経験値は喜んで首だけとなっている邪神を世界に呼び出そうと躍起になっていった。
「さてと、それじゃあ暫くは邪神のフリをしましょうかぁ。……あ、別の分身が『立っちゃった。フラグ立っちゃった』って嘆いてるわね~…………立っちゃったかぁ」
などと呟きながら、私はヨシュアのママだった頃の首の人形を創り……経験値に向けて、ダークネス・フレイムと共に送りつける。
どうせ私に似ているから人形の首を切り刻もうとするわよね~? だから、経験値が攻撃している間は邪神に痛覚を繋げておきましょうかぁ。
そして、ヨシュアが見たら本当に私の首だと錯覚させるようにして、それが終わったらマネキンになるようにして~……。
『ぎゃあああああああっ!? ス、スグニーケよ! 斬るな、蹴るな! 我だ、我がわからぬのかっ!?』
予想通り経験値は人形の首を痛めつけているようねぇ。邪神が悲鳴を上げているわ~。
とりあえず、これを見たときの経験値の反応はどんな感じになるかしらねぇ?
そんなことを思いながら、私は成り行きを任せつつ、彼らの様子を見ていた。
「ええ、今は魔マ王よぉ」
白く染まった自らの領域を驚愕した表情で見つめる邪神、その姿を見ながら、私は音が響くように一歩歩く。
――カツン。
その音に気づき、困惑していた邪神が怯えるように一歩後ずさる。
――カツン。
また一歩進むと、同じように邪神は後ずさる。
その様子を見ながらゆっくりと腕を振るう。
邪神は何が起きたのか分からないようだったけれど、一歩後ずされば分かること。
そう思いながら、カツンとまた一歩歩くと同じように邪神は一歩後ずさる。……はずだった。
『は…………? な、あ……あ――ぎゃあああああああああああああ!!? あ、足が!? 我の、我の足があああああああっ!?』
後ずさろうとした邪神の足が、その場に残り……邪神は背中から大きく倒れた。
いったい何が起きたのか、それを知るために前を見ると……見慣れた黒い足が白い空間に2つあるのが見えたのだと思う。
それを見て、斬られた。という事を理解したであろう邪神は悲鳴を上げた。
「汚い悲鳴ね~? 邪神には、神のプライドっていう物がないのかしらぁ?」
もし私が足を斬られたとしたら、斬られた箇所を地面につけて足がなくても移動するかも知れないし……痛みに涙を流すけど叫びはしないと思うわぁ。
ついでに言うと、手が無くなったら口を使うわね~。
そんなこともしようとしないなんて、本当に……私を舐めすぎているんじゃないかしら?
「ねえ、貴方はどう思うかしら?」
『ひぃ!? わ、我の足、我の足が……!!』
「同じことしか口にしないのは駄目よ~?」
手に握り締めていた【魔王剣ダークネス・フレイム】を軽く振って、その場に残された足を存在ごと焼却しながら邪神に問いかける。
だけど、手と足が消えたことにショックを受けているのか、それとも痛いからか悲鳴しか上げていない。
「まったく、体の何処も失っていないのに良く邪神を名乗っていられるわねぇ?」
呟きながら素早く剣を振るう。すると銀閃が煌き、その直後、剣が走った後に炎が疾走し……切り刻まれて悲鳴を上げる邪神の体の表面を燃やしていく。
チリチリと臭いにおいが立ち込める。ああ、臭いわぁ。
『な、なんなんだっ! 貴様は……キサマは何なんだぁぁぁぁっっ!!』
「何って……ただの元魔王で、現魔マ王よぉ?」
まあ、その前は頂点に居たけどね~? ま、知らなくても良いことだから、別に良いわねぇ。
あと邪神の悲鳴もそろそろ聞き飽きたから……。
「首以外はばいばいしましょうか~」
『え――――あ、あが――!?』
戸惑う邪神の声を聞きながら、一瞬で距離を詰め――素早く剣を振るう。
トーフを斬るよりも簡単に邪神の首は斬れて、それ以外は剣の追加効果である炎によって燃え上がった。
ぷすぷすと燃えていく自らの体を見ながら、邪神は私に掴まれた角から分かるほどに頭をガクガクと震わせる。
『か、からだ。からだだがが……。わ、れれれれのかかかっかあらからかから、からだが……?!』
「そうそう、私がどうしてこんな面倒なことをして貴方の所にやって来たのか教えてあげるわぁ」
そう私が言うと、ビクッと邪神は動けない頭で私を見ようとする。
だけど見れないようなので、優しい私は角を持ちながら顔の近くまで持って行く。
「私がここにやって来たのはね~、経験値を可愛い可愛いヨシュアに上げるためよぉ♪」
『けい、けん……ち?』
「ええ、貴方の僕を操作して、ヨシュアに襲わせてあげる。ちょっと心が苦しいけど……乗り超えたら、ヨシュアはすっごく強くなってくれるはずだからぁ♪」
私が楽しそうに、それでいて嬉しそうにそう言うと……邪神は目を見開いているように見えた。
まるで狂っているモノを見るような目。
「失礼するわね~、こう言うのは私達なら当たり前の感情でしょぉ? 勇者を導くとか、人に分け与えるとか~」
『な、なんだ……まるで、まるで貴様は神にでもなったかのような物言いではないか……っ!?』
「さあ、どうかしらねぇ? さてと、それじゃあ連絡に応じましょうか~♪ ア、アー……」
さっきから聞こえて来る経験値の呼び声にようやく私は返事を返す。
声が違う? 別人だから当たり前よぉ。
そしてやる気がないように返事を返しながら、経験値の潜在意識にハジメーノ王国に向かうように仕向ける。
そうして、経験値は喜んで首だけとなっている邪神を世界に呼び出そうと躍起になっていった。
「さてと、それじゃあ暫くは邪神のフリをしましょうかぁ。……あ、別の分身が『立っちゃった。フラグ立っちゃった』って嘆いてるわね~…………立っちゃったかぁ」
などと呟きながら、私はヨシュアのママだった頃の首の人形を創り……経験値に向けて、ダークネス・フレイムと共に送りつける。
どうせ私に似ているから人形の首を切り刻もうとするわよね~? だから、経験値が攻撃している間は邪神に痛覚を繋げておきましょうかぁ。
そして、ヨシュアが見たら本当に私の首だと錯覚させるようにして、それが終わったらマネキンになるようにして~……。
『ぎゃあああああああっ!? ス、スグニーケよ! 斬るな、蹴るな! 我だ、我がわからぬのかっ!?』
予想通り経験値は人形の首を痛めつけているようねぇ。邪神が悲鳴を上げているわ~。
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