駄々甘ママは、魔マ王さま。

清水裕

文字の大きさ
上 下
57 / 88

第56話 ヨシュア、見舞う。

しおりを挟む
 僕が騎士の人へとそう言って、騎士団長さんから言葉を聞いて暫くしてから……2人の瞼がゆっくりと開かれた。
 初めに気づいたのは、ジッと2人を見続けていた僕だった。

「ウィスドムさんっ! ファンロンさん!?」
「う……っ、ゆう……しゃ……? あぐっ!?」
「ゆうしゃ、ア……うぷっ」

 僕を見て、起き上がろうとした2人だったけれど、ウィスドムさんは頭を押さえて……ファンロンさんは口元を押さえた。
 そんな2人へと僕は駆け寄り、声をかける。

「だ、大丈夫ですか……? しっかりしてくださいっ」
「へ、いき……じゃないけど、いちおうは、大丈夫……」
「うぅ……、きぼぢわるい、アル……」

 青い顔をしながら返事を返す2人を僕は心配そうに見ていたけれど……、不意にそんな僕を2人が見返してきた。
 体調は悪そうだけれど、何処か真剣な瞳で。

「え、あの……?」
「……勇者は、どうして……わたし達を心配するの?」
「ファンロン……うぷっ、たち……、ゆうしゃ、うぇっぷ……ないがしろに、しちゃったアルよ?」

 何で心配するのか、その言葉に……僕はさっき騎士の人に言った言葉をもう一度言った。
 すると……。

「…………え?! ええっ!? ど、どうしたの? 2人とも!?」
「ご、めんなさい……。ごめんなさぃーー……!」
「ごめんなさいアル。ごめんなさいアルゥゥ!!」

 ボロボロと涙を流しながら謝り始める2人に僕は戸惑いが隠せなかった。
 戸惑う僕を尻目に2人ともシャクリを上げながら、ヒックヒックと泣いている。
 突然泣き出した2人を残っていた騎士の人たちも驚いた表情で見つつ、如何にかして欲しいという風に僕を見始めた。
 えっと、えっと……、ど……どうやったら良いのかな?
 えーっと、えっと、えっとえっと……あ。
 この時、僕は2人に初めて会った時の事を思い出した。あの時、ファンロンさんは僕に……。

「え、えっと……、大丈夫ですか? 泣かないでください……」
「「ひっく、ひく、ひ――――あ」」
「その……、ファンロンさんの真似ですけど、落ち着き……ましたか?」
「あ…………、その、うん……」
「おちつくアル……。もっと、角を撫でて欲しいアル……」

 頑張って腕を伸ばして2人を一緒くたに抱き締めるようにしつつ、後ろから頭を撫でているから……2人がどんな顔をしてるのかはわからない。
 だけど、固く感じていた2人の体が段々と柔らかくなって行くところから、落ち付いていると僕は思う事にする。
 それとファンロンさんがお願いしたから、彼女の頭の角も優しく撫でて上げる。
 その際、ビクビク震えていたけれど……どうしたんだろう?
 そんな疑問を抱きつつ、暫くの間頭を撫で続けていると……か細い声が聞こえてきた。

「も、もう……いいから…………」
「もぁ、もぅ……限界、アルゥ……」
「え? あ、え!? ふ、2人とも!?」

 もう大丈夫、そう聞いたので僕は2人から離れると……へにゃ~って2人は崩れ落ちた。
 まさか、まだ具合が悪いの!? 心配そうに僕が近づくとウィスドムさんが僕を見ないようにしながら来ないようにと手を前へと出してきた。

「その、もう……だいじょうぶ、だから……その、ちょっと、時間……くれない?」
「ほにゃぁ~~……、ヘロヘロアルゥ~……♪」
「え、あ、う……うん。わかった……」

 どういう意味なのかわからないけれど、僕は2人から離れる。
 少し離れた場所で待っていたら良いかなと思ったけれど、ちゆしさんに「かんじゃにさわりますので……」と言われて部屋から出されてしまった。
 僕と、騎士の人達も同じく出されて……、如何するべきか騎士の人達を見る。

「えっと……、どう……しましょうか?」
「あー、いや……その、どう言えば良いの……でしょうか?」
「と、とりあえず……勇者様もお疲れでしょうから、部屋のほうに戻られては如何でしょうか?」

 僕の質問に騎士の人達はどう返事をすれば良いのか悩みながら、言ってきた。
 んー……、僕……何かしたのかな?

「ワン」
「ニャー」
「あ、2人とも」
「きっと、この2匹も部屋に戻るように言っているのでしょう」

 首を傾げていると、入口で待っていてくれたワンエルとサタニャエルが僕に声をかけてきた。
 そんな2人を見ながら騎士団長さんが部屋に戻る事を勧める。
 うーん、いいの……かなぁ?
 また首を傾げる僕だったけれど、僕の肩に飛び乗ってきたサタニャエルが耳元で小さく言ってきた。

(勇者様、心配なのは分かりますけど……休んだ方が良いと思いますニャ。わにゃくしの耳には、寝息が聞こえますニャ)

 そう、なの? ……それじゃあ、戻ろうかな。
 サタニャエルの言葉を聞いて、僕は少し躊躇したけど……部屋へと戻る事に決めた。

 明日になったら、元気になってくれるかな?

 ―――――

 …………(ふらぐ)たっちゃった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

学園長からのお話です

ラララキヲ
ファンタジー
 学園長の声が学園に響く。 『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』  昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。  学園長の話はまだまだ続く…… ◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない) ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

処理中です...