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isc(裏)生徒会
コントローラーバトル・明雷鳴戦②
しおりを挟む【光】
僕は今、左千夫と柚子由と一緒に麗亜高校と羅呪祢高校のコントローラーバトルを見ていた。
ゲームみたいなバトルで純聖が喜びそうなバトルだ。
左千夫は僕の隣で槍を持ったまま座りながら寝ている。
さっきのサバイバルゲームでの毒をなじませてるらしい。
だから声はかけてない。
でもなんで武器をもったまま寝てるんだろう。
麗亜高校は、秋葉と言うオタク?みたいな女の人が操作していて、操作されているのは園楽という男の人だった。
この高校は女の人が多いみたいで、男の人はこの人しかいないらしい。
そして羅呪祢高校は、操作しているのは左千夫とは正反対な風貌の阿弥陀という男の人だった。
ここは仏教系だって聞いてるけど、あの人はなんか違う気がする。
そして操作されているのは二人いる。
一人は歌棄と言われるでっかい男の人。なんかすごく下品な感じで見た目だけでも僕は苦手な部類だ。
そして、もう一人は神功十輝央。
この人の名前は知ってる。左千夫の義理のお兄さんだ。
姿を見たのは今が初めてだけど。
でも何故羅呪祢にいるのか僕は知らない。と言うか、聞いちゃいけないような気がして聞いていない。
このコントローラーバトルでフィールドに立てる人数は関係ないらしい。
だから羅呪祢は二人操ってる。
もちろんそれを一人で動かされるのであれば、という事みたいだけど。
それを簡単にやってのけているから、羅呪祢の阿弥陀という人はすごいのだろう。
ちなみに全部携帯で操作してるようだ。
しかも両手の二個持ち。
あんなに両手の指を器用に動かせる人、初めて見た。
「すごいなぁ……」
思わずそんな言葉が出たけど、劣勢な麗亜高校の秋葉って女の人も頑張ってた。
持っているのは携帯式のゲームみたいだ。
たまにこっちをチラチラ見ては「ショタチャージ!!」とか言ってるけど、僕何かしたかな…。
【三木柚子由】
十輝央さん…。
今、目の前で戦いを繰り広げているのは間違いなく彼である。
しかし、いつもの彼の雰囲気は無く殺伐としていた。
彼はこんな私でも言葉を話せてしまうほどの優しい雰囲気の持ち主なのに。
記録端末と一緒に持ってきた、ずっと渡しそびれている手紙を握り締める。
もう、これを十輝央さんに渡すことはできないかもしれない。
二対一なので、園楽さんのゲージが先に溜まったみたい。
「ンフフ…行くぞよ!!必殺、しゃぶれない位にでかい球!!」
「その技名はだめっていったのに!!」
秋葉さんが必殺技の名前を叫んだと同時に園楽さんが光に包まれた。
園楽さん、とっても恥ずかしそうだったけど何かあったのかな。
コントローラーバトルはゲージが溜まった必殺技を使うと容姿が変わる仕組みになっている。
左千夫様も髪の色と服の色が変わるけど。
あれ、ちょっと身長伸びたかな?
次の瞬間私の中の感情が制御できず、パソコンのキーボードを無駄に深く押してしまった。
意味不明な記号が画面に並んでいく。
ドス黒い感情が押さえきれずに渦巻いていると光君の声が聞こえた。
「わ!柚子由!!どうしたの!?どこか、痛い?」
光君が恐る恐る私を覗きこんできた。
そこで私はハッとして、横で仮眠を取っている左千夫様へと視線を向けた。
「す、すいません。何でも無いです!!」
急いで入力してしまった無意味な言葉と記号を消去していく。
あれは秋葉さんの罠だって後から理解した筈なのにな。
だって、今の園楽さん、砂浜で偽物の左千夫にキスした姿にそっくりだったから。
その園楽さんは大きなシャボン玉に体全体が包まれて行った、そして、それが薄い膜を張る様に体に密着する。
よくわからないけどダメージを吸収して、更に動ける様になったってことなのかな?
「デュフフ…デュフフ…イメージ通りのホモキターーー!!!」
秋葉さんの言葉と共に園楽さんが走り出した。
[newpage]
【園楽あたる】
ほんとに……。
秋葉が俺を操作することに異論は無いし、麗亜の中で唯一ゲームをこなせるのが彼女だけだから仕方なかったけど…結構やりにくい。
まぁ俺は操られるままでいいんだけどさ…あの必殺技名は無いだろ…。
俺の姿は今多分超美化されてる。
そして、僕の能力のシャボン玉が身体に貼り付くと、攻撃をガードできるので所謂無敵状態と一緒だ。
羅呪祢で操作されているのは二人。
歌棄君と神功十輝央君。
さっきのみんなの件もあるから、ここはどうしても仇を取りたいところだ。
キッと二人を睨みつけると、秋葉が能力コマンドを打ちこんだのか、手元にスケッチブックと鉛筆が出て来る。
彼女の能力は描いた絵を三次元化すること。
描く物がまた彼女の趣味に走るかもしれないのが少し怖いが、俺はどうすることもできない。
スケッチブックへと視線を落とすと、俺の右手はスラスラと絵を描き始めた。
そこに描かれた物に、俺は眉を顰める。
なんで、今これだ?
