57 / 113
isc(裏)生徒会
決戦の日
しおりを挟む
【千星 那由多】
朝だ。
カーテンの隙間から日差しが注いできている。
外では鳥の囀りが微かに聴こえた。
いつもの日常なら、すがすがしいはずの朝。
薄く目を開くと、天井のタイルが目に入る。
訓練施設の天井もだいぶ見慣れてきた。
俺は体を起こすと辺りを見回し、横で寝ているはずの二人を探したが、姿はなかった。
携帯の時計へと目をやるとまだ朝の6時だ。
学校へ行くにしても、まだ早い。
多分二人は自主練してるんだろう。
朝からアイツら元気だな…。
そんなことをぼんやり考えながら、携帯に映し出される日付を見た。
29日。そう、今日はリコール決戦当日だ。
昨日はあれから夜に家を抜け出し訓練施設へと帰ってきた。
家族に黙って出て来たから、多分今日は母親からコールの嵐だろう。
でも、この戦いが終われば、きちんと家に帰れる。
無事に終われば、の話だが。
まだ布団に丸まっていたい気持ちもあったが、二度寝すると起きれそうになかったのでそのまま部屋から出た。
廊下を歩いている途中、巽と晴生が外で組手をしているのが見えた。
俺はため息を付くと、窓を開け外の晴生と巽に大声で声をかけた。
「おまえら仲いいなーーー!!!」
自分でも意味のわからないテンションだった。
大声を自発的に出すことはあまりしないタイプなので、語尾は掠れていた。
なんだろう、今日の学校が終われば闘いが始まるというのに、無意味に脳内が興奮していた。
…もしかしたら、これがこいつらといられる最後の(裏)生徒会、だとでも思っていたんだろうか。
俺は声を出して二人がこちらに気づいた後、早朝だったことを思い出し、しまったと思い自分の手で口を塞いだ。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
外が騒がしい。
既に起きていた僕は部屋の窓のカーテンを開ける。
宿泊施設は無事であったため、僕は一人部屋を使っていた。
調度ここからは訓練が出来る場所が見える。
晴生君と巽君、……その後から那由多君が来た。
那由多君。彼は一般生徒から僕が選んだ(裏)生徒会のメンバーだ。
彼は僕のせいで九鬼と戦うことになったと言っても過言では無い。
他のメンバーも自分から進んで(裏)生徒会に入った訳では無い。
皆は九鬼と戦うことを願っているのだろうか。
僕はプライドが高い。
後からひょっこり出てきたアイツに(裏)生徒会を奪われるなんて考えたくもない。
それに、気になることもある。
でも、彼らは違う。
彼らはたまたま、今、(裏)生徒会に居ただけだ。
「おはようございます。左千夫さま、朝ごはんの用意できました…」
「今行きます、柚子由」
外から控え目な声が聞こえたので僕は愛輝凪高校の制服を身にまとい部屋から出た。
全員そろったところで朝食を取る。
まだ、登校まで軽く時間があったのでミーティングを行うことにした。
「今更ですが…、戦いたくないのなら今日の放課後ここに戻ってくる必要はありません。
これは、(裏)生徒会の戦いですが、どちらかと言うと僕個人の独断でもあります。
君たちは望んでここに居る訳では無い。
皆、各々の理由が有っているだけです。僕の代わりに九鬼が会長になってもいいと思うならリコール決戦は棄権してください。
返事は聞きません。
仮に、放課後に来なくても恨みはしませんので。
その代わり、参加した場合は容赦なくこき使わせて貰いますので。」
最後にそれだけを告げて席を立った。
他のメンバーは何か言いたそうだったがそれを無視するように部屋を出ると、いつものように柚子由が後をついてきた。
-----------------------------------------------------------------------
【千星 那由多】
あの後結局巽と晴生の組手に付き合うことになった俺は、軽く汗をかくぐらいに身体を動かした。
気持ちとは裏腹に妙に身体は軽かった。
いつもなら、こういう一大事は気持ちも身体も動かなくなることが多いはずなのに。
イデアに呼ばれて朝食をとった後ミーティングがあった。
決意を固めて九鬼達との対戦へ励もう、という内容なのかと思いきや、会長から放たれた言葉は俺がまったく想像していないものであった。
何故か酷く胸が痛んだ。
会長は俺達が望んでここにいるわけではない、個人の独断だ、と言った。
どうしてそんな寂しいことを言うんだろうか。
今まで必死でみんなで頑張ってきたのに。
俺達を必要としていないのだろうか。
自分一人で九鬼達と闘うつもりなのだろうか。
色んな思惑が頭の中をぐるぐると駆け巡り、いても立ってもいられなかった。
そして、気づくと部屋を出た会長を追いかけていた。
「会長!」
そう呼んでも会長は立ち止まらない。
グッと拳を握りしめて今の気持ちを叫んだ。
「俺、言いましたよね、選んでもらえて、少しでも自分が変わっていけて感謝してますって。
…今でもそれは変わってません。
みんなが傷ついたり、家族を傷つけられたりするのは正直言って嫌だし、しんどい時だってあります…。
でも…俺は今更逃げるつもりも、九鬼が会長になってほしいとも思ってません!」
それでも会長は振り向かない。
横にいる三木さんが困ったように会長と俺を交互に見ている。
「だから…だから放課後待っててください!
