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isc(裏)生徒会

サバイバルゲーム愛輝凪VS明雷鳴②

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[chapter:【ISC(裏)生徒会】81話「サバイバルゲーム愛輝凪対明雷鳴②」】]

【ボストン】

もうちょっとウェリントンと一緒にいたかったけど…命令だから仕方ないね。
3地点を離れる時の「いってらっしゃい」と言いながら微笑んでくれた顔が神がかりすぎて、頭から離れない。
やはり彼は僕らの女神だ。
それだけで頑張れる。

3地点からラウンドのいるA地点までは直線距離だ。
どちらにせよ遠回りしても敵は1地点に集中しているはずなので、誰かとすれ違う確率も低いだろう。
茂みをかき分けながら泥濘を走る。
体力を奪われる湿地帯がそこそこ多いが、僕らは生身でサバイバルゲームはやってきているので、こういう条件は慣れたものだ。
ただ、夜を迎えた事で視界は悪い。
感覚を頼りにただ走り続けた。

「こちらボストン、C地点に差し掛かったよ。
もうすぐA地点だ。ラウンド、動けるように用意しておいてね」

C地点に差し掛かったところで、通信を繋ぐ。
了解、とラウンドから返事が返って来た所で、無線を一度切った。

その時だった。
すぐ真横、暗闇で良くわからなかったが――――――何かがいる。

この時の光景はスローモーションだったと思う。
その「何か」は人影だった。
駆ける足を止めることなく、そちらを確認するように振り向いた瞬間に、ふたつの赤い瞳が光った気がした。
瞬時に狼かと思ったが、ここはバーチャル世界だ。
そんなオプションがついているとは聞いていない。

足を滑らせながら銃を構える。
しかし、構えた先の人影はすぐにいなくなっていた。
ゾッと背筋に悪寒が走った。
本能的な物でわかる、その赤い瞳をした「何か」は逃げたのではない。

僕を殺しに来る。

敵の誰かであれば、足を止めれば殺られるだろう。
とっさに脇に構えた銃を円形に乱射しながら、無線機の電源を入れた。
とにかくエイドス達に連絡を入れなけれいけない。

「こ、こちらボストン!誰かA地点の付近に――――」

そう声をあげたが、後半は何故か声が出なかった。
首筋に冷たいものが触れた途端に、喉元が酷く熱くなる。
自分の意思と関係なく、身体が重力に負けるように地面に崩れた。
泥や落ち葉が僕の顔にへばりつくと、自然と向いた視線の先に、赤い二つの瞳がこちらを見下して微笑んでいる。

その瞳の持ち主。
それは、神功左千夫だった。

ああ、早く、知らせないと…………皆……やつ、は……生き…………て…………。

口を薄く開いても声は出ることなく、僕の意識は暗闇へと沈んだ。

[newpage]
【神功左千夫】

これは僕のミスだな。

僕の名前を告げられる前に彼の背後に降り立ち、言葉を綴れない様にその喉を一直線に切り裂く。
これは予定にない行動だった。

サバイバルゲーム開始直後、もし僕が動ける状態ならG地点に配置したエルと奇襲を行う作戦だったに違いない。
しかし、D地点は毒ガスで満ちていて、流石の僕でも抗体をつくるのにこれだけの時間が掛った。

そうなると、次の作戦は僕一人での奇襲。
D→Aへの一直線の道のりだ。
しかし、これもAの地点に居る人物がD→Aへと行くことができない様に罠を張り巡らせている。
となると、迂回ルートのD→C→Aでの奇襲。
その最中の地点Cで僕は運悪く敵と遭遇してしまった。
しかも無線でこの異変は伝わっただろう。

『どうした、ボストン!……ボストン?』

ボストンの無線機から声が聞こえた次の瞬間、A地点の方角から手榴弾が飛んできた。
敵はもうこの非常事態に動いてきた。
これは一時撤退しないと間違いなく挟みこまれる。

血だまりを踏まない様に気を付けながらその手榴弾の爆発から逃げる。
そして僕は此処で初めて無線を手にした。

「こちら、神功。
すいません、イデア、奇襲に失敗しました。
これより、そちらの指揮下に戻ります。まずは自分の陣地1まで撤退します。」

取り合えず、この毒の染みついた服を着替えたいし。
作戦も立て直さないといけない。
そして僕は今の戦況をイデアに暗号で教えて貰うようにと伝えた。

昔の血が騒ぐと言うか…。
僕の居場所に戻ってきた。
此処はそんな気配すらするくらい僕にとっては慣れた場所だった。

 [newpage]
【光】

イデアは頑なに作戦を変えなかった。
というか俺の話なんて多分聞いていない。
きっと、僕はここには必要のない存在なんだ。

もういよいよ僕の涙腺も限界だ。
でも、泣いたらカッコ悪い。
皆に、これだから子供はって思われる。

泣いちゃいけない、泣いちゃいけないんだ、光。

目をぎゅっと瞑り、自分の手の平へと爪を立てた時だった。

『こちら、神功。
すいません、イデア、奇襲に失敗しました。
これより、そちらの指揮下に戻ります。まずは自分の陣地1まで撤退します。』

雑音交じりに聞こえた声。
それは、左千夫の声だった。
幻聴ではない、と思う。
だってイデアがその後に「了解」って言ってたから。

「さ、左千夫ぉ……いき、生きてた……っさぢお゛ぉ……」

我慢していた涙腺が見事に崩壊していく。
ぼろぼろと零れる涙を抑える事ができなかった。
両手でそれを一生懸命拭っていると、イデアがこちらを向いたのがわかった。

一瞬怒られるのかと思い身体が跳ねたが、イデアは何も言葉を発しない。
ちらりと拭った手の隙間からそちらを見ると、イデアはこちらに向かって親指を立てていた。

ああ、イデアは左千夫を信じて待ってたんだ。
だから僕の言葉を聞かなかった。

「指揮官を舐めルナ。それと、泣クナ。
お前は補佐ラシイ行動をシタ。それは間違ってはイナイ。」

イデアがそう口を開いた所で、僕は何故か笑ってしまった。
ヒューマノイドに慰められている。
イデアは感情が無いのに、僕の気持ちを組み取れるなんて、ちょっとおかしかった。

ただ、僕は信じる事がまだできなかっただけだ。
でも、イデアとクキ達は左千夫を信じ続けた。
そして、左千夫はみんなの期待を裏切らなかった。

仲間って、きっとそうやって信じ合うことができるってことなんだ。

僕も腕を差し出すと、イデアの硬い拳へと拳を重ねた。

「エル以外、全員に告ゲル。
サチオが1地点に帰還するまで待機。追って状況を説明シロ」

『了解』
『りょうかーい♪』
『了解ー』


エル以外の返答が聞こえた。
これから、僕達は快進撃を始めることになるはずだ。
だって、左千夫がいるんだから。

  [newpage]
【神功左千夫】

『こちらラウンド。既にC地点に人影無し。
ただ、ボストンの亡骸を発見。刃物による一撃死の模様』

『なんだって…!どうして、そんなところに愛輝凪の奴が…ま、まさかッ!!
オーバル、地点3に移動、もしボストンを討ったやつが神功だとすれば奴は間違いなく孤立している。
そして、自分の基地を目指すだろう、そして、最短距離を通った場合は3を通過する。そこで足止めしろッ。
何としてもだ…!!
フォックス、そっちは一人だ、気をつけろよ!!』