手元のスケッチブックから飛び出したのは、何故か…………たて笛だった。
「放課後の教室で好きなあの子のたて笛ぺろぺろォオオオオ!!!!
そんでもって貴様のアナルに突っ込んでやろうかぁああああ!!!!
園楽副会長の好みはパーマの君ッ☆」
「だーッ!!だからこういう時に誤解を招くような事言うのやめてくれ!!」
断じて俺は男が好きなわけでもないし、パーマの…神功十輝央君の事をそんな目でみていない。
そんなやり取りを俺は口だけでしながら、身体はそのたて笛を持ったまま神功君へと突っ込んで行った。
アナルにじゃなくて体当たり的な意味で。
距離が少し縮まった所でたて笛が振りかざされると、何故か勢いよく伸びて行く。
それを地面に突きたてると棒高跳びの様に宙へと舞った。
再び縮まったたて笛を横へと振りかざすようにすると、それは神功十輝央君を目がけて凄まじい勢いで伸びて行く。
だが、何故か、彼は動かない。
「……?」
違和感を感じた時には遅かった。
神功十輝央君は動かないままにたて笛に左手で触れる。
当たった!!
そう思ったのに何故か僕の振りかざした手は空を切ったように手ごたえが無かった。
その理由はすぐにわかる。
たて笛が、消えている。
「!!??秋葉!何やった!?」
「ほ、ホワッツ!!??」
何故だ。
何があった?
秋葉の返答からして能力を引っ込めたわけではなさそうだ。
そのまま俺の身体は勢いで地面へと落ちていったが、転がる様にして体勢を立て直す。
シャボン玉のおかげで落ちた時の痛みは無い。
すぐに起き上がり視線を神功十輝央君に向けた時だった。
小さく微笑みながらこちらに左手を翳しているのが見える。
その瞬間、身体が脱力した。
いや、脱力というより、何かが取れた感じ……身体に纏われたシャボン玉が……消えた?
「どういう……!?」
考える暇も無く身体が動いた。
秋葉が俺を避難させるように歌棄君と神功君から距離を取ろうとしている。
しかし、それも遅かった。
俺達が何が起きたかわからず手間取っている間に、神功君が攻撃をしかけてくる。
「秋葉!ガード!!!!」
その言葉よりも早く秋葉はガードを取っていた。
神功君の右拳がクロスした腕へと触れる。
その瞬間。
「――――ッ!!!!」
身体中の細胞が沸騰したように熱くなった。
「あ゛ッああああああッ!!!!」
神功十輝央君が触れた腕から、全細胞を揺さぶられているかのような感覚に目の前に光が飛ぶ。
視界がぶれると、体力ゲージが凄まじい速さで減って行っているのがわかった。
[newpage]
【阿弥陀来次】
「アハッ♪ヒーット!!ほらほら、はやく離れないと園楽サン、大変なことになっちゃいますよ~。」
彼、神功十輝央サンの能力は凄いだよね。
甘っちょろい彼の時はこの能力は使って無かったみたいなんだけど、そこは釈迦戸副会長!!
ばーっちり、十輝央サンのやる気にしちゃってくれたみたい!
ま、それもこれも皆、押矢会長のありがたーいお言葉を俺が皆に伝えて、それを皆が実行してるだけなんだけどね!
今回のコントローラーバトルも手段を選らばず勝つことって皆には伝えて置いた。
そう、だから、構ってらんないんだよね。
男子高校生一人の命なんてさ♪
とんでも無い勢いで体力ゲージが減って行く。
ホントに、十輝央サンの能力はポテンシャルが高い。
これがゲームなら間違いなく俺はこのキャラを使うだろーな。
だって、おもしろいじゃん、人間の細胞を揺さぶって、最終的には…ね?
しかも、それだけじゃなくて相手の能力を無効化させちゃう能力なんて、最高じゃん!!
ちょー、使える駒だと思う訳!
それにしてもうるさい悲鳴だねー。
男の子なんだからもうちょっと頑張れよ。
ホント、最近の若者は駄目だなー。
どうやら園楽サンと文子ちゃんは起死回生コマンドの入力を始めたみたい。
だって、俺のキャラ達が動かないもーん。
ゲーム性を重視してるからここで不意打ちー!!とかは、できないんだよねー。
もー、めんどくさーい。
でもね、文子ちゃんの起死回生コマンドは失敗するよ。
だってね。
俺の机の上のこの三つ目の携帯はさ…?
俺は、先程までは一度も弄って無かった携帯のボタンを押す。
毎回思うんだけど、この瞬間ってたまんないよね、不可解なことが起こった時の人間の顔。
そして、俺はまた二つの携帯へと手を戻した。
[newpage]
【秋葉文子】
どういう事ォォォオオオ!?