俺…俺達絶対に行きますから!!」
そう伝えると会長は少しだけこちらを振り向き微笑んだ気がした。
会長がそのまま行ってしまうと、俺は深く息を吐き後ろへと振り返る。
そこには巽と晴生が立っていて、俺へ向けて微笑んでいた。
イデアも腕を組みながら、赤い瞳で俺をじっと見つめている。
我に返って急に恥ずかしくなり視線を下へと外したが、俯いた自分も何故だか小さく笑っていた。
-----------------------------------------------------------------------
【天夜 巽】
那由多は変わった。
昔の那由多なら、この特訓ですら途中で投げ出していたかもしれない。
でも、那由多は逃げなかった。
それどころか一人で会長を追いかけて行った。
それなら俺も逃げる理由は無い。
俺だって負けず嫌いなんだ。
やられたままで終わるなんて納得がいかない。
それに那由多を守るために入った(裏)生徒会。
初めはそのことしか考えてなかったけど、とてもやりがいがあった。
どのクラブにも定着できなかった俺だけど、ここには居場所がある。
帰ってきた那由多に微笑みを掛けた。
俯いた那由多の腕を組んで学校へ行く用意へ向かうと、日当瀬も慌ててそれに紛れ込んでくる。
俺は今のこの日常に満足している。
それを壊さないためにもこの戦いは負けるわけにはいかなかった。
-----------------------------------------------------------------------
【千星 那由多】
その日もいつもと変わらない授業を終えた。
同じクラスのフィデリオも特に変わった様子もなく、いつも通りぼーっとしていた。
授業は頭に入ってこなかったが、ひとつ違ったことと言えば、やけに気持ちが昂ぶっていたことだ。
巽と晴生と一緒に訓練施設、決戦の場所へと向かう。
俺達もいつもと変わらない口数だった。
もうすぐ俺の追試があることや、来月の林間学校の話で盛り上がる。
そして、訓練施設へ向かう隠し通路の出口へとたどり着いた。
扉のドアを開けるために手を伸ばす。
ここから俺達の日常は終わる。
いや、終わらせなんてしない。
また(裏)生徒会として全員で今まで通りの日常を送るために、俺達はこの非日常と対峙するんだ。
巽と晴生に視線を送ると、小さく頷いた。
ドアを開く。
暗闇からの眩しさのせいで目の前が微かに白くなった。
細めた目を開くと、階段の向こうに会長と三木さん、イデアの後ろ姿が見える。
白い制服が物凄く眩しかった。
階段を三人で静かに登る。
会長はまだこちらを振り向かない。
「…会長、朝の約束果たしにきました」
絶対に、あいつらには負けない。
-----------------------------------------------------------------------
【日当瀬 晴生】
会長の言葉は自分にも響くものがあった。
確かに俺は彼を尊敬している訳では無い。
初めは夏岡さんに言われてやっていたところも正直有った。
でも、『黒鬼』の異名を持つ、九鬼に生徒会長になられるくらいなら、今の会長の方がよっぽどいい。
それに、今の生徒会に居なかったらきっと、千星さんには会えていない。
いや、彼には会えていたけどこんな関係になることはなかったであろう。
千星さんの後を着いていく。
結局俺はこの訓練中に特殊能力が開花することは無かった。
させようと思って出来るものでは無いらしい。
必要な時に自ずと訪れたり、武器と一緒に開花したり、と、言うことだった。
本当は開花しているけど気付いていない場合もあるとイデアさんは言っていた。
大丈夫だ、それが無くても戦えるくらい、みっちり訓練はしてきた。
秘密の通路を抜けると会長が立っていた。
「…会長、朝の約束果たしにきました」
千星さんが声を掛ける。
会長はゆっくりと振り向き、いつものような笑みを湛えた。
「行きましょうか。」
山岳の独特な風が俺たちの髪を揺らす。
会長がゆっくり歩き始めるとそれに付いて行くように俺たちも後を追う。
約束していた決戦の場所へと赴くと、九鬼を筆頭にドイツのメンバーが佇んでいた。
-----------------------------------------------------------------------
【千星 那由多】
会長はいつものように微笑んだ。
俺はその表情に更に決意を固め、拳をゆっくりと握りしめた。
だだっ広い荒野へと出ると、そこには九鬼とドイツのメンバーが佇んでいる。
そして先に口を開いたのは九鬼だった。
「ちゃんと全員で来たネ。誰か逃げるかナと思ってたのに。
(裏)生徒会でいることは十分堪能したかナ?お別れはちゃんと言った?」」
そう言って口端を上げ座っていた大きな岩から飛び降りると、ズボンの汚れを叩きながら小首をかしげ会長へと問いかけた。
「お別れなんてする必要はありません。勝つのは僕たちですからね」
会長は顔にかかった髪を横へと流しながら表情は笑顔のまま崩さなかった。
しばしピリピリとした緊張感が漂った後、九鬼は片手をこねるように動かす。
なにか仕掛けてくるのか?
