駄々甘ママは、魔マ王さま。

清水裕

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第14話 神様、人選をミスったか悩む。

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 どうやら上手く行ったようじゃな……。
 森の中に転移された2人の少女を見ながら、ワシはホッと息を吐く。
 片方はワシが選別をしたウィスドムという少女で、外見を簡単に言うならば……癖の強いこげ茶色の髪とギロリとした悪い目つきとツルペタストーンというワシとどっこいどっこいの体型をしておる。
 そんな彼女の服装は数年着古した薄汚れたローブを纏っておる。

「本当に外ね……。場所はわからないけど。それに……声は聞こえないか」

 周囲を見渡していた彼女は久しぶりに感じる外の空気に目を細めたようじゃが、すぐに現状を考えたようじゃ。
 当然、ワシの声はもう届いておらん。というよりも、たまにヨシュアにかけるぐらいじゃな。……っと、ヨシュアにも一言言っておくべきじゃろうか?
 そう思いながら、ワシはザッコが寄越したもう一人のほうに視線を移した。
 そやつは転移された場所から歩き回り、声をかけながら周囲を散策しておるようじゃった。

「おーい、何処アルかー? 困ってる少年、何処に居るアルか~~?」

 …………あ、こやつアホの子じゃな? 一言で言うと普通にアホの子じゃ。
 しかも、人化した風属性の龍じゃと? 竜ならまだしも龍を囲っておったとわ……ザッコやるのう?
 今度機会があればどうやって囲ったのか聞いてみるとしよう。
 そう思いながら、ワシはその少女……いや、見た目的には女性を見る。
 緑色の髪は両方で縛っており、まるで龍の髭のようになっておるな。そして体型は長身の出るとこと出るのう……ぐぬぬ。
 服装は……確か、チャイナドレスと言うんじゃったか? スリットがあり艶かしい脚がチラリチラリと見える服装を見ながらワシはその服装の名を思い出す。
 ちなみに龍の特徴としては、瞳が金色で龍独特の縦に割れた瞳と頭の角じゃな。
 人化する龍によって変わるらしいが、それに翼が増えるか増えないかというのもあるらしいのじゃ。

「お~~い、…………うぅ、ファンロンお腹空いたアル~~。ザッコさん、ご飯用意して欲しいアルヨ~~~~!!」

 ぐ~ぐ~と鳴り始めるお腹を擦りながら、ファンロンは吠えおる。
 すると、彼女の雄叫びを聞いたのか、周囲を散策していたであろうオークたちが顔を出しおった。

「あ、オークアル」
『女だブー。女がいるブー!』
『男だけしか捕まってなかったけど、オレたちも楽しめるブー!!』

 ブヒブヒとしか言っていないオーク2匹。じゃが瞳にはキョトンとした表情のファンロンをむしゃぶりつくすことを決意する淀んだ炎が見えておる。
 要するに、R18なエッチなことする気満々じゃな!

「んー……、ファンロン、オーク語学んでないから何言ってるかわかんないアル」
『へへっ、首を振っただけでおっぱいが揺れてるブー!』
『アレに挟んでもらいたいブー!』
「良くわかんないけど、ファンロンお腹空いたから……お前ら食べるアル」
『『ブヒッ!?』』

 ジュルリ、と唇を舌なめずりしファンロンは地面を踏み締め、力いっぱい両の拳をオークの頭に打ち込みおった。
 すると、オークたちは驚いた声を漏らしながら……頭を弾け飛ばし、ゆっくりと倒れたのじゃ。
 うん、普通の中華娘っぽいような外見じゃが、こやつは龍なんじゃよな。じゃから龍の握力を舐めたらアカンのじゃ。

「さてと、それじゃあ頂きますアル~」

 ……そして、龍の食欲も舐めたらアカンのじゃ。
 倒れたオークの死骸2匹分を手で引き千切りながら、ファンロンはオークを食べ始めおった。
 正直、子供は見ちゃ駄目な光景じゃな。
 ゴキリゴキリと骨を噛み砕き、肉を噛み締める音……そして時折、不味いアル……と言う言葉が聞こえておる。

 ――DoGOOOOOOON!!

 ファンロンの食事風景を呆然と見ておったワシじゃったが、突如別の方角から激しい爆発音が響き渡ったのじゃ。
 いったい何があったんじゃ!? そう思いながら急いでその場に視点を移すと……そこにはウィスドムが肩を上下に揺らしながら、荒々しい息を吐いておった。
 そんな彼女を中心に燃え広がる森と炭化したオークの死骸。
 ……どう見てもガチギレしていますと言う感じじゃな。
 いったい何があったんじゃ? ちょっと少し前の時間を視てみようかのう。
 目に力を込めてワシは少し前のウィスドムの状況を見始める。

「まったく……何でわたしが勇者なんて助けないといけないの? 普通勇者って言うのは、どんな困難も一人で乗り切るはずじゃない」

 愚痴愚痴と文句を垂れながら、ウィスドムは森の中を歩いておるのう。
 というか勇者嫌いって言っておるクセして、色々と勇者のイメージが強いのう?
 っと、ウィスドムの近くに見回り中のオークがおる。……あ、気づかれた。

「げ、オ、オーク……。実物初めて見た」
『獲物がいたブー』
『男かブー?』
「失礼な。わたしはちゃんとした女よ」

 お、どうやら知識たっぷり詰め込んでおるからか、オーク語も分かっておるようじゃな。
 するとオークたちは話が通じていることに驚いたのか顔を見合わせおった。
 ……が、すぐに鼻で笑いおった。

『女? そんな貧相な身体つきで女って言ってるブー?』
『ブヒャヒャ! 驚きだブー!』
『お笑い種だブー!!』
『『『ブヒャヒャヒャブヒヒヒヒヒーーーーッ!!』』』

 物凄い笑われておる。そんな笑い者にされておるウィスドムは……吊り上がった笑みを浮かべておる。ただし目は笑っていない。
 そして笑うオークどもを無視しながら、彼女は杖を掲げおった。

「我が魔力を糧にし、炎よ顕現せよ……。顕現せし炎よ、業火となって、爆ぜよ。爆ぜよ。爆ぜよ爆ぜよ爆ぜよ……! ――ヘルファイア・エクスプロージョン!!」

 彼女を中心に地面に赤色の魔術陣が浮かび上がり、その魔術陣に彼女の体から魔力が注ぎ込まれると光を放ちはじめおった。
 そして、光が炎へと変化し……燃え上がった瞬間、彼女の命令通り現れた炎は彼女を中心に爆発した。そして続いて爆発、爆発、爆発。
 赤黒い炎と爆発が周囲に響き渡り、爆炎の余熱である熱波が周囲の空気を燃やす。
 そして、後に残ったのは怒りに震えるウィスドムとさっきまで笑っていた炭化したオークどもじゃった。

「フシュ~~、フシュ~~~~……! …………あ」

 荒い息を吐いていたウィスドムじゃったが、正気に戻ったのか自分の行った有様に呆然としてお――

「本当に、出来た……。わたしの知識は、覚えていった魔術は間違っていなかったんだ! ヒャッハーー、これがわたしの、ウィスドムの攻撃魔術だーーーーっ!!」

 頭の中に響き渡っているであろうレベルアップの音を聞きながら、ウィスドムは両手を掲げて狂喜乱舞しておった。
 う、上手く行って良かったのう……(白目)。

 ―――――

 H30.1.23
 「魔方陣」を「魔術陣」に変更。
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