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第2話 ヨシュア、ママと食事する。
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ギャース、ギャースっていう聞き慣れた鳥の鳴き声を聞きながら、僕は体を伸ばす。
「ふぁ~~あ、あ~~……。んーー……何だか変な夢を見たなぁ…………」
何だかゆうしゃがどうとか言ってたけど、良くわかんないや。
けど、もしかしたらママなら分かってくれるかも。
そう思いながら僕はベッドから起き上がると、いそいそと服を着替えて部屋から降りて行く。
すると、タンタンタンタンと軽快に調理を行う音が下から聞こえてくる。
それと同時に耳が幸せになる声で紡がれる楽しそうな歌もだ。
「ふんふんふ~~ん♪ ヨシュアのご飯よ、おいしくな~~ぁれ♪ ふふんふふ~~……あらっ、ヨシュア、おはよう♪」
「おはよー、ママ♪ 今日もすっごくいい匂いだね~♪」
僕が下りてきたのに気づいたのか、ママが笑顔で僕におはようと言ってくれる。
その優しい笑顔は本当に素敵で、ママだっていうのに僕の胸はドキドキしてしまう。けど、それは普通のことだろう。
他の人に会ったことは無いけど……、きっとママに対する感情としては当たり前なんだ。
そう思いながら僕はママに挨拶をすると、挨拶と一緒に漂ってくる朝食の香ばしいにおいにお腹を鳴らす。
大好きなママにお腹の音を聞かれるのは少しだけ恥かしかったけど、出たものは仕方ないんだ。
そして、そんな僕のおなかの音を聞いたのか、ママはクスリと微笑むと何時ものように――、
「もうすぐ朝ご飯が出来るから、ヨシュアは顔を洗ってらっしゃい」
「は~い! すぐに顔を洗ってくるね!」
何時ものようにママにそう言うと、僕は家の外へと出て井戸水を汲むと手で掬って……バシャッと顔を洗う。
森の水はキンキンに冷えていて、まだほんのちょっとだけぼんやりとしていた頭がシャキッとして行く。
そのお陰か変な夢の内容がなんとなくだけど思い出してきた。
「あ、ママに聞こうって思ってたんだ!」
同時に、夢の内容をママに言って、どんな夢か訊ねようと思っていたことを思い出す。
確か『ゆうしゃ』になっちゃったとか何とかだったはず。けど、『ゆうしゃ』ってなんだろう?
それもママに聞かないとなー。そう考えながら僕は家の中へと戻ると、ママは作った料理をテーブルの上へと並べており、最後にデザートとして甘い木の実を2つポーンと放り投げるとママが右手に持っていた【まおー剣ダークネス・フレイム】を素早く振るった。
すると宙を舞う甘い木の実はシャンシャンと音が響き、香ばしい焼ける香りが広がり……僕のお腹をますます鳴らせる。
ママ曰く、ダークネス・フレイムは切った物を焼く効果があるようで、甘い木の実は美味しく焼かれていた。
「よ~し、デザートも完成~♪ そして、ヨシュアも顔を洗ってきたからぁ……ご飯にしましょぉ~♪」
「うん、ママッ!」
ダークネス・フレイムを鞘に収めて、ママはこちらを見ると僕へと優しく微笑む。
その微笑みに僕は頷くといそいそと席へと座る。
何時ものように向かい合う、楽しい楽しい食事だ。
「今日のご飯はぁ、焼きたてパンとお庭で取れた野菜を使ったスープ、それとハムステーキとサラダにデザートの焼き木の実よぉ~♪」
「わあ、すっごく美味しそう! それじゃあ、いただきますっ!」
「はい、いただきま~す♪ う~ん、我ながら美味しくできちゃったわぁ♪」
そう言ってママはハムステーキを美味しそうに食べる。
僕もそれに倣うようにして、がぶりとハムステーキを齧ると肉厚なハムのゴリッとした食感と、塩が染み込んだ肉と脂の味が広がってくる。
う~ん、美味しい~~!! さすがママ! 本当、ママの料理は美味しいなー!
