あなたのタマシイいただきます!

さくらんこ

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isc(裏)生徒会

夏満喫?

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【千星那由多】

車で連れてこられた場所は、副会長の別荘だった。
夏と言えば海!!俺は泳げないが、眺めるのは大好きだ。

建物はデカい洋風の建物だった。
なんせ全部広くてデカい。
入った先にすぐ見えるシャンデリアを見て、落ちてきたらどうなるんだろうとか無意味な心配をしてしまった。
メイドらしき人も何人かいて、俺達全員に丁寧に挨拶をしてくれた。

「みんな着替え無いと思うから、服とかはこっちで用意してあるの着てネ。サイズとかも大丈夫だと思うし。
あと、各自必要な物はメイドに言ってくれたらちゃんと用意するから♪」

うおお…なんてセレブなんだ…。
別荘でこれだけの設備となると、普段はどんな生活してるんだろうか。
本当にお坊ちゃまは恐ろしい。

「朝食はビュッフェだから好きなだけ食べてネ。多分先にあの二人、寛いでるんじゃないかナ」

あの二人?
そう言われると朝食が用意された部屋へと案内される。
そこへ行く間にもたくさんの部屋があり、どこもかしこも広かった。
これがホテルじゃなくて別荘というのが、また気が狂いそうな話だ。

朝食の良い香りの漂う部屋へ入ると、一番奥のテーブルにアロハシャツを着た見慣れた顔が二人いる。

「夏岡さん!!」

そう最初に口にしたのは晴生だった。
もちろん夏岡先輩の向かいには弟月先輩もいる。

「おっ!来た来た~!遅いから先に寛いじゃってるよー!くっきーが海行きませんかって言うから連れて来てもらっちゃった!昨日から来てるから俺達もう日焼けで真っ黒だよ~!でさぁ海…」

「朝から煩いぞ…陣」

見た感じ本当に二人とも寛いでいる。
夏岡先輩はアロハシャツに短パン、麦わら帽子、ビーチサンダルと言った完璧に常夏仕様だ。
弟月先輩もアロハシャツを着ていたが、正直あまり似合っていない。

各々が好きなテーブルへつくと、朝食をとりはじめた。
どれもこれもうまそうな物ばかりで、何を食べようか迷ってしまう。

なんかプチ旅行って感じで、今年の夏休み満喫できてる気がする。
そんな事を考えながら、大量のウインナーを皿へと盛った。

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【弟月太一】

陣に付き合わされると大変だ。 
あちこち焼けて、皮膚がヒリヒリ痛い。
千星たちが来たってことは今日も海に行くんだろう。
まぁ、受験勉強ばかりじゃ、息が詰まるからなこういう息抜きは必要だろうが。

陣は肉ばかりを取っていたので俺が取ってきたサラダを皿にいれてやる。

そうしていると、陣の横に神功が座ってきた。

「お久しぶりですね、夏岡陣太郎、弟月太一。
地区聖戦は順調なようですが、受験勉強はどうですか?」

そうだ、神功が地区聖戦に参加させたせいで俺達は学校の行き帰りに良く襲われる。
体が訛らないのは調度良いが正直面倒だ。

ノルマは点数キープと言われていたのでその辺りは問題ないが。

「おかげで横やりが入って邪魔だ。
点数はキープで本当にいいのか?
まぁ、お前と九鬼が稼いでいるようだから問題ないようだが。」

俺はクイっと眼鏡を持ち上げた。
横に座っていた陣が神功の口にウインナーを運んでいた。
神功は嫌そうな顔をしていたが仕方なさそうにそれに齧りつく。

「神功凄いじゃん、ベスト5は常にキープしてるだろ?」

「有名人なんでかってに相手から来るだけですよ。まだ、僕は点数を稼ぎにはいってないんですが。」

相変わらず嫌味な言い方だが少し丸くなった気もする。
流石にこのメンバーを相手にしていたら色々代わってくることもあるだろう。
俺は千星に視線を送った。
その皿にはウインナーばかりが山積みになっており、野菜を盛りつけたくて仕方が無かった。

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【幸花】

こんなに色んな所へ連れて行かれるのは初めてかもしれない。
いつもエーテルにいてばかりだし、左千夫と柚子由と出かける事はあっても、こんなに大勢では遠出したことはない。