そう思った瞬間九鬼が手を開くと、五角柱の棒形のものが白く淡い光を放ちながらそこに現れた。
側面に切り込みがあるそれに眉を顰める。
「ギアーズダイスは僕が作っておいたよ5面体のサイコロなんて珍しいからネ。
さ、無駄話はここまでにしておいて…もうルールはわかってるよね?……エイドス」
そう言うと岩の後ろに隠れていた少年が箱を持って九鬼の元へと駆け寄る。
こいつはイデアの双子のヒューマノイドだ。
青い目はジッとイデアを睨みつけていた。
三木さんの横にいるイデアから舌打ちが聞こえた。
その舌打ちで大体イデアがエイドスに持ち合わせている感情はわかった気がしたが、イデアには感情はない。
多分表情もいつも通り無表情なのだろう。
エイドスは箱に入った腕章を九鬼と会長の間に置いた。
「もう一度軽く説明しておくネ。
勝者を決める方法は先に伝えた通り、プランダーバッチにさせてもらう」
先ほど作り上げたサイコロを上へと放り投げながら淡々と説明を続ける。
・各自校章の形を模した腕章を腕に嵌める。
・各チーム、サイコロ(ギアーズダイス)で出た目の人数を出し合い、腕章を奪い合う。
・腕章が奪われた者はそこで敗北となる。
・各決戦ごとにリーダを決め、リーダの腕章が取られた時点でその決戦は終わる。
・会長・副会長(神功左千夫または九鬼)の腕章が奪われる、または先に五人分の腕章を奪われると終わりとなる。
「もちろん腕章を奪う時は何をしたって構わないし特にルールはないよ。
意識不明に追いやっても、殺しても、なんだっていい。
まいったって言って渡しちゃうのもアリだヨ。
ちなみに腕章を手にして「強奪」と言って初めて奪ったことになるから、ただ奪っただけではカウントされないから気をつけてネ」
内容は前に会長から聞いた通りのものだった。
それに加えてあるのは…どんな方法で奪っても文句は言えないということだった。
大体はそうだろうと想像はしていたが、直接口で伝えられると脈拍が早くなり緊張と不安がじわじわと押し寄せてきた。
大丈夫だ、大丈夫。
自分の気持ちを落ち着かせるように頭の中で何度もその言葉を唱えた。
「じゃ、ギアーズダイス、どっちが先に投げるかな?」
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
今のところ特に変わった動きは無い。
彼らの他に気配も感じないので、他にメンバーが居て、襲われることも無いだろう。
夏岡陣太郎達には少し離れたところで見届けて貰うように、とお願いした。
九鬼の手の中でサイコロが作り出される。
ギアーズダイス。中国で使われているサイコロに似ている。
普通の正六面体では無くて、面が五角形の鉛筆のように、五角柱の投げ棒形サイコロである。
独特なその形のサイコロの面には数字が刻まれていた。
僕たちの運命はあのダイスが握っているといっても過言では無い。
それにしても彼の特殊能力はかなり厄介だ。
きっと、僕の能力が特殊で幅広い為、彼の能力も自ずと広大なものになったのだろう。
彼はなんでも物質化できるに違いない。
僕が作れるのは偽物。そこに無いものを有ると見せるのが僕の能力。
彼の能力は本物。実際に何かを作ってしまえるようだ。
「そちらでどうぞ。そんな不気味なものに触りたくないですからね。」
笑みから表情を崩すことなく言ってやると。
九鬼もいつもの笑みを返してくれた後、手の中のギアーダイスを握り締めたようだ。
そうすると辺りから地響きが起きる。
メキメキと地面がひび割れる音が響き渡り、岩が突出してくる。
僕たちは慌ててその場から後方へと飛びのいたが、九鬼はいつもの表情で笑っていた。
握り締めた手をググッと下から上に上げると。
コロシアムのような岩で出来た円形闘技場が目の前に姿を現した。
「ふう…大きいモノは、まだ作り慣れてナイんだよね。」
笑顔で彼はそう告げた、決戦前にこんなものを作りあげるほど舐められているようだ。
