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さくらんこ

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isc(裏)生徒会

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【三木柚子由(神功)】


那由多君は良くやってくれた。
確かに僕は彼に賭けた、しかしここまで九鬼を追い詰めることが出来るとは思わなかった。
そのまま九鬼の元に歩み寄る。

彼は僕の二又の槍により、首を捉えられ身動きできない状態だ。
そして、彼の両腕はもう使えない。
更に追い打ちを掛ける様に僕はその槍の柄を握り締め、ぐっと地中に差し込む。
彼が少しでも動けばその首を割くことが出来る様に。

オースタラ側がザワリとした気がしたが、ここに介入できるものは居ないだろう。


「気絶している人を踏みつけるものではありませんよ。おかげで目が覚めてしまいました。」


ゆったりと笑みを作る。
体は柚子由のものなので、彼女が可愛らしく笑んだ様に彼には見えただろうか。
しかし矢張り他人の体を使って動くものではない。
先程、槍を遠投したことに加え、地中に刃先を食いこませたことにより彼女の腕は悲鳴を上げている。 

「さて。…余り長居をしたくないので、とどめを刺す前に一つ質問させて貰いましょうか?」 

笑みが消えている九鬼の表情を真っ直ぐに見下ろす。
そして、綺麗に笑みを浮かべたまま、ゆっくりと唇を動かした。


「貴方はどうして(裏)生徒会会長になりたいのですか?」 


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【九鬼】


槍を持った手に力が入らないまま、歩み寄って来たのは三木だった。
いや、三木の姿をした、左千夫クンだった。

身動きがもっととれなくなるようにグッと差し込まれた槍先が火傷した皮膚に触れ気持ちがいい。


「起きちゃったか…ゆっくり寝てたらよかったのに」


呆れたようなため息を付くと、ボクは両腕を槍先から離した。
余り長居はしたくない、と言うことは三木の身体を使ったのは最終手段だったと言うことか。
本当に彼女…いや、身内には甘いんだろう。
ボクなら使えるものは使っちゃうけどネ。

そして、彼の質問に笑みが消える。


「…生徒会会長になりたい理由…?
…そんなの決まってるヨ、(裏)生徒会会長になったら、何でもできるでしょ?学校も生徒も教師も牛耳れる。
力を思う存分使っても誰も文句なんて言わない。
そもそも君達みたいなお遊びと違って、ボクの方が断然会長に向いてると思うけどネ?」


ボクは彼に視線を向けたまま一気に言葉を放った。 


----------------------------------------------------------------------- 


【三木柚子由(神功)】


笑みなく彼が綴った言葉には全く感情が篭っていなかった。
そう、彼は嘘を吐いている。

柚子由の体だが瞳だけ赤く揺らめく、まるで僕が見つめているかのように彼は錯覚するかもしれない。
僕は槍の柄を掴んだまま、地面に両膝を着く。

グッと彼に顔を寄せるとその瞳で真っ直ぐに見詰めた。


「違いますね。
九鬼。僕に嘘を吐けるとでも思っているのですか?」

ほんの一瞬。常人なら見落としてしまいそうな位一瞬だけ彼は視線を眇めた。
僕にとってはそれが決定打となる。

「貴方は地区聖戦で、甘さ故に傷つく(裏)生徒会のメンバーを見たくないのでしょう?
非情 になりきれない、僕の選んだメンバーが無残にも裏切られ、負けていき、傷を負う様を見たくない。
貴方が代わりに会長になって、非情になって、黒鬼となって、地区聖戦を片付けようとしている。
オースタラの様に誰かが悲しむ前に……。」


淡々と告げていく言葉を彼は黙って聞いていた。
その表情は動くことは無かったが、僕はもう確信してしまっていた。
そして、彼女の顔で一番冷ややかな笑みを作って、右手を彼の心臓の上に置いた。


「そんな自己満足な理由で僕の生徒会を荒らさないでください。
確かに彼らは甘い。しかし、甘いのが悪い訳ではないのですよ、九鬼。
悪いのは力が無いことだ。
―――そして、僕にはそれをカバーするだけの力が有る。今回はギリギリでしたけどね。」 