そしてまた二人増えた。
ナツオカとオトヅキ、会うのはこれで二度目だけれど。
左千夫はあちらのテーブルへ行ってしまったので、柚子由と純聖、イデアと一緒に好きな物をお皿に盛りつけた。

「純聖…また人参残してる」

「そういうお前もトマト残してんじゃんかよ」

私はトマトが嫌いだ。
こんなぐちょぐちょでどろどろの野菜があるなんて信じられない。
この世から消えて欲しい。

「ちゃんト食べロ。丹精こめテ作ってクレタ人に失礼ダ」

いつもなら柚子由に食べなきゃダメ、と言われるのに、何故か横でご飯を口に運んでいるイデアに言われた。
昨日も思ったけど、ヒューマノイドでもご飯って食べるんだ。

「えー…イデアはいいよなーなんでも食えるんだろ?」

「そうダナ、味覚はナイが、味のデータならアルゾ。今ニンジンについて調ベテヤロウか」

「いーよ!なんか長くなりそうだし!!」

「じゃあ食ベロ」

そうイデアに促されると、柚子由も促して来たので、純聖と同時に口に含んですぐにジュースで流した。
やっぱり不味い。嫌い。

それでもトマト以外のご飯は美味しかった。
昨日の夜から美味しい物を食べさせてもらえてる。それだけでも心が温かかった。
楽しいって、こういうことなのだろうか。

朝食を食べ終わると、用意された寝室へと向かう。
私は純聖、柚子由、イデアと一緒だった。
少し休憩したら海に行くとの事なので、とりあえずふかふかのベッドで飛び跳ねる純聖をスリッパで叩いておいた。

ベランダからも大きな海が見えた。
海をこの目で見るのは初めてで、純聖も横で目をキラキラと輝かせている。
この海のどこかにクジラさんがいるのかと思うと、わくわくした。
サメさんも、イルカさんも、リュウグウノツカイさんもきっとどこかで優雅に泳いでいるはずだ。

「深海に行きたい…」

そう呟いた私に柚子由は困ったように笑った。
楽しいとか嬉しいって、左千夫や柚子由以外にも感じる事ができるんだ。

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【日当瀬晴生】

俺と天夜と千星さんは同室だった。
天夜は余計だけど千星さんと同室なのは正直嬉しい。
それにしても、水着までちゃんと用意されているし、メイドの教育は行き届いているし。
九鬼って本当にお坊ちゃんだったんだな。

まぁ、俺が言える身分でも無いか。

少し寛いで部屋を確認してから水着に着替える。
振り分けられたベッドが天幕つきだったのでそこが更衣室になる。
一応俺は日焼け止めをぬり、アロハシャツを羽織る。
やけると赤くなりひりひりするからだ。

他の二人も用意が終わると三人でビーチにでる。
皆同じような格好だった。
千星さんの肌がちらちら見えてたので俺は視線を落とし気味に歩いた。

海につくとどうやらプライベートビーチのようで俺達の他に人はいなかった。

「三人さんはやいねー!!」

そうしている間に九鬼の声が聞こえたのでふり返る。

……………。

黒い物体が居る。
分からないことは無いが、どうしてそうなった。
いや、仕方ない、アイツはたしか日光に極端に弱かった気がする。

その黒い物体は腕に空気をいれた浮き輪を沢山持って、パラソルを日傘代わりにしてやってきた。
そう、会長だ。

会長はアルビノなので確かに日光に弱い。
いつも日焼け止めをべったりと塗っているのを俺は知っている。
今日も今からどこまで潜るんだと言わんばかりのダイビングスーツと野球帽、サングラスにマスク、そして、白い肌が更に白くなるほどの日やけどめを塗っている。

ああ、競泳用よりもかなり短いブーメランを履いて、シャチやイルカの浮き輪を持っている九鬼が霞む。
それくらい、インパクトのある姿で会長はやってきた。

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【千星那由多】

朝食をとって暫くしてから海へと向かう。
副会長の事だから変な水着を用意しているかと思ったが、差し当たりの無い普通の海パンで助かった。

外は物凄くいい天気で、プライベートビーチらしく人もいなかった。
泳ぐことはできないが、浅瀬で遊ぶぐらいならできるだろう。

先に着いた俺達に続いて、会長と副会長が来る。
副会長のブーメランパンツを見てぎょっとしたが、それよりも会長が異常だった。
一瞬誰かわからないぐらいの武装で現れたので、思わず吹き出しそうになったが、日差しに弱いようなので仕方ないだろう。