ずり落ちた眼鏡を直す暇も無かった。
能力が全て打ち消されてしまっている。
そして回避ができずにガードしてしまったのも失敗だった。
園楽副会長が……攻められてるゥ!!!!
いやいや落ち着くでござる拙者!
とにかくこれでは不味い!
体力ゲージはガンガン減って行き、身体がガードしたまま動かない。
あのパーマ男子は攻めだったって事!?
あんなおっとりした容姿なのに、腹黒要因とか萌えるじゃないスか!!
「ぬっふおおおおおおおお!!!!!」
体力ゲージが残りわずかになった所で、園楽副会長の身体が倒れる。
目の焦点が合ってない。
でも意識はわずかに…ある……。
「ご、ご、ごめんなさい園楽副会長…」
だけどまだ負けたわけではない!
ここからの追い上げ、起死回生コマンドがあるんですからー!!!!
仕留められる前に急いで仕掛ける!!
園楽副会長に負担はかかるけど……拙者はこの勝負、勝つって皆と約束したのでござるよ!!!
すぐに拙者はコマンドを打ちこもうとした。
けれど、何故か指が動かない。
「…………!!??」
どういうこと、おかしい。
さっきまで動いてた。
別に動揺して動かないわけじゃない。
本当に、私の意思通りに指が動かない。
「ッ……ふんぐおおおおおおおおおお!!!!」
大声を張り上げても、指に力を込めてもダメだった。
そんな事をしている間に、放送が流れる。
『麗亜高校、園楽あたる、KO』
その音声が聞こえた瞬間、すぐに画面に視線を戻す。
園楽副会長は歌棄走士に腹を踏まれた姿勢になっており、体力ゲージは0になっていた。
…………嘘だ、負けた……。
絶望に打ちひしがれた手からコントローラーは落ちなかった。
まだ、拙者の身体が動かない。
ずり落ちた眼鏡を上げることさえできないのだ。
そして拙者は驚愕する。
まだフィールド上で、園楽副会長が何度も腹を蹴られているのを見て。
いつもならここは萌える所。
でも、そんな事さえ忘れるほどに、全身の血の気が引いて行ったのがわかった。
「ちょっ、待つでござる……っ……おかしい!!誰か!!」
違和感を感じた時に、拙者が早く誰かに助けを求めていればよかった。
歌棄走士が自分の武器を園楽副会長へと向けている。
は?何するつもりだあのデカブツ。
殺す気?は?だ、駄目でしょそれ!!!!
「し、勝負終わった!!園楽副会長!!立って!!やめて!!!!!!!!!」
私の悲痛な叫び声と同時に、何かが視界の端で光った。
[newpage]
【スクウェア】
落ち付け俺!落ち付け俺!!!
起死回生コマンドと言うのは難しい。
言うならば奇跡を自力で起す感じだ。
コマンドも毎回違うし、制限時間も短い。
練習でも五回に一回は必ず失敗していた。
だが、こっからは俺の強みだ。
俺は大会でコマンド入力をミスったことが無いんだ。
そう、俺の心臓には毛が生えている!!
ここぞと言う勝負時にはいつも以上の力が出るんだ。
起死回生コマンドの時だけに現れるディスプレイにボタンが並んでいっている。
俺はそれを一つも間違えず連打していく、そうすることによりローレンツが輝き始めた。
光は大きくなったり小さくなったりを繰り返しながらローレンツを包んで行く。
何度見ても幻想的な光景だと思う。
そして、この時ばかりは相手はコマンド入力ができなくなるんだ。
もう少しだ、もう少しで終わる。
待ってろよ、ローレンツ。
つーか、右と左と上とボタン二個同時押しとか不可能に近いのやめてくれよな!!
鬼の様に記号が流れてくるディスプレイを眺めながら心で悪態を吐く。
そして、俺は最後のコマンドの入力を終えた。
ポワン、と眩い光に包まれてローレンツは立ちあがった。
どうやら成功したみたいだ。
まー、コイツの起死回生コマンドってちょー意味ねーンだけどな。
ただちょっと体力ゲージが回復して、なんつーか、開眼すんだよ、開眼!!
目、開くだけだ。
「……クキ様…?そうか…ゲージ技…の効果…で……。それにしても、…黒い九鬼様もお美しい。」
ホモォォォォォォォォ!!!!!!!!!!
くそ!そんなことを言わすためにお前を起死回生させたんじゃねーんだけど!!!
つーか、今初めて見えました的発言やめろよな!
普通なら一息吐きたいここで、俺は更に重ねてコマンドを打ち始める。
俺が最後に投げたナイフの一刀はローレンツの本を破壊していたので、それに加えてのゲージ技と解放と、俺の能力の移行。
一気に畳みかける…!!
これ以上、HOMOを見たくねぇ!!
