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第69話 ヨシュア、勇者の価値を思い知る。
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「あの者は、どうやら異常なまでの勇者崇拝者だったようだ。それも過激なタイプのな」
「…………ああ、やっぱり」
「勇者、すうはいしゃ……?」
王様の言葉に、ウィスドムさんは理解したと言うように顔をますます顰めながら……呆れたように溜息を吐く。
僕はまったく判らず、首を傾げるばかりで……ファンロンさんは美味しそうに、だけどこの間よりもゆっくりと味わうようにお菓子を食べていた。要するに話に参加していない。
そんな僕に説明をしてくれるのか王妃様が声をかける。
「勇者様、勇者という言葉に憧れを持つ人は大勢居ます。その憧れは一種の信仰となっており、……宗教国家『ピルグリム』が掲げる勇者信仰というものです」
「は、はあ……?」
「つまりは勇者様は勇者信仰の中では現人神、つまりは生きた生身の神様と言われています」
「えっ!? ぼ、僕神様なのっ!?」
王妃様の言葉に僕は仰天して、立ち上がる。
そんな僕を王妃様は生温かくも困った表情をしながら見ていたけれど、ウィスドムさんによって座らされると……。
「いえ、勇者様は人間ですよ。ただ、凄い役目を与えられただけですが……。そうでしょう、お二人とも」
「ええ、ヨシュアは勇者だけど……わたし達と同じ存在だって思っている」
「ファンロン龍だけど、よしゅあ想うの普通アル。だから、神様関係ないアル!」
王妃様に向けられた言葉にウィスドムさんが僕を見て、ツンとした瞳を和らげながら頷いてくれる。
ファンロンさんも、聞いていたみたいで同じように頷く。
そう言って貰えると、なんだか凄く嬉しく感じる。
「2人とも……ありがとう。あの、それで勇者崇拝者って言うのは勇者信仰をしている人、という事で良いんですか?」
「はい、そう思っていただけて構いません。……ですが、あの者はその中でも異常すぎるまでに憧れを持ち、勇者様に自分を関わらせたい者達なのです」
自分を関わらせる?
それはいったいどう言う意味だろう?
意味が分からず、首を傾げながら悩んでいると……。
「勇者に関わる。それだけでもこの世界に住む人々には格好の的になるの。……例えば、ヨシュアがとある屋台で「これ美味しい!」って言ったとする。そうしたら、この店の屋台には『勇者様が褒め称えた』といわれて繁盛する。
他にも、勇者様に魔術を教えた。と言うだけでも、彼らには名誉ある称号となるの。……じゃあヨシュア、わたしとアホはどう見られる?」
「えっと、勇者のお供……ですよね?」
「そう。……で、勇者のお供として一緒に旅をした。っていう名誉ある称号はこれからの歴史に名を刻むことになるわけ」
……あ、何となく分かった。あのお爺さんが何でウィスドムさんにああ言ったのか。
「お爺さんは、ウィスドムさんの代わりに自分をこれからの歴史に載せたかった?」
「はい、あの者は自らを大賢者とか大魔法使いとして歴史に名を残したかった。と白状しておりました」
「そ、そうなんですか……」
「勇者に関心が無い人間も怖いって思うけど、勇者に関心がありすぎる人間っていうのも怖いのよ」
王妃様の言葉に苦笑しつつ返事を返す僕へと、どこか遠くを見るようにウィスドムさんが言う。
何か、嫌な思い出でもあるのかな?
そんな風に首を傾げてると、思い出したように王様が口を開く。
「まあ……、今回は老人で良かった。と思えば良いのだろうか」
「え? それってどう言う……」
「いや、若い女性であったならば、勇者様を無理矢理にでも――「あなた?」――う”っ! い、いや、何でも無い……なんでも」
目を閉じながら、うんうんと頷いていた王様だったけれど王妃様の言葉にビクッと震えて黙ってしまった。
? 無理矢理、何かされたりしたのかな??
あと、王妃様が微笑んでいただけだったけど……一瞬怖かった。
「ああ、なるほど……」
「ウィスドムさん、何か分かったのですか?」
「………………あ、いや。ワカラナカッタ。ワカラナカッタゾ……」
まるで何かに気づいた様子のウィスドムさんだったけれど、僕から眼を逸らしながら言う。
うぅん、どうしたんだろう?