「すごいですね…会長…副会長も見苦しい感じでなんとも…」

「見苦しい!?これぐらいやんなきゃ男じゃないヨ!みんなの分も用意しようと思ったんだけど、メイドにボク以外似合わないって言われたからサ~」

あんな、股間を見てくださいと言わんばかりの水着を着せられるところだったのかと思うと、鳥肌が立った。
メイドさん助けてくれてありがとう。

暫くすると、水着に着替えた夏岡先輩と弟月先輩も集まってくる。
相変わらず二人も筋肉の引き締まった良い身体をしていた。
俺もそれなりに腹筋ぐらいはついたかと思ったが、みんなを見るとまだまだだった。
白さでは晴生や会長には負けるが、二人とも引き締まった身体をしているし、俺は何ていうか…貧弱だ。

自分の身体を見ていると少し恥ずかしくなる。
やっぱり男らしい身体って憧れるな。

「海ーーーーーっっ!!」

突如ビーチに子供の元気な声が響いた。
そちら側へと目をやると、純聖、幸花、イデア……そして三木さんがいた。
しかも三木さん、上は羽織ってはいるがピンク色の水玉のビキニで、露出が激しい。
スクール水着姿は拝んでいるが、あそこまで肌を露出した彼女を見るのは初めてだ。

「遅れてごめんなさい、ちょっと手間取っちゃって…」

少し恥ずかしそうな彼女から目を逸らしたいのに逸らせない。
ピンク色の薄い羽織が少し透け、余計にエロさが増している。
待て、水着でエロいとか何考えてんだ俺!!!!!

「ナユタ柚子由の水着姿に見とれてんのか?スケベだな!」

「気持ち悪い…」

「なっ!バッちげえ!違う!」

純聖と幸花さんにそう言われた時にじろじろ見てしまっていた事に気づき、すぐに目を逸らした。
晴生も直視できないのか、背中を向け海を眺めていた。

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【天夜巽】

「さぁ!行きましょう!海へ!!」

「おう!!」

一番海から遠そうな会長が一番乗り気だった。
輪投げの様にして純聖君や幸花ちゃんに浮き輪を渡してから海を指差している。
その号令に合わせるかのように二人とも走って行った。

会長は更にシャチの浮き輪も持って海に向かっている。

僕も早々にビーチボールを片手に海へと向かって行った。
那由多は泳げないので浮き輪を持ちながら同じく向かってくる。

「お!タツミ、いいのもってんじゃん!」

「いくよ!純聖君!!」

「うぉぉぉぉぉ!!!?ちょ!タツミ、今のビーチボールのはやさじゃねーよ!鉄球だぜ、鉄球!
ちくしょー、いくぜ、ひっさーつ、オーバーヘッドビーチボール!!」

まるでサッカーのように回転しながら純聖君はビーチボールを蹴った。
それから、バシャンと激しく海にまっさかさまに落ちていた。

僕はそのボールをバレーのように拾うと幸花ちゃんが打ち返してくる。
二人とも運動神経が人一倍良いので一緒に遊んでて楽しい。

「ナユター!!!いくぞ!!おーばへっどッ…!あ!こら、幸花ぁぁ!!!」

純聖君がまた蹴飛ばそうとしたビーチボールを奪うように幸花ちゃんが那由多にアタックした。

……結構はやいけど、あれ、取れるのかな那由多。

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【千星那由多】

会長は遠泳に行ってしまい、副会長はオイルを身体に塗りたくって砂浜で肌を焼いてる。
夏岡先輩と弟月先輩は昨日散々泳ぎまくったからと、ビーチバレーをしていた。
三木さん達も海に潜ったりと、それぞれ楽しそうだ。

巽達が、死人が出そうな勢いでビーチボールを投げ合っているのを見ながら、とりあえず俺は浮いておくかと、まだ足がつきそうな浅瀬へと浮き輪をつけて浮いてみる。
日差しは暑いけど、海の冷たさが気持ちいい。
呑気にぷかぷか浮いていると、何故かこちらに物凄い速さのビーチボールがぶっ飛んできた。

