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第72話 逃亡魔族、玩具で遊ぶ。
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ハジメーノ王国近辺に辿り着くまでに、遠くから見た人間どもの街では勇者を探すための行動が行われていた。
よくわからない魔道具に手を翳し、翳した者の能力値を知る事が出来るのが分かったが……興味本位でやらなくて良かったとも思う。
アレをやってしまったら、私が魔族であることがわかってしまっただろうからな……。
弱い人間どもだとしても、群れられれば面倒なことだからだ。
そんな光景をあらゆる場所で見ながら、私はハジメーノ王国の近くへと辿り着いた。
そして、旅人の話を盗み聞きしてハジメーノ王国王都に勇者が滞在していることを知った。
「このままだと、私は魔王に殺される……。だが、勇者を殺せば邪神様もこの世に現れるはず! ならば勇者を生贄にするのみ!! そうすれば、邪神様が魔王を殺してくれるはずだ!!」
頭の中でそう考え終えると、私は邪神様へと声高らかに報告する。
ああ、邪神様。邪神様! 早く、早く現れて、魔王を滅してください!!
『なるほど……。それはすばらしいあいでぃあだ。ならば、これをつかうがよい』
どこか寒々しくなる口調の邪神様の声を聞きながら、何故か機嫌の悪い邪神様から道具が送られた。
それは一本の剣と、精巧に作られた女の顔をした人形の首だった。
「これはいったい……。それと、剣が私にギリギリに突き刺さったのですが……?」
『気のせいだろう。よけれただろう?』
「まあ、そうですが。ですが、邪神様からの贈り物、剣は分かりますがこちらは?」
『勇者の前でこれを転がしてやるが良い。やつはぜつぼうする』
なるほど、その絶望している勇者を斬り殺せばよいのですね。
そう思いながら、改めて人形の首を見たのだが……あの忌々しい魔王にどこか似たその顔に苛立ちを覚えた。
であればその人形の首を地面に叩き付けるのは当たり前だろう?
「クハッ! これは良い、ありがとうございます邪神様! 勇者が現れるまで、これを使って暇潰しをします!!」
『…………うむ、たのしむがよい』
その言葉を最後に、邪神様との会話は終了した。
そして翌日の昼を見計らってハジメーノ王国を襲撃する事を考えながら、邪神様がくださった人形の首を踏み、蹴り、頂いた剣の試し斬りを行った。
結果、人形の首は大分酷い有様になってしまっていた。
「クククッ、勇者もこんな風にしてやろうじゃないか!!」
邪神様から武器を渡され、私のテンションは上がっていた。
こんなに絶好調な私だから、こちらの勝利は間違いないはずだ!
そうして夜が開け、私は数多くのモンスターと共に宣戦布告を送った。
……結果、ハジメーノ王国王都外壁前には数多くの兵士と騎士どもが配置についていた。
「くそっ、何故勇者が来ないんだ!!」
普通は勇者がやって来るはずだろうと思いながら、私は地団駄を踏む。
そんな私へとゴブリン、オーク、コボルトのリーダー格どもが近付いてくる。
「スグニーケさま、ドウ、しまス?」
「人間がイッパイブヒ、メスは居るブヒか!? いたら、捕まえて子供産ませるブー!」
「ゴメイレイヲ、ウルフタチモシジヲマッテイル」
「分かっている! と、とりあえずは……ある程度距離を取ってから攻撃を仕掛ける! 魔術に対しては隠れるなり、木の盾を使うなりで対処せよ!!」
焦りながらそう言うと、3体のリーダー格は頷きこの場から去っていく。
それを見届けてから暫くして、ハジメーノ王国の奴らは律儀にも戦闘開始を告げるファンファーレを鳴らした。
『総員、突撃ーーーーっ!!』
『『『『うおおおおおおおおおおおおおおっ!!』』』』
荒い掛け声をと共に兵士どもが走り出し、馬に跨った騎士どもが近付いてくる。
土煙を上げながら迫る軍勢に驚きながら、私は急いで指示を出す。
「そ、総員! 戦闘開始だーーーーっ!!」
『『ギイイイイイイイ!!』』
『『ブヒィィィィィィィィ!!』』
『『ゴアアアアアアアアアアア!!』』
ゴブリン、オーク、コボルトが威勢の良い掛け声を上げ、駆け出していく。
おお、良いぞ! これならば有象無象の集団に攻撃を与えられるぞ!!
