46 / 88
第45話 ヨシュア、結局さらわれる。
しおりを挟む
ぱあーー、って光り輝きながら白い翼を生やした白色のいぬさんは、ふわーって地面に降り立った。
そのいぬさんの様子に僕は怖いのを忘れるほどにキラキラと魅入っていた。
そして、いぬさんは前脚を男の人たちに攻撃しようとしていた黒色のねこさんに向けると……。
「もう一度言うワン! この悪魔め! 勇者様を痛めつけるつもりワンね!?」
「ニャニャ!? ニャンでこの様子から見て、そんな結論に辿り着くニャ!? わにゃくしはご主人様の子供を助けようとしていただけニャ!!」
「問答無用だワン! 正義の鉄槌を喰らうワンーー!!」
「ニャーー!? だから、ちゃんと話を聞くニャーー!!」
「悪魔の言葉なんて聞くわけないワンーー!! ワンワンワンワンワンワンワンワンッ!!」
黒色のねこさんは僕を助けてくれようとしていたみたいだけど、白色のいぬさんはそれを信じていないようで黒色のねこさんを倒そうと襲い掛かって来ていた。
え? え? ど、どういうこと??
いぬさんも、ねこさんも、僕を助けに来たって言ってるのに、何で喧嘩し始めてるの?!
「ふ、2人ともやめてよぉ! 何でケンカなんてするのー?!」
「こいつが悪魔だからだワン!」
「わにゃくしはケンカなんてしたくないニャ! この天使が話を聞かないだけニャーー!!」
「黙るワン! 勇者様をたぶらかすつもりワンね!?」
「誤解だニャーー!!」
あわわ、ど……どうしよう、本当どうしよう……!!
追いかけ回されるねこさんと、追いかけ続けるいぬさんを見ながら僕は如何するべきか悩んでいた。
だけど、そんな事をするなら早くこの場から逃げるべきだったんだと思う……。
何故なら……。
「「今だっ!!」」
「え? う――うわぁ!?」
声がした瞬間、僕に何かが被されて……直後、体が浮き上がるのを感じた。
もしかして抱えられた? それに気づいた時には既に僕は男の人達によって連れ去られてしまっていた。
「ゆ、勇者が何だってんだ! こんな上玉売ったら良い金になるんだよ!!」
「それに邪魔されそうになってたってのに、こんなチャンスが出来たらこうするだろ普通に考えてよ!!」
「うわーーーーっ!? た、助けてぇ!!」
「ニャ!? し、しまったニャーーーーッ!!」
男の人達の声が下から聞こえる中、僕は精一杯の声を上げる。
すると、僕の様子に気づいたのかいぬさんから逃げているねこさんが雄叫びを上げた。
多分だけど男の人達に連れて行かれる僕の姿が見えているんだろうな。
「おい、犬っころ! ちゃんとわにゃくしの話を聞くニャ!」
「五月蝿いワン、悪魔の言葉は聞くつもりはないワン!!」
「ニャーー! この頭でっかちがーー!! あそこ見るニャあそこをーー!!」
「余所見をしているところを攻撃するワンね!? なんて卑怯なやつだワン!!」
「ちげーニャ! ご主人様の子供が攫われちゃってるんだニャ!! もっと具体的に言うと、十中八九お前のご主人様の子供でもあるニャーー!!」
「ワンッ!? ま、まさかご主人様は悪魔を飼っていたですワン!?」
「わにゃくしは元は猫だニャ! というか、お前も犬だったニャろーが!?」
空の上からワンワンニャーニャーと声が聞こえるけれど、その声が少しずつ遠ざかっていく。
もしかして、助からない? 助からないの?
そう思ってしまうと、ねこさんといぬさんが出てきて湧き上がっていたドキドキとした感情が冷えていき……、ガクガクと体が震え始めてしまっていた。
たた、たすけて……! たすけてっ!!
