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第68話 ヨシュア、王様達と会話する。
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「この度は、本当に勇者様とウィスドム殿には申し分けないことをした……」
ウィスドムさんが落ち着いて暫くして、僕らは王様に呼ばれ騎士の人に案内されて移動を開始した。
向かう場所は謁見の間かなと思っていたけれど、僕の予想とは違ってついた場所はある一室だった。
その部屋の中に入ると、王様と王妃様が立っていて……僕達が部屋に入り扉がしまった途端、頭を下げ……僕らに向けてそう言ったのだった。
「えっ!? な、そん、え、何で謝るんですかっ!? 頭を上げてください!」
当然僕は驚いて、慌てながら王様と王妃様にお願いする。
けれど2人は頭を上げない。ど、どうするの? どうしたら良いの??
困惑する僕の肩をウィスドムさんが掴むと前に出て……。
「貴方がたの謝罪を受け入れます。ですので顔を上げてください。……ほら、ヨシュアも」
「え、あ……その、受け入れ、ます」
ウィスドムさんに促されるように、僕は王様達に言う。
これはいったいどういうことなのだろうか、と思っていると一歩下がったウィスドムさんが改めて僕に説明をしてくれる。
「王様が謝っているのだから、お願いして頭を上げてもらうんじゃなく、謝罪を受け入れることが大事なの」
「そう、なの?」
「そう言うものなのよ。……本当、王族って何処も面倒臭い」
呆れるような溜息を吐きながらウィスドムさんは呟く。
……何か、王族に詳しく聞こえる気がしたけど……気のせいだよね?
そう思ってると、王様と王妃様は頭を上げてくれた。
「……ありがとう。それではそちらの席に座って貰えないだろうか?」
「は、はい……。じゃあ、失礼します」
王様が進める椅子に移動し、僕は恐る恐る椅子へと座る。
ファンロンさんは普通に座っているけれど、ウィスドムさんの方は……王様へと軽く頭を下げてから座った。
礼儀が大事……って事なのかな?
「少し話が長くなると思いますから、お茶とお菓子を用意させて貰いますね」
「お菓子アルか? ゆっくり味わって食べるアル!」
チリリンと、王妃様がベルを鳴らすと部屋の前で待っていたのか侍女さん達がお菓子とお茶をお盆に乗せて部屋に入ってきた。
そのお菓子を見て、ファンロンさんは目を輝かせる。ウィスドムさんも……珍しくお菓子に視線が向けられている。
あ、そういえば呼ばれるまで水しか飲んでいない、よね?
そう思っていると、お茶の用意が終わったようで王妃様が僕達に向けて軽く手を差し伸べる。
「お代わりは幾らでも……とまでは行きませんが、ある程度は用意しますので食べてください」
「ありがとうございます」
「ありがとうアル。もぐ、もぐ……もぐ……。ほわぁ~……甘くて美味しいアル~……」
「…………あぁ、美味しい。考えると3日ぶりなのね……」
出されたお菓子を食べながら、ファンロンさんは嬉しそうに微笑む。
ウィスドムさんもお腹が空いていたみたいで、お菓子を食べて静かに目を閉じる。
僕もお菓子を食べ、お茶を飲んで……気を落ち着かせる。
そんな僕らを見計らってか、王様が口を開いた。
「…………勇者様、宜しいだろうか?」
「は、はい、どうぞっ」
「ありがとう。では、初めに勇者様が妻経由で依頼した換金についてだが、この袋の中に入れられているので確認を頼む」
そう言って王様は机の上に置かれた袋の口を開けて僕らの前へと幾つか差し出した。
開かれた袋の中を見ると金色や銀色、そして銅色の硬貨がたくさん詰まっていた。
人さらいからサタニャエルが回収した銅貨や銀貨と同じ物みたいだから……、多分金色は金貨だ。
「……換金の枚数が明らかに少ないように思えるのだけど?」
「足りない分は別の部屋に用意している。……だが、今現在の我が国の国庫から出せるお金はたかが知れているだろう。そこのところは考えてもらいたい」
僕には多いように思えたけれど、ウィスドムさんは文句があるようだった。
それほどママが持っていた金貨が凄いってことなんだ。
「それは分かった。……でも、あの金貨にはそれほどの価値があると考えて貰えると嬉しい。だから、お金が無い分は何か物で代用して貰おうか」
「分かった。では……勇者様達の移動のために特別な馬車を用意しよう。無論馬もつける」
「他には?」
「そうだな……。では、何が良いだろうか…………」
ウィスドムさんの言葉に王様は考え始める。
……それにしても、ばしゃ。っていうと、お城に来る時に乗ったアレだよね?
ああ言うのを、僕らが持つの?
うーん……、なんだか想像できないや。
「とりあえず……、何か良さそうな武器と防具、それと旅先の道具一式を用意しよう」
「一応は妥当な線、という所か……まあ、わたし達も強盗染みた真似をするつもりは無いから、今はそれぐらいで」
「感謝する。…………この紙を宰相へと渡してくれ」
王様は紙にサラサラと何かを書くと、鈴を鳴らして呼び出した侍女さんへとそれを渡した。
紙を渡された侍女さんは素早く部屋から出て行ったから、さいしょうさんの所に向かったんだろう。
「先ずは換金の方はこれぐらいにして……、今度は魔術講師を務めるはずだった人物の話をしようか……」
「つまりは何でウィスドムさんとああなってしまったのかを説明するわけです」
僕が首を傾げているのに気づいているのか、王妃様はそう説明をしてくれる。
あのお爺さんのお話? その言葉に僕は背筋をピンとして話を聞く体勢を取り、ウィスドムさんは顔を顰めた。
そんな僕達の様子を見ながら、王様は口を開いた。
―――――
うぅ、時間がなかった……。
ウィスドムさんが落ち着いて暫くして、僕らは王様に呼ばれ騎士の人に案内されて移動を開始した。
向かう場所は謁見の間かなと思っていたけれど、僕の予想とは違ってついた場所はある一室だった。
その部屋の中に入ると、王様と王妃様が立っていて……僕達が部屋に入り扉がしまった途端、頭を下げ……僕らに向けてそう言ったのだった。
「えっ!? な、そん、え、何で謝るんですかっ!? 頭を上げてください!」
当然僕は驚いて、慌てながら王様と王妃様にお願いする。
けれど2人は頭を上げない。ど、どうするの? どうしたら良いの??