「あっぶねぇええッッ!!!」

なんとか避けれたものの、どうやら受けないといけなかったらしく、純聖に取りに行けよーと催促される。
だいぶ沖へと行ってしまったビーチボールを見ながら、浮き輪があるから大丈夫かと足をバタつかせた。
その瞬間、何かが俺の腰を掴んだ。

「ヒッ!!??」

海藻か何かかと思い、恐る恐る海の中へと視線を落とす。
そこには赤い目を光らせたイデアがいた。

「ちょッなに!?なに!?イデア!!やめ……ッう、わあああああああああッ!!!!」

俺の制止の言葉も空しく、腰にくっついた手がイデアの身体から離れると、ジェット噴射のような物が吹き出し、凄まじい速さで俺を遠くへと運んで行く。
気を失ってしまうかと思うぐらいの猛スピードだったが、沖まで飛んでいったビーチボールの場所でピタリと止まった。
もしかしてここまで運んでくれたのかと、浮いているビーチボールを手に取る。

「サンキューイデア、またあっちまで連れて……」

腰元へと再び目をやったが、さっきまでガッチリくっついていた手が無くなっている。
唖然とした表情で岸へと視線を送ると、遠くの岸辺で腕のついたイデアが手を振っていた。
血の気が引いて行く。

「イ…イデアぁあああ!!!」

俺の叫び声が聞こえているのかはわからないが、多分聞こえてない。それぐらいの距離だ。
必死で足をバタつかせながら岸へと向かおうとしたが、流れが思った以上に早く全然違う方向へと流されて行く。

「た、たすけて……!」

助けを求めるように両手を思い切り振ったが、岸にいる巽達は俺がただ単にはしゃいでると思ったのか、楽しそうに両手を振りかえして来た。
……ちげぇから!!!

ああ…俺、このまま流されて明日死体で発見されるんだ……。

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【日当瀬晴生】

千星さんからのSOSが聞こえる。

夏岡さんの雄姿を見ながら、砂浜を探索していたらどこからともなく声が聞こえた。
辺りに視線を送るとかなり沖の方に千星さんがいる。

確か泳げなかったよな、千星さん。

天夜達には全く通じて無いようで楽しそうに手を振り返してやがる。
全く何してんだよ、あいつら。

俺は慌てて海に入っていくと、千星さんのところまで顔を上げたままでクロールしていく。

「大丈夫ッスか?千星さん。」

「あ、ありがと。晴生…もう、俺、駄目かと思った。」

千星さんの浮き輪の後ろを掴むとそのままバタ足で浜辺まで戻っていく。
確かに、沖の方は少し波が高くて大変だな、と、思いながら泳いだ。
本当にこの人は妙なところで抜けている。
それが千星さんの良いところでもあるんだけどな。

問題はあいつらだ。

「ナユタ、泳げないのかよー!!だっせぇ!!」

「ださい。」

「これでも那由多はだいぶマシになったんだよ。
昔はもっと水嫌いだったんだ。」

悠長に会話している三人を見ていると青筋が立った。

「てめーら…千星さんの、危機に………!!」

俺は千星さんからビーチボールを奪うと三人目掛けて走っていく。

「千星さんの痛み!俺がはらしてやる!!しね!!」

そのままビーチボールを上に投げるとサーブのようにして三人に打ちこむ。
特に純聖。あいつは生意気だ。
そのままのテンションで俺は三人の中に紛れ込んで行った。
なぜか、純聖も幸花もわびをいれるどころか楽しそうだったので疲れただけだった。

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【千星那由多】

危うく漂流しそうだったが、晴生に助けてもらい事なきを得た。
それからは、もう海に入ったらろくなことがなさそうなので、砂浜で巽たちのビーチボールの投げ合いを見ていることにした。

一人でパラソルの下に座り、やっぱり俺にはこのスタイルがお似合いかと、水平線を見つめていた。
あー眩しい。でもこうやって海でわいわい過ごすのもたまにはいい。本当にたまには、だけど。
暫くぼーっとしていると、黒い物体が海の中から突如現れたのが見えた。
それは俺の方へと向かってくる。

未知の生命体……!?いや、もしかしたら他校の敵襲……!!!
と思ったが、あれは会長だ。
何やら網の中にたくさんのウニや貝を入れ、ゴーグルをつけたまま爽やかに笑った。

「たくさん取れました。お昼に調度いいかと」

「左千夫クンナーイス♪お昼ご飯はBBQだヨ!今準備してもらってるから♪」

少し離れた場所でビーチベッドで寝転んでいる副会長が、俺の後ろを指差している。
そこにはメイドさん達が数人、BBQの用意をしてくれていた。
こんな所でBBQなんて俺初めてだ。
夏満喫って感じがする。

ああ、副会長が金持ちでよかった。
いつまでこの別荘にいるかはわからないが、俺とは縁のない生活を色々体験させてもらおう。

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【三木柚子由】

「柚子由、お昼にしましょうか。」

イデアちゃんと一緒に浅瀬の海の中を探検していると、左千夫様から声が掛った。
左千夫様ははじめと一緒で目深に帽子、サングラス、べったりと日焼け止めで流石にマスクは外していた。
私は少し恥ずかしいので浮き輪で隠しながら皆のところに戻る。

他の水着に変えて貰おうと思ったんだけど、イデアちゃんが着ろって言ったので仕方なくこれを着た。

でも、やっぱり恥ずかしいよ…。

お昼はBBQだった。
くっきーさんの用意してくれた野菜や肉、左千夫様がとってきた、魚介類、タコやイカまであって、本当に左千夫様って凄いんだと再認識した。
純聖君と幸花ちゃんは日当瀬君と天夜君が遊んでくれたのでとってもお腹がすいていたのか、凄い勢いで平らげている。
お肉もとっても柔らかいし、魚や貝は取れたててとっても美味しかった。

その後はメイドさん達がトロピカルジュースを運んできてくれた。
こんな贅沢していいのかな。

左千夫様をジッと見つめていると視線が合い。
にっこりと笑いかけてくれた。

「水着。本当に似合ってますね。」

え……、え……!!?

「ワタシはどうダ。」

「イデアも、とっても可愛らしいですよ。」

「……。」

「幸花も、将来が楽しみです。」

左千夫様が水着を褒めてくれたので私は真っ赤になって俯く。
そこから、イデアちゃんや、じっと見つめていた幸花ちゃんも褒めていたので私だけでは無いと分かっているんだけど、やっぱり嬉しい。

「本当に、似合ってるよ、三木さん。」

天夜君まで称賛してくれるので、どうしていいか分からなかった。

「似合ってると言えばクッキー先輩も似合ってますけどね。」

天夜君は私が困っていることに気付いたのか、話題を違う方向へ振ってくれた。
少しホッとした私は再びジュースを口にした。

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【九鬼】

仲間内でこう言ったことは良くやっているが、同年代の仲間とやるのは初めてだ。
みんな楽しんでくれてるみたいだし、珍しく自分の中にぬるい満足感が生まれた。
(裏)生徒会に入って、ボクも少しゆるくなってしまったようだ。

巽がボクの事を話しているのが耳に入ったので、そちら側へとビールの缶を片手に向かった。

「似合ってるでしょ!これぐらいやんないと夏は越せないヨ♪」

そう言って仁王立ちで軽くポーズを決めたが、ゆずずには目を逸らされてしまった。
左千夫クンは素知らぬ顔で食事に手をつけている。

「脱げると大変な事になりそうですけどね」

巽が微笑みながらボクに笑いかけると、横でボクと同じように仁王立ちしているイデちゃんの目が光った気がした。
うん、何かマズそうな雰囲気だ。

「ソレはオモシロソウだナ」

そう言った瞬間だっただろうか。
目の前に居たイデちゃんが消え、いつの間にかボクの後ろへと回っている。
いつもなら咄嗟に反応できるはずだったが、既にイデちゃんの手はボクの水着にかかっていた。

「ちょ!イデちゃ…!!」

制止の手を伸ばしたが間に合わないまま水着を引きずり降ろされ、同時に前へと倒れ込む。
調度その時なゆゆがボクの目の前を通っていた。
あーダメだ、掴む物がなゆゆの水着しかない。