「まあ、女性だった場合と言うことは置いておいて……だ。あの者には今回のウィスドム殿に起こした問題の責任を取ってもらうこととなった」
「責任……ですか?」
「うむ。取り敢えずは城に在中していた魔術師だったが、城からの追放。それと勇者様の近付かないようにすることと、視界に入らないようにする事を誓ってもらった……強制的にだがな」
「え、強制的にって……、その……少しやりすぎなんじゃ……?」
「勇者様、世間知らずなのは仕方ないと思います。ですが……時には他人への優しさよりも、身内のために怒ることが大事です。今回の件でも下手をすればウィスドム殿が死んでしまっていたのかも知れないのですよ?」
王様の言葉に僕はハッとする。……そうだった。今回はワンエルのお陰でウィスドムさんは目覚めてくれた。
だけど、死んでしまったら生き返ることなんて出来ないんだ……ママみたいに。
そう思うと、僕は何時の間にかギュッと手を握り締めていた。
……そんな僕の様子を見ているのか、王様は静かだ。
「……何も勇者様の考えを否定しようとはしていません。ですがあの者への処罰をああした理由は、下手をすれば勇者様だけ出なくそちらのお二人にも被害が来るかも知れないからです。
自分の行う行動がどのような結果を招くか、今はまだ分からなくても良いですが……何時か考える日が来るでしょう」
…………王様の言葉を、僕は何も言えず……黙って聞いていた。
「…………ああ、やっぱり」
「勇者、すうはいしゃ……?」
王様の言葉に、ウィスドムさんは理解したと言うように顔をますます顰めながら……呆れたように溜息を吐く。
僕はまったく判らず、首を傾げるばかりで……ファンロンさんは美味しそうに、だけどこの間よりもゆっくりと味わうようにお菓子を食べていた。要するに話に参加していない。
そんな僕に説明をしてくれるのか王妃様が声をかける。
「勇者様、勇者という言葉に憧れを持つ人は大勢居ます。その憧れは一種の信仰となっており、……宗教国家『ピルグリム』が掲げる勇者信仰というものです」
「は、はあ……?」
「つまりは勇者様は勇者信仰の中では現人神、つまりは生きた生身の神様と言われています」
「えっ!? ぼ、僕神様なのっ!?」
王妃様の言葉に僕は仰天して、立ち上がる。
そんな僕を王妃様は生温かくも困った表情をしながら見ていたけれど、ウィスドムさんによって座らされると……。
「いえ、勇者様は人間ですよ。ただ、凄い役目を与えられただけですが……。そうでしょう、お二人とも」
「ええ、ヨシュアは勇者だけど……わたし達と同じ存在だって思っている」
「ファンロン龍だけど、よしゅあ想うの普通アル。だから、神様関係ないアル!」
王妃様に向けられた言葉にウィスドムさんが僕を見て、ツンとした瞳を和らげながら頷いてくれる。
ファンロンさんも、聞いていたみたいで同じように頷く。
そう言って貰えると、なんだか凄く嬉しく感じる。
「2人とも……ありがとう。あの、それで勇者崇拝者って言うのは勇者信仰をしている人、という事で良いんですか?」
「はい、そう思っていただけて構いません。……ですが、あの者はその中でも異常すぎるまでに憧れを持ち、勇者様に自分を関わらせたい者達なのです」
自分を関わらせる?
それはいったいどう言う意味だろう?
意味が分からず、首を傾げながら悩んでいると……。
「勇者に関わる。それだけでもこの世界に住む人々には格好の的になるの。……例えば、ヨシュアがとある屋台で「これ美味しい!」って言ったとする。そうしたら、この店の屋台には『勇者様が褒め称えた』といわれて繁盛する。
他にも、勇者様に魔術を教えた。と言うだけでも、彼らには名誉ある称号となるの。……じゃあヨシュア、わたしとアホはどう見られる?」
「えっと、勇者のお供……ですよね?」
「そう。……で、勇者のお供として一緒に旅をした。っていう名誉ある称号はこれからの歴史に名を刻むことになるわけ」
……あ、何となく分かった。あのお爺さんが何でウィスドムさんにああ言ったのか。
「お爺さんは、ウィスドムさんの代わりに自分をこれからの歴史に載せたかった?」
「はい、あの者は自らを大賢者とか大魔法使いとして歴史に名を残したかった。と白状しておりました」
「そ、そうなんですか……」
「勇者に関心が無い人間も怖いって思うけど、勇者に関心がありすぎる人間っていうのも怖いのよ」
王妃様の言葉に苦笑しつつ返事を返す僕へと、どこか遠くを見るようにウィスドムさんが言う。
何か、嫌な思い出でもあるのかな?
そんな風に首を傾げてると、思い出したように王様が口を開く。
「まあ……、今回は老人で良かった。と思えば良いのだろうか」
「え? それってどう言う……」
「いや、若い女性であったならば、勇者様を無理矢理にでも――「あなた?」――う”っ! い、いや、何でも無い……なんでも」
目を閉じながら、うんうんと頷いていた王様だったけれど王妃様の言葉にビクッと震えて黙ってしまった。
? 無理矢理、何かされたりしたのかな??
あと、王妃様が微笑んでいただけだったけど……一瞬怖かった。
「ああ、なるほど……」
「ウィスドムさん、何か分かったのですか?」
「………………あ、いや。ワカラナカッタ。ワカラナカッタゾ……」
まるで何かに気づいた様子のウィスドムさんだったけれど、僕から眼を逸らしながら言う。
うぅん、どうしたんだろう?
「まあ、女性だった場合と言うことは置いておいて……だ。あの者には今回のウィスドム殿に起こした問題の責任を取ってもらうこととなった」
「責任……ですか?」
「うむ。取り敢えずは城に在中していた魔術師だったが、城からの追放。それと勇者様の近付かないようにすることと、視界に入らないようにする事を誓ってもらった……強制的にだがな」
「え、強制的にって……、その……少しやりすぎなんじゃ……?」
「勇者様、世間知らずなのは仕方ないと思います。ですが……時には他人への優しさよりも、身内のために怒ることが大事です。今回の件でも下手をすればウィスドム殿が死んでしまっていたのかも知れないのですよ?」
王様の言葉に僕はハッとする。……そうだった。今回はワンエルのお陰でウィスドムさんは目覚めてくれた。
だけど、死んでしまったら生き返ることなんて出来ないんだ……ママみたいに。
そう思うと、僕は何時の間にかギュッと手を握り締めていた。
……そんな僕の様子を見ているのか、王様は静かだ。
「……何も勇者様の考えを否定しようとはしていません。ですがあの者への処罰をああした理由は、下手をすれば勇者様だけ出なくそちらのお二人にも被害が来るかも知れないからです。
自分の行う行動がどのような結果を招くか、今はまだ分からなくても良いですが……何時か考える日が来るでしょう」
…………王様の言葉を、僕は何も言えず……黙って聞いていた。
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