駄々甘ママは、魔マ王さま。

清水裕

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第6話 魔マ王様、仕上げを行う。

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 懸命にママ、ママとぐったりしている(ように見せている)私を揺するヨシュア可愛い。
 そう思いながら、目を閉じつつも薄っすらと可愛いヨシュアを見るという高等芸を見せる私だった。
 ちなみにザッコ君はツンと、ほんの少しツンと突いただけだったけど……ちょっとだけ皮膚が傷付いたのでお仕置き確定♪
 と、ザッコ君のお仕置き方法を考えながらヨシュアを見ていると、勇者特有のオーラ――私たちが呼ぶ『勇者オーラ』を立ち上らせ始めた。
 今まで何度か色んな勇者の担当をしたり、相手をしたりしてたけど……ヨシュアの勇者オーラは銀色なのね~。
 けど初めてだからなのか、勇者オーラは全力全開で放出していてこのままだと体が持たないわね。
 …………とりあえず、ザッコ君殴り付けた辺りで眠りの魔法を掛けておきましょうか。
 そう考えながらジッと待っていると、勇者オーラのお陰かヨシュアは戦闘センスが上がっているらしく、突き出されたザッコ君の拳を紙一重で避けると自らの拳をザッコ君の腹に打ちつけた。
 そして、私の予想通りヨシュアは体に異常を感じ、倒れてしまった。……ついでにザッコ君も勇者オーラ全開のパンチを受けたからか、膝がガックガクで口から血を噴き出しているけど、些細なことよ。
 それでも頑張って演じてくれたのだから、そこは褒めて上げるところかしら?

「…………ヨシュア、ヨシュアちゃ~ん? ……気絶しているみたいね、なら今の内に体の治療を行いましょう」

 目を開け、ヨシュアへと声をかけながら……気絶しているのを確認する。
 何時もなら、私が声をかけたら嬉しそうに返事をするけど……よっぽど疲れているみたいね。
 そう思いながら立ち上がり、気絶するヨシュアへと近づくと手早く今の状態を確認する。

「体の筋肉がズタズタになってるし、勇者オーラも馬鹿みたいに消費してるから……生命力も少なくなってるみたいね。とりあえず初めに筋肉の修復から始めましょうか」

 確認したヨシュアの状態を見て即座に行動に移す。
 起きないように念のため睡眠魔法を使うとすぐに完全回復魔法を使い、ズタズタとなっていた筋肉を元通りに戻していく。
 目覚めたときにヨシュアが痛いって無いたらママ悲しいんだもの。
 それが終わったら……。

「今度は生命力の補充ね~。ヨシュア~、ママのキスですよ~~♪ ん~~、っちゅ~~~~っ」

 ママの愛情篭ったキスをヨシュアへと送ると同時に、生命力を込めて失った生命力を満たしていく。
 すると、若干蒼ざめていた顔に血の気が戻り始めていくのが分かった。
 ん~? 何だか何処かから「馬鹿じゃ、大馬鹿者じゃ! というか、何を目指そうとしてるのじゃ!? ママと言うなの嫁を目指そうとしてるのかこやつはっ!?」って声が聞こえるけど、気のせいよねぇ♪
 でも、ママがヨシュアのおよめさん……ありよねぇ~。うふふ。

「まあ、その前にやることをやらないといけないから、およめさんはお預けね……」

 ちょっとだけ勿体無いと思いながら、ヨシュアの唇から唇を放すと次の作業へと移る。
 正直今のままだと、勇者オーラの制御が出来ないのよね。それに、筋肉も戦うためのものじゃないし……。

「だったら、筋肉の変質と勇者オーラの制限、かしらね」

 行うべきことを決めると、後は簡単。
 初めに勇者オーラが溢れるものを井戸と考えて、その井戸を桶を使った汲み取り式にして一度に大量に溢れないようにする。
 後々手押しポンプとか良い感じに勇者オーラを溢れさせることになるだろうけど、それはヨシュアが旅をしていって身につけるのが一番よね?
 そして次に筋肉だけど、ちょっとだけ前にやっていたお仕事の能力を使うことにして……レベルアップで人より少しだけ能力値が上がるようにしておきましょう♪
 ん~っと、とりあえず……普通の人よりも1レベルに付き+20にしておこうかしら。
 ママは優しいけど、苦行を強いるものだものね。……けど、30、いえ……50とか……うぅ、駄目、駄目よ私……!
 甘やかしそうになる自分を諌めながら、私は1レベルアップに付き+100ステータスアップするように設定を行う。(待て)

「さて、これで問題は無いはずよね。それじゃあ、最後に……がくっ」

 やるだけやったので、最後の仕上げとして自分が倒れていた辺りでわざとらしく倒れる。すると、お腹に余っていた血糊が床を更に汚した。
 そして、そのまま這いずるようにヨシュアへと向かうとまるで瀕死の状態の中で、ヨシュアの元に向かっているような感じの構図が出来上がった。
 満足の行く仕上がりとなったので、最後に手を伸ばしてヨシュアの手を掴むと力を込める。
 すると、私の温かさ……というか睡眠魔法の解除を行ったためにヨシュアが目を覚ました。

「うっ、うぅん……。マ、マ……?」
「よかっ、たわ。目が、さめた……のね。ヨシュ、ア……」
「マ、ママッ!? だ、大丈夫なの……!?」

 私の姿を見て、天使のような笑顔を向けるヨシュアだったけれど、すぐに私の状態を思い出し心配そうにする。
 ……さあ、ここからが私の演技の見せ所よ!
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