彼が納得するかは分からないが、僕の考えを伝えていく。
勿論、彼が納得して引かなければ殺してしまうだけだ。
僕はそれだけの覚悟を持っている。
それを示す様にゆっくりと指に力を加えていく。
柚子由の体でも彼の心臓を抉ること位は可能だ。


「僕だけ非情で有ればいい。
尻ぬぐいは僕がする、それでも貴方はこの、愛輝凪(裏)生徒会が不服ですか?」 


----------------------------------------------------------------------- 


【九鬼】


ボクは淡々と喋る彼の言葉を聞いていた。
声は三木の声だけれど、綴られた言葉と口調、そして赤を宿したその瞳は「神功左千夫」だった。
小さな手の平がボクの胸に当てられ、ぐっと押し込まれていく。


「ふ……く、はははっ」


ボクは声をあげて笑った。
彼には全て見透かされていたからだ。
本当にどこまで彼は人の心理を読み取るんだろうか。
自分は誰にも感情や心を露わにしないくせに。

ボクの笑い声に三木の手が止まった。

「あーもうわかったヨ。
君がどれだけこの(裏)生徒会を大事にしてるかってのが伝わった。
余計なお世話だったみたいだネ。
ま、君がそう言うんならいいんじゃナイ?文句はないヨ」

イタズラな笑みを浮かべた後、心臓に置かれた彼女の腕を痺れた手で軽く握った。

「それでも殺したいなら今この手で心臓を貫いていいヨ。
左千夫クンの身体じゃないのが惜しいとこだケド」 


----------------------------------------------------------------------- 


【三木柚子由(神功)】


九鬼が笑った。
その皮肉な笑いにまだ、彼は独りなのかと思ってしまった。
僕は自分が独りぼっちだとは思わない。
いや、そもそもそう思う概念すら持ち合わせていない。

昔会った幼い彼は自分が独りぼっちだと言っていた。
もしかしたら、彼は今もそのままなのかもしれない。

そう、僕は過去の記憶を完全に取り戻している。
九鬼は僕が過去に出会った人物だった。

僕がマフィアの人体実験の材料だった時に一度彼と会ったことがある。 

人間は自分を守るために忘却する。
僕も自分がモルモットだった時の記憶は断片的にしか無い。
だから彼の事を忘れていたが、その時の苦痛な記憶を思い出すことと引き換えに僕は彼の事を思い出していたのだ。

震えている手が柚子由の手に添えられる。

「手。痺れて動かないでしょ?
奴隷の…実験動物の血液なんかに迂闊に触るからです。」 


そう、彼の手が動かないのは素手で僕の体を貫いたから。
イデアの様に猛毒とまではいかないが、僕の血中には色々な薬物が溶け込んでいるし、数値もおかしい。
勿論、少量であればなんの問題も無いが、彼は傷をしている上に僕の血液がどっぷりと腕に染みついている。
傷口から体内に取り込まれ、何かが狂ってもおかしくない量だ。

真摯な表情で彼を見つめた後、柚子由の手の上に添えられた彼の手を、軽く握り締める様に手を返し、突き刺していた槍を少し緩める。
勿論、まだ、いつでも刺し殺せる範囲、で、だが。
そして、作ったような綺麗な笑みを浮かべて小さく首を傾げた。