[newpage]
【千星那由多】
ゲージ技はローレンツを直撃した…が、ローレンツの体力ゲージはわずかに残っていた。
「しまったっ……!」
防御も間に合わなければこれ一発で終わらすことができたんだけど、明雷鳴高校の会長はさすがだった。
自分の身体がゾクゾクと震えているのがわかる。
「まずいねーなゆゆ」
副会長のそんな声が聞こえたと同時に、スクウェアさんが起死回生コマンドを打ちこみ始めた。
コマンドはデカデカと画面に表示されるので、俺の画面にも見えている。
複雑でゲーム慣れしている俺でも確実に打ち間違えるそれを、スクウェアさんは凄まじい速さで打ち込んでいた。
この間は俺はいくらボタンを押しても副会長を動かすことができない。
所謂、起死回生に持ちこまれた場合、相手が失敗するのをただただ待つだけになってしまうんだ。
自然とコントローラーを握る手に力が入る。
くそ、お願いだ、失敗してくれ。
ゲームで負けたら、俺……本当に何も取り柄が無くなる。
失敗しろ、失敗しろ、…………失敗してくれ!!!!
しかし、スクウェアさんはやはりすごかった。
彼が打ちこんだ起死回生コマンドは、数十秒の速さで成功した。
「…………っ!!」
絶望的だった。
このコマンドが成功すれば、俺が負ける可能性はかなり高くなる。
それに加えてゲージ技とスクウェアさんの能力技のトリプルコンボが発動された。
ローレンツのガタイが見る見る内にデカくなって行くと、副会長が口先を尖らせる。
「……あーらら、勝てる気しなーいヨ」
そうは言われたが何もしないまま終わる事はしたくない。
相手の攻撃力をどうにか抑えるように、副会長の能力で辺りに幾重もの壁を乱立させる。
まともに対峙したら絶対に敵わない。
そのための起死回生だ。
これを狙ってギリギリまで体力ゲージを絞るプレイヤーもきっといると思う。
乱立した壁の表面を棘の様に尖らせ、それが突破されていく間、俺は自分の能力コマンドを打ちこんだ。
間に合わないかもしれない。
ただ、それでも負けたくはなかった。
[newpage]
【ローレンツ】
起死回生コマンドの効果は絶大だ。
明雷鳴の奴らはワタクシの時だけ開眼コマンドと呼んでいるが。
ワタクシにとっては目が見えるようになるから開いているだけなのだが。
起死回生コマンドが成功すると同時に眼球の裏がとても熱くなる。
多分、ワタクシの脳に色や形を送り込むための細胞がそこに形を為しているのだろう。
練習時に何度か成功しているが何度見ても現実と言うのはワタクシに新しい刺激を与える。
それに加えて目の前のクキ様のお美しいこと。
クキ様に感動することによってワタクシに多大な刺激が入って行く。
それは目を閉じている時には感じることが出来ない新しい刺激。
この刺激によってワタクシの幻術は更なる高みへと昇って行く。
三木によって視覚を回復された瞬間は憎悪したものだが今ではよかったと思っている。
ワタクシは一度見てしまった現実に取りつかれ暫くそれに悩まされていたが、それは全て明雷鳴奴らのおかげというか、せいと言うか、取り合えずそれ以上のものを得ることができた。
あいつ等はワタクシに色々なものを体験させた。
熱い炎、熱くない炎、水、氷、水蒸気。
見えないと言っているのに全く信じもせずに色んなところに連れ回されたし、体験させられた。
そうすることによって今まで想像でしか無かったものに輪郭が出来、中に色を塗ることができた。
色々なモノに触れ、色々な感情を伝えられ、色々な考えがあることを知った。
特にここは会長と副会長の仲が悪い。
なんだか、シッターと自分の関係を間近で見ているようで、そうでは無かった。
仲が悪いと言いながらも仲が良かったのだ。
自分とシッターの関係も…いや、止そう。
そんなことをするためにワタクシは日本に残ったのではない。
全ては己の向上の為に…。
スクウェアのコマンド入力は完璧だったのだろう。
目の前に現れた毬の形をした飴細工を口の中に放り込む。
そうすると、ワタクシの体はみるみるうちに巨大化していく。
ただ大きくなるのでは無い、筋力も増して大きくなっていくのだ。
ゲージ技の効果も有り、ポニーテールに結った髪が散らばり、三メートルにもなったワタクシの髪がフワリと舞う。
色の観念が乏しいワタクシはクキ様のように色が変わったりはしない…けれど。
「終わりです、クキ様。」
このコンボが決まってしまえばクキ様は勝てないだろう。
ワタクシに近距離が加わった上に幻術が現実になる。
目の前の壁を拳を握る様にして破壊していく。