ニコニコと笑顔で僕はハムステーキを齧り、パンを齧る。時折ハムステーキの脂をのじりつけながら食べるパンは本当に美味しい。
口の中が幸せいっぱいになっていく中で、僕は忘れかけていたことを思い出し、ママを見る。
ママは既にデザートに移っていて、美味しそうに焼き木の実を食べていた。
その姿に何故だか僕はドキドキしたけれど、ゴクッと唾を呑み込んで耐える。
「マ、ママ、そういえば今日変な夢を見たんだ」
「夢? どんな夢だったの?」
「えっとね、僕は原っぱに居て、そこに突然オバケが出てきて、『おまえはゆうしゃだー』って……」
「あらあら、怖い夢を見たのね~。きっとそのオバケは、何千年も生きてるくせに成長する気が無いのか出来ないのか分からないチビッ子で、のじゃのじゃ言ってたりするのね~」
「何だか具体的だね、ママ……。それで、ゆうしゃって何なの?」
首を傾けながらママに訊ねると、ママが少し困ったような顔をする。
? どうしたんだろう??
僕は不思議に思ったけれど、ママのその表情の理由はすぐに理解した。
「ヨシュア、勇者っていうのはね、魔王を退治しに行く職業なの。だからね、ヨシュアはママと離れて魔王を退治しに行かないといけないの」
「え……、ママと……離れるの? いっしょに、行ってくれないの?」
「ええ、ヨシュアは可愛くて本当に可愛いからママは変な虫が付かないか心配でいっしょに付いて行きたいけど……、勇者のママは家でヨシュアが無事であることを祈ることしか出来ないの」
「そんなぁ……。だったら、だったら僕はゆうしゃなんてならない!」
「それは駄目よ……。だって、神様に勇者と認められたのよ? それに、ヨシュアが勇者になったのはすぐに魔王も気づいているから、魔王はすぐにでもヨシュアを殺しに敵を差し向けてくるわ……」
そう言ってママは心配そうに僕を見る。
というか、殺しに……? え、ど、どういうこと……?
僕、殺されちゃうの?
「……で、でもこんな森の中に居るなんて分からないよ。だから、ずっとここに居――」
ここでママと一緒に暮らそう。そう言おうとした直後、突如扉が蹴破られた。
そして、扉の先の……外から、巨大な何かが立っていた。
「見つけたぜ、勇者ァ……。魔王さまの命令でテメェをぶっ殺す!」
「ふぁ~~あ、あ~~……。んーー……何だか変な夢を見たなぁ…………」
何だかゆうしゃがどうとか言ってたけど、良くわかんないや。
けど、もしかしたらママなら分かってくれるかも。
そう思いながら僕はベッドから起き上がると、いそいそと服を着替えて部屋から降りて行く。
すると、タンタンタンタンと軽快に調理を行う音が下から聞こえてくる。
それと同時に耳が幸せになる声で紡がれる楽しそうな歌もだ。
「ふんふんふ~~ん♪ ヨシュアのご飯よ、おいしくな~~ぁれ♪ ふふんふふ~~……あらっ、ヨシュア、おはよう♪」
「おはよー、ママ♪ 今日もすっごくいい匂いだね~♪」
僕が下りてきたのに気づいたのか、ママが笑顔で僕におはようと言ってくれる。
その優しい笑顔は本当に素敵で、ママだっていうのに僕の胸はドキドキしてしまう。けど、それは普通のことだろう。
他の人に会ったことは無いけど……、きっとママに対する感情としては当たり前なんだ。
そう思いながら僕はママに挨拶をすると、挨拶と一緒に漂ってくる朝食の香ばしいにおいにお腹を鳴らす。
大好きなママにお腹の音を聞かれるのは少しだけ恥かしかったけど、出たものは仕方ないんだ。
そして、そんな僕のおなかの音を聞いたのか、ママはクスリと微笑むと何時ものように――、
「もうすぐ朝ご飯が出来るから、ヨシュアは顔を洗ってらっしゃい」
「は~い! すぐに顔を洗ってくるね!」
何時ものようにママにそう言うと、僕は家の外へと出て井戸水を汲むと手で掬って……バシャッと顔を洗う。
森の水はキンキンに冷えていて、まだほんのちょっとだけぼんやりとしていた頭がシャキッとして行く。
そのお陰か変な夢の内容がなんとなくだけど思い出してきた。
「あ、ママに聞こうって思ってたんだ!」
同時に、夢の内容をママに言って、どんな夢か訊ねようと思っていたことを思い出す。
確か『ゆうしゃ』になっちゃったとか何とかだったはず。けど、『ゆうしゃ』ってなんだろう?