「さて、本題です。
僕的にはもう一人くらい非情な人材が欲しいんですが………。」

その言葉を聞くなり今度は彼の方が動きを止め、僕を見上げた。
そして、最後に僕の本心を告げる。
そう、僕にとっては彼も既に身内の一人だった。


「仲直りしませんか?僕とトモダチになってくれるんでしょ?」 


----------------------------------------------------------------------- 


【九鬼】


どうやら手の痺れは彼の血液中の毒が傷から侵入したせいであった。
幾多の人体実験で彼の中に住み着いてしまったものに、ボクは負けてしまった。

三木の腕を握った腕が、小さな手のひらで包まれた後、首を抑えていた槍が緩んだ。
そして、彼の投げかけた言葉に動きを止め、数度瞬きながら目を見開いた。


「仲直りしませんか?僕とトモダチになってくれるんでしょ?」


この言葉の意味からして、彼は記憶を取り戻しているのだろう。
彼とボクしかしらない記憶。
小さいころに交わした約束。 

三木の口から零れた彼の言葉に、ボクは小さく笑った。


「仲直りって…これ、喧嘩だったの?
……ほんっとーにずるいネ、君は」 


そう言うと緩められた槍をすり抜けるように下半身をしならせ跳ね起きる体勢に入る。
細く編んだ三つ編みが槍先で切れた音がした。
でも、もう願掛けた長い髪は必要ない。


ボクの願いは今さっき、叶ったから。


起きる行動に気づいたのか、彼は槍を引いた。
それと同時に跳ね起きると、前かがみになったまま暫く立ち止まる。
前髪の隙間から槍の刃先が光っていた。

「だいじょーぶ、もう闘う意思なんてないヨ」

彼に表情を見せないまま、三木の横をすり抜けていくと立ち尽くしている千星の方へと向かった。
千星も剣を構えたが、それに口角をあげいつものように笑うと、右手に巻いた腕章を口で挟み歯で一気に引きちぎり彼へと投げる。
驚いた顔をして投げたそれを慌てて受け取ったのを見て、思わず吹き出してしまった。


「こーさん。頑張ったネ」


そう言うとディータ達の方向へと顔を向ける。
彼らにも色々付きあわせて悪かったな。
ま、少しはこの闘いがいい経験になったならいいんだケド。
もうボクの役目もおしまいだ。

「エイドス、イデア離してあげて。
フリーデルは、みんなの手当よろしくー」 


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【三木柚子由(神功)】


どうやら僕の願いは届いた様でホッとした。

トモダチ。
こんな、言葉で彼が本当に靡いてくれるとは正直思わなかった。

長かった彼の髪が切れる。
その、役目を終えたかのように。

念のため、僕は槍を構えたが、もう彼にその意思は無いようだった。


終わった。


正直。今回は充実し過ぎていて満身創痍だ。
腕章が那由多君の手に渡り、「強奪」と言う形ばかりの声が響く。
九鬼が彼の仲間に回復の指示を出したところで僕の憑依はとける。

もともと、既に限界だった。

ただ、彼に勝たせたくない一心で最後の手段を使ったまでだ。
孤独と言う勝利をこれ以上彼に味あわせたくない。
それから、僕は負けず嫌いなんだ。
僕にとっての勝利は「生」だから。

柚子由の体が膝を着く様に倒れて行くが慌てた那由多君が受け止めてくれた。


僕は自分の体に戻るが、そのまま意識を取り戻し起き上がれる訳もなく、小さく笑みを浮かべてから意識を手放した。 


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【千星 那由多】


三木さんの身体を借りた会長と九鬼の対峙をただ見守っていた。
いつ九鬼が攻撃をしかけてきても大丈夫なように、緊張感を持って。

会長が九鬼を追い詰めていく、殺気は醸し出されていたが、喋っている内容はどこか優しげな感じがした。

結局は、九鬼は俺達を変えるためにこの闘いを申し込んだ、ということになるのだろうか。
でも、奴ははっきりとは「その通りだ」とは言わなかった。
それでも、会長には何かが伝わっていたようだった。 

長い会話だった。
いや、この時間が果てしなく長く感じた、と言う方が正しいかもしれない。

暫くすると九鬼は槍をすり抜けて飛び起き、俺へと腕章を投げ渡す。
俺は思わず困惑し、驚いた表情で腕章と九鬼の顔に視線を往復させると、九鬼は吹き出す様に笑った。
冗談なのかとも思ったが、この行為で俺を遊んでいるような感じでもない。
奴から渡された腕章を握りしめ、俺はこの闘いに終止符を打つ言葉を小さく零した。