僕は無線から流れる声に耳を傾ける。
これは先程のボストンから拝借してきた無線だ。
勿論、此処でとり行われている会話は暗号化されたものだ、一般人が聞いても意味が分からない単語が並んでいるようにしか聞こえないだろう。

“α△、β◆、γ↑”

まぁ、こんな言葉が無線機から流れてきている感じだ。
ただ、僕には分かる。

僕の頭の中には色々な国、そして、色んな戦場の暗号の解読方法が記憶されている。
明雷鳴の用いている暗号は有る国の暗号をもじっているので分かりやすかった。
そして、イデアの戦況を聞くと更に分析を始めた。
途中、光のすすり泣く声が聞こえたが其処はイデアがきちんとフォローしてくれたので僕から言うことは無い。

「こちら、神功。
敵の現在地をお伝えします。
C地点ラウンド、このままこちらに進んでくる可能性が高い。
3地点にウェリントン、オーバル。
2地点にフォックス。
後、エイドスが少し焦っているようですよ、イデア。

それでは僕はがら空きの4地点を通って帰りますね。」

Dと4の毒が異なる可能性もあった。
しかし、虚を突くためには此処を通って帰るしかない。
出来るだけ呼吸を止めることにする、皮膚から浸入する毒さえなければ何とかなる。

7地点で大きく息を吸い込むと僕は4地点へと走り込んで行った。



■■電脳サバイバル■■

“神功予想図”

「赤」 『明雷鳴高校』 指揮:エイドス
             A
B            C『ラウンド』              D◎
E            F                    G
H            I                     J
 
1            9                    8
7            6                    5
4◎【神功左千夫】  3『ウェリントン』『オーバル』   2【エル】 『フォックス』
             1【リン】【九鬼】【ライトニング】 
「青」 【愛輝凪高校】 指揮:イデアロス

×『スクウェア』
×【チュマール】
×『ボストン』



予想通り。
D地点と4地点の毒は一緒だった。
そうなると僕は抗体を持っているので何も問題は無い。
更にこちらは4から1に掛けてのルートに罠を仕掛けて居なかった、明雷鳴に4を突破できるものが居ないのだろう。
草木を掻き分けながら僕は1へと帰還した。

「お疲れ様です、皆さん。」

一瞬緊張に強張った3人へといつものように声を掛ける。

  [newpage]
【九鬼】

「お疲れ様です、皆さん。」

左千夫クンが4地点からボク達のいる1地点へと帰ってきた。
4地点は確か即死地点だったはずなんだけど…。

「よーおかえり、サチオ遅かったな」

「ワンッ」

自然とリン達にも笑顔が戻る。
正直だいぶ冷や冷やしたけど、彼が戻ってきたことで自然に指揮もあがっていく感じがした。
彼がいることの安心感はボクでさえ感じてしまう。

木から木へ飛び乗ると、左千夫クンがいる所まで移動し、上から左千夫クンを見下ろす。
この場所であれば敵にも見えないだろう。

「やっぱり左千夫クン生きてたネ!さっすが~!
今すぐ愛の抱擁してあげるからネ!!」

そう言って飛び降りようとした所で、即座に「結構です。それに今僕に近づくと死にますよ」と言われた。
後から聞いた話によると、左千夫クンは毒塗れになったらしい。
けど彼には奴隷中の散々な行為で、毒には抗体がある。
ちょっとやそっとでは死なない。
まぁ今回はかなり多い量で、抗体作るのに大変だったみたいだケド。
それでもやはり、彼はバケモノだ。

左千夫クンは衣服に付着している毒があるため、着替えに行った。
リンたちと少し距離を置いて、彼を護衛するような位置で辺りを警戒する。
まぁ、護衛なんていらないだろうけどネ。

すぐ様戻ってくると、無線機をこちらへ放り投げてきた。

「?」

そこから聞こえているのは暗号化された声だった。
ボク達の暗号とは違うので、多分相手方から奪って来た物だろう。
しかし、何を言ってるかさっぱりわからない。
だけどさっき、左千夫クンは敵の状況を喋ってたよネ。
この暗号をすぐ様解読できるって事か。

「やっぱりバケモノ。こわーい」

ぶるぶると震える仕草をすると、キツく睨まれた。
ああ、でもこの感覚がやっぱり心地よい。

   [newpage]
【エイドス】

神功が…生きていた…!

僕は卓上を見つめながらガリっと親指の爪を噛む。

リコールの時もそうだがアイツは必ず人の想像の上を行く。
ただアイツでも今は只の人だ、能力も使えない。
上手く包囲してしまえばこちらの勝ちだ。

1地点に行くまでには必ず、3か2を通らなければならない。
なので、その間に包囲してしまえばいいことだ。
落ち付け、一人増えたからと言ってがらっと戦況が変わるはずはない。

その時僕はなぜか嫌な予感がした。
この僕が何かを見落としている。
なんだ、それはなんだ。
クシャクシャと髪を掻きながら図面に視線を落とす。

本当に1地点に帰還できるのはそのルートしか無いか…?
いや、待てよ、もし、もしもだコイツが4ルートを自由に通れるとしたら。

「ひ、引けー!!!!撤退だ!!」

僕は暗号を無視して無線機の前で怒鳴った。
その瞬間だった。

『3地点……ッ、撤退します!!』
『2地点、てったっ…ぅ、わああああああああああああ!!!!』

「フォックス!!フォックス!!!」

駄目だ通信が切れた。
どういうことだ。
分からない、情報が無い。
まったく分からない。

どういうことだ…ただ、神功が増えただけだろう?
それほど奴は最強の駒なのか?
なら、なぜ、死ぬかもしれないD地点に派遣した?
もしかして違う地点にずっと潜んでいたのか?
いや、それならば4地点をどうして通れた?
初めからずっと1地点に居たのか?
いや、それなら矛盾が…。

分からない、分からない。

僕はぐしゃぐしゃと頭を抱えた。
いや、今は振り返っちゃ駄目だ、先を…先を考えるんだ。
ガリガリと親指を噛みながら卓上の駒を動かした。

  [newpage]
【エル】

誰も助けに来ないな。
光に、音で場所がバレるので無線を切れって言われたから、状況もわからない。
俺、もしかして見捨てられたか?

そんな事を考えながら、喉を数度膨らませる。
俺は今擬態しているので、身体はヒキガエルだ。
この方がコンパクトだし、敵にも見つからないしな。
足は痛いけど、それよりも蛙の姿がブサイクだから、早く人間になりたい

どれくらい時間が経っただろうか。
暫くして、男の叫び声とズドンッと何かが落ちた音が聞こえた。
ずっとそいつは俺の近くにいたみたいなんだけど、俺は今蛙の姿で穴の中にいたのでどこにいるかわからなかったみたいだ。
ヒキガエルだから、土と色も似てるしな。
そして多分、その男は穴に落ちた。
チュマール死んじゃったけど、ちょっとは役にたったか?