そう思いながら、グッと拳を握る。
『『『――炎よ。塊となり、数多の敵を燃やせ! ――ファイアーボール!!』』』
そんな時、外壁の上部から声が響き渡り……直後、赤い魔術陣が光るのが見え、巨大な火球が巨石のように撃ち出された。
『『ゴブウウウウーーーーーー!!』』
『『ブッヒャアアアアアアアアアアア!!』』
『『ワッフーーーーーーーー!!?』』
撃ち出された火球によって、モンスターどもは焼かれていく。
「くそっ! 魔術師が居たのか!? だが、人が真似た魔術など魔法の前では意味もない! 『荒れろ、大嵐!!』」
魔力を込めた声を発すると、魔法は形となり激しい風を周囲に巻き起こした。
その風は魔術師どもが再び放った火球を撃ち落とし、群がる兵士どものほうへと落ちていった。
「クハハッ! 魔族相手に魔術を使うからだ!!」
「見つけたぞ魔族! 覚悟しろ!!」
地面に火球が落ちる様を見ながら笑っていると、私を見つけた騎士が剣を片手に襲いかかって来る。
だから私は邪神様からいただいた剣を振り、騎士を斬り払った。
「なっ!? 剣が――っ、が――――」
軽く振るった。それだけで騎士の持つ剣は騎士ごと簡単に斬られた。
おお、改めて見るが何と言う威力! さすがは邪神様です!!
「くっ、あ……あの魔族っ、いったい何者なんだ……!」
「あれがこの新生魔王軍を率いている者か!?」
「見た目とは違っているということか……!」
地面に落ちた騎士の死体が燃えていくのを見ながら、私を警戒する騎士達が一定の距離を取る。
ああ、何だこの優越感は……!
これが、これが強者の位置と言うものか!!
そう思うと、心の底から笑いが零れそうになっていた。
よくわからない魔道具に手を翳し、翳した者の能力値を知る事が出来るのが分かったが……興味本位でやらなくて良かったとも思う。
アレをやってしまったら、私が魔族であることがわかってしまっただろうからな……。
弱い人間どもだとしても、群れられれば面倒なことだからだ。
そんな光景をあらゆる場所で見ながら、私はハジメーノ王国の近くへと辿り着いた。
そして、旅人の話を盗み聞きしてハジメーノ王国王都に勇者が滞在していることを知った。
「このままだと、私は魔王に殺される……。だが、勇者を殺せば邪神様もこの世に現れるはず! ならば勇者を生贄にするのみ!! そうすれば、邪神様が魔王を殺してくれるはずだ!!」
頭の中でそう考え終えると、私は邪神様へと声高らかに報告する。
ああ、邪神様。邪神様! 早く、早く現れて、魔王を滅してください!!
『なるほど……。それはすばらしいあいでぃあだ。ならば、これをつかうがよい』
どこか寒々しくなる口調の邪神様の声を聞きながら、何故か機嫌の悪い邪神様から道具が送られた。
それは一本の剣と、精巧に作られた女の顔をした人形の首だった。
「これはいったい……。それと、剣が私にギリギリに突き刺さったのですが……?」
『気のせいだろう。よけれただろう?』
「まあ、そうですが。ですが、邪神様からの贈り物、剣は分かりますがこちらは?」
『勇者の前でこれを転がしてやるが良い。やつはぜつぼうする』
なるほど、その絶望している勇者を斬り殺せばよいのですね。
そう思いながら、改めて人形の首を見たのだが……あの忌々しい魔王にどこか似たその顔に苛立ちを覚えた。
であればその人形の首を地面に叩き付けるのは当たり前だろう?