飛び散る土の塊の美しさに見惚れるが、動かしているのはスクウェアなのでなんの問題も無い。
この至福な時間を最大限に利用するように視覚に頼る。
そうすることによって今まで頼っていた聴覚への負荷を拭い去り、それを別の場所へと移行していく。
更に動きが速くなるとクキ様を覆う全ての壁を打ち砕いた。
すると、クキ様は先程の気で水を練った様な弾をワタクシへと撃ち込もうとするところだった。
「ざーんねん♪なゆゆはまだ、諦めてないみたいだよ。」
残念ですがクキ様、諦める諦めないの問題では無いのです。
ワタクシが集中すると髪の色が青に染まった。
それと同時に水の塊の幻術を形成する。
しかし、今はこれはクキ様にでも効く程に現実に近い水の塊だ。
ワタクシとクキ様の水の塊がぶつかり合う。
水滴が空から注がれる日光を反射するのは此処まで美しいものなのか。
相撃ちの時点で決着はついたものだ、ここから拳を繰り出してもクキ様に当たる位にワタクシの腕は伸びている。
そのままミチミチと音を立てながら拳を握るとクキ様の動体へと拳を吐きだした。
[newpage]
【九鬼】
うーん、不味い。
これは負けの流れだ。
華奢なローレンツの身体がボクより筋肉質になったのを見つめる。
あれじゃ完璧にバケモノだな。
乱立した壁は簡単に破壊されていった。
なゆゆはまた自分の能力技を使おうとしているのか、今ボクは溜めの姿勢に入っている。
まともに打ち合うのは、さすがにボクの身体でも無理だから、せめてもって感じかナ。
コマンドが成功したのか、ぐっと両拳が後ろに引かれた。
それと同時に、すぐそこに巨体になったローレンツが顔を出す。
おー怖い怖い。
そのままボクの拳は水の球体を放った。
ローレンツも同じような物を作っていたようだけど、威力が明らかに違う。
色々タイミングも悪かったし、スクウェアっちのが一枚上手だった。
なゆゆも頑張ったとは思うケド。
突き出されたお互いの水の弾がぶつかり合うと、衝撃で身体が飛びそうになる。
そこから覗いたローレンツの拳になゆゆは多分気づいてはいただろう。
しかし、ガードなどしている余裕はなかったみたいだ。
ローレンツの拳はボクの突き出した両拳を掠め、ダイレクトに腹へと命中した。
視界が乱れながら、身体が場外へと吹っ飛んで行く。
あー痛い。
「副会長!!」
なゆゆの叫び声と、右端に映っている体力ゲージが青から一気に赤へと下がって行くのを見ながら、全身を駆け巡る痛みに快感が昇って行く。
ボクの身体は体勢を立て直す様子も無い。
そしてそのまま場外の壁に止められるように減り込んだ。
負けたか。
そう思ったが、体力ゲージは0になるギリギリの所で点滅していた。
「起死回生行きます!!」
すぐになゆゆも気づいたのか声をあげると、フィールド場の動きが止まる。
ボクにも見える光るコマンドが視界に現れると、順にそれを打ち込んで行っているのか、弾けるように出ては消えて行った。
さて、ここで成功するかしないか。
それはなゆゆにかかってる。
映し出されるコマンドは、見るのも嫌になるくらい複雑だった。
ただただそれを壁にめりこんだままの状態で見守っていた。
――――が。
流れるように撃ちこまれていたコマンドが、途中で光を失う。
……ひとつ、コマンドを取り逃がした。
止まっていたフィールドの時間が動き始めると同時に、ボクの視界に「起死回生失敗!!」という文字が浮かび上がった。
そして放送が響く。
『愛輝凪高校、九鬼 KO』
[newpage]
【スクウェア】
勝った……。
間違い無くギリギリだった。
あー、この勝った瞬間の脱力感と幸福感たまんねー…。
これだからやめられねーよな!ゲームとか勝負!!
ま、間違い無く勝因は場馴れつーとこだな。
「スクウェア、バタフライお疲れさまー!!」
我らの女神、ウェリントンの声が響く。
と、言うかウェリントンしか祝福をしてくれない。
まぁ、会長と言うものはこんなもんだ。
心が洗われて行く様なこの声…たまらない。
そんなことをしているうちにローレンツが九鬼副会長の元に走って行く。
「クキ様、大丈夫ですか…!?」
いやいやいや、お前が行ったら駄目だろ!!
そこは愛輝凪のメンバーに任せとけよ!!
そして、こっち睨むなよ、ローレンツ!!
仕方無いだろ!勝負なんだからさ!!
ローレンツも九鬼副会長も俺達のコントロール下から離れたので自由に動き始めた。
勿論他の愛輝凪のメンバーも九鬼副会長の元へと走って行ってる。
…あれ…殆ど千星の方へいってねーか?
おい、お前ら…負傷者はそっちじゃねーよ、九鬼先輩だよ!!
まぁ、千星も心はあれかもしれねーけど!!