それからすぐに、草木をかき分ける音と、声が聞こえた。
また誰か来た。
ばれないように身体を縮こませ……なくてもいいんだった。
穴の外が見れないので敵が来たのか、仲間が来たのかもわからない。

「あ、敵はっけーん♪深い穴に派手に落ちたみたいだネ、気失ってるみたい」

「だっせ。つーか穴掘り好きじゃねえ?あのクソネズミ」

この声はクキとライトニングだ!
他に後……ふたつ足音が聞こえる。
おかしいな、今生きてるのは俺を合わせて4人。
なのに、クキとライトニング以外に、もう一つ足音が…。

「エル、どこにいますか」

その声に俺は驚いた。
キラキラと目が輝き、今すぐ飛び跳ねたい気持ちでいっぱいになる。
それと同時に、身体から蒸気が発せられるのがわかった。

「こいつどうする?ボク殺っちゃってもい――――」
「サチオーーーーーー!!!!!!」
「うわッ!!!!」

俺の身体が大きくなった。
というか嬉しさの反動で擬態のバランスを崩してしまい、人間に戻ってしまった。

「サチオ!サチオ無事だったか!やっぱり!サチオすごい!強い!」

俺が人間になると、頭ひとつ穴から出る。
片足だけで飛び跳ねながら、ぶんぶんと手を振った。
左千夫はこっちを見て微笑んでる、嬉しい。
会えて嬉しい。

穴を急いでよじ登る。
カンドウのサイカイ、というやつなのに、何故か全員の顔が歪んだ。

「ん?どうした?」

はぁっと左千夫がため息をつく。
何か、俺変なことしたか?

「エル……まずは服を着なさい」

そう言われて自分の身体に視線を落とすと、何も着ていなかった。
蛙でいたから人間になっても裸だという違和感がなかった。
人間は、服を着ないと「九鬼みたいな変態になる」とサチオから聞いているので、着ないといけないんだって。
めんどくさいけど、着替えてからサチオといっぱい話をしよう!

   [newpage]
【天夜巽】

■■電脳サバイバル■■

“現在地”

「赤」 『明雷鳴高校』 指揮:エイドス
           A『ラウンド』
B          C                 D◎
E          F                 G
H          I『ウェリントン』『オーバル』  J
 
10          9                 8
7          6                 5  
4◎         3                2【九鬼】【エル】【神功左千夫】【ライトニング】【リン】『フォックス』
           1
「青」 【愛輝凪高校】 指揮:イデアロス

×『スクウェア』
×『ボストン』
×【チュマール】


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流石会長、としか言いようのない形勢逆転だった。
あの人は確実にこのサバイバルと言うものに慣れている、そんな戦い方だった。
暗号の解読も直ぐにしてしまうし、何よりも山を走るのが途轍もなく速い、そして、罠の位置も的確に見抜いていく。

イデアちゃんの指示はエル君の救出後、A地点を一気に攻め落とすと言うものだった。
しかし、敵の帰りが速い場合はBC地点に別れて待機と言うことだ。
フォックスは今穴に落ちてしまって愛輝凪が囲んでいる、けど、ウェリントンとオーバルは既にI地点だ。
なので、BCでの待機になるだろう。

『始末しておいてください、出来るだけ苦痛を与えず一撃で。
エル、服は着終わりましたか?
お前は1の地点に戻って、拠点の守りを、ただ、もう攻め込ませる予定は有りませんが。
後は、イデアの指示に従う様に。

ライトニング、、リンはイデアの作戦通りに、九鬼も始末後直ぐに出発してください。
僕はエルを送ってから追いつきます。』

何でだろ。
会長が一人入っただけでこんなにまとまりができる。
クッキー先輩が悪いって訳じゃないと思う。
動物たちが全員従っている訳でも無い。
会長は何と言うか…言うことをきかない子に言うことを聞かせるのが上手いのかもしれない。

俺達は食事も終わったので今はお茶を飲んでいるところだ、その時日当瀬が立ちあがった。

「どこいくんだ、晴生。」

「麗亜と羅呪祢の対決の観覧席です。
千星さんも行きますか?こっちはもう大丈夫そうなので。
それに……三木だけじゃ心配ですしね。」

その言葉につられるように那由多が立ちあがる。
俺も続いて立ちあがったんだけど案の定日当瀬に睨まれた。

……ついていくくらい許してくれたらいいのに。

背中から聞こえる銃声の音をどこか遠くで聞きながら俺達は観覧席を後にした。

   [newpage]
【九鬼】

どうやら好きに始末していいらしい。
でも苦痛を与えずに一撃で…だって。
今気絶してるみたいだから、足でもぶち抜いて起こしてから殺ろうと思ってたんだケド。

このサバイバルゲームが始まってから一人も人を殺せていない。
バトルライフルは何度か使った事あったけど、久しくあの感覚を味わってないな。

はーっとため息をつくと、穴の中にいるフォックスと呼ばれる男へと脇に抱えた銃を向けた。
フォックスってんだから、狐だよね。
なんでだろ、眼鏡の形?

ああ、それにしても……どうにかして見たかったなあ、狐につままれたような顔を。

「じゃね、オヤスミコンコン♪」

そう言うと僕は彼の頭を目がけて引き金を引いた。
弾が連射された後、フォックスの身体が大きく跳ね、穴の中に血が溜まって行く。
多分死んだかな。
それにしても中々にリアルだな。
これは今更面白くなってきたかもしれない。

「こちら九鬼ーフォックス君排除♪
今からイデちゃんの指示通り、リンとライトニングの三人でA地点まで向かうヨ、どうぞー」

さて、これから奇襲作戦だ。
相手方はかなり焦ってる最中だろう。
こうやって追いやって行くのが一番楽しい。
散々遊ばれてあげたんだから、今度はボク達が遊んであげる番だ。

なんてったってこっちには、赤い瞳の死神が二人も憑いてんだから。

   [newpage]
【ライトニング】

「おい!リン!あんまとばし過ぎんなよ!!あいつら置いてきちまうぜ!特に左千夫は一回基地まで戻ってんだからな!」

俺とリンは木々を渡る様にして走って行く。
この道を辿るが罠が一番少ないからだ。
それにしたって、リンの奴、こいつ犬だろ!
なんで、木の上走れんだよ!!
しかも、速ぇし!!
これは俺の専売特許だろ!!

