駄々甘ママは、魔マ王さま。

清水裕

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第19話 侍女長、お風呂場でお喋りをする。

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 旦那様で有らせられるザッコ様が所有し、私達が働く職場である館。
 その一区画はこの館で働く従者たち……つまりは私達に開放された場所であり、そこへはザッコ様だとしても入室が禁止されています。
 そしてこの区画には私達の寝室を始め、遊びが欲しい者達が集う遊戯室、子供を持つ親達の為の託児所、趣味で料理を作る者達の為のキッチン、体の汚れを落とし疲れを取り除く為の大きなお風呂も完備されています。
 まあ、いくつかは旦那様に無理を言って創ってもらったりしました。
 本当……、私達の旦那様は器用貧乏ですよね。

 ……ああ、遅れ馳せながら、私は侍女長のサキュバスです。
 名前もちゃんとありますけど、私は侍女長で魔マ王様のママ友。それで十分です。
 そして、私は……いえ、私含めた侍女達は今就寝前のお風呂に浸かっていました。
 当然、子供達も一緒です。

「はぁ~~……、あったかいですねー」
「そうですね~……」
「「あちゃかーい♪」」

 背中を伸ばし、まったり呟くと賛同するように誰かが口にする。
 そして、幼い子供達が私の言葉を真似たい年頃なのか、舌足らずの口で楽しそうに言うのが届く。
 あ~、幸せってこう言うのかしらね~~……。
 じんわりと体が温かくなるのを感じながら、私は心から思う。
 そんな時、誰かが口を開きました。

「しかし……、魔マ王様の旦那様への怒りっぷりが半端なかったわよねー」
「魔マ王様の怒りは分かりますけど、ちょっと子供には目に毒だと思いました……」
「とりあえず、うちの子は血気盛んだから近い内にパンチの練習すると思うんだよね……」
「でしたら、迷惑をかけないように言い聞かせないといけませんね」
「「いけまちぇんねー!」」

 子供達がまたも真似するように口にし、可愛かったので私は子供達の頭を撫でます。
 すると撫でられた子供達は嬉しそうに顔を綻ばせ、湯船の中で体を身動ぎさせました。
 ……うん、可愛いですね。ですが……。

『…………とりあえず、喋っても良いですけど、出来るならば<ソウルーム>内でした方が良いと思いますね』
『理由は?』
『この子達が意味も分からずに、ちねー。なんて言って欲しいですか?』
『……軽率でした。とりあえず、<ソウルーム>内でなら問題は無いって事で良いでしょうか?』
『はい、そこならば子供達に聞かれる事は無いでしょうし』
『『わかりました。それじゃあ、お風呂から上がってこの子達を寝かしつけてから入ります』』
「「?」」

 私で喋ると他の侍女の皆さんも反応し、自分達の失敗に気づいたようです。
 私も少し軽率だったかも知れませんが……、可愛い天使に汚い言葉は不要なんです。
 そう心で思いながら拳を握り締める私達を子供達は不思議そうに見ていました。
 ……まあ、拳を握り締める理由は分からなくても、握って真似をする子も居ましたが……。

 ●

「おやすみなさい、お母さん」
「おやすみなさいママ」
「おやすみなさい皆。また明日」
「「……ちゅみなちゃーぃ…………」」

 私達が居なくても一人で眠れるようになった子供達が寝室に向かっていくのを見送り、私を含めた幼い子を持つ侍女ママ達は自身の寝室へと向かいます。
 一緒に部屋へと向かう子供達はお風呂に入って眠気が増したのか、うつらうつらとしており……何名かは既にママの腕の中でぐっすりおねむです。
 もちろん私の娘達も腕の中でおねむです。サキュバスですが天使のような寝顔ですねー。
 ひと時の幸せを噛み締めながら、部屋へと辿り着いた侍女ママ達へと「おやすみなさい、またあとで」と声をかけつつ、私達も部屋へと辿り着き……うとうとする幼い娘達を寝かせつける為にベッドの中へと入ります。

「「まま、ちゅきぃ~…………」」
「ママも、ふたりとも大好きですよ~……」

 多分寝言だと思うけど、二人のその言葉に返事をするように優しく声をかける。
 すると、にへら~と寝顔を蕩けさせ、それを見ていた私も優しく微笑みました。
 そんな可愛らしい天使達の寝顔を見ながら、私は静かにゆっくりと目を閉じ……自身の意識を通常では見えない扉へと集中させます。
 そうすると何も無い空間、けれど隣り合うようにしてその扉は現れます……いえ、見えるようになる。が正しいですね。
 意識のみを起き上がらせ……扉へと近づくと、この世界の住人には理解出来ない言葉で問いかけられます。

『入室を希望しますか?』
「はい、入室を希望します」

 なので私はそう返答を返します。すると、扉はゆっくりと開き……その中へと私は入って行きました。
 そして扉の中は……。

「……ああ、今日は居酒屋風ですか」

 扉の中、そこは居酒屋チェーンの店内を彷彿させるもので……中では先程別れた侍女ママを始め、色々な種族のママ達が楽しそうに話をしていました。
 その様子を見ながら、私は空いている席へと座り……差し出されたおしぼりで手を拭き、一息吐きます。
 そして、駆けつけ一杯。という風に出されたお酒に口をつけました。

 ……え? ここは何処かって?
 おっといけない忘れていました。ここは<ソウルーム>……所謂、魂が休まる為の場所です。

 そして、この部屋に居るママ達全員……転生者です。
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