「ワウウ……、まだ疑わしいワン……だけど、助けてって心の叫びが勇者様から聞こえてくるから助けるワン!!」
「それで良いニャ! というか、一時休戦でも良いから早く勇者を助けるニャ!!」
「ワオーーンッ!!」「ニャーーンッ!!」
「「ひ、ひぃっ!? も、もう来やがった!?」」
「勇者様を解放するワン、この下郎!!」
「お前らのせいで、街が滅ぶところだったニャーー!!」
「「うごぁ!?」」
ドゴッ!! という音が耳に響いた瞬間、抱えられていた僕の体はフワッと浮き上がるのを感じ……すぐに落下を始めた。
「う、うわあああああっ!? ――――あ、あれ……?」
「キャッチですワン!」
だけど、地面に当たる事がなく、不思議に思っていると上からさっきのいぬさんの声がし、ゆっくりと地面に下ろされるのを感じた。
そして……閉じられていた袋の口が解かれ、暗くて臭くて息苦しかったところに光が差し込んだ。
「ふう、これで何とかなったニャー……。大丈夫かニャ、ご主人様の息子」
「え、あ……う、うん……」
腕を組んで頷くねこさんが僕に尋ねてきたから、僕は助かったという実感がまだ湧かずに変な感じに返事を返してしまう。
それでもねこさんは嬉しかったみたいで、にんまりと目を細めて笑った。
そんなねこさんの隣に、いぬさんがゆっくりと下りてきた。
「大丈夫でしたかワン、勇者様?」
「うん、助けてくれてありがとう。……えっと、きみたちは?」
首を傾げながらいぬさんが訊ねてきたので返事を返しつつ、僕はこの子達がいったい何者なのか分からない事に気がついた。
すると、ねこさんが「待っていましたニャ!」って言って、二本足で立ち上がると前足を顔の前で×な感じに組み合わせた。
そんなねこさんにムッとしたいぬさんは同じようにすっくと立ち上がると、前脚を組み始めた。
「わにゃくしは、サタニャエルですニャ! ちょっと今は悪魔をやっていますけど、少し前まではご主人様に飼われていましたニャ! ほら、お前も紹介するニャ!!」
「馴れ馴れしいワン! けど、勇者様には紹介させて頂きますワン! ワンが輩はワンエルですワン!! 神格を与えられた犬ですワン! 勇者様を助けるためにご主人様から送られて来ましたワン!!」
「んーっと……、君がサタニャエルで……、君がワンエル?」
「はいニャ!」
「はいですワン!」
黒色のねこさん、サタニャエルが頷き……。白色のいぬさん、ワンエルが頷いた。
その子達を見ながら、僕は気になった事を訊ねる。
「それで……、さっきから言ってるご主人様って……誰のことなの?」
そのいぬさんの様子に僕は怖いのを忘れるほどにキラキラと魅入っていた。
そして、いぬさんは前脚を男の人たちに攻撃しようとしていた黒色のねこさんに向けると……。
「もう一度言うワン! この悪魔め! 勇者様を痛めつけるつもりワンね!?」
「ニャニャ!? ニャンでこの様子から見て、そんな結論に辿り着くニャ!? わにゃくしはご主人様の子供を助けようとしていただけニャ!!」
「問答無用だワン! 正義の鉄槌を喰らうワンーー!!」
「ニャーー!? だから、ちゃんと話を聞くニャーー!!」
「悪魔の言葉なんて聞くわけないワンーー!! ワンワンワンワンワンワンワンワンッ!!」
黒色のねこさんは僕を助けてくれようとしていたみたいだけど、白色のいぬさんはそれを信じていないようで黒色のねこさんを倒そうと襲い掛かって来ていた。
え? え? ど、どういうこと??
いぬさんも、ねこさんも、僕を助けに来たって言ってるのに、何で喧嘩し始めてるの?!
「ふ、2人ともやめてよぉ! 何でケンカなんてするのー?!」
「こいつが悪魔だからだワン!」
「わにゃくしはケンカなんてしたくないニャ! この天使が話を聞かないだけニャーー!!」
「黙るワン! 勇者様をたぶらかすつもりワンね!?」
「誤解だニャーー!!」
あわわ、ど……どうしよう、本当どうしよう……!!