どうやらこの中で試合を行うらしい。
場外は特に決めてないけど、助太刀はルール違反だと告げられた。
「それじゃあ、始めようカ。プランダーバッチ第一回戦。」
ギアーズダイスが宙に舞い、闘技場の中心へと放り投げられた。
-----------------------------------------------------------------------
【千星 那由多】
俺は目の前の光景に目を見張った。
非現実なことは(裏)生徒会に入ってもうだいぶ見慣れていたが、コロシアムのような建物が地面から姿を現したのにはかなり驚いてしまった。
柱が数本立ち、全て石のようなものでできている。
観客席まで存在するその闘技場は、まるでコロッセオのようだった。
どうやらそれは九鬼の能力だったようで、彼は汗ひとつかかずにイタズラに笑っている。
強さを誇示するかのようなその行為に少し腹が立つ自分がいた。
ギアーズダイス、と言われた五角柱の棒形のサイコロが九鬼の手から放り投げられる。
それを息を飲み全員が見つめた。
クルクルと回転して地面に落ちたそれは、暫く石の地面を転がるとピタリと止まった。
少し遠い距離にあったので目の数はわからなかったが、イデアから機械音がした後「3だ」と告げられた。
あちらのエイドスも同じように九鬼たちに伝えているようだった。
3ということは、三人同士のプランダーバッチ…。
俺は会長を見つめた。
-----------------------------------------------------------------------
【天夜 巽】
出たサイコロの目は「三」だった。
これくらいの距離なら僕は見える。
ちょっと違和感はあるけれど。
他のメンバーの為にイデアがサイコロの数字を言ってくれた。
僕が見えたものであっていたようだ。
那由多が会長を見つめている。
俺もそれにつられるように会長を見た。
会長はゆっくりと俺たち三人の方を向き笑みを湛えた。
「調度いいですね、修業の成果。見せて貰いましょうか?」
会長はそう告げた。
即ち、俺と那由多と日当瀬の三人で行けと言うことだ。
俺たちは一斉に携帯を展開させた。
「―――解除!」
今日はいつにない緊張が心地いい。
死ぬかもしれない。
それを、覗けば普段のクラブでの試合の延長線上でしかなかった。
-----------------------------------------------------------------------
【千星 那由多】
会長は俺達を指名した。
一気に緊張感が高まり、大きく息を吸って、吐く。
修行の成果、ここで見せなければ九鬼達にはきっと勝てない。
脈拍が増していくが、いつものように逃げ出したいとはまったく思わなかった。
三人で顔を見合わせると、ポケットから携帯を取り出す。
「―――解除!」
眩く光る剣を手に取り、九鬼達の方へと視線を向けた。
どうやらあっちもメンバーが決まったらしい。
前に出て来たのは、ディータ、フィデリオ、そしてもう一人は金髪でツインテールの女子だった。
彼らは闘技場の中程へと疎らに入って行く。
「メンバーは俺、ディータ。フィデリオ。フリーデルの三人ダ」
「うちのメンバーは千星さん。俺、日当瀬。天夜の三人」
「リーダーは誰ダ?こっちは俺がリーダーをツトメル」
ディータがそう言うと、俺達は三人揃って顔を見合わせた。
リーダーか…俺には絶対無理だな。
そう思っていたにも関わらず、二人の視線がこちらに向いているのがわかった。
この展開は…もしや…。
「千星さんしかいません!!」
「大丈夫だよ、絶対奪わせないから」
「いや、待って待ってま…」
「こっちは千星さんだ!」
「こっちは那由多だ!」
俺が制止するのも無視して二人は声を揃えて俺の名前を挙げた。
なんでこういう時だけ息が合うんだこの二人は…。
「はっまたヨワッチョロイのがリーダーだな!コウカイしても知らねーぜ?