「……強奪…」


あっけない、と言えばあっけない幕切れなんだろう。
でもこれ以上闘ってもお互い得をすることはなさそうだった。
俺は安堵の息を深く吐いた。

途端に三木さんの身体が崩れるのを見て、彼女を支えるように駆け寄った。

「三木さ……会長…」

さっきまで中にいたであろう会長からの返事はないが、三木さんの胸元が上下するのを見て、彼女は無事なんだとほっと息をついた。 


九鬼はオースタラ側に声をかけた後、倒れている会長へと向かった。
暫くしてフリーデルもこちらへディータのピアノ線を使って飛び降りてくる。
そして、会長と九鬼の傷を見てポーチから大量の薬品を手渡す。

九鬼はそれをポケットや胸元へと収めると、気絶している会長を抱く様に持ち上げた。

「!…会長に…なにするんだ…」

俺の言葉に反応した九鬼は、こちらを振り向いてイタズラに笑った。

「ちょっと今後のことお話ししてくるから会長借りるよ。
大丈夫、ちゃんと手当はするから」 

その言葉があまり信じられなかった俺は、三木さんを抱えたまま九鬼を追いかけようとすると、小さな声が聞こえた。
それは、腕の中で眠っていた三木さんの声だった。


「大丈夫…もう、心配ない…から」


そう言って小さく笑い、再び眠りについた彼女の言葉を俺は信用することにした。
九鬼の去って行く後姿を見守っていると、闘技場が地面へと還っていくように沈んでいく。


本当に………終わったんだ。


身体の力が抜けると、支えていた三木さんと共に、俺は地面へとへたり込んだ。 


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【フリーデル】


終わった。
あの、クキ様が負けられた。
本当に紙一重の勝負だった。
ほんの一枚ジングウの方が切れるカードを多く持っていた。
そんな勝負だった。

明らかに違うのは私達オースタラはチームとしていたが戦うのは個人だった。
しかし、彼らは仲間として戦闘をしていた。
そして、戦いに対する心構え。

彼らは自分たちの信念を壊されたことが無いのだろう。
ぶれることなく私達に向かってきた。
その結果が大きく勝敗に表れた。

――――もしかして、甘いのが悪い訳じゃないのかな。
でも、シッターはそのせいで。

その時にジングウの言葉が脳裏を過ぎる。
甘いのが悪いのではなく、力が無いのがいけないと。

そう言えば私達はどこかで強い彼に甘えていたのかもしれない。
私達に不必要だったのは他人に対する甘さではなく、自分に対する甘えだったのかもしれない。

クキ様から命令が来る、ディータが不服を唱えようとしていたけど、私はその肩を掴んだ。
エイドスは舌打ちしながらイデアロスをその腕から解放しているようだった。


「もう、止めよう?シッターなら絶対手当てしているヨ?
彼は敵味方関係ナク、傷付いたものは手当シテタ。」


そう考えると心が穏やかになる。
張り詰めていた緊張が解け、自然に笑みを浮かべることが出来た。
ディータが私のその表情を見て驚いたように瞳を揺らした後、拗ねる様にそっぽを向いた。 

どうやら、彼もシッターの教えを忘れることが出来ないようだ。
彼は帰って来ないけど、帰ったら私達は彼の意志を継ぎたい。
少なくともそう思った。

ディータのピアノ線の力を借りて私は闘技場に降りた。
クキ様は酷い傷で、消毒用の薬剤、止血剤、造血剤、包帯等必要そうなものに力を込めて全て渡した。
それでも全快となるまでには少し時間がかかるかもしれない、ジングウも同じ。
ジングウはこの状態で生きているのが不思議なほど体が壊れていた。
でも、彼は死なない。生きることを諦めないからこそ成せる力だ。

