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第36話 ウィスドム、話を聞く。
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――ワレワレハテンセイシャッダー。
ピルグリムを建国した巡礼者の中にいた一団。この世界に無い様な様々な魔道具を世に生み出した事で有名だった。
それと同時に彼らは普通の家に生まれた者や貧しい家に生まれた者も居り、彼らは満足のいく教育を受けたことはなかったらしい。
それなのに彼らは誰に学んだことも無いと言うのに頭は良く、歴史に残るような魔道具を幾つも生み出し、大人顔負けの知識を手に入れていたのか……それは生涯誰にも分かる事はなかったとのことだった。
けれど、けれどもし……もし、彼らが別の生を受けている者達だったならば……。
そう思いながらわたしは微笑む王妃を見る。
『転生者』――王妃は自らをそう言った。
「て、てんせい……つまりは、生まれ直した……ということか?」
「ええ、そうです。わたくしを含め、この部屋に居る侍女達は皆、不慮の事故で死んだ事がある者達です。それも……別の世界で」
「まさか!? そんなこと、あるはずがな――」
別の世界、そんな物はあるはずがない。そう返事を返そうとしたが、ワレワレハテンセイシャッダーの創った魔道具は『この世界』には無いような発想で創られた物が数多くあった。
つまり、ワレワレハテンセイシャッダーはこの世界とは別の世界からの生まれ変わった人達。という事……だった?
「……どうやら、信じてくれるみたいですね?」
「…………王妃やここにいる侍女達が別の世界から生まれ変わった。というのは俄かには信じられない。だけど、貴女達は何をしたいんだ?」
そう、別の世界から生まれ変わったと言う王妃達はいったい何がしたいのか、それがわたしには分からなかった。
ワレワレハテンセイシャッダーのように世界に革命を起こすような魔道具を生み出すという風にも見られない、他にも政治で凄い事を成し遂げたいと言うわけでもなさそうだし、料理で凄い事をしたいわけでもなさそうだった。
……ましてや、武勲で馳せると言うわけでもなさそうだった。
その答えを待つように、ジッと王妃を見つめ続けると……返事が返ってきた。
「ヨシュア君の成長……ですね。わたくし達がしたい事は……」
「は……?」
「ですから、ヨシュア君の成長を見守りたいのですよ。わたくし達は」
聞き違い? 我ながら間抜けな声を上げると王妃は再び告げた。……間違いなく、勇者の成長を見守りたいのだろう。
だけど、いったい何故……。
「向こうで死んだわたくし達はある御方によって、この世界へと産まれなおす事が出来ました。あのお方の恩に報いるため、そして我が子の成長と同じくらいにヨシュア君の成長を見守る為に……転生者一同はヨシュア君、そしてあなた達への援助は惜しみません」
「ば、馬鹿げている……。何で、何でそこまで勇者の為に力を貸そうと出来るの?」
目の前の王妃に、わたしは何と言うか恐怖を感じつつ……異常なまでに手を貸してくれようとする理由を問い質す。
すると、王妃は……いや、周りの侍女を含めて一斉に口を開いた。
「「「「「それが、ママですから」」」」」
その様子に、わたしは何も言えなかった……。
けれど、少し冷静になりながら何故わたしをここに連れて来たのか、そして何をする気なのかを問いかける。
「それで、わたしを如何するつもり? 転生者だと言うことをばらしたのは、殺す前の手向けって言うこと?」
「いえ、そんな事はしませんよ? というかしたら、ヨシュア君が凄く悲しんで、あの方にわたくし達が大目玉を喰らうじゃないですか」
「え……、それじゃあ、何でわたしを……?」
「まあ、言うならば……けん制というか、口止めってところでしょうか」
けん制? 口止め? いったい如何言う事か……? いや、ちょっと待て、わたくし達と王妃は言った。
その『わたくし達』という言葉が、今この部屋の中にいる人達だけじゃないとすると……。
「旅の途中で同じように転生者に会う可能性があるけれど、怪しく思うな。そして、これからの旅で勇者の母親に恩があるとか友人だったと言う事を言ったとしても、勇者に怪しく無いかと言わないようにの口止め?」
「ええ、よく分かりましたね。ウィスドムさんには度々起きる茶番、それに付き合ってもらいます。
ちなみに報酬はこちらとなります」
わたしの言葉に王妃はいっしゅん驚いた顔をしたけれど、すぐに頷く。
……的中だったようだ。その言葉に、転生者はここに居る者達以外にも居る。ということをわたしは知ることとなった。
それと同時に、わたしは王妃の言う茶番に付き合わされることも確定してしまったらしい……。
まあ、報酬の魔術書は凄く魅力的だけれど……。
だけどこれだけは言っておくべきだ。そう考えながら、わたしは王妃達に告げる。
「わたしをそんな安い女だと思わないように」
「ええ、わかっていますよ」
受け取った魔術書を手に取りながら言うわたしを、王妃は苦笑しながら見る。
それが何を意味しているのかは理解しているけれど……、わたしは読書を始めることにしたのだった……。
ピルグリムを建国した巡礼者の中にいた一団。この世界に無い様な様々な魔道具を世に生み出した事で有名だった。
それと同時に彼らは普通の家に生まれた者や貧しい家に生まれた者も居り、彼らは満足のいく教育を受けたことはなかったらしい。
それなのに彼らは誰に学んだことも無いと言うのに頭は良く、歴史に残るような魔道具を幾つも生み出し、大人顔負けの知識を手に入れていたのか……それは生涯誰にも分かる事はなかったとのことだった。
けれど、けれどもし……もし、彼らが別の生を受けている者達だったならば……。
そう思いながらわたしは微笑む王妃を見る。
『転生者』――王妃は自らをそう言った。
「て、てんせい……つまりは、生まれ直した……ということか?」
「ええ、そうです。わたくしを含め、この部屋に居る侍女達は皆、不慮の事故で死んだ事がある者達です。それも……別の世界で」
「まさか!? そんなこと、あるはずがな――」
別の世界、そんな物はあるはずがない。そう返事を返そうとしたが、ワレワレハテンセイシャッダーの創った魔道具は『この世界』には無いような発想で創られた物が数多くあった。
つまり、ワレワレハテンセイシャッダーはこの世界とは別の世界からの生まれ変わった人達。という事……だった?