どうやら、ウェリントンも降りて来たようでローレンツの元へと向かっていた。
ローレンツも起死回生までもつれ込んだんだ、傷は深いだろう。
……て、ことはあれをみるのか。
勝負して直ぐに俺は別の意味で頭を抱えた。
[newpage]
【千星那由多】
…………負けた。
起死回生のコマンドをひとつ、取り逃がした。
画面に表示されたKOの文字と放送に、俺は握っていたコントローラーを落としたことにも気づかなかった。
皆、ごめん。
俺、やっぱりここでも役立たずだった。
虚無感に襲われ、肩を落としたまま視線は画面だけを見ている。
ちょっと行けると思ってた俺がバカみたいだ。
自分に期待するだけ損だってわかってんのに。
「――――た……那由多!」
俺を呼ぶ声に我に返ると、周りに皆が集まって来ていた。
「惜しかったですね千星さん!」
「お疲れ様、残念だったね」
そうやって労ってくれる言葉が、逆に胸に刺さる。
いつも俺が足引っ張ってんのに、なんでこんな優しくされるんだろう。
「……ごめん…………負けた……」
そんな事をぽつりと呟いた所で、画面にいる副会長が動き始めた。
ていうか皆なんでこっちに来てんだよ、俺より副会長だろ。
すぐに席から立ち上がると、副会長の元へと走る。
ボロボロになった壁から出てくる姿は、いつもと変わらなかった。
口に溜まった血を地面へと吐き捨てると、伸びをするような仕草をしてこちらへと視線を向ける。
あれだけ強い攻撃を受けたのに、何とも無いはずがない。
それなのに副会長はいつものように笑っていた。
「お疲れ様、なゆゆ」
「……っ、すいません……いっぱい練習したのに……」
「フッ、クキ様を扱うなど、貴様にはまだ早かったと言う事だ」
何故かローレンツにチクチク痛いところを突かれると、自然と視線が下へと向いた。
確かに、俺じゃなかったらもっと副会長を上手く操作できたかもしれない。
「もーローレンツ何なの?うちの子いじめないでよネ!
なゆゆ、もーいいよ、そうやって落ち込んでても仕方ないし。
やるだけやって頑張ったんでしょ?それならそれでいいじゃん。」
珍しく副会長も怒らなかった。
今回も腹を蹴られるのかと思ったんだけど。
その優しさが逆に辛かった。
「それより結構身体痛いんだよネ~早く治して欲しいんだケド……エルは?」
そう言われて辺りを見回したが、俺達の試合を観戦していたはずのエルはいなくなっていた。
[newpage]
【日当瀬晴生】
千星さんが負けてしまった。
今までかつてこんなに落ち込んでいる千星さんを見たことが無い。
千星さんはコンディションが良くなかった、それだけだ。
つーか、千星さんの繊細なコントロールに九鬼の野郎がついていけなかったんだろうきっと。
それにしても、…自信があったんだと思う。
俺も、千星さんが負けるとは思えなかった。
いや、千星さんが負けたと言うことは他の誰が動かしてもスクウェアには勝てなかったということだろう。
くそ、眼鏡集団の癖してやるじゃないか!
千星さんは直ぐに九鬼の元へと行かれてしまった。
その後ろ姿を見るのが少し切なく思えた。
でも、きっとこれで良いんだと思う。
いつまでも俺が彼を守るように彼の役に立つように前に立てる保証はない。
「エルならさっき走って行ったぜ、ライトニングと一緒にな。…分かった、左千夫とか言ってたから粗方、会長に呼ばれたんだろ。」
エルと言う言葉を聞いたのでさっき視界に入った光景を伝えて置いた。
九鬼の怪我もまーまー重傷だ、回復はあのカエルにしかできないから居ないと困るっちゃ困るな。
「んー……そっか。」
「あ!僕が一緒に回復するよ?」
九鬼はいつも通りに返答しただけだがあれは痩せ我慢してるなと一目で分かった。
天夜がエルを呼び戻しに行こうとしたところでウェリントンの声が掛る。
つーか、コイツ受け皿いるんじゃなかったか?