追いかけ回されるねこさんと、追いかけ続けるいぬさんを見ながら僕は如何するべきか悩んでいた。
だけど、そんな事をするなら早くこの場から逃げるべきだったんだと思う……。
何故なら……。
「「今だっ!!」」
「え? う――うわぁ!?」
声がした瞬間、僕に何かが被されて……直後、体が浮き上がるのを感じた。
もしかして抱えられた? それに気づいた時には既に僕は男の人達によって連れ去られてしまっていた。
「ゆ、勇者が何だってんだ! こんな上玉売ったら良い金になるんだよ!!」
「それに邪魔されそうになってたってのに、こんなチャンスが出来たらこうするだろ普通に考えてよ!!」
「うわーーーーっ!? た、助けてぇ!!」
「ニャ!? し、しまったニャーーーーッ!!」
男の人達の声が下から聞こえる中、僕は精一杯の声を上げる。
すると、僕の様子に気づいたのかいぬさんから逃げているねこさんが雄叫びを上げた。
多分だけど男の人達に連れて行かれる僕の姿が見えているんだろうな。
「おい、犬っころ! ちゃんとわにゃくしの話を聞くニャ!」
「五月蝿いワン、悪魔の言葉は聞くつもりはないワン!!」
「ニャーー! この頭でっかちがーー!! あそこ見るニャあそこをーー!!」
「余所見をしているところを攻撃するワンね!? なんて卑怯なやつだワン!!」
「ちげーニャ! ご主人様の子供が攫われちゃってるんだニャ!! もっと具体的に言うと、十中八九お前のご主人様の子供でもあるニャーー!!」
「ワンッ!? ま、まさかご主人様は悪魔を飼っていたですワン!?」
「わにゃくしは元は猫だニャ! というか、お前も犬だったニャろーが!?」
空の上からワンワンニャーニャーと声が聞こえるけれど、その声が少しずつ遠ざかっていく。
もしかして、助からない? 助からないの?
そう思ってしまうと、ねこさんといぬさんが出てきて湧き上がっていたドキドキとした感情が冷えていき……、ガクガクと体が震え始めてしまっていた。
たた、たすけて……! たすけてっ!!
「ワウウ……、まだ疑わしいワン……だけど、助けてって心の叫びが勇者様から聞こえてくるから助けるワン!!」
「それで良いニャ! というか、一時休戦でも良いから早く勇者を助けるニャ!!」
「ワオーーンッ!!」「ニャーーンッ!!」
「「ひ、ひぃっ!? も、もう来やがった!?」」
「勇者様を解放するワン、この下郎!!」
「お前らのせいで、街が滅ぶところだったニャーー!!」
「「うごぁ!?」」
ドゴッ!! という音が耳に響いた瞬間、抱えられていた僕の体はフワッと浮き上がるのを感じ……すぐに落下を始めた。
「う、うわあああああっ!? ――――あ、あれ……?」
「キャッチですワン!」
だけど、地面に当たる事がなく、不思議に思っていると上からさっきのいぬさんの声がし、ゆっくりと地面に下ろされるのを感じた。
そして……閉じられていた袋の口が解かれ、暗くて臭くて息苦しかったところに光が差し込んだ。
「ふう、これで何とかなったニャー……。大丈夫かニャ、ご主人様の息子」
「え、あ……う、うん……」
腕を組んで頷くねこさんが僕に尋ねてきたから、僕は助かったという実感がまだ湧かずに変な感じに返事を返してしまう。
それでもねこさんは嬉しかったみたいで、にんまりと目を細めて笑った。
そんなねこさんの隣に、いぬさんがゆっくりと下りてきた。
「大丈夫でしたかワン、勇者様?」
「うん、助けてくれてありがとう。……えっと、きみたちは?」
首を傾げながらいぬさんが訊ねてきたので返事を返しつつ、僕はこの子達がいったい何者なのか分からない事に気がついた。
すると、ねこさんが「待っていましたニャ!」って言って、二本足で立ち上がると前足を顔の前で×な感じに組み合わせた。
そんなねこさんにムッとしたいぬさんは同じようにすっくと立ち上がると、前脚を組み始めた。
「わにゃくしは、サタニャエルですニャ! ちょっと今は悪魔をやっていますけど、少し前まではご主人様に飼われていましたニャ! ほら、お前も紹介するニャ!!」
「馴れ馴れしいワン! けど、勇者様には紹介させて頂きますワン! ワンが輩はワンエルですワン!! 神格を与えられた犬ですワン! 勇者様を助けるためにご主人様から送られて来ましたワン!!」
「んーっと……、君がサタニャエルで……、君がワンエル?」
「はいニャ!」
「はいですワン!」
黒色のねこさん、サタニャエルが頷き……。白色のいぬさん、ワンエルが頷いた。
その子達を見ながら、僕は気になった事を訊ねる。
「それで……、さっきから言ってるご主人様って……誰のことなの?」
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説


もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる