駄々甘ママは、魔マ王さま。

清水裕

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第37話 ファンロン、龍龍飯店へ赴く。

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 ※案内の騎士視点です。

 ―――――

 勇者様が教会の中に入ったのを見届け、自分は御供の方と共に一緒に教会のすぐ側で直立して待機しています!
 そんな自分の隣では、御供の方は美味しそうにオーク肉の串焼きを食べておりますが、いっぱい食べておりますね!!

「ん~、美味いアル。美味いアル~~♪ このジュワ~っとした脂と肉の食感が溜まらないアル~~。でもでも、秘伝のタレの味も捨て難いアル~~♪」

 モシャモシャと、口を膨らませながら御供の方がオーク肉を頬張って行くのですが、正直美味しそうですね!
 今日の職務が終わったら久しぶりに街に繰り出して、一杯引っ掛けてみたいですね!!

 そしてそんな自分達を遠巻きに街の住民達が色んな感情の篭った視線を送ってきます。
 彼らの視線は勇者様がどのような姿かを見ようとしている視線と、御供の方を見ている視線です。
 ……失礼な者は、御供の方の……一部分を真剣に見ております。
 その大きい物を見る理由はわかります。大きいですからね。……ですが、まじまじと見つめ続けるのは失礼かと思われます!

「ゴホンッ!」

 失礼な者がこれ以上失礼な視線を送らないように、自分は咳払いを行います。すると、自分が騎士だからでしょう……彼らはすぐに視線を反らしました。
 ですが、このままだとまた同じように御供の方に視線が集中しますよね……。
 とりあえず……、串焼きを食べ終えたら中に入って待つように言ってみますか。
 と思っていると、丁度御供の方は串焼きを食べ終え、満面の笑みを浮かべております。

「美味しかったアル~!」
「それは良かったです。それで御供の方、よろしければ教会の中に入って勇者様を待――「くんくん、良い匂いがするアル~~!」――え?」

 自分が提言しようとした瞬間、御供の方は鼻をクンクンとさせながらスクッと立ち上がり……駆け出しました!?
 って、何処に行くのですか!?
 突如駆け出した御供の方を追いかけ、自分も走り出します。
 御供の方は初めての街のはずなのに、右へ左へと街中を駆け巡り……最終的にとある店の前で立ち止まりました。

 ――ロンロンハンテン。ハジメーノ王国支店

 ロンロンハンテン? 初めて聞く名前の店ですが、こんな店があったのですね。
 それに、嗅ぎ慣れないけれど……何処か妙に鼻を擽る良い香りがしますね。

「ここアル! 美味しい物はここアルね!! たのも~~アル!!」
「あっ、ちょっと御供の方!?」

 漂ってくる匂いの正体はなんだろうかと思っていると、御供の方は勢い良く扉を開けて中へと入って行きました。
 そして中は異国情緒溢れる造りとなっており、扉を開いた音で来客が伝わったのか店員が中から出て来ました。
 脚が惜しげもなく晒されている服は……店の制服なのでしょうか、御供の方が着ている服装に近い物ですね。

「イラシャイ! 龍龍飯店、はじめーの王国支店へヨウコソね!!」
「良い匂いがしたから、食べさせて欲しいアル!」
「ホーウ、お客さん。お目が高いネ! 丁度、龍龍麺の準備が整ったところだったネ!」
「龍龍麺! 凄く美味そうな名前アル! ファンロン、それ食べたいアル!!」
「風龍! 良い名前ネ?! わかったヨ、とっておきの美味しい龍龍麺ご馳走するネ!」

 御供の方と店員が楽しそうに話をし、料理が出る事が確定してしまったようですね。
 それにしてもロンロンメン? どのような料理なのでしょうか?
 正直、食べてみたいと思います……が、今は勤務中なので我慢しましょう。
 そう思っていると、件の料理が完成したのか器を持った店員が奥から現れました。

「お待たせ! 龍龍麺、完成ネ!!」
「待ってたアル! ふぉおお~~、良い匂いアル~~!」
「ササ、伸びない内に食べるネ!」
「いただきま~すアル~~♪」

 御供の方はテーブルに座るとテーブルの上に置かれていた金属製の細い棒を2本掴むと、店員が持ってきたロンロンメンを食べ始めました。
 ……どうやら、あの棒はフォークやスプーンと同じ食べるための道具みたいですね。
 あれは慣れるのに時間が掛かりそう、と思えます。
 そう思いながら自分は御供の方が食べ始めるロンロンメンを見ます。そこから見えるロンロンメンは大量のスープが見えますが……どうやら麺料理のようですね。
 ですが、パスタのような麺ではないようで、何故か縮れています。あれは……美味しいのでしょうか?

「チュルルルル~~~~! ん~、美味しいアル~~! シコシコとした麺がチュルっと口の中を入っていって、出汁が取れたスープの味も最高アル~~! それに、付け合わせのお野菜とお肉も最高アル~~~~!!」
「……ごくっ」

 ハフハフと言いながら、ちゅるちゅると啜るように麺を啜り……、器に口をつけてスープを飲んでいきます。
 その様子を見ていると味が……気になります。とても、とても気になります……。
 ですから、知らずに喉が鳴っているのは仕方のないことです。

「良い食べっぷりネ! お姉サンすごく嬉しヨ!!」
「プハーーッ、美味しいアル~~!! でも、全然足りないアルよ~~!?」

 驚いたことに御供の方はほんの5口も立たない内にロンロンメンを食べ終えてしまいました。しかも、まだ足りないようです。
 ……あの量は、自分には満腹になれる量だと思うのですが……。
 そう思っていると、店員は御供の方の言葉を挑戦と受け取ったらしく……。

「わかたヨ! それじゃあ、覇王・龍龍麺の挑戦するカ?!」
「覇王・龍龍麺!? 凄そうな名前アル! 挑戦するアル、ファンロン挑戦するアルよ!!」
「わかたネ! それじゃ、準備するから待つヨロシ!!」

 御供の方の言葉を受け取り、店員は再び店の奥へと入って行きました。
 …………いったい何が始まるのでしょうか?
 店の奥から伝わってくる気迫に、自分はゴクリと息を呑みました……。
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