「ごめーんなゆゆ♪」

そう言ってボクはなゆゆの水着を道連れにし、砂浜へと倒れ込んだ。
というか、水着を取り上げてやったと言う方が正しいかもしれない。

頭の上に齧られたウインナーが落ちてくる。
顔をあげると、口を開けたまま硬直しているなゆゆがいた。
もちろん下半身を放りだした姿で。

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【神功左千夫】

食事中に見苦しいものが二つも有る。
僕は咄嗟に柚子由と幸花の目を塞いだ。
純聖は風呂でも見ているだろうし、社会勉強だと思えばいい。

「あははっ!!ナユタ!チンコ丸見えだぜ!!」

教育方針を間違えたか、いや、この歳なら正常か。

「ななななな、何するんですか!?副会長!!!」

慌てて那由多君が体を丸めながら九鬼から水着を奪い返していた。
晴生君なんて鼻血が出ている始末だ。
いや、少しおかしいな、彼は。

無事奪い返した水着を那由多君が持って、岩場に向かおうとした瞬間どこからともなく獣の足音がした。

「ワン、ワン♪」

かなり大きな、ゴールデンレトリバーが那由多君から水着を奪って岩場へと走り去ってしまった。

「うわぁぁ!!返せ!!!!」

半泣き状態の那由多君が浮き輪で股間を隠しながらその犬を追いかけている。
その走りは中々だなと思い、九鬼を見ると彼は既に水着を履いていた。
この辺は抜け目が無くて感心してしまう。

「あの子、ボクの犬でリンって言うんだ、可愛いでしょ。」

確かに飼い主に似て無邪気そうだと思いながら見えなくなった那由多君が居る方向を見つめた。
そして、目隠ししていた二人を解放してやる。

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【千星那由多】

色々体験させてもらおう。の中にこんなハプニングは入っていない!!
副会長に水着をひったくられたかと思ったら、それが犬にまで奪われてしまった。
慌てまくっていたので、近くにあった浮き輪で大事な部分を隠し、急いで犬を追いかけた。

三木さんには多分、見られていない。
ちゃんと確認していないが、会長が隠してくれていたはずだ。
というか見られていたらもうこんな所にはいられない。
この夏が人生最大の汚点になるのは確実だ。

半泣き状態で、水着を咥えたまま走る犬を全速力で追いかける。
生きてて一番の足の速さだったと思う。

「ッ待て…!こんの…バカ犬!!!!」

プライベートビーチという事だけが不幸中の幸いだったか…。

かなりの距離を走っただろうか。
砂浜の端まで来ると、犬は岩陰へと楽しそうに消えていってしまった。
ひいいい!!!待て!!マジで待て!!遊んでんじゃないんだよ!!

ごつごつした岩の上を息を切らしながら辿っていく。
息切れも酷く、足がガクガクになりながら、犬が消えた方へと向かった。

「ぜっ…はぁッ…ほんと…副会長っ…海に沈め……!!!」

急な岩を上って行くと、少し小高い場所に海パンが落ちているのが見えた。
犬は何故か既に岩山から下り、下の方でくるくると楽しそうに走り回っていた。
まるで「バーカ」とでも言いたげに何度も吠えるのが癇に障る。

「…むかつく……っ!」

イライラしながら急いで海パンを拾い上げると、辺りに人がいないのを確認する。
こんな危なそうなところに人がいるわけないかと、乱れた息を整えると、股間を隠していた浮き輪を下した。

なんでこんな所で露出狂になってるんだろうか俺は…。

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【華尻唯菜】

「堂地先輩ッ!ちょっと、どこいくんですか!こっち、余りはいっちゃ駄目って言われてましたよ。」

堂地先輩は前生徒会長と言うこともあって凄いことは凄いんだけど。
なんというか…子供っぽい。

今もカニを追いかけてこんなところまできてしまった。
と、いうか、アタシが放っておけばいいんだけど、なんか、危なかっしくて見てらんないのよね!

「にょへへ~、捕まえたのだ!!」

そう言ってカニを嬉しそうに捕まえてはしゃいでる先輩はまるで小学生だ。
やっと帰れると溜息を吐いた時がさっと物音がした、そして、岩場をひょいと覗くのと同時にブレスレットの音が鳴る。

こんなとこに、敵高!?