それにしても、明雷鳴(アライナ) 高校の奴らは流石だな。
引きが早い、これならBCに留まる作戦になりそうだなっと地上の足跡を見ながら思った瞬間に声が掛った。

「なるほど。良い足を持ってますね、明雷鳴は。
それにサバイバルと言うものに慣れている、九鬼だけでは手こずるはずだ。」

「ああ?んなことねーよ、イデアの指示だから動いてなか…って!左千夫!!なんでこんなとこに、いんだよッ……ぅわッ」

いつの間にか左千夫が俺達と並走していた。
コイツ確か1地点まで帰った筈だよな、なんで、追いついて、とか、思ってたら盛大に枝から滑りそうになった。
そして、すかさずリンと左千夫に受け止められてすっげー気分が悪い。

「あー!!もう、触んな!!左千夫!エルはどうしたんだよ。」

「基地まで送って行きましたよ?」

「九鬼はどうしたんだよ!」

「僕は1から3へ掛けてのルートで来たので彼とは遭遇してません。」

つーことは…、コイツは自力で追いついてきたってことか。
しかも、九鬼は回収しなくていいのかよ。
まぁ、アイツは放っといて死ぬような奴じゃねぇだろうけど。

結局C地点につくまでに敵と遭遇しなかった、と、いうか真新しい足跡はCを辿ってAに入って行っていたので全員Aに帰ったことになる。
そうなると俺とリンはB地点で対比なので左千夫と別れてBへと向かった。
辺りはもう真っ暗で何も見えない。
お化けが怖いとかそう言うのは無いけど、今俺達に手を振っている左千夫は怖い、本気でそう思った。

今からは決められた時間に手榴弾を投下するつー、さっきの敵と同じことをするので俺は木の幹に凭れて手を頭の後ろに回した。
いつも寝てる俺からすればこんだけ行動しっぱなしは割りにあわねーつーことだな。

「リン、俺は寝るからなー。」

目の前でなにやらきょろきょろしているリンに声だけ掛けると俺は瞼を落とした。

   [newpage]
【光】

僕達はほとんど形勢逆転したと言っていいだろう。
イデアの指示は、今から相手の拠点、A地点へ奇襲をかけるということだった。
さっきとは真逆だ。
でも、僕達が攻められていた時は、イデアから待機命令が出ていたから何も仕掛けなかったが、あちらはもしかしたら何かを仕掛けて来るかもしれない。
明雷鳴高校はサバイバルには慣れているようだし、気を抜けば危ない目に合うかもしれない。

でも、左千夫がいるから大丈夫だ。
そう言った自信が何故か僕の中にあった。
イデアは相変わらず手短に指示を出すだけで、左千夫が帰って来る前と特に変わった行動や発言は無かった。
勝てる確信があるのか無いのか、それすらもわからない。

『こちら九鬼ー左千夫クンとC地点で合流。
ついさっき手榴弾投下したヨ♪』

エルを1地点に送りに行った左千夫と九鬼が合流したみたいだ。
遠くから爆発音も聞こえる。

これからどう動くんだろうか。
このまま何事も無く勝てればいいな……。

僕は電子地図の、A地点付近に固まっている左千夫達の駒へと視線を落とした。

   [newpage]
【エイドス】

「くそ!!!役立たずどもめ!!」

『エイドス。いくら貴殿が焦っているとはいえど、それは言い過ぎなのではないだろうか?死んでいったものが報われんな。』

無線機からラウンドの声が響いた。
本当にコイツはこういうときはいけすかない。
止めるための副会長だからだろうか。

『それにしても、神功が生きているのは誤算だったな。そして、奴は4、D地点を突破出来ると来た。
戦力差的にもほぼ勝敗が出たようなものだがどうするエイドス。』

そうだ、神功が生きてたのは誤算だった。
どうして彼はこんなことができるんだ?
そうだ、九鬼が言ってた、彼は最下層の人間なんだと。
彼はどんな毒でも耐性があると言うことなのだろうか?
それならば動くのが遅かった気もする。

もしかして…耐性を作っていたのか?
だからあの場所で動けずに居て、イデアはそれを待ち続けた。

有りえない。
そんな不確かなこと僕なら絶対にしない。
やっぱりアイツは出来そこないだ。

「ウェリントン……会長の……能力は…使えそう……か?」

そう言った途端無線から口々に否定の声が聞こえてきた。
「だめー!!」「それだけはお許しになられよ!」とかもうそんなに人数が居ない筈なのにちょーうるさかった。

『うん、それしかないよね。大丈夫、使えるみたい。会長が本当に死んだわけじゃないからかな?』

ウェリントンは副会長だ。
なので会長の能力が使える。
会長の能力は身体的変化をもたらすものなので今回のサバイバルでも使用可能だ。
ただ、かなりのリスクをようする。

「日の出と同時に開始しろ。それまで何とか持ちこたえてくれ。」

イデアが陣地取りを優先しているなら僕達が日の出と共に仕掛けて勝ちだ。
出来るだけあっちの戦力がどうなっているか探りたいが、それは上手くいくだろうか。

   [newpage]
【ラウンド】

どれぐらいの時間が経っただろうか。
時間が分かる物は身に付けていないので、辺りの景色で時間の経過を把握しなければならない。
愛輝凪高校の奴等は定期的に手榴弾を放りこんで来る。
時間はまちまちであったが、これもあちらのヒューマノイドの指示であろう。

しかし…エイドスは状況が変わると怒りの感情に身を任せすぎだ。
そんな事をヒューマノイドに言っても仕方がないのであろうが、指揮をするのであれば常に冷静でいる事を心がけていただきたい。
しかもウェリントンがスクエアの能力を使うと言うのがなんとも……いや、仕方あるまい。
これは勝負だ、なんとしても我らは地区聖戦で勝利を得なければならない。

そして、こちらの状況もあまり芳しくなかった。
動き倒していたせいで疲労が蓄積されてきたのか、士気も最初に比べてだいぶ下がっているようだ。
その変化を見越しているように愛輝凪高校が投げてくる手榴弾は、まるでこちらの状況を弄んでいるかのようだった。

「エイドス、少しあちらの様子を見に行く、良いか?」

『うん、よろしく、ラウンド』

「皆の者、我が少し様子を見に行く。無いとは思うが、戻らなければ後は頼んだ」

眼鏡を押し上げると、ライフル銃を構えて低姿勢を保ちながら気配を絶つ。
何度もサバイバルゲームでこういう状況は潜り抜けて来た。
野生の動物並みとは言わないが、距離を保てば相手に気づかれる事は無いだろう。

まずはB地点近くへと赴くと、暗視スコープを掲げる。
こちらは…木の上にいるな。
リンとライトニングと言ったか。一人は余裕綽々で寝ている。
もう一人はその横でライトニングの頭に……石を積み上げている?
どちらとも余裕でいけすかんな。

次はC地点。
残りを考えるとこちらに九鬼、神功、エルがいると予想はしているが…。
暗視スコープを構え辺りを見回すと、驚愕的な光景が目に映った。

人影が向き合って…か、絡みついている。

あ、あれは…九鬼、か?銀髪の髪はきっとそうだ。
そしてその九鬼に抱きしめられているのは、顔は良く見えないが、神功だろう。
二人はまるで恋人の様に顔を寄せ合い、身体を絡めている。
なんと破廉恥な奴らだ!こんな場所で何をしているのだ!!
というかこいつらは闘う気が無いのか!?