私がセンボシ達の薬を用意していると、どこかに行こうとしているクキ様から声が聞こえる。 

「あ、フリーデル。僕オースタラの会長代理止めるから。
と、言うよりはもうその必要が無くなったんだよね。」 

彼が、オースタラにとどまらないと言うのはなんとなく分かっていた、しかしその後の言葉に私は目を瞠ることになる。 


「シッターが目を覚ましたヨ。
彼は、オースタラ直属の病院に居る。帰ったらまた彼と生徒会をしたらいい。」



――――――――シッターが生きていた。
彼は確かにそう言った。
色々な思いが頭をめぐる。
なぜ、知らせてくれなかったのか、どうして彼が生きていたのか、そしてどうしてそれを貴方が知っているのかと。

しかし、戦いを終えた彼にそれを問うことは出来ずに、私の瞳に涙が溢れた。
それはディータ達も同じで、手すりをぐっと握り締めこちらを見ている。
本当に最低限の言葉しか与えず彼は去ってしまう。
私は彼の後姿に頭を下げることしかできなくて、小さく「アリガトウゴザイマシタ…」と、言葉を掛けた。 


人々が黒鬼と呼ぶ彼は、私達にとっては白い翼を有した本物の天使と何一つ変わらない存在だった。 


----------------------------------------------------------------------- 


【千星 那由多】


シッターが生きていたことを聞き、フリーデルは九鬼に深々とお辞儀をしていた。
なんだかやるせない気持ちだった。
さっきまで闘っていた九鬼は、最悪な悪者だと思っていたのに。
結局は彼の手の中で踊らされていただけにすぎなかったのだろうか。

でも、それでも、フリーデルやディータ達の表情を見て、結果的には今まで起きた事は無駄ではなかったのかもしれない。 

フリーデルに傷を見てもらっている途中、夏岡先輩達が巽と晴生を抱えてやってきた。
巽と晴生は気を取り戻していたが、やはり満身創痍でボロボロだった。
三人で交わすような苦笑を漏らすと、夏岡先輩の声が響いた。 

「那由多!良くやったなー!
助けは絶対左千夫が嫌がるだろうから、見てるだけしかできなかったけど…。
…本当にみんな無事で済んで良かった…」

夏岡先輩が「千星」ではなく、「那由多」という名前を呼んだことにちょっとドキッとする。
なんだか認めてもらえたような気がした。
語尾が掠れて泣きそうな夏岡先輩に頭をぐしゃぐしゃと撫でられ、俺は疲れた笑顔で目いっぱい笑った。 

それと同時に夏岡先輩達を苦しめていたフィデリオのリングが地面に落ちると、イデアがディータ達に連れられ闘技場内まで来ていた。 

「良くヤッタな」

イデアがこちらへ合流すると、赤い瞳が真っ直ぐみんなを見つめていった。
相変わらずの無表情だったが、どこか少し柔らかい表情に見える。
ディータ達へと視線を向けると、ローレンツとエイドスの姿だけがなかった。


「…センボシ」

ディータが俺に握手を促すように手を差し出した。

「アマッチョロとか言って悪カッタナ。
オマエらと闘えてヨカッタ。でもまぁ、まだ認めたワケじゃネーカラ。
オレが唯一認めてンノハ、シッターダケだかンナ」

俺はその言葉に笑うと、差し出された手を優しく握った。
フィデリオは夏岡先輩達にリングの非礼を詫びているようだった。
夏岡先輩に頭をぐしゃぐしゃと撫でられると、困ったように表情を少し崩していた。

「んじゃ、オレ達、ドイツに帰るワ。
どっちにしろ今日で交換留学も終わりダッタシ。
シッターのコトも気になるシナ、特にフリーデルが!」

その言葉にフリーデルは顔を真っ赤にしてディータを睨んでいた。
こんな表情をする子だったんだな、と二人のやり取りを見て小さく笑う。


そして彼らは去って行った。
ローレンツのことはみんなでどうにかするだろう。
もう九鬼や俺達は、オースタラには介入できない。

彼らは彼らのやり方で、(裏)生徒会を今からまた再建させるんだ。


日が暮れだす。
夕日が辺りを朱く染め、いつもの日常が戻ってくるのを感じた。


そして、これからまた始まっていく日々が、今までとは違い、とても尊いものに思えた。 




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