ま、こっちとしてはアリガタイがな!おら、さっさと全員腕章付けろ」
投げつけられるように渡された腕章を二人に手渡し、左腕へとはめ込んだ。
俺達の腕章にはホワイトオウル、愛輝凪(裏)生徒会の校章が描かれている。
ドイツの奴等には俺達の校章の色を反転した同じモノが描かれていた。
「おし、クキ準備はイイゼ」
ディータがそう言うと九鬼は右手を高く掲げた。
すると、エイドスとイデアがお互いの位置から少し高めの壇上へと立つ。
『リコール決戦、プランダーバッチ1回戦
「イデア」「エイドス」
ここで見届ける。』
『強奪許可!!!』
朝だ。
カーテンの隙間から日差しが注いできている。
外では鳥の囀りが微かに聴こえた。
いつもの日常なら、すがすがしいはずの朝。
薄く目を開くと、天井のタイルが目に入る。
訓練施設の天井もだいぶ見慣れてきた。
俺は体を起こすと辺りを見回し、横で寝ているはずの二人を探したが、姿はなかった。
携帯の時計へと目をやるとまだ朝の6時だ。
学校へ行くにしても、まだ早い。
多分二人は自主練してるんだろう。
朝からアイツら元気だな…。
そんなことをぼんやり考えながら、携帯に映し出される日付を見た。
29日。そう、今日はリコール決戦当日だ。
昨日はあれから夜に家を抜け出し訓練施設へと帰ってきた。
家族に黙って出て来たから、多分今日は母親からコールの嵐だろう。
でも、この戦いが終われば、きちんと家に帰れる。
無事に終われば、の話だが。
まだ布団に丸まっていたい気持ちもあったが、二度寝すると起きれそうになかったのでそのまま部屋から出た。
廊下を歩いている途中、巽と晴生が外で組手をしているのが見えた。
俺はため息を付くと、窓を開け外の晴生と巽に大声で声をかけた。
「おまえら仲いいなーーー!!!」
自分でも意味のわからないテンションだった。
大声を自発的に出すことはあまりしないタイプなので、語尾は掠れていた。
なんだろう、今日の学校が終われば闘いが始まるというのに、無意味に脳内が興奮していた。
…もしかしたら、これがこいつらといられる最後の(裏)生徒会、だとでも思っていたんだろうか。
俺は声を出して二人がこちらに気づいた後、早朝だったことを思い出し、しまったと思い自分の手で口を塞いだ。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
外が騒がしい。
既に起きていた僕は部屋の窓のカーテンを開ける。
宿泊施設は無事であったため、僕は一人部屋を使っていた。
調度ここからは訓練が出来る場所が見える。
晴生君と巽君、……その後から那由多君が来た。
那由多君。彼は一般生徒から僕が選んだ(裏)生徒会のメンバーだ。
彼は僕のせいで九鬼と戦うことになったと言っても過言では無い。
他のメンバーも自分から進んで(裏)生徒会に入った訳では無い。
皆は九鬼と戦うことを願っているのだろうか。
僕はプライドが高い。
後からひょっこり出てきたアイツに(裏)生徒会を奪われるなんて考えたくもない。
それに、気になることもある。
でも、彼らは違う。
彼らはたまたま、今、(裏)生徒会に居ただけだ。
「おはようございます。左千夫さま、朝ごはんの用意できました…」
「今行きます、柚子由」
外から控え目な声が聞こえたので僕は愛輝凪高校の制服を身にまとい部屋から出た。
全員そろったところで朝食を取る。
まだ、登校まで軽く時間があったのでミーティングを行うことにした。
「今更ですが…、戦いたくないのなら今日の放課後ここに戻ってくる必要はありません。
これは、(裏)生徒会の戦いですが、どちらかと言うと僕個人の独断でもあります。
君たちは望んでここに居る訳では無い。
皆、各々の理由が有っているだけです。僕の代わりに九鬼が会長になってもいいと思うならリコール決戦は棄権してください。
返事は聞きません。
仮に、放課後に来なくても恨みはしませんので。
その代わり、参加した場合は容赦なくこき使わせて貰いますので。」
最後にそれだけを告げて席を立った。
他のメンバーは何か言いたそうだったがそれを無視するように部屋を出ると、いつものように柚子由が後をついてきた。
-----------------------------------------------------------------------
【千星 那由多】
あの後結局巽と晴生の組手に付き合うことになった俺は、軽く汗をかくぐらいに身体を動かした。
気持ちとは裏腹に妙に身体は軽かった。
いつもなら、こういう一大事は気持ちも身体も動かなくなることが多いはずなのに。
イデアに呼ばれて朝食をとった後ミーティングがあった。
決意を固めて九鬼達との対戦へ励もう、という内容なのかと思いきや、会長から放たれた言葉は俺がまったく想像していないものであった。
何故か酷く胸が痛んだ。
会長は俺達が望んでここにいるわけではない、個人の独断だ、と言った。
どうしてそんな寂しいことを言うんだろうか。
今まで必死でみんなで頑張ってきたのに。
俺達を必要としていないのだろうか。
自分一人で九鬼達と闘うつもりなのだろうか。
色んな思惑が頭の中をぐるぐると駆け巡り、いても立ってもいられなかった。
そして、気づくと部屋を出た会長を追いかけていた。
「会長!」
そう呼んでも会長は立ち止まらない。
グッと拳を握りしめて今の気持ちを叫んだ。
「俺、言いましたよね、選んでもらえて、少しでも自分が変わっていけて感謝してますって。
…今でもそれは変わってません。
みんなが傷ついたり、家族を傷つけられたりするのは正直言って嫌だし、しんどい時だってあります…。
でも…俺は今更逃げるつもりも、九鬼が会長になってほしいとも思ってません!」
それでも会長は振り向かない。
横にいる三木さんが困ったように会長と俺を交互に見ている。
「だから…だから放課後待っててください!