顔が熱くなり身体が震えてきた所でハッと我に返る。
いかんいかん。
と、とにかく陣地へ戻ってエイドスと皆の者に連絡せねば。
噴き出した額の汗を拭いながらその場を後にすると、無線の電源を入れる。
一度咳払いをすると、言葉を続けた。

「こちらラウンド、B地点にライトニング、リンが二人いるのを確認。
ライトニングは寝ていた。リンは起きてはいたが、特に目立った行動は無い。
…し、C地点は、九鬼と神功と思わしき人物がいた。
こ、こちら…………も、特に変わった行動は無し……。
エルはいない様だったが、姿を隠している可能性もある。
B、C共に余裕そうな雰囲気だったがな。……以上だ」

……さすがに「九鬼と神功が絡み合っている」などとは言えぬ……。

  [newpage]
【ウェリントン】

頭がくらくらする。
眠気は無いんだけど、疲労が溜まっている。
後、いつ攻め込まれるか分からない弄り殺される様な緊張感。

「おつかれー、ラウンド。」

ラウンドが無事帰ってくるとホッと息を吐く。
こんなときに一番嬉しいのは仲間が生きていることだからだ。
ラウンドから状況報告を聞く限りこの周辺に全てのメンバーが集まってきているようだ。
と、なると、可能性が高い作戦が二つになる。

『そっか………。
このまま攻め込まれるか…、いや、さっきもイデアは保守的だった、それを考えると、神功の奇襲が失敗したこと、今回の奇襲が失敗したこと、
その二つを考えると陣地を多く取ってタイムオーバーの作戦の方が色濃い…よね。

ありがとうラウンド、やっぱり日の出まで待とう。
ウェリントンの、いや、会長の特殊能力は夜に使うには危険すぎる…』

重ね重ね危険だと言われるこの能力は確かに危険と言えば危険だ。
そして僕は数回しか使ったことが無い。
なぜかと言うと、全員が必死に止めるんだ。

小さな僕にとってはとーっても大きくなれてかなり爽快なんだけどな。
どうしてか分からないけど、僕が大きくなることが嫌みたいだ。
皆でかいからってずるい。

それでも、皆が嫌がることは極力したくないので、言われるままにしているんだけどな。
それにしてもラウンドの顔が少し赤い。

僕がジーッと彼を見つめていると。
こっちを見るなり更に真っ赤になった。

……体調でも悪いのかな。

それよりもこの吐き気がするほどの緊張感から抜け出してはやくお風呂に入りたいな。

   [newpage]
【九鬼】

うん!我ながらフェイクの左千夫クン土人形は良い出来だ!
そこら辺の長い蔦で長い髪の毛を表現し、瞳には赤茶色の石を嵌め込んだ。
口元はいつもボクに愛想がないので、微笑ませておいて、ちょっと頬も染めておいた。
本物の左千夫クンが脱ぎ捨てて行った衣服をまとわせ、頭はヘルメットをかぶってなかったので僕のヘルメットを被せている。
本物の左千夫クンには敵わないけど、ボクとしては最高の出来だ。

「左千夫ク~ン♪ちゅ~♪」

そう言いながらぎゅっと抱きしめ口元へとキスを落とす。

「ぺっぺっ!やっぱ土はダメだな……」

そう言いながら口元を拭くと敵陣へと視線を戻す。
さっき一匹子猫ちゃんが迷い込んでたみたいだけど、今ので十分騙せたかナ。

短く息を吐くと、左千夫クン土人形と肩を組んだ。

今左千夫クンはこの場所にいない。
さっきまではいたんだけど、イデちゃんの指示である物を採りに出て行ってしまった。
そしてボクは彼のフェイクを用意しておけと言われたので、この土人形を作ったわけだ。
今は身体的な能力以外は使えなくなっているので、もちろんボクの能力も使えない。
能力が使えたら本物と見分けがつかないぐらいに精巧な物を作れる自信があるんだケド。

あーあ、左千夫クン早く戻ってこないかナ。

そう言いながら、僕は何度目かの手榴弾を敵地へと放りこんだ。

  [newpage]
【オーバル】

とーっても嫌だけどウェリントンが奥の手。
会長の能力を使うみたいだ。
普通に使う分はいいんだけど、いや、僕達は普通に使うだけでもいやだけど。
と、取り合えず、裏、と呼ばれる状態にはいっちゃうととーってもヤバい能力なんだよね。
理性を失った巨体になっちゃうから手がつけられない。
と、言うか、捕まえるのが大変。

それに乗じて基地を乗っ取られても困るしね!
エイドスの判断は間違ってなーい!

「うっわー!!!もー、またかよー!!この手榴弾ちょーびびるんですけど!!」

ドォォォンンっと大きな音が鳴り響く。
僕達の居る中枢までは届きはしないんだけど、けど!!とーってもいやだ!
攻めてきたみたいで神経が削がれる。
その音や人の気配を感じる度に臨戦体勢へと入るので気力の消耗が激しい。

何度目か分からない汗を拭う仕草。
でも、それももう終わる。
とーっても長かったけど、後15分ぐらいで夜は明けるだろう。
東の空が白み始めた。

「ウェリントン、そろそろ用意しろ。…我も用意しておく。」

ラウンドはそう言うと武器庫へと向かって行った。
そして、ウェリントンは集中し始める。

「Long long time ago……」

僕達の会長の能力はちょっと特殊で。
解除してくるこの手まりを食べないといけない。
手まりと言ってもそこまで大きくないし飴細工のようなものらしい。
そうしている間にラウンドも戻ってきた。

後、少し、後少しで一気に逆転だ。
ゴクリと大きくつばを飲み込んだその時だった。

確かに今が一番緊張の糸が切れていたかもしれない。
僕達の眼の前に無数の手榴弾が投げ込まれて行く。
先程みたいな牽制では無い。
一つではなく、何個も何個も。
でも、大丈夫此処までは届かない。
その時、太陽がのぼった。

「「ウェリントン!!」」

僕とラウンドが同時に叫んだ。
その時だった、視界がぐらりと揺れた。
あれ、おかしい、僕は座っていた筈なのに目の前には地面が映っていた。
そして、その目の前にウェリントンの持っていた手まりの飴が転がってきた。

“試合終了 勝者 愛輝凪高校!!”

そのアナウンスが入った瞬間僕達の魂は無理矢理肉体へと戻された。

後から知ったんだけど、無理矢理戻って正解だったらしい。
そうじゃないと僕達はスクウェアのようにのたうちまわっていただろうから。

[newpage]
【光】

僕達が……勝った!!

“試合終了 勝者 愛輝凪高校!!”