「オイ、受け皿どーすんだよ。」
「あ、えーっとですね、こういう物理的な損傷には受け皿要らないんです。ローレンツ、先に治すね。
い た い の い た い の と ん で い け」
「ぎゃーーー!!!やめろー!!麗しのー!!」
「お、おかあさーーーーん!!」
ゆ、油断した…。
ウェリントンの悪魔の声と明雷鳴の奴らの悲鳴が会場に響き渡る。
つーか、顔といい、声といいさっきより増してないか、怖さが。
吐き気を催しそうな光景から目をそむけると明雷鳴の奴らが根こそぎ倒れていた。
まさか、コイツ等に飛ばしたのか、と思ったが、それ以外にも競技場の壁に大きなヒビが入っていた。
「物理的な損傷はこんな風に岩に飛ばせるんです。
それと一緒に痛みも取れるんですが、痛みだけ恐怖だけって言うのは無機質なものへは飛ばせません。
多分…岩が痛い、とかそう言うのが僕に理解できないからだと思うんだけど…。
それじゃあ、次は九鬼副会長ですね。」
そう言ってウェリントンは九鬼へと寄って行った。
結局、九鬼の怪我を競技場に飛ばしたことにより競技場はほぼ大破していた。
どんだけ痩せ我慢してたんだよ、アイツは。
そして、ウェリントンは敗戦ムードの明雷鳴の奴らを引き連れて控室に戻って行った。
つーか、負けたのこっちなんだがな。
俺はまだ落ち込んでいる千星さんにどうやって声を掛けていいか分からずにその背中を見つめることしかできなかった。
そろそろ羅呪祢と麗亜の方も決着がついてるかもしれねぇ。
[newpage]
【園楽あたる】
細胞が沸騰するような感覚。
ああ、俺死ぬのかな。そんな事を頭の隅で思った。
(裏)生徒会に入ってこうなる事には悔いはない。
ただ、今全細胞を揺さぶられているのが、他の奴等じゃなかったって事だけが救いだ。
自分の身体が脱力し地面へと倒れ、酷く痙攣している。
秋葉は起死回生コマンドを失敗したみたいだ。
霞んだ視界にKOという文字が現れると、俺達は負けたんだとわかった。
皆ごめんな、絶対仇をとりたかったのに。
腹に鈍い痛みが走る。
頭がうまく動かずに、何故痛むのかもわからなかった。
ただ、その痛みは確実に俺を死へと迎え入れている。
薄く開いた瞼の先に、歌棄君と神功十輝央君の顔が映った。
笑ってる…。
そして歌棄君は俺に槍のような物を向けていた。
ああ、殺されんのか。
なんなんだよこいつら…………うざってえなあ……。
くそ、せめて、もっと副会長らしいことやっておきたかったな。
重くなった瞼が閉じようとした瞬間だった。
金属音の様な物が響き渡ると、俺を刺し殺そうとしていたであろう槍が目の前から消え失せている。
……誰だ?
それを確認することができないまま、俺の意識は暗闇へと堕ちていった。
[newpage]
【歌棄走士】
羅呪祢(裏)生徒会の手助けをすることにより、俺は能力を得た。
地区予選は殆ど動くことを許されなかったのでつまらねぇ。
決勝ですら、電脳やらコントロールやらで俺の自由に人を殺すことはできねぇ。
ああ、でも、…別にいいよなこのまま殺したって。
どうせ、審判のヒューマノイドにも手を回してんだろ、アイツが。
全ては釈迦様のありがたいお言葉通りにな。
コントローラーバトルが終わると同時に俺は自由に動ける様になった。
俺は寝転がったままの麗亜のチビへと近づくとそのまま足蹴りしてやる。
この足裏に肉が当たる感触が溜まらない、はやくこの肉を貫きたくて仕方が無い。
横に居る神功十輝央が冷めた目でこっちを見ていた。
阿弥陀はいつもの表情でこっちを見ている。
ま、アイツに俺を止めることはできないからな。
そろそろ嬲ることにも飽きてきたし、一思いに突き刺して帰ろうと槍の形状をした俺の戟を振り上げたところで、何かが俺の戟を弾き飛ばした。
「ああ!!?何すんだ、テメェ!!!」
飛んできた方向から推測するとそこには確か、愛輝凪の奴らが座っていた筈。
俺が顔を向けるとそこには眼鏡を掛けたチビと、愛輝凪の副会長、そして、俺と同じ武器系統の武器を使う神功左千夫がとてもつまらなさそうにこちらを見ていた。
つか、なんだよ、あの冷めた目は。
俺をバカにしてんのか…?
「上等じゃねぇか…」
俺は戟を拾い直すと神功左千夫へと構えた。
その俺を阻むように十輝央が制止の手を出す。
「ああ!?なんだよてめー!!兄弟だからって庇うのかよ!!」
「まさか。…あんな男兄弟だと思って無いよ。
ただ、君では敵わないよ、左千夫にはね。…それに左千夫を潰すのは僕の役目だから、邪魔しないで欲しい。
それでもと、言うなら……。」
目の前の十輝央が俺の前に立ちはだかる。
ったく、新顔の躾位きちんとしろってんだ。
俺がそのまま槍を構えると阿弥陀の野郎まで口を挟んできた。
「ストーーーップ!!流石に仲間割れはまずいんじゃない?
俺が楼亜ちゃんに怒られちゃいますって!アハッ!
それに、そんなことしなくても愛輝凪とは戦えるんだから~。
ありがたいお言葉もそう言ってるよ。」
ありがたいお言葉。
この言葉に俺は興味が無いがここに居る限りは従わなければならない。
これに反するときは全員を相手にしなければ無くなるからだ。
別に全員を相手にするのはかまわねぇが…時じゃねーよな。
「フン…萎えた、帰るぞ。」
俺は戟を肩に担ぐようにして競技場から去った。
入れ変わりに黄緑の髪をした男がこの部屋へと入って行っていた。
[newpage]
【エル】
サチオの声が頭に響いて、ちょっと来てって言われたから、クキとナユタのコントローラーバトルの途中で抜けてきた。
サチオが呼んでるんだから行かなきゃいけない。
サチオは俺にとって絶対だ!