っと、思ったらそこに全裸の千星な由多が居た。

「この!!陰毛がぁぁぁぁぁ!!!!何度も見苦しいもんみせんなぁぁぁぁ!!!!」

多分私の顔は真っ赤で半泣きだったと思う。
そのままとび蹴りをくらわすと千星那由多は海へと投げ出された。
ここは浅瀬だ死ぬことは無いだろう。
ガバガバと言いながら暴れているがアタシには関係ない。

「ふん、なんのよ、いったい。」

恥ずかしいやら、もどかしいやら、ちょっと嬉しいやら色んな気持ちが混ざったまま私は腕を組んだ。
しかし、千星那由多は上がってこない。

「ありゃりゃ、華尻ちゃん、ちょっとこれはまずいにょろ。」

そういって、堂地先輩が指差したところには、ぷかーっと千星那由多が浮いていた。
もしかして…

お よ げ な い … !!!

私は慌てて海に飛び込んだ、下半身が水中に入ってくれていることが幸いだと思いながらそのまま砂浜まで彼を引き摺って行く。
千星はゲホゲホと咽ていた。

「もーなんなのよ!アンタはいったい…!」

背中に担ぐようにしていったので、距離が物凄い……近い!!

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【夏岡陣太郎】

海、広い別荘、BBQ!!
肉!肉!肉!肉!たまに太一に入れられる野菜!
家族を置いて遊びにでかけるのは気が引けたが、親や弟達もたまには遊んで来いよと言ってくれたので、その好意に甘える事にした。
その結果すんごい堪能させてもらってる。
こんな高級なお肉食べたのも初めてだ。

那由多が犬を追いかけて行ってから、犬だけが帰って来た。
クッキーがもしかして海で溺れてるんじゃない?なんて言うから晴生が慌てて先に岩場へと探しに行った。
あいつがああやって俺以外の誰かのために動いてくれるのは、嬉しい気持ちでいっぱいだ。
俺達も食後に軽く運動しておくかと、全員で那由多が向かった岩場へと呑気な気持ちで向かった。

岩場へと足を踏み入れた時、海に何かが落ちる音が聞こえた。
ぎょっとして急いで岩を駆け上っていると、もう一度海に着水する音がする。
ここはプライベートビーチなので、関係者以外は入れなくなっているはずだ。
すると、全員のブレスレットから同じ音が流れた。
他校が近くにいるという合図だ。
小さなディスプレイには麗亜高校と表示され、どうやらすぐそこに二人いるようだ。

「千星さん!!」

晴生の緊迫した声と共に全員が岩場から顔を出すと、そこには倒れている那由多と、那由多にキスしようとしているオレンジ色の髪の女の子がいた。

「てめぇ!千星さんに何し…!!」

そう言って那由多の側にいた女の子に突っかかっていこうとしたが、水着姿が目に入った途端に視線を海に逸らした。
いや、那由多の全裸姿か?
どっちでもいいけど、こういう所は晴生全然変わってないな。

「か、勘違いしないでよね!泳げないみたいだったから助けてやったの!!いいい今は人工呼吸をしようとしてて…!!」

やっぱり海に落ちたのか。
…ていうか人工呼吸!?そんなにヤバいの!?

「ちょ!!誰か誰か!早く人工呼吸!!!!」

俺は慌てながら横にいた太一の肩を揺らした。

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【華尻唯菜】

あれ、動かない…。

陸まで連れてきたのは良いが千星那由多は動かなかった。

「これはまずいにょ!千星が動かないにょ!…このままじゃ、華尻ちゃんが殺人鬼に…!!!」

大げさなポーズをとりながら前会長がそんなことを口走る。
確かにこれはマズイ。
このままじゃ、この男のせいで、アタシの人生が全部水の泡になる。
それは避けたい、いや、それもいいかもしれない。

って、アタシ何考えてんの!!!

取り合えず、この場合の応急処置は人工呼吸だ。
なるべく下半身を見ないようにして私はその場に屈みこんだ。

ど、どうしよ…アタシ男とキスするの初めて…
それが、こんな、い、い、陰毛に…!!

思いとは裏腹に心臓がドキドキと跳ねる、そして、体を曲げ、後少しで唇が触れる、その時だった。

「千星さん!!」

聞き覚えのある声に私は慌てて顔を上げた。
マズイ!これは色々誤解が生まれる!
はやく訂正しないと!!!

