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第5話 ヨシュア、怒る。
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怖くて動けなかった。
突然現れて、僕を殺すと言ってきた人じゃないと思うモンスターを前にして、僕はまったく動くことが出来なかった。
そんな僕を護るように、ママが僕とモンスターの間に立った。
だけど、これから先……僕は動けなかったことを後悔し続けるだろう。
何故なら、僕の目の前でママはモンスターにお腹を貫かれてお腹から血を吹き出しながら倒れたのだから……。
「マ、マ……?」
掠れた声が口から洩れる。目の前のモンスターに聞こえているかは分からない。
そして、地面を這いながら震える手でママへと近づくと……、お腹から真っ赤な血がだくだくと零れていた。
紅く、熱い……体から溢れ出たものだ。
「ママ……ママ、しっかり……しっかりしてよ。ママ……」
動かないママを揺するけれど、ママの目は開かない。
何で? どうして目を開けてくれないの?
どうしてだか解らない。けど、動かないママが段々と怖くなり始めていると……モンスターが嫌な感じに僕らを見ながらこう言ってきた。
「ふんっ! たかが人間風情が間に立つとは何事だ。だが、前座として勇者の母親というのは魔王様に申し分ないだろう」
それはまるでママを虫みたいな感じに言う言葉だった。
その言葉に、僕は今まで感じたことの無い感情が芽生え始めた。
「ママを……バカに、したな……?」
気が付くと、目の前のモンスターへの恐怖が無くなっていた。
そしてフラフラと立ち上がると……、芽生え始めた感情を言葉と共に一気に吐き出した。
「ママを……、ママをバカにしたなあああああああーーーーーーっ!!」
僕がそう叫んだ瞬間、体に力が湧き上がった。
そんな僕を見て、ママを動かなくしたモンスターを睨み付ける。
するとモンスターはまるで僕を恐れているように、後ろへと下がり始めた。
「な、何だその力は……?!」
「許さない、許さないぞ……。よくも、よくもママをーーーーっ!!」
下がり始めるモンスターに向け、僕は拳を握り締めると……殴りかかった。
この拳が目の前のモンスターに通用するのかはわからない。
わからないけど、ママを動かなくしてバカにしたんだから僕には殴らない理由が無い!
「うおおおおおおおおおっ!!」
「えっ、ちょっ!? っく――う、うおーーーーっ!!」
「っ!? あ、当たるもんかっ!!」
拳がモンスターに迫ると、モンスターは僕に向けてその凶悪な拳を突き出してきた。
当たるッ!? そう思った瞬間、頭の中に行けるという確信が浮かび、その確信に従うように僕は体を傾けた。
ブォン、と突き出されたモンスターの拳が頭の上を通り過ぎ、物凄く硬そうなお腹へと僕は握り締めた拳を突き出した!
「――しまっ!? ぐぅ!!」
「うおおっ! くら――えええぇぇぇぇぇーーーーっ!!」
ドスッと拳がモンスターの腹を打った瞬間、拳が熱くなり――そこから何かが放たれた。……気がした。
同時に体から力が抜け、クラリと目の前が歪んでしまった。
「や、やっ……あ、あれ? か、らだが……うごか、ない……?」
たた、ないと……。モンスターが、倒れていない……のに…………。
そう思うのに、僕の目の前は真っ暗になって行く。
「く、ぐは……! さすがは勇者、と言ったところか……。だが、我の勝ちだ! 死ね――――うぐっ!? こ、これは……ぐ、ぐあああああああああっ!!」
勝ち誇るモンスターの声が聞こえた。その言葉に僕は死を覚悟した。
だけど、何かが起こったのかモンスターの雄叫びが木霊するのを聞きながら、僕は……気を失ってしまった。
突然現れて、僕を殺すと言ってきた人じゃないと思うモンスターを前にして、僕はまったく動くことが出来なかった。
そんな僕を護るように、ママが僕とモンスターの間に立った。
だけど、これから先……僕は動けなかったことを後悔し続けるだろう。
何故なら、僕の目の前でママはモンスターにお腹を貫かれてお腹から血を吹き出しながら倒れたのだから……。
「マ、マ……?」
掠れた声が口から洩れる。目の前のモンスターに聞こえているかは分からない。
そして、地面を這いながら震える手でママへと近づくと……、お腹から真っ赤な血がだくだくと零れていた。
紅く、熱い……体から溢れ出たものだ。
「ママ……ママ、しっかり……しっかりしてよ。ママ……」
動かないママを揺するけれど、ママの目は開かない。
何で? どうして目を開けてくれないの?
どうしてだか解らない。けど、動かないママが段々と怖くなり始めていると……モンスターが嫌な感じに僕らを見ながらこう言ってきた。
「ふんっ! たかが人間風情が間に立つとは何事だ。だが、前座として勇者の母親というのは魔王様に申し分ないだろう」
それはまるでママを虫みたいな感じに言う言葉だった。
その言葉に、僕は今まで感じたことの無い感情が芽生え始めた。
「ママを……バカに、したな……?」
気が付くと、目の前のモンスターへの恐怖が無くなっていた。
そしてフラフラと立ち上がると……、芽生え始めた感情を言葉と共に一気に吐き出した。
「ママを……、ママをバカにしたなあああああああーーーーーーっ!!」
僕がそう叫んだ瞬間、体に力が湧き上がった。
そんな僕を見て、ママを動かなくしたモンスターを睨み付ける。
するとモンスターはまるで僕を恐れているように、後ろへと下がり始めた。
「な、何だその力は……?!」
「許さない、許さないぞ……。よくも、よくもママをーーーーっ!!」
下がり始めるモンスターに向け、僕は拳を握り締めると……殴りかかった。
この拳が目の前のモンスターに通用するのかはわからない。
わからないけど、ママを動かなくしてバカにしたんだから僕には殴らない理由が無い!
「うおおおおおおおおおっ!!」
「えっ、ちょっ!? っく――う、うおーーーーっ!!」
「っ!? あ、当たるもんかっ!!」
拳がモンスターに迫ると、モンスターは僕に向けてその凶悪な拳を突き出してきた。
当たるッ!? そう思った瞬間、頭の中に行けるという確信が浮かび、その確信に従うように僕は体を傾けた。
ブォン、と突き出されたモンスターの拳が頭の上を通り過ぎ、物凄く硬そうなお腹へと僕は握り締めた拳を突き出した!
「――しまっ!? ぐぅ!!」
「うおおっ! くら――えええぇぇぇぇぇーーーーっ!!」
ドスッと拳がモンスターの腹を打った瞬間、拳が熱くなり――そこから何かが放たれた。……気がした。
同時に体から力が抜け、クラリと目の前が歪んでしまった。
「や、やっ……あ、あれ? か、らだが……うごか、ない……?」
たた、ないと……。モンスターが、倒れていない……のに…………。
そう思うのに、僕の目の前は真っ暗になって行く。
「く、ぐは……! さすがは勇者、と言ったところか……。だが、我の勝ちだ! 死ね――――うぐっ!? こ、これは……ぐ、ぐあああああああああっ!!」
勝ち誇るモンスターの声が聞こえた。その言葉に僕は死を覚悟した。
だけど、何かが起こったのかモンスターの雄叫びが木霊するのを聞きながら、僕は……気を失ってしまった。
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