「やったよイデア!勝った!!」

そのアナウンスが聞こえた所で、僕は思わずイデアに抱き着いてしまう。
イデアは僕に抱きしめられるままに、「当たり前ダ」と一言だけ呟いていた。
やっぱり機械なのか、抱きしめた身体は硬くて冷たかった。
もしイデアに感情があるとしたら、今、どんな気分なんだろう。

決着のつき方はこうだ。
イデアの指示で、左千夫はD地点の毒を採取しに行っていた。
それを特殊な手榴弾に詰め込み、毒ガス爆弾のようなものを作り上げる。
毒に耐性があるのも、こんな事ができるのも、左千夫だけだろう。
そして、手榴弾を投下し続けていたのも、この毒ガス爆弾を投げつけるための前置きだったに過ぎない。
イデアはあちらが仕掛けてくるなら明け方だろうと言っていた。
だからそのタイミングで爆弾を投下したんだ。
それがビンゴだった。
そして僕達は一気に勝利を手にした。

イデアは多分、左千夫をD地点に置いた時からこの結末を考えていたのかもしれない。
途中はすごくハラハラしたけれど、結果良ければ全て良しだ。

イデアと共に左千夫達の肉体がある場所へと降り立つ。
皆はもう精神が身体に戻っていたのか、それぞれ身体を解しながら立ち上がっていた。

「左千夫!おめでとう!」

一番最初に左千夫の元へと駆けて行くと、すぐにライトニングが不貞腐れたような顔をした。
頑張ったのは左千夫だけじゃないよね。

「ライトニングも、皆もお疲れ様!」

そう言うとライトニングは機嫌の良さそうな表情をした。
チュマールは一人だけ絶叫しながら何かを探していたみたいだけど、もしかしてクローバーかな。

まだまだ僕が学ばなければいけない事はいっぱいある。
動物達の指示もそうだし、闘う経験だって積まないといけないだろう。
今回は反省ばかりだけど、でも、楽しかったな。

僕が自然に笑みを零した所で、明雷鳴高校からイデアの名前を叫ぶ声が聞こえた。

   [newpage]
【エイドス】

「こんなので勝ったと思うなよ!!イデアロス!!
今回はたまたまお前の駒が良かっただけなんだからな!!
その、神功左千夫なんて、反則だろ!!
なんだよ!そいつ!!…毒が効かないなんて…しかも、新種の毒なのになんで…
それに、こっちの暗号の解読スピードもおかしいだろ!!」

競技が終わって直ぐに競技中のデータは僕に転送された。
そうするとイデアの動向、会話内容、フィールドの全容などのデータが僕の回路に送られて行く。
このバーチャル空間の即死地帯、4とDに有った毒はまだこの地上では生成に成功していない毒だった。
バーチャルだからこそ摘出できる毒。
それなのに、この目の前の男は死ななかったんだ。
そんなことが有りうるはずが無い。

……そうか…コイツは、九鬼が言ってた、最下層の…。

ギリっと親指の爪を噛んだ。
いくら神功が戦闘の為に育て上げられた個体だとしてもまさかこれほどに場馴れしてるとは思わなかったからだ。
その時にイデアが大きく溜息を吐いたのが見れた。

「負けを認めロ、エイドス。それだからオマエは成長シナイ。
今回は、オマエの作戦ミスだ、サチオが戻るまでに奇襲を仕掛けていたら勝てたカモナ。」

「うるさい、うるさい、うるさーい!!出来そこないのくせして!!!
お前が出来そこないだらか、僕にこんな回路があるんだ!!
お前のせいで、お前のせいで…!!」

頭が熱い、意味が分からなくなってきた。
思考がショートする。
どうして、僕がこんな目に合わないといけないんだ、僕が僕が…!!

後ろから明雷鳴の奴らがこっちに向かってきている。
こういうときはこいつらが鬱陶しいと思う。
誰も僕の気持なんて分からない癖に。

その時だった。
僕の眼の前に急にイデアの手が現れた。
グーに握られたイデアの拳は本体から外れロケットパンチのようにとんできている。
そして、それは僕の顔面にヒットした。

ゴツーン!と、金属音を響かせながら僕はその場に仰向けに倒れた。

   [newpage]
【九鬼】

「クリーンヒット!!」

思わずエイドスにイデちゃんのロケットパンチがお見舞いされた所でそう叫んでしまったが、周りは呆気にとられていた。
エイドスは大きな音を立て地面に倒れると、ショートを起こしたのか口から煙があがっている。

「エ、エイドス!!」
「ディアドロップ!!」

ローレンツや明雷鳴の連中がエイドスに駆け寄り声をかけたが、エイドスはよく分からない機械音声を呟くだけだった。
全員一体何故こうなったのかと呆気にとられている。
イデちゃんはロケットパンチが自分の腕に戻ると、ガチッと嵌めるような仕草をしながら何事もなかったかのように腕を回した。
ふるふると震えているローレンツが、イデちゃんを睨むような仕草で顔を向ける。

「ヒューマノイド!貴様何故こんなことをした!」

「日本には体罰での制裁というモノがアル。
ウルさいガキには鉄拳を食らわせれば自然と黙ルと言うオモシロイものダ。
安心しろ、壊してはイナイ。いずれ自己回復機能で目は覚めるだロウ。
目醒めた時は、色々とナニカを失っテいるダロウガナ。
……何ならオマエも食らうか、ローレンツよ」

そう言って無表情でローレンツへと向けるイデちゃんの目は真っ赤な目が輝いていた。
さすが二人目の赤い目の悪魔。

イデちゃんも多分エイドスが鬱陶しいと思ったんだろう。
いや、彼女はプログラムとして「エイドスが壊れている」と察知したのかもしれないが。
ボクはエイドスにももちろん思い入れがあったので、少し可哀想だなと思いながらも仕方ないかと小さくため息をついた。

そんな時、窓からこの部屋の外を走るなゆゆ達が見えた。
酷く焦っていて、こちらではなくどこか別の場所を目指しているようだ。

こちらに気づくと、この部屋のドアへと近づいて来る。
そして、重い扉を開いたと同時に、なゆゆが珍しく叫んだ。

「…麗亜高校が……ッ、大変です!!」

   [newpage]
【ライトニング】

光に褒めて貰えた俺は少し、いや、かなり気分が良かった。
でも、光の一番は左千夫だ、それは良く分かってる。
チュマールも相手の奴らも死ぬ時に一撃だったからか、頭や喉を押さえてはいたがそれほど肉体に返ったときの支障は無かったみたいだ。
まぁ、チュマールは違う理由で絶叫しては居たが。

そんなことをしてる間にヒューマノイド同士が喧嘩を始めた。

オイオイ。
お前ら人間みたいなことすんだな。
いや、でも、そっこー決着ついたけど。
この、イデアって人形強いんだな。
命令も的確だったし。

ま、それは光が補佐に居たからだけどな!!

そして次は廊下が騒がしかった。
いや、騒がし過ぎだろ!地区聖戦決勝だぜ!!試合で白熱とかだったら分かるけどこんな外まで騒がしくなんのか!?