「か、勘違いしないでよね!泳げないみたいだったから助けてやったの!!いいい今は人工呼吸をしようとしてて…!!」

そんな騒ぎを起こしている間に一匹の犬が走ってきた、その子は真っ直ぐに千星那由多の横まで来ると両前足で勢いよく千星那由多の胸を押した。

その瞬間に噴水のように水が噴き出ていた。
そして、犬はそのままペロペロと口を舐めている。

ああ、アタシのキスが。

一気に落胆したがそんなことないと言うかのように思いっきり首を横に振る。

「どうしたのだ!!」

そんなときに鳳凰院会長の声が聞こえた。
これはややこしくなる。

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【鳳凰院しのぶ】

華尻と堂地先輩が居なくなっているのに気付き、ブレスレットで位置確認をしたところ、なんと立ち入り禁止区域に入っていた。
あちらはプライベートビーチだから立ち入り禁止だと散々注意しておいたのに、これは会長として叱っておかねばならないと、すぐに岩場へと向かった。
途中で乙女達に呼び止められたが、ウインクで挨拶をし颯爽とビーチを走って行く。

そして岩場で見たのは、とんでもない光景だった。
あの愛輝凪高校の(裏)生徒会がいるではないか!
しかも団体で!!
もしや華尻と堂地先輩に卑猥な事を…!?それは断じて許さん!!!!

「どうしたのだ!!」

思わず僕は声をあらげ、岩から顔を出す。
華尻と堂地先輩は慌てた様子で僕を見ていた。
そして華尻の近くには全裸の千星那由多がいる。

「OhMyGooooooood!!!!!
また貴様か千星ぃぃいい!!!華尻!堂地先輩!早く僕の後ろに!!」

そう言うとおずおずと華尻と堂地先輩は僕の後ろへと回った。

「これはどういう事かな?説明してもらおうか神功君!!」

神功君もおかしな恰好をしている。
みんなみっともない肌を露出しているのに対し、神功君はまるで肌全てを隠すような姿だ。
これも何か愛輝凪流の儀式なのか…!?

「うちの千星が溺れたみたいで、そちらの華尻さんが助けてくださったみたいですよ」

「なに…?そうなのか、華尻」

そう言うと華尻はこくこくと頷いていた。
ほう…では僕の早とちりと言ったところか。
いや、しかし愛輝凪高校とは次に会った時には敵同士だと宣言していたはずだ。
もしかしたら千星は溺れたふりをして華尻に…!

「いーや!僕は信じない!すでに今僕達は敵同士だ!
それに乙女の華尻と堂地先輩にそんな小汚いものを二度も見せつけた事を僕は絶対に許さない!
こんな地で出会ったのも運命であろう!正々堂々と勝負といこうではないか!!」

そう言って神功君を指で指すと、強い眼差しで睨みつけた。

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【弟月太一】

なんだか、めんどくさそうなのが来た。
陣が「やるかー!!」と、言ったので手でいなす。
しかし、純聖君も同じような感じだったので何とも言えない。
どうやら彼女は麗亜の会長のようだ。
戦闘になりそうなムードにも神功は特に表情を変えることなく微笑んでいた。

「勿論、構いませんよ。
それでは、勝負方式はどうしますか?」

「そうだな、折角海にきてるのでな!マリア!!海の競技スケジュールを…!!」

大きな身振りで手を翳すとどこからともなくシスターの格好をしたヒューマノイドが現れた。

「はい。今すぐに…」

そういうと彼女の青い瞳が光った。
そして、ディスプレイが展開されるとともに俺達のブレスレッドに情報が送り込まれていく。

「競技は二日に渡って行われます。
本日は、ビーチフラッグ、ビーチバレー、食事を挟んでの肝試し。

肝試し以外は2対2のタッグバトルになりますので、参加する順番、組む相手を決めておいてください。
それでは一時間後に、場所は九鬼さんのプライベートビーチをお借りいたしますね。」

九鬼はにこにこ笑ったままだった。

なんだか、面倒なことになったがここに来てまで点数が稼げるかもしれないと思うといいことにするか。
帰ったら受験勉強が待っていることだしここは盛大に暴れてこよう。

それよりもなんとか犬が下半身を隠しくれているがこの場にいる千星が哀れで仕方がなかった。

掛ける言葉も見つからず、俺は眼鏡を押し上げた。 




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