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★最新更新★20230115〜
廃工場と紅い魂《あかいたましい》(仮)プロローグ
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∞∞ nayuta side ∞∞
それはある晴れた日。
梅雨が明けそうなので、喫茶【シロフクロウ】を飾り付けを夏仕様に変更するため巽と買い出しに出ていた。
九鬼オーナーの能力でオブジェは創りたい放題なはずなのに「ボクが造るだけじゃ楽しくないカラ」と、いう理由だけで飾り付けになりそうな小物を探しに行く羽目になった。
今日はカラッとした潮風が吹き込んで、夏を感じる気候だ。
ただ、俺は夏生まれだけど暑いのは嫌いである。勿論寒いのも嫌いで……空調が効いた部屋で永遠とゲームをしていたい。
「本格的に梅雨明けしそうだね」
俺が余りにも気乗りしない足取りだったからか横から巽が覗き込んできた。
自然と更に眉が寄って、「おお……」と、そっけない返事になってしまうのは仕方がない。
つい最近俺たちは付き合うことになった。
だがしかし、まだ俺が巽を好きとは決まってない。
往生際が悪いと言われようが、なんと言われようが……お、男を好きってこと自体まだ受け入れられてはいない。それでも巽を突き放す事ができなかったので付き合うことになった。でも、付き合った後も付き合う前も特に変わりは無くて……。
整った目鼻立ちの横顔をソッと覗き見る。間違いなくイケメンだ、こんなイケメンがどこで何をとち狂って俺を好きになったのか聞いてみたいけどそれを聞く勇気は無くて……そうこうしているうちに巽の表情が苦笑に変わった。
「俺の顔見てて楽しい?」
「……ッ!?そ、そう言うわけじゃねぇし」
「那由多になら見てもらえるだけで嬉しいけど」
「じゃあもう見ねぇ」
「それは酷いな。それじゃあ俺は見てもらえるよう努力しようかな」
「な、んだよそれ……」
「あ、そうだ」
「ん?」
「手、繋ぐ?」
爽やかだ……!爽やかすぎる!やっぱり住んでる世界が別次元だ!
俺たちは能力者ってやつなので忍者みたいに塀の上、木の上を移動することができる。
今だって裏路地を移動しているから人通りは無いけど……!
余りにもナチュラルに差し出された手を振り解くのは憚られて俺たちは手を繋いだ。
その時、不意に引っ張られるような気配を感じて、俺は高い塀の向こうにある建物を見上げた。
潮風に晒されて老朽化が見て取れる建物だったがどこにでも有るような見た目だった。
「ここ、数年前までは工場だったらしいよ。今は廃墟みたいだけど」
「へぇ……何作ってたんだろうな?」
「それ、言ってるだけで全然気になってないでしょ?」
「な!?……んな事ない」
「那由多がゲーム以外に食いついてるとこあんまり見た事ないけど……?」
「ゔ……」
図星過ぎて俺は繋いだ巽の手を強く握り返した。
気を使わないどころかこっちの考えも筒抜けで巽との関係は俺にとっては物凄く……楽だ。
巽はそのまま俺の手を引いて進み始めたので廃工場から遠ざかっていく。
この時の俺はまだこの廃工場を舞台にあんな事が繰り広げられると知る由もなかった。
それはある晴れた日。
梅雨が明けそうなので、喫茶【シロフクロウ】を飾り付けを夏仕様に変更するため巽と買い出しに出ていた。
九鬼オーナーの能力でオブジェは創りたい放題なはずなのに「ボクが造るだけじゃ楽しくないカラ」と、いう理由だけで飾り付けになりそうな小物を探しに行く羽目になった。
今日はカラッとした潮風が吹き込んで、夏を感じる気候だ。
ただ、俺は夏生まれだけど暑いのは嫌いである。勿論寒いのも嫌いで……空調が効いた部屋で永遠とゲームをしていたい。
「本格的に梅雨明けしそうだね」
俺が余りにも気乗りしない足取りだったからか横から巽が覗き込んできた。
自然と更に眉が寄って、「おお……」と、そっけない返事になってしまうのは仕方がない。
つい最近俺たちは付き合うことになった。
だがしかし、まだ俺が巽を好きとは決まってない。
往生際が悪いと言われようが、なんと言われようが……お、男を好きってこと自体まだ受け入れられてはいない。それでも巽を突き放す事ができなかったので付き合うことになった。でも、付き合った後も付き合う前も特に変わりは無くて……。
整った目鼻立ちの横顔をソッと覗き見る。間違いなくイケメンだ、こんなイケメンがどこで何をとち狂って俺を好きになったのか聞いてみたいけどそれを聞く勇気は無くて……そうこうしているうちに巽の表情が苦笑に変わった。
「俺の顔見てて楽しい?」
「……ッ!?そ、そう言うわけじゃねぇし」
「那由多になら見てもらえるだけで嬉しいけど」
「じゃあもう見ねぇ」
「それは酷いな。それじゃあ俺は見てもらえるよう努力しようかな」
「な、んだよそれ……」
「あ、そうだ」
「ん?」
「手、繋ぐ?」
爽やかだ……!爽やかすぎる!やっぱり住んでる世界が別次元だ!
俺たちは能力者ってやつなので忍者みたいに塀の上、木の上を移動することができる。
今だって裏路地を移動しているから人通りは無いけど……!
余りにもナチュラルに差し出された手を振り解くのは憚られて俺たちは手を繋いだ。
その時、不意に引っ張られるような気配を感じて、俺は高い塀の向こうにある建物を見上げた。
潮風に晒されて老朽化が見て取れる建物だったがどこにでも有るような見た目だった。
「ここ、数年前までは工場だったらしいよ。今は廃墟みたいだけど」
「へぇ……何作ってたんだろうな?」
「それ、言ってるだけで全然気になってないでしょ?」
「な!?……んな事ない」
「那由多がゲーム以外に食いついてるとこあんまり見た事ないけど……?」
「ゔ……」
図星過ぎて俺は繋いだ巽の手を強く握り返した。
気を使わないどころかこっちの考えも筒抜けで巽との関係は俺にとっては物凄く……楽だ。
巽はそのまま俺の手を引いて進み始めたので廃工場から遠ざかっていく。
この時の俺はまだこの廃工場を舞台にあんな事が繰り広げられると知る由もなかった。
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