俺…俺達絶対に行きますから!!」
そう伝えると会長は少しだけこちらを振り向き微笑んだ気がした。
会長がそのまま行ってしまうと、俺は深く息を吐き後ろへと振り返る。
そこには巽と晴生が立っていて、俺へ向けて微笑んでいた。
イデアも腕を組みながら、赤い瞳で俺をじっと見つめている。
我に返って急に恥ずかしくなり視線を下へと外したが、俯いた自分も何故だか小さく笑っていた。
-----------------------------------------------------------------------
【天夜 巽】
那由多は変わった。
昔の那由多なら、この特訓ですら途中で投げ出していたかもしれない。
でも、那由多は逃げなかった。
それどころか一人で会長を追いかけて行った。
それなら俺も逃げる理由は無い。
俺だって負けず嫌いなんだ。
やられたままで終わるなんて納得がいかない。
それに那由多を守るために入った(裏)生徒会。
初めはそのことしか考えてなかったけど、とてもやりがいがあった。
どのクラブにも定着できなかった俺だけど、ここには居場所がある。
帰ってきた那由多に微笑みを掛けた。
俯いた那由多の腕を組んで学校へ行く用意へ向かうと、日当瀬も慌ててそれに紛れ込んでくる。
俺は今のこの日常に満足している。
それを壊さないためにもこの戦いは負けるわけにはいかなかった。
-----------------------------------------------------------------------
【千星 那由多】
その日もいつもと変わらない授業を終えた。
同じクラスのフィデリオも特に変わった様子もなく、いつも通りぼーっとしていた。
授業は頭に入ってこなかったが、ひとつ違ったことと言えば、やけに気持ちが昂ぶっていたことだ。
巽と晴生と一緒に訓練施設、決戦の場所へと向かう。
俺達もいつもと変わらない口数だった。
もうすぐ俺の追試があることや、来月の林間学校の話で盛り上がる。
そして、訓練施設へ向かう隠し通路の出口へとたどり着いた。
扉のドアを開けるために手を伸ばす。
ここから俺達の日常は終わる。
いや、終わらせなんてしない。
また(裏)生徒会として全員で今まで通りの日常を送るために、俺達はこの非日常と対峙するんだ。
巽と晴生に視線を送ると、小さく頷いた。
ドアを開く。
暗闇からの眩しさのせいで目の前が微かに白くなった。
細めた目を開くと、階段の向こうに会長と三木さん、イデアの後ろ姿が見える。
白い制服が物凄く眩しかった。
階段を三人で静かに登る。
会長はまだこちらを振り向かない。
「…会長、朝の約束果たしにきました」
絶対に、あいつらには負けない。
-----------------------------------------------------------------------
【日当瀬 晴生】
会長の言葉は自分にも響くものがあった。
確かに俺は彼を尊敬している訳では無い。
初めは夏岡さんに言われてやっていたところも正直有った。
でも、『黒鬼』の異名を持つ、九鬼に生徒会長になられるくらいなら、今の会長の方がよっぽどいい。
それに、今の生徒会に居なかったらきっと、千星さんには会えていない。
いや、彼には会えていたけどこんな関係になることはなかったであろう。
千星さんの後を着いていく。
結局俺はこの訓練中に特殊能力が開花することは無かった。
させようと思って出来るものでは無いらしい。
必要な時に自ずと訪れたり、武器と一緒に開花したり、と、言うことだった。
本当は開花しているけど気付いていない場合もあるとイデアさんは言っていた。
大丈夫だ、それが無くても戦えるくらい、みっちり訓練はしてきた。
秘密の通路を抜けると会長が立っていた。
「…会長、朝の約束果たしにきました」
千星さんが声を掛ける。
会長はゆっくりと振り向き、いつものような笑みを湛えた。
「行きましょうか。」
山岳の独特な風が俺たちの髪を揺らす。
会長がゆっくり歩き始めるとそれに付いて行くように俺たちも後を追う。
約束していた決戦の場所へと赴くと、九鬼を筆頭にドイツのメンバーが佇んでいた。
-----------------------------------------------------------------------
【千星 那由多】
会長はいつものように微笑んだ。
俺はその表情に更に決意を固め、拳をゆっくりと握りしめた。
だだっ広い荒野へと出ると、そこには九鬼とドイツのメンバーが佇んでいる。
そして先に口を開いたのは九鬼だった。
「ちゃんと全員で来たネ。誰か逃げるかナと思ってたのに。
(裏)生徒会でいることは十分堪能したかナ?お別れはちゃんと言った?」」
そう言って口端を上げ座っていた大きな岩から飛び降りると、ズボンの汚れを叩きながら小首をかしげ会長へと問いかけた。
「お別れなんてする必要はありません。勝つのは僕たちですからね」
会長は顔にかかった髪を横へと流しながら表情は笑顔のまま崩さなかった。
しばしピリピリとした緊張感が漂った後、九鬼は片手をこねるように動かす。
なにか仕掛けてくるのか?