困惑する僕の肩をウィスドムさんが掴むと前に出て……。
「貴方がたの謝罪を受け入れます。ですので顔を上げてください。……ほら、ヨシュアも」
「え、あ……その、受け入れ、ます」
ウィスドムさんに促されるように、僕は王様達に言う。
これはいったいどういうことなのだろうか、と思っていると一歩下がったウィスドムさんが改めて僕に説明をしてくれる。
「王様が謝っているのだから、お願いして頭を上げてもらうんじゃなく、謝罪を受け入れることが大事なの」
「そう、なの?」
「そう言うものなのよ。……本当、王族って何処も面倒臭い」
呆れるような溜息を吐きながらウィスドムさんは呟く。
……何か、王族に詳しく聞こえる気がしたけど……気のせいだよね?
そう思ってると、王様と王妃様は頭を上げてくれた。
「……ありがとう。それではそちらの席に座って貰えないだろうか?」
「は、はい……。じゃあ、失礼します」
王様が進める椅子に移動し、僕は恐る恐る椅子へと座る。
ファンロンさんは普通に座っているけれど、ウィスドムさんの方は……王様へと軽く頭を下げてから座った。
礼儀が大事……って事なのかな?
「少し話が長くなると思いますから、お茶とお菓子を用意させて貰いますね」
「お菓子アルか? ゆっくり味わって食べるアル!」
チリリンと、王妃様がベルを鳴らすと部屋の前で待っていたのか侍女さん達がお菓子とお茶をお盆に乗せて部屋に入ってきた。
そのお菓子を見て、ファンロンさんは目を輝かせる。ウィスドムさんも……珍しくお菓子に視線が向けられている。
あ、そういえば呼ばれるまで水しか飲んでいない、よね?
そう思っていると、お茶の用意が終わったようで王妃様が僕達に向けて軽く手を差し伸べる。
「お代わりは幾らでも……とまでは行きませんが、ある程度は用意しますので食べてください」
「ありがとうございます」
「ありがとうアル。もぐ、もぐ……もぐ……。ほわぁ~……甘くて美味しいアル~……」
「…………あぁ、美味しい。考えると3日ぶりなのね……」
出されたお菓子を食べながら、ファンロンさんは嬉しそうに微笑む。
ウィスドムさんもお腹が空いていたみたいで、お菓子を食べて静かに目を閉じる。
僕もお菓子を食べ、お茶を飲んで……気を落ち着かせる。
そんな僕らを見計らってか、王様が口を開いた。
「…………勇者様、宜しいだろうか?」
「は、はい、どうぞっ」
「ありがとう。では、初めに勇者様が妻経由で依頼した換金についてだが、この袋の中に入れられているので確認を頼む」
そう言って王様は机の上に置かれた袋の口を開けて僕らの前へと幾つか差し出した。
開かれた袋の中を見ると金色や銀色、そして銅色の硬貨がたくさん詰まっていた。
人さらいからサタニャエルが回収した銅貨や銀貨と同じ物みたいだから……、多分金色は金貨だ。
「……換金の枚数が明らかに少ないように思えるのだけど?」
「足りない分は別の部屋に用意している。……だが、今現在の我が国の国庫から出せるお金はたかが知れているだろう。そこのところは考えてもらいたい」
僕には多いように思えたけれど、ウィスドムさんは文句があるようだった。
それほどママが持っていた金貨が凄いってことなんだ。
「それは分かった。……でも、あの金貨にはそれほどの価値があると考えて貰えると嬉しい。だから、お金が無い分は何か物で代用して貰おうか」
「分かった。では……勇者様達の移動のために特別な馬車を用意しよう。無論馬もつける」
「他には?」
「そうだな……。では、何が良いだろうか…………」
ウィスドムさんの言葉に王様は考え始める。
……それにしても、ばしゃ。っていうと、お城に来る時に乗ったアレだよね?
ああ言うのを、僕らが持つの?
うーん……、なんだか想像できないや。
「とりあえず……、何か良さそうな武器と防具、それと旅先の道具一式を用意しよう」
「一応は妥当な線、という所か……まあ、わたし達も強盗染みた真似をするつもりは無いから、今はそれぐらいで」
「感謝する。…………この紙を宰相へと渡してくれ」
王様は紙にサラサラと何かを書くと、鈴を鳴らして呼び出した侍女さんへとそれを渡した。
紙を渡された侍女さんは素早く部屋から出て行ったから、さいしょうさんの所に向かったんだろう。
「先ずは換金の方はこれぐらいにして……、今度は魔術講師を務めるはずだった人物の話をしようか……」
「つまりは何でウィスドムさんとああなってしまったのかを説明するわけです」
僕が首を傾げているのに気づいているのか、王妃様はそう説明をしてくれる。
あのお爺さんのお話? その言葉に僕は背筋をピンとして話を聞く体勢を取り、ウィスドムさんは顔を顰めた。
そんな僕達の様子を見ながら、王様は口を開いた。
―――――
うぅ、時間がなかった……。
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