「…麗亜高校が……ッ、大変です!!」

そう告げたのは愛輝凪で戦力外の那由多だった。
大変ってなんだよ、大変って。
俺達動物は特に反応しなかったけど直ぐに左千夫が動き始める。
こいつの状況判断能力の速さは獣以上だ。
つーか、はっきりいって気持ち悪い。
言うならば獣が人間以上、いっちまえば機械なみの頭脳を持った感じだ。

「エル、僕についてきなさい。
後は、各々休んでおいてください、バーチャルは僕が出ますのでその後またよろしくお願いしますね。」

それだけ告げると左千夫と九鬼、そして、エルは出て行った。
俺は泣きながらすり寄ってきたチュマールを殴り飛ばすと引き摺るようにして食堂へと向かった。
勿論リンはちゃっかりついてきてる。

つーか、お前の主人は九鬼だろ?
いいのかよ。

その意志を込めながらリンを睨んでみたがニコニコしているだけでのれんに腕押しだった。
俺は溜息を吐きながら茫然としている明雷鳴の連中をほって部屋を後にした。

  [newpage]
【千星那由多】

麗亜が大変だ。

そんな言葉しか会長達に告げる事ができなかった。
何より今は説明している時間は無い。
麗亜の奴等の肉体がある場所に一刻でも早く駆けつけたかった。
俺なんかが行ったってどうにもならないけれど。

すぐに会長達とその場所へと駆けつけると、悲痛な叫びや女子の泣き声が聞こえていた。
ガラス張りのドアから見えるその光景は、恵芭守が羅呪祢と闘った後の光景と酷似していて、胸が酷く詰まった。

会長がすぐにドアを開けると、サバイバルで闘っていた西園寺さん、黒部さん、華尻、不破さん、堂地さんの周りに、他の仲間が泣きながら寄り添っている。
サバイバルに出場していた華尻達は、肉体に戻っても痛みが続いているのか、身体を押さえながら呻き声をあげたり、のた打ち回っていた。
そして、その向こう側に、今の光景を何とも思っていない羅呪祢高校の奴等が佇んでいた。

視界の先に広がる光景に、身体が動かない。
先ほど見た悲惨な映像が、フラッシュバックのように頭に流れていく。

「晴生君、那由多君、柚子由……何があったか話す事はできますか?」

会長は羅呪祢の奴等に視線を向けた後、こちらに振り返り尋ねた。
その赤い瞳に射抜かれるように見つめられると、しっかりしなければと我に返る。
息を一度大きく吸い込むと、俺達は何が起こったかをゆっくりと話始めた。


----------------------------------------------------------------


【那由多回想】

俺は晴生と一緒に麗亜高校対羅呪祢の試合を覗きに来ていた。
先に見ていた三木さんと合流すると、ソファへと座り込み画面を見つめる。
こちらは陣地の取り合いにはなっているようだったが、今の所誰も死んでいなかった。
羅呪祢は恵芭守の件があったので、どんな事を仕掛けてくるか気になっていたんだけど…。
麗亜も強いから、そこはなんとかなってるみたいだ。

画面に映る麗亜の女子達を見ていると、本当にこの高校は「闘う乙女」なんだなと実感し、そして感心してしまう。
華尻も顔どろっどろにして頑張ってんな。
もうアイツ男じゃん。

そんな事を考えながら、暫く動きの無い画面を見ていた。
時刻ももうタイムアップまで近づいているので、どちらかが仕掛けるならそろそろだろうか。
それにしても眠い。
晴生や三木さんはそんなに眠そうじゃないんだけど、俺は眠い。

大きく欠伸をかまし目を擦ったところで、部屋にけたたましい雑音交じりの奇声が響いた。

『きゃぁああああああッッ!!!!』

「!!??」

すぐに画面に視線を戻す。
さっきの叫び声は明らかに女子の声だった。映っているのは……誰だ?
いや、それよりも……。

「な、なぁ、晴生……これ、スプラッタ映画に……変わってない、よな……?」

画面に映る先ほどまでとは違った残酷な映像に、俺は思わず晴生に尋ねていた。
そんなわけは無いとわかってる。
でも、余りにも酷い光景に、俺の思考はついていかなかった。
画面には、羅呪祢高校の男に、身体を甚振るように滅多刺しにされている……麗亜高校、黒部さんがいた。

『いだぃっ!やめっ!あ゛ッ!!』

三木さんは耳を塞ぎ画面から顔を背けた。
俺は、何故か視線を逸らすことができずにただ呆然とその光景を見ていた。

何が、起きた?
これ、サバイバルゲームだよな?
ていうか、おい、なんで、そんな嫌な殺し方してんだよ。

『きゃああああああッ!やめなさい!!い、っ、あ゛ぁああああ!!!』

続いて画面に映ったのは西園寺さんだった。
抵抗するように暴れているが、それも虚しく足に銃をぶち込まれている。
飛び散る血しぶきが画面を汚し、叫び声だけが聞こえていた。
耳を劈く喚きが聞こえても、俺の思考は一向に今の非現実を受け入れられない。

そこから画面に羅呪祢高校に襲われている、麗亜高校の女子達が映って行く。
羅呪祢の奴等は、まるでじわじわと殺すためにあえて急所を外しているようだった。
そして、最後の画面に映ったのはオレンジ色の髪の……。

「華、尻……!」

俺はその画面から目を逸らす事ができないまま、ゆっくりと血に染まっていく華尻を見ていた。
暴れる華尻の膨らんだ髪が、花のようだった。
どんどん抵抗の色が無くなり、瞳の光が失われて行く。

その光景は、口では現すことができない。
ただの、絶望だ。


   [newpage]
【神功左千夫】

那由多君から詳細を聞くと現状を全て把握できた。
僕の想像通りの内容に自然と眉が寄る。

「こんな……酷い…」

柚子由が小さく言葉を落とすと向こうの副会長が一歩こちらに出てくる気配がした。

「酷い?それは心外な言葉ですね、これも―――」

「戦略のうち、でしょう?
誰も君に言葉等求めてはいません、試合は終わったのです、さっさと部屋に戻って休まれてはどうですか?」

その副会長の言葉を遮るように僕は言葉を続ける。
今はこんな奴らと会話している暇は無い。
ここの十輝央兄さんが居なかったのがせめてもの救いか。

確かにここで精神崩壊させてしまえば後の試合に出れるメンバーが少なくなる。
それは間違ってはいないのだが。

溜息と共に背後の気配が外へと散って行く、僕は精神的なダメージが一番大きそうな華尻唯菜に近づいた。

「……当たり前ですが、肉体損傷は無い。
と、なると、エルの能力での治療は難しいですね…、それにしても状況があまりよくない。
柚子由、お前も他のメンバーと精神を同調させて痛みを柔らげてあげなさい。」

僕には肉体損傷を直す力は無いが、精神なら崩壊させることもできるし、安定させることもできる。
ただ、ここまで崩れているものや、恐怖を取り除くのは難しい。

自分を抱くようにしてもがき苦しんでいる華尻唯菜の額に手を置くと現状の痛みを和らげるように優しい気配を送って行く。
その時だった、明雷鳴高校の会長と副会長がこちらへと入ってきた。
どうやら彼らも僕等の後を追ってきたらしい。