それもママに聞かないとなー。そう考えながら僕は家の中へと戻ると、ママは作った料理をテーブルの上へと並べており、最後にデザートとして甘い木の実を2つポーンと放り投げるとママが右手に持っていた【まおー剣ダークネス・フレイム】を素早く振るった。
すると宙を舞う甘い木の実はシャンシャンと音が響き、香ばしい焼ける香りが広がり……僕のお腹をますます鳴らせる。
ママ曰く、ダークネス・フレイムは切った物を焼く効果があるようで、甘い木の実は美味しく焼かれていた。
「よ~し、デザートも完成~♪ そして、ヨシュアも顔を洗ってきたからぁ……ご飯にしましょぉ~♪」
「うん、ママッ!」
ダークネス・フレイムを鞘に収めて、ママはこちらを見ると僕へと優しく微笑む。
その微笑みに僕は頷くといそいそと席へと座る。
何時ものように向かい合う、楽しい楽しい食事だ。
「今日のご飯はぁ、焼きたてパンとお庭で取れた野菜を使ったスープ、それとハムステーキとサラダにデザートの焼き木の実よぉ~♪」
「わあ、すっごく美味しそう! それじゃあ、いただきますっ!」
「はい、いただきま~す♪ う~ん、我ながら美味しくできちゃったわぁ♪」
そう言ってママはハムステーキを美味しそうに食べる。
僕もそれに倣うようにして、がぶりとハムステーキを齧ると肉厚なハムのゴリッとした食感と、塩が染み込んだ肉と脂の味が広がってくる。
う~ん、美味しい~~!! さすがママ! 本当、ママの料理は美味しいなー!
ニコニコと笑顔で僕はハムステーキを齧り、パンを齧る。時折ハムステーキの脂をのじりつけながら食べるパンは本当に美味しい。
口の中が幸せいっぱいになっていく中で、僕は忘れかけていたことを思い出し、ママを見る。
ママは既にデザートに移っていて、美味しそうに焼き木の実を食べていた。
その姿に何故だか僕はドキドキしたけれど、ゴクッと唾を呑み込んで耐える。
「マ、ママ、そういえば今日変な夢を見たんだ」
「夢? どんな夢だったの?」
「えっとね、僕は原っぱに居て、そこに突然オバケが出てきて、『おまえはゆうしゃだー』って……」
「あらあら、怖い夢を見たのね~。きっとそのオバケは、何千年も生きてるくせに成長する気が無いのか出来ないのか分からないチビッ子で、のじゃのじゃ言ってたりするのね~」
「何だか具体的だね、ママ……。それで、ゆうしゃって何なの?」
首を傾けながらママに訊ねると、ママが少し困ったような顔をする。
? どうしたんだろう??
僕は不思議に思ったけれど、ママのその表情の理由はすぐに理解した。
「ヨシュア、勇者っていうのはね、魔王を退治しに行く職業なの。だからね、ヨシュアはママと離れて魔王を退治しに行かないといけないの」
「え……、ママと……離れるの? いっしょに、行ってくれないの?」
「ええ、ヨシュアは可愛くて本当に可愛いからママは変な虫が付かないか心配でいっしょに付いて行きたいけど……、勇者のママは家でヨシュアが無事であることを祈ることしか出来ないの」
「そんなぁ……。だったら、だったら僕はゆうしゃなんてならない!」
「それは駄目よ……。だって、神様に勇者と認められたのよ? それに、ヨシュアが勇者になったのはすぐに魔王も気づいているから、魔王はすぐにでもヨシュアを殺しに敵を差し向けてくるわ……」
そう言ってママは心配そうに僕を見る。
というか、殺しに……? え、ど、どういうこと……?
僕、殺されちゃうの?
「……で、でもこんな森の中に居るなんて分からないよ。だから、ずっとここに居――」
ここでママと一緒に暮らそう。そう言おうとした直後、突如扉が蹴破られた。
そして、扉の先の……外から、巨大な何かが立っていた。
「見つけたぜ、勇者ァ……。魔王さまの命令でテメェをぶっ殺す!」
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