部屋に入ったところで、槍がびゅーんって飛んでったのが見えた。
多分あれはサチオの槍。
その先に誰か一人倒れてる人がいた。
「サチオ!どうした!俺呼ばれた!」
気にせずサチオの元へと行くと、座ったままでいたサチオは少し怖い顔からいつもの優しい笑みに変わった。
「あそこに倒れてる人を治療してあげてください。
あと、那由多君達はどうでしたか?」
どうやら俺はサチオに頼りにされているみたいだ。
回復なら簡単だ!この舌でぺろぺろするだけでいい。
「わかった!サチオの頼みだから回復する!
ナユタは知らないけど、多分負けた!相手がムキムキになったからな!」
それだけ告げるとサチオ達と一緒にすぐにフィールドにあがっていく。
倒れている男は結構な大怪我だ。
傍には何人か女の人が集まっていた。
「僕は会長失格だ……!」
男の人かと思ったけど、多分声からするとこの人は女の人みたいだ。
涙をたくさん流している。
この人もどこか怪我をしているのかもしれない。
長い舌を出し、そのカイチョウと言う人が流している涙を拭ってあげると、光を放って涙が消えていった。
「!!??」
「お前もどこか痛いのか?でも先にその倒れてる奴を治さないといけないってサチオが言ってる。
俺すごいから治せる!!大丈夫だ!」
カイチョウと言う人は驚いたような顔をしたが、サチオの方を見た後、感謝するように項垂れた。
男の人へと長い舌を伸ばすと、傷へと触れていく。
だいぶ時間がかかりそうだった。
ちょっと死にそうだし。
皆痛い思いをして、何のために戦っているんだろう。
きっと守らないといけないものがたくさんあるんだ。
サチオを救ったあの時の俺みたいに。
[newpage]
【神功左千夫】
回復が出来る能力者は限られているためにエルの存在はとても助かった。
愛輝凪には巽君を除けばエルしかいない。
麗亜は回復系の能力者を有していないのでテレパシーでエルを呼んだのだが…。
それ以上に僕が出来ることは無いので椅子に腰かける。
柚子由からデータを貰ってその画面へと視線を落とした。
どうして審判のヒューマノイドは試合後の戦闘を止めなかったのだろうか。
恵芭守の時と言い、不可解な点が多い。
相手には機械に侵入できる系の能力者が居るのだろうか?
しかし、それならば形跡が残るだろう、それなのに、政府が止めないと言うことはそう言うことだ。
ばれない不正ならばしても構わない。
これは子供の世界では無く大人が絡んできている。
彼らの土台で勝負させられていると言うことだろう。
羅呪祢の能力を暴くためにも晴生君を呼んだ方が良かったかもしれないが、そうすると尻尾は出さない可能性が高い。
十輝央兄さんの事も能力だと思いたいのだが…。
そこまで考えてから思考を振り払う様に首を振る。
私情を挟んでしまうと戦略を立てることが出来ない。
僕はまた画面へと視線を落としてから、那由多君のことを考えた。
エルは彼が負けてしまったと言っていた。
それではかなり落ち込んでいるだろう。
彼が今回はいつもにもまして必死に頑張っていたのは印象的だった。
九鬼の体も少し心配だったがあちらにはウェリントンが居るので任せて置けば大丈夫だろう。
全ての戦闘経過を頭に叩きこむと柚子由へとそれを返した。
「ありがとうございました、柚子由、光。」
それだけ告げると立ち上がり、階段を降りて治療現場へと向かう。
園楽あたるはかなりの重傷の様子でエルから止め処なく能力が注がれていた。
鳳凰院しのぶが僕の存在に気付いた様でこちらへと向かってきた。
「明日は愛輝凪とだね、と言いたいとろだけど、麗亜は棄権することにするよ。
仲間をきっちりとした施設で見て貰いたいしね…。
神功君、今回の借りはきっちり纏めて返すからね覚悟しておいてくれよ。」
「はい。分かりました。」
真っ赤に腫らした瞼が痛ましかったが彼女は会長らしく気丈に僕へと指を突き刺した。
僕は小さく頷くと共に、イデアに手配して貰った担架に園楽あたるが運ばれる様を見詰めた。
麗亜のメンバーがこちらに頭を下げてから一緒について行った。
「エル、すいませんが、暫くは付き添ってあげて下さい。
柚子由、光。九鬼達と合流しますよ。」
こんなムードだが、僕達には明雷鳴高校との試合が後三戦残っている。
戦闘内容から考えなくてはいけない戦いに僕は大きく息を零した。
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一○九様、お疲れ様です。
感想第一号ありがとうございます(* > <)⁾⁾ペコリ設定を褒めていただき相方とも狂喜乱舞しておりました。笑
これからも一層頑張りますのでよろしくお願いします。年末年始も楽しんで頂けるような更新を予定しておりますのでご高覧いただけたら幸いです。温かいお言葉ありがとうございました⸜(*ˊᗜˋ*)⸝イルカトウ