「クハッ! これは良い、ありがとうございます邪神様! 勇者が現れるまで、これを使って暇潰しをします!!」
『…………うむ、たのしむがよい』
その言葉を最後に、邪神様との会話は終了した。
そして翌日の昼を見計らってハジメーノ王国を襲撃する事を考えながら、邪神様がくださった人形の首を踏み、蹴り、頂いた剣の試し斬りを行った。
結果、人形の首は大分酷い有様になってしまっていた。
「クククッ、勇者もこんな風にしてやろうじゃないか!!」
邪神様から武器を渡され、私のテンションは上がっていた。
こんなに絶好調な私だから、こちらの勝利は間違いないはずだ!
そうして夜が開け、私は数多くのモンスターと共に宣戦布告を送った。
……結果、ハジメーノ王国王都外壁前には数多くの兵士と騎士どもが配置についていた。
「くそっ、何故勇者が来ないんだ!!」
普通は勇者がやって来るはずだろうと思いながら、私は地団駄を踏む。
そんな私へとゴブリン、オーク、コボルトのリーダー格どもが近付いてくる。
「スグニーケさま、ドウ、しまス?」
「人間がイッパイブヒ、メスは居るブヒか!? いたら、捕まえて子供産ませるブー!」
「ゴメイレイヲ、ウルフタチモシジヲマッテイル」
「分かっている! と、とりあえずは……ある程度距離を取ってから攻撃を仕掛ける! 魔術に対しては隠れるなり、木の盾を使うなりで対処せよ!!」
焦りながらそう言うと、3体のリーダー格は頷きこの場から去っていく。
それを見届けてから暫くして、ハジメーノ王国の奴らは律儀にも戦闘開始を告げるファンファーレを鳴らした。
『総員、突撃ーーーーっ!!』
『『『『うおおおおおおおおおおおおおおっ!!』』』』
荒い掛け声をと共に兵士どもが走り出し、馬に跨った騎士どもが近付いてくる。
土煙を上げながら迫る軍勢に驚きながら、私は急いで指示を出す。
「そ、総員! 戦闘開始だーーーーっ!!」
『『ギイイイイイイイ!!』』
『『ブヒィィィィィィィィ!!』』
『『ゴアアアアアアアアアアア!!』』
ゴブリン、オーク、コボルトが威勢の良い掛け声を上げ、駆け出していく。
おお、良いぞ! これならば有象無象の集団に攻撃を与えられるぞ!!
そう思いながら、グッと拳を握る。
『『『――炎よ。塊となり、数多の敵を燃やせ! ――ファイアーボール!!』』』
そんな時、外壁の上部から声が響き渡り……直後、赤い魔術陣が光るのが見え、巨大な火球が巨石のように撃ち出された。
『『ゴブウウウウーーーーーー!!』』
『『ブッヒャアアアアアアアアアアア!!』』
『『ワッフーーーーーーーー!!?』』
撃ち出された火球によって、モンスターどもは焼かれていく。
「くそっ! 魔術師が居たのか!? だが、人が真似た魔術など魔法の前では意味もない! 『荒れろ、大嵐!!』」
魔力を込めた声を発すると、魔法は形となり激しい風を周囲に巻き起こした。
その風は魔術師どもが再び放った火球を撃ち落とし、群がる兵士どものほうへと落ちていった。
「クハハッ! 魔族相手に魔術を使うからだ!!」
「見つけたぞ魔族! 覚悟しろ!!」
地面に火球が落ちる様を見ながら笑っていると、私を見つけた騎士が剣を片手に襲いかかって来る。
だから私は邪神様からいただいた剣を振り、騎士を斬り払った。
「なっ!? 剣が――っ、が――――」
軽く振るった。それだけで騎士の持つ剣は騎士ごと簡単に斬られた。
おお、改めて見るが何と言う威力! さすがは邪神様です!!
「くっ、あ……あの魔族っ、いったい何者なんだ……!」
「あれがこの新生魔王軍を率いている者か!?」
「見た目とは違っているということか……!」
地面に落ちた騎士の死体が燃えていくのを見ながら、私を警戒する騎士達が一定の距離を取る。
ああ、何だこの優越感は……!
これが、これが強者の位置と言うものか!!
そう思うと、心の底から笑いが零れそうになっていた。
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