そう思った瞬間九鬼が手を開くと、五角柱の棒形のものが白く淡い光を放ちながらそこに現れた。
側面に切り込みがあるそれに眉を顰める。
「ギアーズダイスは僕が作っておいたよ5面体のサイコロなんて珍しいからネ。
さ、無駄話はここまでにしておいて…もうルールはわかってるよね?……エイドス」
そう言うと岩の後ろに隠れていた少年が箱を持って九鬼の元へと駆け寄る。
こいつはイデアの双子のヒューマノイドだ。
青い目はジッとイデアを睨みつけていた。
三木さんの横にいるイデアから舌打ちが聞こえた。
その舌打ちで大体イデアがエイドスに持ち合わせている感情はわかった気がしたが、イデアには感情はない。
多分表情もいつも通り無表情なのだろう。
エイドスは箱に入った腕章を九鬼と会長の間に置いた。
「もう一度軽く説明しておくネ。
勝者を決める方法は先に伝えた通り、プランダーバッチにさせてもらう」
先ほど作り上げたサイコロを上へと放り投げながら淡々と説明を続ける。
・各自校章の形を模した腕章を腕に嵌める。
・各チーム、サイコロ(ギアーズダイス)で出た目の人数を出し合い、腕章を奪い合う。
・腕章が奪われた者はそこで敗北となる。
・各決戦ごとにリーダを決め、リーダの腕章が取られた時点でその決戦は終わる。
・会長・副会長(神功左千夫または九鬼)の腕章が奪われる、または先に五人分の腕章を奪われると終わりとなる。
「もちろん腕章を奪う時は何をしたって構わないし特にルールはないよ。
意識不明に追いやっても、殺しても、なんだっていい。
まいったって言って渡しちゃうのもアリだヨ。
ちなみに腕章を手にして「強奪」と言って初めて奪ったことになるから、ただ奪っただけではカウントされないから気をつけてネ」
内容は前に会長から聞いた通りのものだった。
それに加えてあるのは…どんな方法で奪っても文句は言えないということだった。
大体はそうだろうと想像はしていたが、直接口で伝えられると脈拍が早くなり緊張と不安がじわじわと押し寄せてきた。
大丈夫だ、大丈夫。
自分の気持ちを落ち着かせるように頭の中で何度もその言葉を唱えた。
「じゃ、ギアーズダイス、どっちが先に投げるかな?」
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
今のところ特に変わった動きは無い。
彼らの他に気配も感じないので、他にメンバーが居て、襲われることも無いだろう。
夏岡陣太郎達には少し離れたところで見届けて貰うように、とお願いした。
九鬼の手の中でサイコロが作り出される。
ギアーズダイス。中国で使われているサイコロに似ている。
普通の正六面体では無くて、面が五角形の鉛筆のように、五角柱の投げ棒形サイコロである。
独特なその形のサイコロの面には数字が刻まれていた。
僕たちの運命はあのダイスが握っているといっても過言では無い。
それにしても彼の特殊能力はかなり厄介だ。
きっと、僕の能力が特殊で幅広い為、彼の能力も自ずと広大なものになったのだろう。
彼はなんでも物質化できるに違いない。
僕が作れるのは偽物。そこに無いものを有ると見せるのが僕の能力。
彼の能力は本物。実際に何かを作ってしまえるようだ。
「そちらでどうぞ。そんな不気味なものに触りたくないですからね。」
笑みから表情を崩すことなく言ってやると。
九鬼もいつもの笑みを返してくれた後、手の中のギアーダイスを握り締めたようだ。
そうすると辺りから地響きが起きる。
メキメキと地面がひび割れる音が響き渡り、岩が突出してくる。
僕たちは慌ててその場から後方へと飛びのいたが、九鬼はいつもの表情で笑っていた。
握り締めた手をググッと下から上に上げると。
コロシアムのような岩で出来た円形闘技場が目の前に姿を現した。
「ふう…大きいモノは、まだ作り慣れてナイんだよね。」
笑顔で彼はそう告げた、決戦前にこんなものを作りあげるほど舐められているようだ。
どうやらこの中で試合を行うらしい。
場外は特に決めてないけど、助太刀はルール違反だと告げられた。
「それじゃあ、始めようカ。プランダーバッチ第一回戦。」
ギアーズダイスが宙に舞い、闘技場の中心へと放り投げられた。
-----------------------------------------------------------------------