「状況は聞きました。僕らにも手伝わせて下さい。
僕の能力なら可能だと思うのですが…受け皿が必要なんです。」

ウェリントンと呼ばれていた生徒が僕の直ぐ横に来た。
そして本を手にすると解除の言葉を口にする。

「Long long time ago…」

ウェリントンが解除スペルを唱えると本は消えてしまったが、彼に何も変わったところは無く思える。
腰には幾つもの瓶が巻きついていたが。

「僕は、感覚を飛ばすことができます……ただ、先程も言った様に完全に取り除くには受け皿が必要なんです。」

彼が言うには、彼の能力で痛みや恐怖を体から飛ばすことができるらしい。
ただ、受け皿が無いと宙に漂う形になるので一定時間後元に戻るか、全く知らない間になにも関係ない人間にその痛みや恐怖が移ってしまうと言うこと。

「それならば、僕が引き受ける!
だから、はやく皆を解放してやってくれ!」

鳳凰院しのぶが胸に手を当て自分を指し示している、しかし彼女が受け入れても次は彼女が壊れてしまって何も解決しない。
僕は大きく溜息を吐いた。
ウェリントンと鳳凰院しのぶの間に割って入る。

「待ちなさい。それは僕が引き受けましょう。」

「な!君は他校だろ…これは我が高の…ッ!!」

面倒だ。
只でさえ僕は今色々立てこんで苛立っているんだ。
悩ましい課題がいくつもあるのにこんなところで時間を食ってられない。

「力量と経験を弁えなさい、鳳凰院しのぶ。
ウェリントン、全員の痛みと恐怖を僕へと飛ばして下さい。」

「それじゃあ、かたまり過ぎないか?」

「大丈夫です。まぁ、あそこにもう一人大丈夫そうなのが居ますが、この後を考えると僕も余り戦力を削ぎたくないので。」

僕はチラッと九鬼を見てからウェリントンへと視線を戻した。
すると彼は深く頷いてくれた。
僕は携帯をブレスレットの形へと変化させる。
彼の手がふわりと小さな光に包まれているのが分かる。
そこまで見たところで僕は目を閉じた。

それが正解だったと気付いたのは全てが終わった後だったが。

   [newpage]
【九鬼】

また厄介な事になっているみたいだ。
この間から羅呪祢の人は面倒な事をしてくれるネ。

そしてその厄介事を引き受けてしまう左千夫クンもボクから見ればお人好しだ。
少し苛立っているようにも見えるけど。
ま、この中で一番受け皿に適任なのは彼か。

そんな事を考えながら壁に背をつけて状況を見守っていると、左千夫クンがこちらへと視線を向けた。
もう一人大丈夫そうなのって…完全にボクの事だよネ。
ガラスみたいに繊細な心のボクに、恐怖や痛みなんて受け止められるわけないじゃん。
と、思ったけど口にすれば余計巻き込まれそうなのでやめておいた。

明雷鳴の助副会長のウェリントンくんが能力を発動する。
資料で情報は得ていたが、少し特殊な回復能力みたいだ。
ウェリントンくんは男にしておくのは勿体ない容姿だ。
さぞかしこの回復能力もかわいい感じなのかと思ったが…それは完璧に覆された。

「い た い の い た い の と ん で け」

目を見開いたウェリントンくんの表情は、かわいらしい彼から想像もつかない程に放送コードにひっかかっていた。

「ぎゃひぃいいいいいい!!!」

ウェリントンくんの能力発動と同時に、叫び声があがる。
これは左千夫クンの声ではない。
何故か明雷鳴の面々が各々に膝をついたり、顔を覆っている。

「ああ……俺の天使が……!!」
「ひ、ひぃいいい……!!ウェイリントンカムバック……!!」

間違えて左千夫クンではなくこいつらに痛みや恐怖を飛ばしたのかと思ったが、どうやら違ったようだ。
ただ単に、明雷鳴の奴等はこの能力を使っているウェリントンくんが怖いのだろう。
まぁ確かにあの顔はダメだネ。

明雷鳴の面々が叫びをあげている内に、左千夫クンの身体に痛みや恐怖が移ったようだ。
彼の見た目ではわからなかったが、麗亜の女子の呻き声が聞こえなくなると、ぐったりと静かになった。
ウェリントンくんの表情も元のかわいい表情に戻ると、小さく息を吐く。
うん、確かに天使だな、普通の時は。

「終わったよ。
……でも、あれだけの恐怖や痛みを移したけど……神功君は大丈夫なの?」

「この類いの痛みなら誰かさんのところでも毎日受けてましたからね」

そう言った左千夫クンの「誰かさん」と言うのは明らかにボクだろう。
苛立ってるからってさっきからボクに口撃しないでよネ!

口先を尖らせながら、少し落ち着いたであろう麗亜の様子を見渡した。

  [newpage]

【日当瀬晴生】

珍しく会長がご機嫌斜めだ。
その矛先は全て九鬼に向かっているから問題は無いが。

それにしてもあれだけの恐怖や痛みを受け入れて眉一つ入れない会長はやっぱ化けもんだな。
確かに、会長は特殊能力で精神体になれるため、その苦痛が本体に移ることへの耐性は高いんだろうが。
後は、会長が育ってきた特殊な環境も痛みに強い要因の一つか。

「すまない、なんと礼を言えばいいか。」

「いいです、いいです。こういうときはお互い様ですから、じゃ、皆…って、あれ?」

鳳凰院がウェリントンに礼を言っていた。
そのあとに明雷鳴(アライナ) 高校の奴らを振りかえっていたけどまぁ、見事に総崩れだった。

まぁ、崩れたくなるのも分かるがな。
あの、回復時のウェリントンの顔はなんていうか、吐き気を催すと言っていいのか。
なんとなく俺でも明雷鳴の奴らが言いたいことがわかる。
会長の奴は目を閉じていたからか、現状が把握できて無いようだ。

「もー、皆なにやってるの!体調が悪いなら回復するけど…?」

「ヒィィィィ!!大丈夫です!!」

「間に合ってますー!!!」

「じゃあ、行くよー。」

そんなやり取りと共に明雷鳴の奴らを引き連れてウェリントンは帰って行った。
あそこはあれだな、うちとは違って副会長のウェリントンが纏めるポディションなんだろうな。
どの高校にも特色はあるが、何にしろ会長と言うものは必要な存在。
ただ、羅呪祢の会長だけは開会式にもこの場にも現れて無かった。
予選も戦闘を行った形跡はない。
そのことに違和感を覚えているのは俺だけではないだろうが。

「神功君。この借りは必ず返すからね。」

「楽しみにしています。それでは皆さん戻りましょうか、次の試合までもう時間がありません。」

そう言って会長がこの場を後にしたので俺達はその後へと続いた。
勝負はやっぱり会長達が勝利を収めたようだ。
そして、次はコントローラーバトル。

「操作は練習通り那由多君に任せます。
本当は僕がでるつもりだったのですが、僕は少し休みますね。
なので、九鬼、出場お願いします。」

歩きながら次の説明をした後、全員解散となった。
会長と九鬼は食堂へと向かったようだったが、俺達はもう済ませたし、そんな気分にもならなかった。

闘志漲る面持ちの千星さんの両手を俺は握った。

「俺、期待してますから!!!千星さんの華麗なコントロールさばきをみるの楽しみです!!」

勿論俺はキラキラと目を輝かせながら彼を見つめた。
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