「……どうやら、信じてくれるみたいですね?」
「…………王妃やここにいる侍女達が別の世界から生まれ変わった。というのは俄かには信じられない。だけど、貴女達は何をしたいんだ?」
そう、別の世界から生まれ変わったと言う王妃達はいったい何がしたいのか、それがわたしには分からなかった。
ワレワレハテンセイシャッダーのように世界に革命を起こすような魔道具を生み出すという風にも見られない、他にも政治で凄い事を成し遂げたいと言うわけでもなさそうだし、料理で凄い事をしたいわけでもなさそうだった。
……ましてや、武勲で馳せると言うわけでもなさそうだった。
その答えを待つように、ジッと王妃を見つめ続けると……返事が返ってきた。
「ヨシュア君の成長……ですね。わたくし達がしたい事は……」
「は……?」
「ですから、ヨシュア君の成長を見守りたいのですよ。わたくし達は」
聞き違い? 我ながら間抜けな声を上げると王妃は再び告げた。……間違いなく、勇者の成長を見守りたいのだろう。
だけど、いったい何故……。
「向こうで死んだわたくし達はある御方によって、この世界へと産まれなおす事が出来ました。あのお方の恩に報いるため、そして我が子の成長と同じくらいにヨシュア君の成長を見守る為に……転生者一同はヨシュア君、そしてあなた達への援助は惜しみません」
「ば、馬鹿げている……。何で、何でそこまで勇者の為に力を貸そうと出来るの?」
目の前の王妃に、わたしは何と言うか恐怖を感じつつ……異常なまでに手を貸してくれようとする理由を問い質す。
すると、王妃は……いや、周りの侍女を含めて一斉に口を開いた。
「「「「「それが、ママですから」」」」」
その様子に、わたしは何も言えなかった……。
けれど、少し冷静になりながら何故わたしをここに連れて来たのか、そして何をする気なのかを問いかける。
「それで、わたしを如何するつもり? 転生者だと言うことをばらしたのは、殺す前の手向けって言うこと?」
「いえ、そんな事はしませんよ? というかしたら、ヨシュア君が凄く悲しんで、あの方にわたくし達が大目玉を喰らうじゃないですか」
「え……、それじゃあ、何でわたしを……?」
「まあ、言うならば……けん制というか、口止めってところでしょうか」
けん制? 口止め? いったい如何言う事か……? いや、ちょっと待て、わたくし達と王妃は言った。
その『わたくし達』という言葉が、今この部屋の中にいる人達だけじゃないとすると……。
「旅の途中で同じように転生者に会う可能性があるけれど、怪しく思うな。そして、これからの旅で勇者の母親に恩があるとか友人だったと言う事を言ったとしても、勇者に怪しく無いかと言わないようにの口止め?」
「ええ、よく分かりましたね。ウィスドムさんには度々起きる茶番、それに付き合ってもらいます。
ちなみに報酬はこちらとなります」
わたしの言葉に王妃はいっしゅん驚いた顔をしたけれど、すぐに頷く。
……的中だったようだ。その言葉に、転生者はここに居る者達以外にも居る。ということをわたしは知ることとなった。
それと同時に、わたしは王妃の言う茶番に付き合わされることも確定してしまったらしい……。
まあ、報酬の魔術書は凄く魅力的だけれど……。
だけどこれだけは言っておくべきだ。そう考えながら、わたしは王妃達に告げる。
「わたしをそんな安い女だと思わないように」
「ええ、わかっていますよ」
受け取った魔術書を手に取りながら言うわたしを、王妃は苦笑しながら見る。
それが何を意味しているのかは理解しているけれど……、わたしは読書を始めることにしたのだった……。
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