【千星 那由多】
俺は目の前の光景に目を見張った。
非現実なことは(裏)生徒会に入ってもうだいぶ見慣れていたが、コロシアムのような建物が地面から姿を現したのにはかなり驚いてしまった。
柱が数本立ち、全て石のようなものでできている。
観客席まで存在するその闘技場は、まるでコロッセオのようだった。
どうやらそれは九鬼の能力だったようで、彼は汗ひとつかかずにイタズラに笑っている。
強さを誇示するかのようなその行為に少し腹が立つ自分がいた。
ギアーズダイス、と言われた五角柱の棒形のサイコロが九鬼の手から放り投げられる。
それを息を飲み全員が見つめた。
クルクルと回転して地面に落ちたそれは、暫く石の地面を転がるとピタリと止まった。
少し遠い距離にあったので目の数はわからなかったが、イデアから機械音がした後「3だ」と告げられた。
あちらのエイドスも同じように九鬼たちに伝えているようだった。
3ということは、三人同士のプランダーバッチ…。
俺は会長を見つめた。
-----------------------------------------------------------------------
【天夜 巽】
出たサイコロの目は「三」だった。
これくらいの距離なら僕は見える。
ちょっと違和感はあるけれど。
他のメンバーの為にイデアがサイコロの数字を言ってくれた。
僕が見えたものであっていたようだ。
那由多が会長を見つめている。
俺もそれにつられるように会長を見た。
会長はゆっくりと俺たち三人の方を向き笑みを湛えた。
「調度いいですね、修業の成果。見せて貰いましょうか?」
会長はそう告げた。
即ち、俺と那由多と日当瀬の三人で行けと言うことだ。
俺たちは一斉に携帯を展開させた。
「―――解除!」
今日はいつにない緊張が心地いい。
死ぬかもしれない。
それを、覗けば普段のクラブでの試合の延長線上でしかなかった。
-----------------------------------------------------------------------
【千星 那由多】
会長は俺達を指名した。
一気に緊張感が高まり、大きく息を吸って、吐く。
修行の成果、ここで見せなければ九鬼達にはきっと勝てない。
脈拍が増していくが、いつものように逃げ出したいとはまったく思わなかった。
三人で顔を見合わせると、ポケットから携帯を取り出す。
「―――解除!」
眩く光る剣を手に取り、九鬼達の方へと視線を向けた。
どうやらあっちもメンバーが決まったらしい。
前に出て来たのは、ディータ、フィデリオ、そしてもう一人は金髪でツインテールの女子だった。
彼らは闘技場の中程へと疎らに入って行く。
「メンバーは俺、ディータ。フィデリオ。フリーデルの三人ダ」
「うちのメンバーは千星さん。俺、日当瀬。天夜の三人」
「リーダーは誰ダ?こっちは俺がリーダーをツトメル」
ディータがそう言うと、俺達は三人揃って顔を見合わせた。
リーダーか…俺には絶対無理だな。
そう思っていたにも関わらず、二人の視線がこちらに向いているのがわかった。
この展開は…もしや…。
「千星さんしかいません!!」
「大丈夫だよ、絶対奪わせないから」
「いや、待って待ってま…」
「こっちは千星さんだ!」
「こっちは那由多だ!」
俺が制止するのも無視して二人は声を揃えて俺の名前を挙げた。
なんでこういう時だけ息が合うんだこの二人は…。
「はっまたヨワッチョロイのがリーダーだな!コウカイしても知らねーぜ?
ま、こっちとしてはアリガタイがな!おら、さっさと全員腕章付けろ」
投げつけられるように渡された腕章を二人に手渡し、左腕へとはめ込んだ。
俺達の腕章にはホワイトオウル、愛輝凪(裏)生徒会の校章が描かれている。
ドイツの奴等には俺達の校章の色を反転した同じモノが描かれていた。
「おし、クキ準備はイイゼ」
ディータがそう言うと九鬼は右手を高く掲げた。
すると、エイドスとイデアがお互いの位置から少し高めの壇上へと立つ。
『リコール決戦、プランダーバッチ1回戦
「イデア」「エイドス」
ここで見届ける。』
『強奪許可!!!』
0
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる