駄々甘ママは、魔マ王さま。

清水裕

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第34話 勇者、神に会う。

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 何処となくママにそっくりな神さまの像に祈った瞬間、光が差し込んだ気がした。
 そして気づけば僕はすべてが真っ白な場所に居た。

「あ、あれ? 僕は……教会に居たはずなのに……」
「大丈夫じゃよ。お主の体は今も、教会で像に祈りを捧げておる」
「え?」

 僕だけしか居ない場所だと思っていたら、後ろから声がした。
 驚きながら振り返ると、そこには……僕よりも小さな女の子が立っていた。
 着ている服装は……何だか服とも言えないような布一枚だった。あと、頭には葉っぱの冠を付けている。
 こ、これってまさか……。

「ようやく普通に会えたのう。そう、ワシこそが――」
「ち、痴女だーーーーーーっ!!」
「違うわい!! というか、何でそんな言葉を知っておるんじゃーーーーっ!?」

 僕が驚いていると、小さな痴女の子が怒鳴り声を上げてきた。
 本人は違うって言ってるけど、ママがこう言ってたんだ。

『良い、ヨシュア……。もしかしたら何時か、神を名乗る人物が現れたりするけど……それはただ頭が可笑しい人だから。そして、布一枚だけしか着ていない子が現れたら例え小さな女の子だとしても、痴女よ。だから、痴女って大声で言って上げなさい』
『うん、分かったよママ!』

 優しく僕に言ったママの言葉。それは今でも覚えてる。だから、僕は大声で叫んだ。
 そしてその思い出が目の前の小さな痴女の子にも伝わっていたのか、歯をギリギリと噛み締めていた。

「くそっ! あんにゃろう! 何処までワシに怨みがあるんじゃーーーーっ!? そして、何で疑いもせずに信じちゃうんじゃこの純粋ちゃんはーーーーっ!!」

 ムキーーッと叫びながら、小さな痴女の子はダシダシとその場で地面を踏み締めている。
 その姿は何というか、普通に小さな女の子に見えた。……あれ? もしかして、痴女じゃ……ないの?

「そうなのじゃ、ワシは痴女じゃないのじゃ! 神なのじゃ、神!!」
「あ……。頭が……」
「無論頭の可笑しい人でもないのじゃよーーーーっ!!」

 ママが言ってた頭がおかしな人、そう思おうとするよりも早くに小さな痴女の子は叫んだ。
 ……もしかして、本当に神様……なのかな?

「そうなのじゃよ、神様なんじゃよ? ワシ、神様なんじゃよ?!」
「そう、なの?」
「そうじゃ、じゃから敬えとか頭を垂れろ。とかは言わんから、頭が可笑しい子とか痴女とか言ったり思ったりするのは止めて欲しいのじゃ……地味に傷付くからのう」
「あ、え……っと……、ごめん、なさい……」

 今にも泣きそうな顔をした小さな神様に、何だか僕はママに怒られた時の事を思い出してしまった。
 だから、ママに言われたようにちゃんと謝った。

「む、むぅ……、そう素直に謝られると何と言うか、むず痒いのう……。まあ、兎に角じゃ! ワシのこの格好は神様だから仕方ないと思うのじゃ!」
「わかりました。あの、それで……僕はどうすれば良いのでしょうか?」

 ●

 side神様

 珍しく顔を紅くするワシに対し、ヨシュアが申し訳なさそうに問いただしてきたのじゃ。
 如何すれば良い? うん、何をじゃ?
 意味が分からずボーッとしていると、ヨシュアが不安そうに尋ねてきおったのじゃ。

「えっと、神様が……僕らが進むべき道を示してくれる。って聞いたんだけど……?」
「ふぉうあ!? え、ちょ、なにそ――う、うむ、分かったのじゃ! お主らに道を示してやるのじゃ!!」

 驚いた。何故そんなことになっておったのじゃ? ワシ、何処に行くようにとか言う立場じゃないと思うんじゃよ?
 じゃから、いきなり問い質されたから間抜けな声を上げてしまったのじゃ。
 だけど、如何にか進むべき道をしめしてやらんと不味いのじゃ。考えるのじゃ、考えるのじゃ!!

「えーっと、じゃなぁ……うーんと、じゃなぁ……」
「か、神様??」
「ええい、黙っておれ! えっとじゃな、えっとじゃなぁ……」

 ワシ、ちょう悩んでおる。というか、誰じゃ! この様な与太話をヨシュアに吹き込んだのはーー!!
 吹きこんだ奴は絶対に見つけて、説教してやるのじゃ! 色んな街を見て絶対に見つけてみせるのじゃーー!!
 …………ん? 色んな、街……?
 平目、板。違う、閃いたのじゃ! そう、街じゃ。色んな街なのじゃ!!

「ヨシュアよ。お前達が進むべき道を告げるのじゃ」
「は、はいっ!」
「お前達の道は、ここハジメーノ王国から始まり……フタツメーノ王国、ミツメーノ王国と人の暮らす街を移動しながら、己が力を付け……この世界に住む人や仲間と友情を育むのじゃ。そうすれば、お主はどんな敵にも負ける事は無いのじゃ」
「わ……わかりました。頑張ります!」
「うむ、期待しておるぞヨシュアよ。……それと、出来れば教会には立ち寄って祈って欲しいのじゃ。そうすれば返事が出来るはずじゃからな」

 そう言うとワシは空間を明滅させるのじゃ。
 突然の明滅にヨシュアは驚き、周囲を見渡す。

「ふむ……、そろそろ時間のようじゃな」
「時間?」
「そうじゃ。神と交信しすぎるとそれ相応の代償を支払うこととなる。じゃから、この明滅はお主の限界を表しておるのじゃ……」

 べ、別に話すことがなくなったから強制終了するわけじゃないんじゃよ? ほ、ほんとじゃよ?
 まあ、兎に角この場から立ち去ることにするのじゃ!
 そう決めるとワシはフワっと浮かび上がるのじゃ。……なに? 二番煎じじゃと? ワシ以外にこれやった者がおるのか!?
 うぅ、神としての威厳を放つものなんじゃからワシだけがやって良いものなんじゃよ~~~~!!
 心の底から叫びながら、ワシはヨシュアへと告げるのじゃ。

「ヨシュアよ。再び出会える時を楽しみに待っておるのじゃ。ではの……」

 その一言を持って、ワシはヨシュアとの交信を切ったのじゃった。
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