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第77話 ヨシュア、魔マ王と出会う。
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――あらぁ、そんなことしたら駄目よ~?
目を瞑り、剣が迫る恐怖に押し潰されそうになって居る僕の耳に何処かから声が響いた。
その声を聞いた瞬間、胸がドクンと跳ねた。
「ひっ!? そ、その声は…………?! ど、何処だっ!? 何処にいるっ!!?」
怯えた声が聞こえ、顔を上げると……魔族が僕に剣を振り下ろすのを止めて周囲を気にし始めていた。
そんな魔族の姿を見ながら、僕はゆっくりと体を起こそうとする。
「――っ! く、――ぅ!?」
だけど、全身の痛みはまだ治まっていなかったみたいで……すぐに倒れてしまった。
その倒れる音で僕の事を思い出したのか、魔族はハッとしながら僕を見る。
「そ、そうだ……! やつが、やつが現れたとしても、今勇者を殺して魔神様を呼び出したら太刀打ち出来まい!」
「くっ……! そ、そう簡単に、やられて……たま、るか……!!」
近付いてくる魔族に対し、剣を構えようとする僕だったけれど、体の痛みが邪魔をして集中出来ない。
それが分かっているのか魔族は剣を構えると、急いで僕の元へと駆け出した。
「死ねぇぇぇぇぇ!! 邪神様を呼び出す贄となれぇぇぇぇぇっぇぇぇぇぇっ!!」
「くぅ――! もう、だめ――――え?」
僕の元へと駆けながら、剣を振り下ろす魔族。
それはさっきと同じような光景だった。
けれど、僕に振り下ろされようとしていた剣が……止められた。
「え?」
「なっ!? 何だ、何だこれはっ!? 手? ただの手が私の剣を止めている!?」
何もないところから、細い腕が伸びて……その先の手が、ううん、2本の指が魔族の剣を止めていた。
これは、いったい……何?
戸惑いながら目の前の光景を見ていると、また声が響いてきた。
――ただの手で、指よ~? ただし……、魔マ王様の手で、指だけどねぇ?
その声が耳に入る度に、僕の胸はドキドキと激しく脈を打つ。
剣を摘む指に、手に、腕に……目が離れない。
「魔、魔マ王……だと? 貴様は、貴様は魔王だろ!? と言うか、姿を見せろっ!!」
『あらぁ、そんなに私を見たいのかしら~? だったら、見せてあげるわぁ♪』
必死に剣を自分の下へと戻そうとする魔族が叫ぶ中、唖然とその光景を見ていると腕の先が姿を見せ始める。
抱かれた凄く安心出来そうな体を包むのは、黒く闇を思わせるドレス。
そのドレスは背中が大きく開かれていて……そこから見える白く綺麗な背中、そこ生える大きく……全てを包みこむような黒い翼。
生まれながらの高貴さ思わせる、紅混じりの金色の長く光り輝く美しい髪。
チラリと見えた口元は恐怖なんて一切感じさせない自信に満ちた笑み。
そんな、女性の姿を……僕の目は捕らえて放さなかった。
背中越しだから分かるのはそれぐらいだったけれど、これだけは分かる。
僕は、目の前に現れた人物に真正面から微笑まれたら……きっと我を忘れても、抱き着いてしまうだろう。と。
それほどまでに、僕は突然現れた女性に心を奪われていた。
「さ、姿を見せたわよ~?」
「ひぃ!? ほ、本当に……!? な……なんで此処に来た!!」
「あらぁ、大層な物言いね~? 決まってるじゃないのぉ、――私の城を好き勝手した罰を与えに来たのよ」
ば、ばれてる! そう魔族が口を開いたのが見えた。
けれどそれが声になるよりも先に、目の前の魔族は横に吹き跳んだ。
「が――ほぼぁっ!?」
「え? いま、なにが……?」
突然起きた光景に僕はキョトンとする。
ただ分かる事は、あの魔族が持っていたママの剣は今女性の手にあるという事だけ……。
「まったく、過ぎた玩具を振って楽しんでるなんて雑魚も良い所よ~?」
そう言いながら、女性はまおー剣ダークネス・フレイムを自らの手に持ち変えた。
まおー剣ダークネス・フレイムは、まるで喜んでると言わんばかりに刀身を赤い色に染め上げる。
その綺麗な色に、僕は魅了されてしまう……。
「よ、よしゅあ……無事、アルか……?」
「無事、みたいね……。大丈夫、ヨ、シュア……?」
「は、はい……。でも、僕よりも……2人のほうが、大丈夫じゃないようにしか思えません……!」
何時の間にかモンスターを倒し終えたファンロンさんとウィスドムさんが僕へと近付き声をかける。
けれどその姿はガクガクと震えて、立っているのがやっとと言う感じだった。
しかも2人の顔は血がないって言っても可笑しくないほどに蒼ざめている。
「あんたには……分かんないの? あの女の、気配が……?」
「え? あ、あの……凄く、綺麗な女の人って思います」
「あ、駄目アル。メロメロアル。よしゅあメロメロアル……」
僕の言葉に、ファンロンさんとウィスドムさんがガクっとしている。
僕、変な事を言ったかな?
「ふふっ♪ 綺麗な女の人か~。ありがとねぇ」
首を傾げていると、後ろを向いたまま女性は嬉しそうに言う。
その声には、何と言うか嬉しいという感情と優しさが感じられる。……でも、ウィスドムさんもファンロンさんもガクガク震え始めている。
どうしたんだろう? そう首を傾げていると、女性は自ら蹴り飛ばした魔族のほうへとゆっくり歩いていく。
「本当は私もゆ~っくり話をしたいけど~、今は我慢するわぁ。それじゃあ、また会いましょうヨシュア~♪」
「え? あ、う、うん……」
魔族の頭を女性は掴むと、僕に手を振りながら何処かに姿を消して行った。
そして僕は、女性が消えて行った場所をジッと見つめていた……。
目を瞑り、剣が迫る恐怖に押し潰されそうになって居る僕の耳に何処かから声が響いた。
その声を聞いた瞬間、胸がドクンと跳ねた。
「ひっ!? そ、その声は…………?! ど、何処だっ!? 何処にいるっ!!?」
怯えた声が聞こえ、顔を上げると……魔族が僕に剣を振り下ろすのを止めて周囲を気にし始めていた。
そんな魔族の姿を見ながら、僕はゆっくりと体を起こそうとする。
「――っ! く、――ぅ!?」
だけど、全身の痛みはまだ治まっていなかったみたいで……すぐに倒れてしまった。
その倒れる音で僕の事を思い出したのか、魔族はハッとしながら僕を見る。
「そ、そうだ……! やつが、やつが現れたとしても、今勇者を殺して魔神様を呼び出したら太刀打ち出来まい!」
「くっ……! そ、そう簡単に、やられて……たま、るか……!!」
近付いてくる魔族に対し、剣を構えようとする僕だったけれど、体の痛みが邪魔をして集中出来ない。
それが分かっているのか魔族は剣を構えると、急いで僕の元へと駆け出した。
「死ねぇぇぇぇぇ!! 邪神様を呼び出す贄となれぇぇぇぇぇっぇぇぇぇぇっ!!」
「くぅ――! もう、だめ――――え?」
僕の元へと駆けながら、剣を振り下ろす魔族。
それはさっきと同じような光景だった。
けれど、僕に振り下ろされようとしていた剣が……止められた。
「え?」
「なっ!? 何だ、何だこれはっ!? 手? ただの手が私の剣を止めている!?」
何もないところから、細い腕が伸びて……その先の手が、ううん、2本の指が魔族の剣を止めていた。
これは、いったい……何?
戸惑いながら目の前の光景を見ていると、また声が響いてきた。
――ただの手で、指よ~? ただし……、魔マ王様の手で、指だけどねぇ?
その声が耳に入る度に、僕の胸はドキドキと激しく脈を打つ。
剣を摘む指に、手に、腕に……目が離れない。
「魔、魔マ王……だと? 貴様は、貴様は魔王だろ!? と言うか、姿を見せろっ!!」
『あらぁ、そんなに私を見たいのかしら~? だったら、見せてあげるわぁ♪』
必死に剣を自分の下へと戻そうとする魔族が叫ぶ中、唖然とその光景を見ていると腕の先が姿を見せ始める。
抱かれた凄く安心出来そうな体を包むのは、黒く闇を思わせるドレス。
そのドレスは背中が大きく開かれていて……そこから見える白く綺麗な背中、そこ生える大きく……全てを包みこむような黒い翼。
生まれながらの高貴さ思わせる、紅混じりの金色の長く光り輝く美しい髪。
チラリと見えた口元は恐怖なんて一切感じさせない自信に満ちた笑み。
そんな、女性の姿を……僕の目は捕らえて放さなかった。
背中越しだから分かるのはそれぐらいだったけれど、これだけは分かる。
僕は、目の前に現れた人物に真正面から微笑まれたら……きっと我を忘れても、抱き着いてしまうだろう。と。
それほどまでに、僕は突然現れた女性に心を奪われていた。
「さ、姿を見せたわよ~?」
「ひぃ!? ほ、本当に……!? な……なんで此処に来た!!」
「あらぁ、大層な物言いね~? 決まってるじゃないのぉ、――私の城を好き勝手した罰を与えに来たのよ」
ば、ばれてる! そう魔族が口を開いたのが見えた。
けれどそれが声になるよりも先に、目の前の魔族は横に吹き跳んだ。
「が――ほぼぁっ!?」
「え? いま、なにが……?」
突然起きた光景に僕はキョトンとする。
ただ分かる事は、あの魔族が持っていたママの剣は今女性の手にあるという事だけ……。
「まったく、過ぎた玩具を振って楽しんでるなんて雑魚も良い所よ~?」
そう言いながら、女性はまおー剣ダークネス・フレイムを自らの手に持ち変えた。
まおー剣ダークネス・フレイムは、まるで喜んでると言わんばかりに刀身を赤い色に染め上げる。
その綺麗な色に、僕は魅了されてしまう……。
「よ、よしゅあ……無事、アルか……?」
「無事、みたいね……。大丈夫、ヨ、シュア……?」
「は、はい……。でも、僕よりも……2人のほうが、大丈夫じゃないようにしか思えません……!」
何時の間にかモンスターを倒し終えたファンロンさんとウィスドムさんが僕へと近付き声をかける。
けれどその姿はガクガクと震えて、立っているのがやっとと言う感じだった。
しかも2人の顔は血がないって言っても可笑しくないほどに蒼ざめている。
「あんたには……分かんないの? あの女の、気配が……?」
「え? あ、あの……凄く、綺麗な女の人って思います」
「あ、駄目アル。メロメロアル。よしゅあメロメロアル……」
僕の言葉に、ファンロンさんとウィスドムさんがガクっとしている。
僕、変な事を言ったかな?
「ふふっ♪ 綺麗な女の人か~。ありがとねぇ」
首を傾げていると、後ろを向いたまま女性は嬉しそうに言う。
その声には、何と言うか嬉しいという感情と優しさが感じられる。……でも、ウィスドムさんもファンロンさんもガクガク震え始めている。
どうしたんだろう? そう首を傾げていると、女性は自ら蹴り飛ばした魔族のほうへとゆっくり歩いていく。
「本当は私もゆ~っくり話をしたいけど~、今は我慢するわぁ。それじゃあ、また会いましょうヨシュア~♪」
「え? あ、う、うん……」
魔族の頭を女性は掴むと、僕に手を振りながら何処かに姿を消して行った。
そして僕は、女性が消えて行った場所をジッと見つめていた……。
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